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ガーディアン  作者: 月神世一
ガーディアン入隊

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38/85

ep 5

あの日、クレッセントワルツの門を叩いてから、季節は何度か移ろいだ。リューネのガーディアンとしての訓練は、想像以上に過酷なものだった。

指導官デュークの下、彼女は文字通り朝から晩まで、徹底的に基礎を叩き込まれた。

早朝、まだ薄暗いうちから始まる走り込みと筋力トレーニング。午前は、重い訓練用の木の棒が手に馴染むまで、来る日も来る日も素振りと型稽古を繰り返す棒術訓練。午後は、モンスターの生態や弱点、有効な戦術、罠の設置方法などを学ぶ座学と、それを模擬戦で実践する戦略訓練。夜は、疲れ切った体で、借りた戦術書を読みふけり、眠りに落ちる……。そんな毎日が、数ヶ月間続いた。

最初は、重い棒を振るだけで腕が痺れ、走り込みではすぐに息が切れ、座学の内容もちんぷんかんぷんだった。何度も心が折れそうになり、故郷に帰りたいと思ったことも一度や二度ではない。

しかし、リューネは諦めなかった。生活のため、そして、自分を受け入れてくれたこの場所で、少しでも役に立ちたいという思いが彼女を支えた。デュークの指導は厳しかったが、的確で、決して見捨てることはなかった。リューネの僅かな成長も見逃さず、時には厳しい言葉の中に、不器用な励ましが込められているのを感じることもあった。

そして、そんな厳しい訓練の日々の中で、リューネには心強い友人ができていた。

ウサミミ族の少女、ラビィ。

リューネより少しだけ先に入隊していた彼女は、ぴょこぴょこと動く長い耳と、くりくりとした大きな瞳が愛らしい、太陽のように明るく元気な女の子だった。人見知りしがちなリューネにも屈託なく話しかけ、訓練で落ち込んでいる時には持ち前の明るさで励ましてくれた。ラビィもまた、高い聴力を活かした偵察能力を期待されてはいるものの、戦闘能力にはまだ課題があり、リューネと同じように厳しい訓練に励んでいた。

「リューネ! 今日のデューク教官、いつもより厳しくなかった!?」

「ラビィこそ、あの速さで走り込みできるなんてすごいよ……私、もうヘトヘト……」

「大丈夫だって! 明日はきっと今日より動けるようになるよ!」

二人はお互いの得意なこと、苦手なことを補い合い、励まし合い、時には一緒に愚痴をこぼしながら、厳しい訓練を乗り越えていった。リューネにとって、ラビィの存在は、暗いトンネルの中に差し込む光のようなものだった。

そして、季節が再び巡り、リューネの棒を振る音が、以前とは比べ物にならないほど鋭くなったある日のこと。

訓練を終えたデュークが、汗だくの二人を呼び止めた。

「……ふぅ。まあ、ガーディアンとして最低限、自分の身を守り、指示を理解して動くくらいの事はできるようになった、か」

彼は腕を組み、満足げに、しかしどこかまだ物足りなさそうな顔で呟いた。

「お前たちに、最初の実践訓練を与える」

「「実践訓練!?」」

リューネとラビィは、驚いて顔を見合わせた。

「ああ。これからは座学や訓練場での稽古だけじゃない。実際に外に出て、モンスターと対峙してもらう」デュークは真剣な眼差しで二人を見た。「最初の任務は、街の西の森に出没しているスライムの討伐だ」

スライム――ガーディアンにとっては最も基本的な討伐対象の一つ。しかし、二人にとっては初めて経験する、本物のモンスターとの戦いだ。

「つ、ついに……!」ラビィは緊張と興奮で、その長い耳をぴくぴくと震わせている。

「私たちが……モンスターを……」リューネも、期待と不安で胸が高鳴るのを感じていた。

「いいか、スライムだからと油断するな。数が多いと厄介だ。必ず二人で連携し、立てた作戦通りに動け。何かあれば、無理せずすぐに引き返せ。……分かったな?」

デュークは念を押すように言った。

「「はいっ!」」

二人は力強く返事をした。

その夜、リューネとラビィは、なけなしの知識を総動員して、スライム退治の作戦を練った。リューネが学んだ戦術に基づき、ラビィの聴力を活かして索敵し、挟み撃ちにする計画だ。翌朝、二人はギルドで支給された簡素な革鎧と、訓練用ではない、少しだけしっかりした木の棒(まだ刃物は許可されなかった)を手に、緊張した面持ちでアルトゥンの西門をくぐった。

初めての、二人だけの課外訓練。期待と不安を胸に、彼女たちは緑深い森へと足を踏み入れる。

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