ep 14
それぞれが己の武器(得物)を手にしてから、リューネ、ラビィ、ドラゴの訓練は新たな段階へと入った。デュークの指導の下、三人は一心不乱にそれぞれの武器と向き合い、その特性を最大限に引き出すための鍛錬に明け暮れた。
リューネは、選んだ剣と盾を自分の手足のように扱うべく、反復訓練に励んだ。デュークから叩き込まれた剣術の基礎に加え、盾を用いた防御技術――受け流し(パリィ)、盾による打撃、そして味方を守るための堅牢な構え(ガーディアンスタンス)などを習得。さらに、ラビィやドラゴとの連携を意識し、パーティーの盾となり、攻撃の起点を作る動きを徹底的に体に叩き込んだ。
ラビィは、その天性の俊敏性と跳躍力、そして優れた聴力を融合させた、独自の弓術スタイルを追求した。遠距離から敵の弱点を正確に射抜く精密射撃はもちろん、アクロバティックな動きで敵の攻撃を回避しながら矢を放つ「跳躍射撃」、さらには複数の矢を同時につがえ、広範囲を制圧する技まで編み出し始めていた。彼女の放つ矢は、空を舞うように敵を捉える。
ドラゴは、その小さな体に秘められた竜人族のパワーを、巨大な両手斧に乗せることに集中した。最初は振り回すことすら困難だった斧を、日々の過酷な筋力トレーニングによって、徐々に扱えるようになっていく。彼は、斧の重さを利用した遠心力で破壊力を増す回転斬りや、地面を叩きつけて衝撃波を生む技など、豪快でパワフルな戦い方を身につけつつあった。さらに、デュークの助言を受け、自身の持つ炎の力を斧の刃に纏わせ、燃え盛る一撃を放つ「竜炎撃」の開発にも取り組んでいた。
三者三様の努力が実を結び、彼らの実力は目に見えて向上していった。連携訓練での動きも、以前とは比べ物にならないほどスムーズになっている。
そんなある日、訓練を終えたデュークは、汗だくで息を切らす三人を前に、満足げな、それでいて厳しい表情で告げた。
「よし。武器の扱いはまだまだ粗削りだが、一通りの基礎は身につき、自分の戦い方というものが、最低限の形にはなってきたようだな」
その言葉には、以前のような「レベルが低い」という響きはなく、確かな成長を認めている響きがあった。
「はい! デューク教官、ありがとうございます!」
リューネは、喜びを隠せない様子で、ぱっと顔を輝かせた。
ラビィとドラゴも、互いに顔を見合わせ、安堵と達成感の笑顔をこぼした。厳しい訓練が報われた瞬間だった。
「ならば、次の実践任務だ」デュークは続けた。「今日は、貴様ら三人で、街の南地区に出没しているゴブリンと、その周辺に巣食っている大型の毒蜘蛛の掃討に行ってもらう」
「えっ!? 掃討、ですか?」リューネは驚いて聞き返した。ただの討伐依頼ではなく、「掃討」。それは、指定されたエリアのモンスターを殲滅する、より広範囲で危険度の高い任務を意味する。
「ボクたちだけで……? ゴブリンだけじゃなくて、毒蜘蛛も……?」ラビィも不安そうに呟いた。ジャイアントスパイダーは、強力な毒と素早い動きを持つ厄介なモンスターだ。
そんな二人とは対照的に、ドラゴは目を輝かせ、鼻息を荒くした。
「掃討! 面白そうだダゴ! オレの斧と炎で、みんなやっつけてやるダゴ!」
彼の小さな体には、有り余る闘志が満ち溢れている。
「そうだ。お前たちだけで行ってもらう」デュークは、リューネとラビィの不安を見透かした上で、力強い言葉で続けた。「これはテストでもある。今まで学んだこと――個々の戦闘技術、連携、状況判断、全てを生かして任務を達成してみせろ。いいな?」
その言葉に、二人の不安は覚悟へと変わった。デュークは、自分たちがこの任務をこなせると判断してくれたのだ。その期待に応えなければならない。
「「「はいっ!!」」」
三人は声を揃え、力強く返事をした。
デュークから任務の詳細な内容と地図を受け取り、三人はそれぞれの得物を手に取った。リューネは輝きを取り戻した剣と盾を、ラビィは愛用の弓と矢筒を、ドラゴはまだ少し重そうにしながらも両手斧を肩に担ぐ。
覚悟を決めた三人のガーディアン見習いは、ギルドの仲間たちの激励(と少しの心配)の視線を受けながら、アルトゥンの南門へと向かう。彼らの新たな挑戦が、今、始まろうとしていた。




