ep 16
ゴブリンリーダーの断末魔が森に響き渡り、ついに静寂が訪れた。激しい戦闘を終えた三人は、肩で息をしながらも、互いの顔を見合わせた。
「やったね、リューネ!」
「うん! ラビィも、ドラゴも、すごかった!」
「オレたち、勝ったダゴ!」
興奮と達成感が、疲労した体を満たす。三人で協力し、格上の敵を打ち破ったのだ。自然と笑みがこぼれ、ハイタッチを交わす。仲間との絆が、また一段と強くなったのを実感する瞬間だった。
しかし、喜びも束の間、リューネはすぐに表情を引き締めた。
「さて、と。感傷に浸るのは後だ。忘れずに素材を集めないとね。デューク教官への報告にも必要だし、これが報酬にもなるんだから」
「おっと、そうだった!」ラビィが慌てて頷く。
「素材集め! 分かったダゴ!」ドラゴもやる気を見せる。
三人は協力して、倒れたゴブリンたちの素材――換金価値のある皮や牙、爪などを手際よく回収し始めた。リーダー格のゴブリンからは、通常のものより大きく、質の良い素材が取れた。特にリーダーが持っていた錆びた鉈は、素材として持ち帰るには重すぎたが、その代わりに装飾品として使えそうな奇妙な石が懐から見つかった。
「うわっ、このリーダーの牙、でっかいね!」
「こっちの皮も厚いダゴ!」
「よいしょ……この石、結構重いな……」ドラゴがリーダーから見つかった石を両手で抱え上げる。「ありがとう、ドラゴ。助かるよ」リューネが礼を言う。「どういたしましてダゴ!」ドラゴは得意げだ。
汗を流しながらも、三人は協力して着々と作業を進め、やがて全てのゴブリンから回収できる限りの素材を集め終えた。籠はずっしりと重くなっている。
「よし、これで全部かな?」リューネが籠の中身を確認する。
「うん、大丈夫そうだね。結構な量になったんじゃない?」ラビィが満足そうに答えた。
「早く帰るダゴ! お腹すいたダゴ!」ドラゴは素材の入った重い籠の一つを軽々と背負い、元気よく言った。
三人は互いに顔を見合わせ、達成感に満ちた笑顔を交わした。そして、夕暮れが迫るアルトゥンの街へと足を向けた。
街に戻ると、ちょうど大通りが夕食の準備で賑わい始める時間帯だった。香ばしい匂いが漂ってくる。そんな中、聞き覚えのある声が三人を呼び止めた。
「あ、リューネさん! ラビィさん! ドラゴさんも!」
振り返ると、そこには以前森で助けたリリカが、明るい笑顔で立っていた。以前会った時のような陰りはなく、健康的で活き活きとした表情をしている。
「リリカさん!」リューネも驚いて駆け寄った。
「わー! リリカちゃん、久しぶり!」ラビィも嬉しそうに手を振る。
「ダゴ!」ドラゴも挨拶(?)をする。
「皆さん、お元気そうで良かったです!」リリカは心から嬉しそうに言った。「あの節は本当にありがとうございました。おかげさまで、母の病気もすっかり良くなって……それで、あれから母と私で、小さなお店を始めたんです」
「えっ、お店!? 良かったね! 何のお店なの?」リューネは興味津々といった様子で尋ねた。
リリカは少し照れながら、自分たちがいる場所のすぐ近く、新しく建てられたらしい小綺麗な建物を指差した。木の看板には「お食事処 リリカーナ」と書かれている。
「あの時、皆さんのようなガーディアンの方々に助けていただいて……私たちも何かお役に立てればと思って。ガーディアンさんたちが、お腹いっぱいになって元気になれるような、温かい食事を提供するお店にしたんです」
「しょ、食事!? やったー! ボク、お腹ペコペコだよ!」ラビィはその言葉に目を輝かせ、お腹を押さえた。
「肉! 肉食べたいダゴ!」ドラゴも興奮して両手斧(の柄)を振り回しそうになっている。
「ふふ、ぜひ、いらしてください。今日の開店準備、もうすぐ終わりますから」リリカはにこやかに言った。「もちろん、リューネさん達は、私たちの大恩人です。今日のところは、ううん、いつでも、特別サービスしちゃいますから!」
「「「わーい!!」」」
三人は、リリカの心遣いと、美味しい食事への期待に、喜びを隠せない様子だった。今日の疲れも吹き飛ぶような、嬉しい再会だった。




