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Ing,  作者: 鏡 勇慈
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第1話

ロードレースを舞台にした、学園生活を書いていきます。

恋愛模様なんかも上手いこと書いていければなんて思っています。わからないワード、などなどコメントにも寄せて貰えれば幸いです。

初めに、言っておきたい事がある。

僕は異世界に転生したりもしないし、タイムリープも出来ない。

…しかし、今日ほどどちらかが自分に訪れないかと願った日はないかもしれない。



雲一つない青空の下、今日から通う高校を目の前に早くも絶望していた。

県内でも有数の進学校であり、校訓は「文武両道」


念願叶って合格したものの、受験に没頭し過ぎていたせいで、校内の見学はおろか、下調べもろくにしていなかった。

同じ高校に通うことになった友人…ここでは名前は割愛する。

所謂昔からの悪友の一言を真に受けてしまったのだ。


「なあ、せっかくだから初日から髪染めて行こう」

「校則でも認められてるし、どうせ部活しないんだろ?」


あの、にやけ顔が今目に浮かぶ…

何故、何も考えず真に受けたのか。

何だかんだとバタバタして、相手がどうしたのかすら確認してない。


「……嘘だろ?」


入学初日だというのに、校門前には、人・人・人・人…しかもそれのどれもが屈強な体育会系の男が待ち構えてる。

言うまでもなく、髪染めてるのなんて見て取れない。

部活の、勧誘だろうか。

皆揉みくちゃにされそうになりながら人だかりに消えていく。


まずい。


明らかに浮いている。


ビビって茶色くらいにしたが、元々髪が肩に届きそうなくらい長い。

そして、僕は自慢にならないくらい背が高い。

部活もしないっていうのに体格には恵まれてしまったのだ。しかし、この身長を見てバスケ、バレー…様々な部活に勧誘されたが全く役に立たず結局中学3年間は帰宅部だった。

引っ込み思案だったからあまり周りにも馴染めず、何となく過ごしてしまった中学生時代を変えようとしたのに、初めからこのコケようである。

目立つ。はっきり言って悪目立ちだ。


「…まずい、まずい、まずい」


スマホを見る。あと、登校しなきゃいけない時間まで20分ちょっと。

肝心の、やつは連絡にすら出やしない。


…最悪黒染めスプレーで行けるか?ギリギリ時間的にも走れば間に合うかもしれない。

意を決して振り返った。

次の瞬間。


「…あっ」


後ろから来ていた人に気付かず思いっきりぶつかってしまった。

しかも、背が小さな女性だった。あまりの体格差に、相手は吹っ飛んでしまう。


「す、すいません!大丈夫ですか?!」


相手に駆け寄る。手を差し出したが、払われる。


「大丈夫、怪我はないから…」


そう言って振り返った瞬間相手の顔が完全に青ざめた。


「ちょっと…あんた…」


刹那、青ざめた顔が、じわじわと怒りに震えてきた。彼女が見た先には、彼女が引いてきたであろう自転車が倒れていた。ロードバイクというやつだろうか、細いタイヤの、なんか凄く速そうなやつ。

よく見ると、後ろのタイヤの付け根あたりが真っ二つに、折れている。

持ち上げた瞬間、後ろのタイヤが外れる。

無知な僕でも、とんでもないことをしてしまったと今度は僕が青ざめてしまった。


「…………べ、弁償…弁償します…」


背を向けたまま、怒りに震える彼女が肩を震わせている。聞こえているのか、いないのか…

顔を覗き込んだ瞬間、彼女は大粒の涙を浮かべたまま、鋭く睨んできた。


「…言ったわね」

「二言はないわよね?弁償、してもらうから」


物凄い剣幕に気圧されながら、頷く。

こういうのって高いだろうな…貯金で足りるか、そんな事をグルグルと考えている時、遠くからチャイムが聞こえてきた。


「放課後、自転車部の部室で待ってるわ。必ず来ること。あなた、名前は?」


「ぼ、僕は1年の、薊。アザミって言います。」


「同じく1年の、東雲。部には兄もいるから名前言ってもらえれば通じる」


彼女はそう言うとヒョイっと壊れた自転車を持ち上げ、校門へと急ぎ始めた。

こんな髪のままだけど、しかたない…走り始めた時、彼女が振り返る。


「…言い忘れてたけど、このロード。フレームだけで80万はするからね」


……神様、1回でいいです。昨日に戻して欲しい。

何度もタイムリープなんてしなくていい。慎ましやかに生きていたいだけなんです。

願ったものの、時は待ってくれない。

ぐにゃりと曲がりそうな視界を耐えながら、喧騒の校舎へと走っていった。

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