ep 10
再会と新たな脅威
グオオォォォ……ンン……
坑道の奥から響く不気味な唸り声。それは湿った土の中で何かが蠢くような、粘つくような音だった。壁の松明の炎が、音の振動で揺らめいている。
「ちくしょう、やっぱり奥にもまだ居やがったか!」ツーリはつるはしを握りしめ、緊張した面持ちで坑道の奥を睨みつけた。
ダダは、その唸り声と、坑道内に漂い始めた独特の土臭い匂いに、眉をひそめた。
「……この感じ、またワームだ……」
彼は冷静に、しかし警戒を込めて呟いた。以前、どこかで遭遇したことがあるのだろうか、その口ぶりは敵の正体を確信しているようだった。
次の瞬間、坑道の奥の暗闇から、巨大なミミズのような生物が、鎌首をもたげるように姿を現した! 全長は5メートル近くありそうだ。ぬらぬらと粘液に覆われた灰色の体表を持ち、先端には鋭い牙が並んだ円形の口がパックリと開いている。それが坑道内を掘り進んできた巨大ワームだった。しかも、その後ろには、さらに数体のワームの影が蠢いているのが見える。
「ヒィッ!」鉱夫の一人が短い悲鳴を上げた。
ワームは獲物(人間たち)を認識すると、甲高い威嚇音を発しながら、その巨体をくねらせて迫ってきた!
「リーフ、パパの後ろに!」ツーリは娘を庇うように前に立ち、つるはしを構える。他の鉱夫たちも覚悟を決めたように武器を構えるが、その顔には絶望の色が濃い。
しかし、ダダは冷静だった。彼はワームが効果的な攻撃範囲に入るのを待ち、大きく息を吸い込むと――
「キーーーーーーーッ!!」
人間の耳にはただ甲高く不快な、しかし突き抜けるような高周波の音を発した! その音は坑道の壁に反響し、まるで空間そのものが震えるようだ。
「!?」
その異常な音波に、突進してきたワームは明らかに動揺した。その巨体がびくりと痙攣し、苦しむように動きを止める。音に非常に敏感なのか、あるいは神経系に直接作用する音なのか、ワームはその場でのたうち回り始めた。
「よし、効いた!」
ダダはその隙を見逃さない。
「よいしょっと」
彼は近くに転がっていた、子供の頭ほどの大きさの岩を、まるで小石でも拾うかのように軽々と持ち上げた!
そして、動きが鈍っている先頭のワームに向かって、その岩を正確に投げつけた!
「グギャーーーッ!!」
岩はワームの頭部(らしき部分)に直撃し、鈍い破壊音と共に粘液と体液を飛散させた! ワームは断末魔の叫びを上げ、巨体を激しくくねらせた後、ぐったりと動かなくなった。
「なっ……!?」
ツーリをはじめ、鉱夫たちは目の前で起こった出来事に唖然としていた。あの巨大なワームを、少年が奇妙な音と岩投げだけで、いとも簡単に仕留めてしまったのだ。
「すごーい! ダダさん、すごい!」
リーフは瞳を輝かせ、父親の背後から飛び出してダダに駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。
「ありがとう、リーフ。でも、まだだよ」ダダはリーフの頭を優しく撫でると、坑道の奥を指さした。「まだ何匹か残ってるみたいだから、僕はそいつらを退治してくる。リーフは、怪我してる人がいたら手当てをお願いできるかな?」
「! はいっ! わかりました!」
リーフは力強く頷くと、すぐに怪我をしている鉱夫(ワームに襲われたのか、あるいは落盤などで負傷したのか)の元へ駆け寄っていった。
ダダは再び坑道の奥へと足を踏み入れ、残りのワームを探し始めた。彼の発する高周波と、的確な攻撃(時には岩を投げ、時には素早い打撃で)により、残っていた数体のワームも、ほどなくして全て掃討された。
「……よし、これで全部かな」
ダダはワームの気配が完全に消えたことを確認すると、怪我をして動けない鉱夫たちを一人ずつ肩に担ぎ、あるいは背負って、ツーリたちが待つ場所まで運び始めた。その小さな体躯からは想像もつかない力だ。
全ての怪我人が運び出され、坑道に一時的な安全が訪れた。ツーリは、娘の手当てを受けながら、信じられないものを見るような目で、黙々と作業をするダダを見つめていた。
「……リーフよ。お前をここまで連れてきたという、その子は一体……?」
ツーリはようやく言葉を発し、娘に尋ねた。
「この方はダダさんだよ!」リーフは誇らしげに、そして少し照れたように答えた。「『ガーディアン:クレッセントワルツ』のガーディアンの方なの!」
「なんと……この子が……ガーディアン……」
ツーリは改めてダダを見た。まだ少年と言っていい年齢。しかし、その身のこなし、冷静な判断力、そして人間離れした能力と強さ。先ほどの戦闘を思い返し、ツーリはゴクリと唾を飲んだ。これが、街を守るというガーディアンの力なのか、と。彼は畏敬の念を込めて、目の前の小さなガーディアンを見つめるのだった。




