使者
ある日、一隻の小型宇宙船が地上に着陸。政府関係者が出迎えに集まった。
動きを事前にレーダーで捕捉していたのだ。だが、初の宇宙人との対面に全員、緊張した様子。
地に降り、ほのかに白煙が上がる宇宙船を前に一同、硬くなり待つこと数分。宇宙船のハッチが開き、中から出てきたのは……
「どうモ、みなさン、こんにチワ」
「あ、あ、ど、どうも……」
「着陸前に、この惑星をぐるりト一周し、勝手ながら情報収集しテいました。申し訳なイ。しかし、翻訳機を使用するたメには仕方がなかっタのです。お許しを」
「あ、そ、それは、ええと、あ、ありがとうございますです……」
「それデ、でして、あアヴァ」
「ひっ、ど、どうされましたか?」
「アババババババアアアアア! あ、あ、あっト失礼。溶液が変なところに入っテしまったようで、むダイジョウブでス」
「ひあ、あ、あは、それは、ようございましたぁ……」
と、このようにどこか恐る恐るな受け答えがしばらく続いたが、ガヤガヤと野次馬が現れ始めたことに加え、急なことなので今回の交流は一先ずここまでとし、また日を改めてということで宇宙船はまた空に向かって飛び立った。
「……いや、あの、大臣。しかし、手ぶらで帰して良かったんですか? 場所を移すとかもなしに、せっかくフレンドリーというか、向こうから星同士の交流を申し出てくれたのに、こっちの態度が冷たいせいで彼、心なしかガッカリしているように見えましたよ」
「……君だって後ろの方で震えていたくせに、よく言えるね」
「うっ、だって仕方ないじゃないですか……あんな……」
「そういうことだよ」
「そういうことって、でもあれ、ロボットでしたよね? 考える時間が必要でしょうからって帰って行きましたし、あれの主である宇宙人もきっと心優しくて」
「ふぅー、君ね。我々もロボット開発は行っているよね?」
「え、はい。そりゃもう。技術は彼らほどではないにしても」
「どんなロボットだ?」
「え、どんなって普通の……」
「普通のって?」
「え、だから二足歩行で、私たちに似せた」
「それだよ。どの星もロボットを作るとなれば既存の物を参考に作るだろう? しかも、他の星に使者として送るんだ。当然、あれは自分たちに似せたロボットに違いない」
「つ、つまり、あ、あの恐ろしい、触手のような物に、手も、足もたくさん、それに目というかカメラもあんな、集合体のような、う、おえっ」
「そ、そ、そうだよ、ああ、思い出すとまた漏らしそうだ……なんて、なんて恐ろしい。関わらない方がいい。きっと、招き入れたらとんでもないことになるぞ……大繁殖……暴動……乗っ取り……」
「ひぃぃぃぃぃ……」
一方、そのロボットを送り込んだ者たちはというと……。
「まただ。N-886D4から映像が送られてきたが、またそっけない態度をとられ、さよならだ」
「きっと緊張していたのだろう。なにせ向こうからしたら急なことだからな」
「事が事だからな。宇宙生命体との交流は慎重を期すようにと、世界会議での決定事項ではあるが、もう少し強引に行ってもよかったんじゃないか? 茶の一つも、まあロボットは飲まないが出してくれないじゃないか」
「仕方ないさ。文明レベルが高いこちらが受け身で行かないと後々、脅されたとか不平等だとか実質、侵略だとか言われたら結局損をするからな」
「この星の歴史を鑑みて、か。もどかしいなぁ」
「まずは挨拶回り。第一印象は良かったと信じてじっくりやろう」
「はぁーあ、あれかな、もっとロボットを可愛らしいものにしたらどうだ?」
「はははっ! そりゃいいが宇宙船の操作、メンテナンスがあるからなぁ。技術力がもっとあればな」
「はぁーあ。ロボットの見た目を、まさに我らの星。長年、子供に大人気のあの猫型ロボットにしたら、すぐ仲良くなれるだろうになぁ……」