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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン!
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ep 5

第三章:森での一夜

アルトゥンの城門をくぐり抜けると、街の喧騒は急速に遠ざかり、代わりに広大な自然が二人を迎えた。衛兵から教わったデュフランへの道は、鬱蒼とした森を抜け、遠くに見える険しい山を越えていく必要があるらしい。衛兵は「子供だけで行くには危険すぎる」「最近は特に荒っぽいモンスターの目撃情報もある」と渋い顔をしていたが、ダダの「大丈夫です!」という力強い(そして根拠のよく分からない)一言と、リーフの必死な眼差しに、最後はため息をつきながら道順だけは教えてくれたのだった。

「衛兵さんが言ってた通りなら、この道をまっすぐ行って、あの山を越えればデュフランに着くはずだよ」

ダダは遠くの山並みを指さしながら、隣を歩くリーフに笑顔で話しかけた。

「は、はい……」

リーフは息を切らしながら、か細い声で答えた。街からここまで歩いてきただけでも、普段あまり外に出ない彼女にはかなりの負担だった。額には汗が滲み、足取りも少しおぼつかない。

「大丈夫?」

ダダは心配そうにリーフの顔を覗き込んだ。その表情を見て、ふとダイヤの言葉が頭をよぎる。『依頼料は持ってるのかね?』――あの時は腹が立ったけれど、同時に『ガーディアンは依頼人を守るのが仕事だ』とも言っていた。

(そうだ……ダイヤさんの言う通り、依頼人の安全を守らなきゃ。リーフをちゃんとデュフランまで連れて行かないと)

ダダは心の中で静かに決意を固めた。ただの人助けではない。これは「ガーディアン:クレッセントワルツ」としての、初めての依頼なのだ。

「よし、だいぶ陽も傾いてきたし、暗くなる前にここらで野宿にしようか」

ダダは周囲を見回し、少し開けた、見通しの良い場所を見つけた。近くには小さな小川も流れており、水も確保できそうだ。

「は、はい。では私は、火をおこすための薪を集めてきますね」

リーフは少し元気を取り戻したように頷くと、健気に立ち上がり、手頃な枝を探し始めた。

「うん、ありがとう。この辺りは大きなモンスターの気配はしないみたいだから、きっと安全だよ」

ダダは鋭い感覚で周囲を探り、リーフを安心させるように言った。強い獣の匂いも、不自然な物音もない。

「僕は食べ物を取ってくるよ。美味しいもの、見つけてくるからね!」

ダダはそう言うと、身軽な動きで森の中へと分け入っていった。

森の奥へ少し進むと、ダダは獣の匂いを嗅ぎつけた。茂みの向こうに、赤茶色の毛をした大きな猪――レッドボア――が、地面を掘り返して何かを探しているのが見える。

(あ、いた! レッドボアだ。大きいな……リーフと二人で食べるには十分すぎるくらいだ)

ダダは茂みに身を隠し、静かに観察する。レッドボアは気が荒く、まともにぶつかれば危険だが、動きは直線的だ。彼は懐から丈夫なつるを取り出すと、手慣れた様子で地面に巧妙な罠を仕掛け始めた。通り道になりそうな場所に輪を作り、木の幹に蔓の端を固定する。

(よし、準備完了。あとは……)

罠の準備を終えると、ダダはわざと茂みから姿を現し、レッドボアに向かって呼びかけた。

「おーい、こっちだよ〜!」

「!?」

突然現れた人間に、レッドボアは驚き、鼻を鳴らしてダダを睨みつけた。

「ブヒィィィィ!!」

怒りに燃えた赤い目がダダを捉える。次の瞬間、レッドボアは猛烈な勢いでダダに向かって突進してきた! 地面を蹴る蹄の音が、森に響き渡る。

(来た!)

ダダは冷静にレッドボアの動きを見極め、罠のある場所へと巧みに誘導する。そして、レッドボアが罠の輪に足を踏み入れた瞬間――

「今だ!」

ダダは木の陰で蔓を強く引いた!

「ブゴッ!?」

罠は見事に作動し、レッドボアは前足を取られてバランスを崩し、派手な音を立てて地面に転倒した。

「ブ、ブヒィ……」

もんどりうって倒れたレッドボアは、すぐには起き上がれない様子で苦しげに呻いている。

「よし……!」

ダダはその隙を見逃さなかった。驚くべき速さで倒れたレッドボアに駆け寄ると、その巨大な頭部の前に仁王立ちになる。そして、小さく息を吸い込むと、無駄のない動きで右腕を引き絞り――

「うりゃあ!」

気合一閃! ダダの右肘が、まるで鉄槌のようにレッドボアの太い鼻面に叩き込まれた! ゴッ、と骨が軋むような鈍い音が響く。小柄な少年の体格からは想像もできない、凄まじい威力の一撃だった。

「ブヒィ……」

肘打ちを受けたレッドボアは、短い呻き声を上げると、ピクリとも動かなくなった。その目は白目を剥き、完全に意識を失っている。ダダは念のため、レッドボアが完全に絶命していることを確認した。

「よし、仕留めた。これでお腹いっぱい食べられる。リーフの所に帰るか」

ダダは満足そうに頷くいた

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