表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/22

(3)目だけど質問ある?

1時間前に前話を投稿しています。そちらを先にお読みください

 数えきれないほど魔眼があるが、そのほとんどは実績解除されておらず、使用できない。

 しばらくは魔眼の力の解明と、この場所のことを知ることに注力することにした。

 魔眼の力は使うと疲労を感じるが、しばらくするとその疲労感も消える。これは自然に回復している=時間さえかければ使い放題と考えたが、有限かもしれないとの異論も出た。

 そこで元研究職を中心に検証を行った結果、キノコの群生……つまり自分の身体を消費して力を使っていることが判った。

 例えば念の魔眼によって念力(サイコキネシス)が使用可能となり大きな岩を持ち上げることに成功したが、キノコの一本がカサカサに干からびてしまった。

 だが、枯れて空いたスペースに新たな胞子が降り注ぎ、新しいキノコが生えだしてきた。そのキノコもまたオレ自身の一部だ。長の魔眼は成長促進の効果もあり、失ったキノコを素早く再生することもできた。

 長の魔眼とキノコ一本分の消費で、キノコ10本を成長、回復させられた。

 だったら力を使い放題かというとそうもいかない。

 これは現在いる場所を調べて判ったことだが、今のオレを形作る栄養が有限であることが判明した。

 まず今いる場所は見たところ出入口はなく、この空間内の栄養は当然有限だ。

 そしてキノコの群生の苗床になっているのは沢山の人間の死体だ。骨の中にまで菌糸が侵入し、髄までカサカサに吸い尽くされ、軽く触れるだけで骨は崩れ落ちていく。身に着けていたであろう化学繊維の服は加水分解されてボロボロになり、その大半が残っていない。そんな物さえもオレは養分にしていた。

 記憶がはっきりしないが、この死体はオレたちなのだろうか?

 そうであろうとなかろうと100人近い人間の死体を養分にしている事実は流石に気分が悪かった。だが、ショックで鬱になるほどでもなく、文字通り、気分が少し悪くなっただけだ。


 私たちの身体だけでなく、心もとっくに化け物なのかもしれませんね


 誰かの言ったそんな言葉には妙に納得がいった。特に『化け物』というフレーズは目玉を持ったキノコに相応しいと思えた。

 そうした調査は別の問題に気付くキッカケとなった。

 現在いる閉ざされた空間内にある栄養になりそうなものは、その大半をオレが既に吸収済みだということだ。

 つまりオレが今使っている力は既に吸収し、ため込んだ栄養を少しづつ切り崩しているのだ。収入がなく貯蓄を切り崩すしかない生活は心を寒くする(内心で何人か元自営業(フリーランス)が悲鳴を上げていた)。

 その為新たに栄養を得る術を探さないと先が無い。つまり出口を探す必要があるのだ。

 タイムリミットがある上、魔眼の力が有限なことが確定したので、まずは新たに胞子を作ることを止めることにした。

 いや、普通止められないんだけど、増の魔眼の力を自分自身に使い、自分を“増やさない”ように制御を加えたのだ。

 それによって胞子を製造するエネルギーを節約し、延命を図る。

 無論、脱出のために魔眼の力は必要になるが、栄養が不足している状況で無暗に数を増やしても意味がない。

 そして、それは一つの副産物を生み出した。それが胞子団子である。

 既に撒かれているが、発芽していない胞子を丸めて固めたものだ。オレ自身を増やす胞子は、それ自体がオレのスペアでもあるが、オレの意識を宿らせるザッピングはできない。しかしオレ自身ではあるため、動の魔眼の力で容易にまとめ上げることができた。

 その胞子団子を魔眼の力を使う際の消費分に充てることができたのだ。

 しかも同じ魔眼を使うのでも、キノコを犠牲にして、枯れたキノコを再び成長、再生させるより、ため込んだ胞子を使い、胞子を再生産する方がトータルで必要なコストが抑えられたのだ。

 これはキノコを成長させることより、胞子を作ることの方がより自然な行為だからだろう。

 胞子団子はぎゅっと固めることで、かなり密度を上げることができる。それで力のストックを作るのと並行して、現在の閉鎖空間を隅々まで調べていく。

 良く見知ったもの……靴の残骸や真っ黒に錆びついたシルバーアクセサリーやわずかに痕跡を残すケータイなどなど。元が何か判らない残骸も多く、巨大な宝石?のようなものまであった。


 魔法使いの杖の先についてるやつ

 そんなまさかw

 本らしき残骸もある。ぜんぶ養分にしちゃってるけどw

 本……読みたい

 活字、活字をお持ちの方はいらっしゃいませんか~

 本を読ませろ~

 夏コミ新刊を所望する

 アニメ、アニメ

 〇〇〇〇の続きを読ませろ~


 ふとしたキッカケでオレの中の人たちが阿鼻叫喚の様相を示した。そんな中、元研究職さんは、オレに指示して黙々と調査を続け、念の魔眼を使って岩に書きつけていく。この空間の地図だ。

 再調査の結果、この場所が閉鎖空間であることが改めて確認された。

 そして本があった辺りの床に、なにか描かれていることも判明した。

 無論その場所もオレの身体(キノコ)が生い茂っていたので、念の魔眼と動の魔眼を併用して、オレの身体を移動させる。

「おお」

 オレは思わず声を上げた(声帯が無いから比喩表現だが)。

 それは見るからに魔法陣というヤツであった。ならば次の手はこれだ。

「鑑の魔眼!」

 魔眼の力で魔法陣を鑑定する。鑑定結果は『魔法陣』。

「って、あほかーい。しっとるわー」

 思わず激昂するが、いや、ちょっとまて、と社畜エンジニアさんが止める。


 魔法陣と確定したのだ、そのことに意味がある。

 つまりどういうことだってばよ

 この世界には魔法がある。

 おおおおおおおおおおおおっ


 周囲 (オレの心中)を圧するどよめきが轟く。


 それに見たところ、この魔法陣には規則性がある。特定の文様で囲まれたブロックとそれを繋ぐ別種の文様の組み合わせだ。

 ! 論理回路か?

 多分。この文様に特定して鑑定。


 鑑定の結果、それらは論理演算を行うためのパーツであることが判った。そして個別に鑑定することで一つ一つのパーツの意味も知れた。


 これは『空間』、『体積』、『質量』。こっちは方向と距離を示す式。

 なにか判るか?

 予想はあるがまだはっきりしていない。もう少し読みとれば……

 転移の魔法陣じゃね?

 ………………………………

 あ、ごめん


 腐女子高生の不用意な言葉に、一つ一つ丁寧に調べ検証していた社畜エンジニアが途端に不機嫌になった。

 彼も彼女も等しくオレだ。彼が不機嫌になった理由……不確かなことは述べない誠実さに基づく仕事の流儀と自負を台無しにされたこと……を正しく理解した女子高生は素直に謝罪し、彼もまたその謝罪が本心からのものであると理解できていた。どちらもオレなのだから。


 お詫びに脱げ。あ、いや待て

 さいってー


 普通ならば口にしないようなことも、内心が一緒だと、全部、駄々漏れになってしまう。

 かくいう彼女も、中年研究職さん×社畜エンジニアさん、とか言ってたわけであまり他人のことは言えない。いや、他人ではないか。


 わたし達、もう他人じゃないから。きゃっ


 アイドルスキーの独身アラフォー女史が何やら妄想を捗らせていた。

 そんなこんなで魔法陣の地道な鑑定の結果、転移魔方陣であることが確定した。

 だがここで重大な問題に直面した。


 この魔法陣だが、使い方も判った

 さっすが社畜エンジニアさん

 特定の呪文を唱えることで起動し、別の場所に転移できる

 ひゅーひゅー、よ、大統領!

 だが、オレ達は使えない

 どういうこと?

 だって、オレ達、キノコだぞ。喋れないじゃないか

 …………………………そうだったぁ!×いっぱい


 心の声で散々大騒ぎしているが、それは全て内心のこと。

 大人しい子が心の中であれこれ考えていても、外から見れば黙っているのと一緒だ。

 そして喋らないと相手……魔法陣には何も伝わらない。


 なんか、疲れた

 うん、期待してただけ余計に

 社畜さん、おつかれさま

 略すならエンジニアの方を残してくれ

 まあまあ

 ちょっと休もうか

 もうゴールしてもいいよね


 はえーよ、と心の中に乾いた笑いが広がった。


 --------------------------------


(おまけ)念の魔眼の実績解除


 動、長、鑑の魔眼に次いで、意識して実績解除できた最初の魔眼。


 みんなして(ぎょう)とか(てん)とか、うるさかったけど、ユ〇・ゲ〇ー世代のおっさんが『念と言ったら念力だろ』と呟いた途端、力を発揮した。

 てっか、〇リ・〇ラーってなんだ? 〇ン〇ラーじゃないのか?

 それはともあれ、このエピソードは魔眼の実績解除のヒントを教えてくれた。

 つまり魔眼が持つ正しい能力を意識しながら使用することで実績解除できると予想されたのだ。

 しかし、試しで魔眼を使う際にも(効力を発揮しなくても)エネルギーを消費するため、乱発はできない。

 特に【強大な邪悪を封じし黒焔の魔眼】を始めとするいくつかの魔眼は、必要なエネルギーが大きすぎて、使おうとした途端悪寒が走るため試すことすらできないでいた。


1時間後に次話投稿予定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ