1話 初心
「あはは…じゃあ私はこれで…」
そう言って私は報酬を受け取り、ギルドを後にした。
私の名前はパックス、どこにでもいる平凡な冒険者だ。
英雄にあこがれ、立派な冒険者になると意気込んで故郷を飛び出して来たはいいものの、剣、弓、斧、拳など、あれこれ手を出しては挫折してを繰り返して早半年、すべて中途半端な冒険者になってしまった。
今日だって食費がちょっと怪しい。
「こんなはずじゃなかったのになぁ…」
そんな独り言を言いながら宿へ向かっていると、道に変なものが転がっていることに気付く。
もう空が暗くなってきているのでよく見えないが、それは黒い布の塊のようなものである。
多少汚れてはいるものの、高級品であることがわかる。
「高く売れるかな?」
そういいながら布を持ち上げようとすると、突然それは動き出し…
「売らないでくださいっ…」
なんとただの布ではなく、ローブを身にまとっている少女だったのだ。
癖毛の黒髪で小柄、顔は正直私よりかわいい。
この人はこんなところで一体何をしているのだろうか?
「ここで何してるの?」
「………ません」
「え?」
「もう歩けません…」
「え?」
「実は私…」
おどおどしながらも話してくれた。
どうやら、この娘は貴族で、一人で魔術の探求をしているらしい、しかし経験不足で物資が尽きてしまい途方に暮れ道に倒れていたらしい。
「あら、貴族様でしたか!ご無礼を…」
「あっ…ため語で大丈夫です…」
「そう、助かるわ。ところでよければ今日宿貸すわよ?」
私は彼女に提案した。
これは善意で言ってるわけじゃなく、彼女を助ければ家族などから報酬がもらえるかもしれないと思ったからだ。
利用するようで申し訳ないが生活がかかっているのだ。
許せ。
「いいんですか…?」
「いいよ、困っているみたいだし。」
「ありがとうございます…!あっ、私、ネイト=サピエンティアっていいます!」
「私はパックスよ、よろしくね。」
初投稿です。通してください。
読んでくださりありがとうございました。今後も作品を不定期で投稿していく予定です。