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フレー

道標の星

作者: 日浦海里

見上げていれば

いつかそこに届くもんだって思ってた


見続けていれば

いつかそこに辿り着けるって思ってた


目指すべき(しるべ)

目標ってそういうもんだって思ってた


まっすぐそこを目指して進む

道は険しくて当たり前

努力をするのも当たり前


目を逸らすことなく進んでいれば

いつかは辿り着けるもの


それが目標

それが(しるべ)


けれどそれだけじゃ足りなかった

険しい道は踏破するだけ

力の不足は補ってくだけ


重ねて重ねて

幾重に重ねて

積み上げていけばそこに星がある

最後は必ず掴んでみせる


そういうものじゃなかったのか

目標は

(しるべ)ってやつは


そういうものじゃなかったんだ

おれの目指したその星は


その場で光り輝き続ける

夜空の星なんかではなかった


いいや、違った

それは確かに星だった


この世にたった一つだけの星

唯一無二の輝ける星


それを(しるべ)と歩んでいたのは

俺一人ではなかっただけだ


星は流れて消えてしまった

誰かの夢を叶えて消えた


(しるべ)を持たずに夜空を漂う

寄る辺を失くしたデブリになった




見回した先にある星々は

どれも唯一無二なのに


見回した先の光る星々は

どれも十把一絡げに見え


引き際の(しるべ)

引導すらも渡されぬままに漂っていた


振り返ることすら怖くて出来ず

自ら道を下りることもなく

怠惰にその身を任せ揺られて


現実を見ずに漂っていれば

いつかは終わりがくるだろうと


それが末路

この道の末


けれどそれじゃ足りなかった

この道を下りる度胸も持てず

新たな標を探す覚悟も持てず


悔いて悔いて

幾重に悔いて

墜ちずにいたのはそこに星がある

流れ落ち消えた(しるべ)の残光


目指した星の末路は目にした

目標だった

(しるべ)ってやつの


確かにそこで終わりだったんだ

おれの目指したその星は


変わらずいつまでも輝き続ける

永遠の星なんかではなかった


当たり前だった

それは確かに(しるべ)だった


この世にたった一つだけの星

唯一無二の輝ける星


それを(しるべ)と歩んでいたのは

それを終わりと見据えてたからだ


星は流れて消えてしまった

誰かの夢を叶えて消えた


だから俺は終わらなかった

星と共に流れて消えず


(しるべ)を持たずに夜空を漂う

寄る辺を失くしたデブリになった




星は流れて消えてしまった

光を一筋残して消えた


だから俺は終われなかった

光の先の夢だけは消えず


(しるべ)を目にして夜空を漂う

寄る辺を持たない旅人になった




見上げることはもうやめた

見続けることももうやめた


目にした先には星はない

先にあるのは無間の暗闇


歩むべき(しるべ)

唯一無二は誰も知らないその先に

前人未到、見知らぬ星は

そういうもんだって思ってる

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― 新着の感想 ―
[一言] 心に響く作品でした。 選ばれし者は一握り、それならそれ以外の多くのひと達の努力は無駄なものなのか。決してそんなことはないですよね。 「標を持たずに夜空を漂う/寄る辺を失くしたデブリになった」…
[一言]  輝く星が恒星なれば光失う折の周辺宙域には影響が相当あるでしょうから、消えた光に見ていた部分はその星の一片だけだったのでしょうね…★  もしくは辿り着くまでに時間がかかり過ぎていたか…… …
[良い点] 目標を掲げて必死に頑張ってきたそれを、別の人物に持って行かれて目の前から消えた時、自分をどうしていいか呆然自失になるはず……――ところが、目標を掴んでしまったらそれは終わりと。終わりはない…
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