ep 13
厳しい訓練の日々は続き、季節はまた巡った。リューネとラビィ、そしてドラゴの三人は、デュークの指導の下、着実に力をつけていた。
リューネは、持ち前の真面目さと粘り強さで棒術の基礎を完全にマスターし、防御技術とカウンターは同期の中でも群を抜いていた。体力も当初とは比べ物にならないほど向上している。
ラビィは、ウサミミ族特有の俊敏性と高い聴力を活かした動きに磨きをかけ、棒術においてもトリッキーな攻撃で相手を翻弄するようになっていた。
ドラゴは、竜人族としての圧倒的な身体能力と成長速度で、棒術も体力訓練も難なくこなし、時にはリューネやラビィを驚かせるほどの力を見せることもあった。
そんなある日の訓練後、デュークは汗を流す三人を集めて言った。
「よし、貴様らもようやく形になってきたな。棒術と基礎体力は、ツリーランクとしては及第点だ。そろそろ次のステップに進む」
三人は顔を見合わせ、期待に胸を高鳴らせた。
「これからは、貴様らそれぞれの適性や特性に合った得物(武器)を選び、それを専門に鍛えていく」デュークは訓練場の壁際に並ぶ武器庫を指さした。「棒術は全ての基本だが、それだけでは乗り越えられない壁がある。自分の力を最大限に引き出す武器を見つけ、それを使いこなせるようになって初めて、ガーディアンとして独り立ちできる」
「私たちに合った武器……ですか?」リューネが代表して尋ねる。
「そうだ。これから貴様らに合う装備を決めてもらう。……まあ、最終的に決めるのは貴様ら自身だがな」
ラビィは興奮でうさ耳をぴくぴくさせている。「ゾクゾクするね!」
ドラゴも目を輝かせている。「面白いダゴ!」
デュークは武器庫から、様々な種類の武器を運び出し、訓練場の中央に並べていった。
そこには、鈍い輝きを放つロングソード、軽やかなショートソード、重厚なウォーハンマー、鋭い穂先を持つスピア、巨大なバトルアックス、流線形の狩人の弓、隠密行動に適したダガー、そして魔力を秘めていそうなスタッフ(杖)まで、多種多様な武器がずらりと並んでいた。それぞれが異なる材質で作られ、形状も様々で、まるで武器の見本市のようだ。
「さあ、触ってみろ。そして、自分で選べ」
デュークの言葉に促され、リューネ、ラビィ、ドラゴは、目の前に並べられた武器の数々に、興奮を隠せない様子で歩み寄った。
「うわぁ……どれにしようかな……」
リューネは、まず均整の取れたフォルムを持つ、細身の剣と、それに合う大きさの円形の盾に目を奪われた。片手で持ち上げてみると、重すぎず軽すぎず、しっくりと手に馴染む気がする。守りながら、的確に反撃する。そんな戦い方が自分には合っているのかもしれない。
「この形、カッコいい! 遠くからでも攻撃できるんだよね!」
ラビィは迷わず弓を手に取っていた。彼女の俊敏な動きと跳躍力、そして優れた視力と聴力を活かすには、遠距離から敵を射抜く弓が最適だと感じたのだろう。実際に構えて弦を軽く引いてみると、そのしなやかな反発力に胸が高鳴る。
一方、ドラゴはというと……。
「うおお! これ、強そうだダゴ!」
彼は、並べられた武器の中でもひときわ大きく、威圧感を放つ両手斧に興味を示した。しかし、いざ持ち上げようとすると、その重さに彼の小さな体はよろめき、持ち上げることすらできない。
「うーん……重いダゴ……でも、カッコいいダゴ……」
彼は諦めきれない様子で、巨大な斧を見上げている。
三人は、それぞれの武器を手に取り、重さやバランス、振り心地などを確かめていく。時には「リューネにはそっちの剣の方が似合うかも?」「ラビィ、その弓、すごく似合ってる!」と互いに意見を交換し、時には「デューク教官、この斧、どうしたら持てるようになるダゴ?」とデュークにアドバイスを求めた。(デュークは「力が足りん。だが、どうしても使いたいなら、まずはそれに見合う筋力をつけろ」とだけ答えた)
真剣な武器選びの末、ついに三人は、それぞれの相棒となる武器を決めた。
リューネは、迷った末に、最初に惹かれた細身の剣と片手盾を選んだ。攻守のバランスが良く、堅実に戦う自分のスタイルに合っていると感じたからだ。
ラビィは、やはり弓と矢を選んだ。空を舞うように戦い、仲間を遠距離から援護する。そんなガーディアンになりたいと思った。
そしてドラゴは、驚くべきことに、まだ持ち上げることさえ満足にできない巨大な両手斧を選んだ。理由は「一番強そうでカッコよかったから」という単純なものだったが、その瞳には、いつか必ずこの斧を使いこなしてみせる、という強い意志が宿っていた。デュークも、彼の選択を止めはしなかった。
「よし、決まった!」
リューネは、剣を抜き放ち、盾を構え、力強く宣言した。
「これから、この剣と盾と共に、必ず一人前のガーディアンになってみせる!」
「ボクは、この弓で、みんなを守れるガーディアンになる!」
ラビィも弓を構え、凛とした声で言った。
「オレは、この斧で、誰よりも強くなるダゴ!」
ドラゴは、まだ少しふらつきながらも、両手斧をなんとか地面に立て、胸を張って叫んだ。
それぞれの武器を手に、三人の瞳には新たな目標への決意が燃えていた。ガーディアンとしての本格的な道が、今、ここから始まろうとしていた。




