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22 ルミティ 旦那様に内緒のお買い物

 はじめてのキスのあと、顔を真っ赤にしたルミティはそそくさと自室へ戻った。


(まだ唇が熱いわ)


 自室のソファーに座って、クッションを抱きしめる。記憶を反芻するのも恥ずかしいくらい、まだ心臓がドキドキとしていた。ルミティは改めて結婚というものに向き合うことになったし、それがとても嬉しいとも思っていた。


「奥様! 外商様がご到着されました。お入りしても?」

「ルナ、貴女学校はどうしたの?」

「今日は、奥様の特別なお買い物なのです。お世話係のルナにとってもです」

「何を言っているのかわからないわ。それに、外商さんとやりとりをするのはヴェルズが帰ってきてからでしょう?」

「奥様、今夜はこの屋敷に旦那様もお帰りになるのです。実質的な初夜となるのですよ。それにはたくさんの準備が必要ですし、その準備を乙女として男性に見られるのはあまりスマートではありません。ささ、ジョエンヌ様。こちらへ」


 ルナがドアを開けるとジョエンヌとその取り巻きの女性たちが数人ルミティの自室へと入ってきた。ジョエンヌの取り巻きの女性たちはそれぞれ大きな荷物を抱えている。

「さ、女の子だけですから安心してくださいね。奥様」


 ジョエンヌが大きなバッグから取り出したのはランジェリーだった。白・桃色・赤からセクシーな紫や黒。色だけではなく形や素材もさまざまだ。着心地の良さそうなシルク製のものからレースのみで作られたまるで意味をなさないような下着まで……。


「まずは、大人気のお肌着から。殿方の反応も良く奥様の肌色でしたらとても似合うかと」


 そういってジョエンヌが取り出したのは赤色の紐のような下着だった。布の面積が少なく、どうやって着るのかすら怪しいような下着。


「えぇ、こんな卑猥な……」

「奥様。夜の時間は夫婦二人だけの時間なのです。服というのは自分と相手のために選ぶもの。殿方が喜ぶものを選んでみてはいかがですか?」

「ひゃー、こんな肌着初めてみました! けれどジョエンヌ様。奥様は奥ゆかしく清楚なお方。旦那様もそういう慎ましやかな奥様を愛していらっしゃるとしたら、これはいささか過激すぎるかと」


(あぁルナ、ありがとう)


「あらそう。奥様はスタイルが良いからとても似合うと思うのだけれど……確かにこれは初夜には向かないわね。奥様なら水色か桃色かしら。それともネグリジェのような露出の少ないタイプも良いかしらね」


 シルクで作られた水色のネグリジェをルミティの体に当てて、ジョエンヌは首を捻った。


「試着してみましょうか、ルナちゃん」

「奥様、パーテーションの奥でお着替えを。私としては桃色の方が似合うと思いますけれど……」

「ど、どうかしら。普段は寝心地の良いものを使用しているから……」


 ルミティはルナのサポートを受けながら水色のネグリジェセットを身につけた。普段使用している着心地が良いだけの下着とは違って少しだけ窮屈さを感じた。

 けれど、ジョエンヌが少しお直しをしてくれ姿見の前に立ってみると


「綺麗……」

 ルミティは自分の下着姿をみてボソッとつぶやいた。綺麗なドレスを着た時やヘアメイクをしてもらったあとに感じるような高揚感。美しくて少しセクシーな下着を身につけた自分をみているだけなのに、何だか嬉しい気持ちになる。


「ね、奥様。とてもお似合いですよ。足を冷やしてはいけませんからセットでソックスも履いてみてくださいね」


 言われるがままに膝上までのソックスを履いてみると全体に統一感がでる。


「あの、桃色の方も着てみてよいですか?」

「もちろん! 奥様、初夜は慎ましやかなものにするとしても旦那様のお好みを聞いておいてくださいね。夜の夫婦生活というのは『飽き』が一番怖いのです。たまには刺激的なものも……」


 そういってジョエンヌはまた紐みたいな下着を持ち上げる。ルミティはそれを着用している自分を想像して顔を真っ赤にした。


「そ、それは次の機会に……」


 ルミティの返答にジョエンヌは肩を落としたがすぐに切り替えて


「では、下着以外にも色々とご紹介しましょうか。まずはアロマキャンドル。それからルナちゃん。奥様にスペシャルな日用のヘアケア・スキンケアのセットをご提案したいのだけれど今使っているものを教えてくださる? それから色移りがしにくい魔法のルージュでしょう? お寝巻きも可愛らしいものがいいかしら! 奥様の記念すべき初夜なのですからとびっきり綺麗で可愛くしなくちゃね!」


 その後、ルミティは昼食までの間、ジョエンヌとルナと共にさまざまな買い物をすることになった。最初は緊張していた彼女だったが、女の子同士で楽しく買い物をする楽しさを知り、後半では笑顔も増えていった。


(みんな、私の初夜を喜んでくれているんだわ。不思議……)


「二人とも、ありがとう」

「何をおっしゃっているんですか。奥様はこれからこの場所でたくさんの素敵な時間を過ごすのですよ。初夜だけでなく、お互いのお誕生日や結婚記念日。その度。美しい奥様をみてみな喜ぶのす。奥様は旦那様だけではなく、皆に愛されているのです。あれ、そういえば、この前いらしてた騎士様は?」


 ジョエンヌの質問にルナが誤魔化すように


「彼は婚約が決まったことを機に任を解かれたのです。今後は重大な任務を終えた旦那様がこの屋敷で奥様と共に……」


 と誤魔化した。ルミティはルナに視線で礼を伝え、やっと普段着に着替えるとソファーに腰掛けて一息ついた。


「さ、奥様。それではお昼食のあと旦那様がお帰りになったらまた参りますね。ルナちゃん、お買い上げいただいた商品の新品はこちらに」

「はい、ジョエンヌ様。部屋の外のものが玄関までお送りいたします」


「あの……二人とも、ありがとう」


 ルミティはもう一度二人に礼を言うと、もう一度姿身に映った自分をみてにっこりと微笑んだ。



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