ep 9
訓練場には、激しい模擬戦が終わった後の、独特の静けさが漂っていた。床に突き刺さったダインの訓練用大剣が、戦いの激しさを物語っている。リューネとラビィは、未だデュークの圧倒的な強さの余韻に浸り、呆然と立ち尽くしていた。
息を整えたダインが、悔しさを滲ませながらもどこか清々しい表情で自身の剣を拾い上げると、ふと、訓練場の隅で見学していた二人に気づいた。
「おっと、やぁ。この前会ったリューネちゃんとラビィちゃんじゃないか。見てたのかい?」彼は少し照れたように苦笑いを浮かべた。「はは、二人にはちょっとカッコ悪い所を見せちゃったかな?」
模擬戦では負けてしまったものの、その態度はカラリとしており、強者の余裕を感じさせる。
「い、いえ! そんなことありません!」リューネは慌てて首を横に振った。「とってもカッコよくて、本当に、すごい戦いでした! 目が追いつかないくらい……!」
彼女はまだ興奮冷めやらぬ様子で、目をキラキラと輝かせながら言った。
「うんうん! デューク教官もダインさんも、すっごく強かった!」
ラビィも大きく頷き、長い耳をぱたぱたとさせた。
「はは、そう言ってもらえると嬉しいけどな」ダインは二人の素直な反応に気を良くした様子で笑い、ちらりと厳しい表情に戻っているデュークの背中を見た。「まあ、デュークさんは別格だよ。あの人は、めちゃくちゃ強くて、訓練も厳しいけど……本当は、すごく面倒見が良くて優しい人なんだ。困ったことがあったら、遠慮せずに頼るといい。これからも、しっかりついていくんだぞ」
その言葉には、デュークへの深い敬意と信頼がこもっていた。
「おいダイン。下らないことをグダグダ言ってないで、さっさと現場に戻れ。お前にはまだやるべきことがあるだろう」
背後から、デュークの低く、ぶっきらぼうな声が飛んできた。ダインの言葉が聞こえていたのか、あるいは照れ隠しなのか、その表情は読めない。
「おっと、これは失礼しました」ダインは肩をすくめると、デュークに向き直り、軽く頭を下げた。「ではデュークさん、今日はありがとうございました。また近いうちにお願いします」
そして、リューネとラビィに向き直り、「じゃあな、二人とも! 期待してるぜ!」と力強くウィンクすると、ひらりと手を振って訓練場を後にした。その背中は、敗北の影など微塵も感じさせない、頼もしい先輩ガーディアンのものだった。
「……」
「……」
リューネとラビィも、憧れの先輩に手を振り返し、その姿が見えなくなるまで見送った。
ダインが去り、訓練場に再びデュークと二人だけになると、途端に空気が引き締まる。
「……何をしている。見惚れている暇があるなら、さっさと鍛錬追加だ」
デュークは厳しい視線を二人に向けた。「今の戦いを見て分かっただろう。お前たちのレベルは、まだまだ低すぎる。強くなりたければ、人一倍努力するしかないんだ。さあ、棒を構えろ!」
その言葉は厳しかったが、先ほどのダインの言葉もあり、二人にはデュークなりの叱咤激励のように聞こえた。一流の戦いを目の当たりにし、目標がより明確になった今、彼女たちの心には、新たな決意の炎が灯っていた。
「「はいっ!!」」
リューネとラビィは、顔を見合わせ、力強く返事をすると、再び木の棒を握りしめ、デュークの指導の下、厳しい訓練に身を投じていくのだった。




