ep 10
デュークとの模擬戦で一流ガーディアンの実力を目の当たりにしてから、リューネとラビィの訓練には、以前にも増して熱が入っていた。明確な目標ができたことで、厳しい鍛錬にもより一層力が入る。そんな日々がまた幾日か過ぎた頃、クレッセントワルツに新たな風が吹き込んだ。
期待の新人が入隊したのだ。
彼の名はドラゴ。特筆すべきは、彼が希少な竜人族であり、しかもまだ幼い少年であるということだった。竜人族といえば、その強靭な肉体と戦闘能力で知られる誇り高き種族。その子供が、しかもこの新興ギルドであるクレッセントワルツを選んで入隊してきたことに、ギルドの面々は驚き、そして色めき立った。将来有望な、とんでもない戦力が加わった、と誰もが期待を寄せたのだ。
ドラゴは、その期待に応えるかのように、ツリーランクの見習いとして訓練を開始すると、すぐに頭角を現し始めた。竜人族特有の高い身体能力と闘争本能、そして子供らしい吸収力の高さで、デュークが課す基礎訓練を驚くべき速さで習得し、メキメキと実力を上げていった。
そんなある日の訓練後、デュークはリューネとラビィを呼び止めた。
「よし、リューネ、ラビィ。お前たちもツリーランクを抜ける日が見えてきたところだ。そろそろ後輩の面倒を見る経験も積んでおけ」
デュークは、訓練場で一人黙々と木の棒を振るっているドラゴを顎で示した。
「今日から、お前たちが先輩として、あいつ、ドラゴの面倒を見てやれ。訓練の補助や、ギルドでの基本的なルールを教えるんだ。いいな?」
「「えっ!? 私たちが、ドラゴくんの……!?」」
二人は驚いて顔を見合わせた。自分たちが先輩として、あの才能あふれる竜人族の少年の面倒を見る? 少し不安もあったが、同時に、デュークに認められたような気がして、誇らしい気持ちも湧き上がってきた。
「は、はいっ!」
「分かりました!」
二人は背筋を伸ばし、元気よく返事をした。
デュークに促され、二人は少し緊張しながらドラゴの元へ歩み寄った。ドラゴは訓練に集中していたのか、二人が近づくまで気づかなかったようだ。
「あの……ドラゴくん、だよね?」リューネが代表して、笑顔で話しかけた。「私、リューネ。今日から、あなたの訓練の補助とかをすることになったの。よろしくね」
「ボクはラビィ! リューネと同じく先輩だよ! ま、ボクの方がちょっとだけ先輩だけどね! よろしくな、ドラゴ!」
ラビィもにこやかに、そして少しお姉さんぶるように(実際は同ランクだが)付け加えて自己紹介した。
ドラゴは、二人をくりくりとした大きな目で見上げると、ニカッと歯を見せて笑った。その口元からは、竜人族らしく鋭い犬歯が覗いている。
「リューネおねーちゃん! ラビィおねーちゃん! よろしくダゴ! ボク、ドラゴ! いっぱい教えてほしいダゴ!」
彼は、その見た目のいかつさ(鱗や小さな角など)とは裏腹に、元気いっぱいで人懐っこい少年だった。語尾に「ダゴ」とつけるのが口癖らしい。
こうして、リューネとラビィは、少し風変わりな後輩、竜人族のドラゴの面倒を見ることになった。才能豊かな後輩の存在は、二人にとっても大きな刺激となり、クレッセントワルツでの彼女たちの日常は、さらに賑やかで、そして新たな段階へと進んでいくことになるのだった。




