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大好きな幼馴染みの花嫁修行を受け私は今日嫁ぎます

作者: チョイハチ
掲載日:2023/01/24





「ラルー、リオイよそなた達の結婚の話は白紙とする」



「「!」」



「お父様! なぜです?! ……私とリオイの仲を認めてくれていたではないですか? それをなぜ今更?」




「そうだな、確かに認めていた。リオイは私の唯一の友人の忘れ形見だ。五歳の頃からお前と一緒に育ち我が子同然に思っている。だからこそラルーをやっても良いと思っていた」



「ではなぜ!」




「ウエンストウ侯爵は知っているな? そこの三男に嫁がいないらしく、縁談の話が持ち上がってきたのだ」



「ですが! お父様は今までも私に来た縁談をリオイがいるからと断ってくれていたではありませんか?」



「そうだな……リオイは頭脳明晰なうえ、剣術も超一級。いずれはお家を再興し、近衛騎士団に入団、いや……近衛騎士隊長にすらなれる器だ。それは我が家にとっても素晴らしい縁となろう……だが、まだ数年は先の話だ。侯爵の誘いを断れる程のものではない……今までは同格や格下であったから断っていただけだ」




「でも……お父様のお力があれば例え侯爵様と言えども……」




「ラルー様、伯爵様をあまり困らせませんように」



「リオイ……あなたはそれで良いの?」




「……私は……、私は……伯爵様がお決めになられたのであれば異存ございません」



「そんな……」

「リオイよ、良くぞ申した! すまぬとは言わん。これもお家の為だからな」



「わかっております」




「うむ、……所で母君は息災か? 今回の話で体を悪くしてはいけない。我がクライスル家との縁が切れることはないとしっかり伝えておいてくれ」





「お気遣いいただきありがとうございます。今後も誠心誠意お仕え致します」





「うむ、……このような話の後で悪いのだが……」




「……ラルー様のご教育でございますね?」



「話が早くて助かる。リオイの嫁になるから最低限で良いと適当にしていたのが仇となったわ、すまぬがリオイにしか頼めん、やってくれるか?」





「もちろんでございます。ラルー様があちらに行っても一切恥をかかぬようしっかりと教育致します」




「……頼んだぞ」


「はっ!」




「リオイ……お父様……」





――




 あれから、私はリオイに伯爵令嬢として恥ずかしくないよう教育されはじめた。いわゆる花嫁修行だ。……時間がないためかなり詰め込まれている……本当はリオイと結婚できるはずだったのに……



 私はたくさんたくさん泣いた。涙は荒れ果てることはないのか? と思えるほど泣いた。……だけど、リオイはいつも通りに過ごして、いつもと同じように接し、私が()()為の教育を当たり前のようにしている。


 

 あなたは、何を考えているの? なぜ当たり前のように全てを受け止めて、当たり前のように生活しているの? 私はあの日から全てが……





「ラルー様、もう一度ここをやり直しましょう。このようなことができねばクライスル家が笑い者となりましょう。それに、()になるレオネイル様に恥をかかせてしまいます。気を取り直して頑張りましょう」



「……」



「……リオイはそれでいいの? 何も思わないの?」



「何もとは?」



「結婚の事よ!」




「その事ですか。……ええ、伯爵様に言ったように、伯爵様がお決めになったことに異存などございません。そもそも、没落貴族の私に四女とは言えラルー様を嫁に、と言って頂けただけでも一時の夢を見れて幸せでございました」




「……これからは、その恩返しを兼ねてラルー様がレオネイル様と()()()()になれるお手伝いができれば、と思っております」



「リオイ……」




「では、続きを……と、すみません。この後少し用事が入っていました。一時間後に戻ってきますので、それまで休憩としましょう」




「リオイ……なんでそんなに平然としてられるの? 小さい頃から一緒に育って、結婚できるってなった時あんなに喜んでくれたじゃない!」



「……」



「……ウエンストウ侯爵家と言えば、長く続く名家でございます。公爵家とも縁が深く、中央でもそれなりの力を誇っております。更にラルー様の夫になる御方は三男の為お家を継ぐことはないとされていますが、大変優秀な方で将来は官僚としての出世は間違いないと言われています。そのようなお家と縁が結ばれればクライスル家は更なる発展を迎えるでしょう」



「……」




「そのお手伝いができるのであれば、今迄受けた返せない程の恩を少しは返せるというものです。このリオイ、ラルー様の()()()()()精一杯務めさせて頂きます」




「私の幸せわ……もう、いい……わかったわ……」



「では、一時間後に」





 なんでよ! 私の事好きでいてくれたんじゃないの? 結婚を許されたときのあの笑顔は? 抱擁は? あれはなんだったのよ!



 お父様に言われたからって、それで全てを受け入れて……少しは反抗してみせてくれてもいいじゃない!





 ……でも、もちろん……もちろん、わかってる……リオイのお母さんは体が弱くてお父様の支援がないととてもじゃないけどやっていけないことくらい……そんなことわかってる。


 そんな優しいリオイだからこそ、ずっと惹かれていたし結婚の許しがでて嬉しかった。




 ほんの少しでも悲しそうにしている所を見せて欲しかった……それだけで良かったの……




――




 きっちり一時間後に戻ってきたリオイは、化粧をしていた。なんで? と訪ねると




「化粧はあまり得意ではないので、自分を練習台にして、ラルー様にお教えしようかと」



「でも、化粧なら侍女長とかに頼めば良くない?」 




「……失礼を承知で申し上げます。ラルー様は些か不器用な所があり、また感性で動いてしまうところも見受けられます。その為普通の人にはラルー様のご教育は難しいと思われます。ですので、付き合いの長い私が教育係としてここにいるのです」




「うっ……」



「まぁ、ラルー様も一応女性ですので化粧の方はギリギリ及第点ですが、更なる精進が必要です」



「なによ、一応って! その一応女の私の事が好きだったくせに! リオイのばかぁ!」




「ラルー様、私は馬鹿ではありませんよ? しっかり昔の事も覚えております。例えば……十歳までオネショをしていたラルー様の身代わりになって何度も何度も……」



「なしなしなし! それ以上はなしぃ!」




「かしこまりました。では、先ほどの続きから参りましょう」




「……ねぇ、リオイ」


「なんでしょう?」



「私も本当はわかっているの」


「……」


「伯爵家の娘として、侯爵家に嫁ぐのが一番だって。御姉様達だってそうしてきたし。御兄様だって昔から好いていた人とは結ばれることなく義姉さんと結婚したわ。それは全てお家の為だし、領民達の為でもある。貴族である私達は領民の生活を支える義務がある。今迄貴族として暮らして来たのに、その責務から逃げるなんて事はしない……だけど」



「……」



「だけど、あなたと結婚できる……そんな希望を持ってしまったからつらいのよ……希望を持ってしまったから……」




「ラルー……様」




「リオイ、もうあなたとは結婚できなくなってしまったけれど、幼馴染みには変わりないわ。この気持ちだけはずっと持ち続けていいわよね?」




「ええ、もちろんでごさいます。ありがとう……ございます……」




「じゃあ! レオネイル様に嫁ぐまでの間、私の教育は任せたわよ!」



「それでこそ、ラルー様です」






 切り替えることなんてできない……忘れられるわけなんてない。どんなに、レオネイル様が聡明で優しいお方だと聞いても私の心が踊ることはなかった。私の心の中にはいつもリオイが……





――



 私がレオネイル様の所へ嫁ぐまであと一ヶ月を切った頃御兄様が、王都より帰ってきた。 


 実は、御兄様も好きな幼馴染みがいたのだがお父様が選んだ相手と結婚することになり、幼馴染みとは結ばれなかった過去があるのだ。


 だから、私はその話が聞きたい。御兄様はどうやってその苦境を乗りきったのか。……乗り越えていないのか、を……






「御兄様!」



「おお! ラルーか! 久しぶりだな! 元気そうで何よりだ」



「御兄様こそ活躍の話を沢山聞いていますよ?」



「父上がやったことの後始末に過ぎないよ。あの方は我が父ながら凄まじい手腕だからな……後始末するだけでも手柄になってしまうのだよ……」



「あはははは」



 お父様は超やり手で、次期宰相とまで言われており現宰相様ですら、お父様のお力を借りようと相談に来ることもあるのだ。



 だから……それ程の力が……権力があるのだから、この縁談だって断れるはずなのに……




「あぁ、俺が幼馴染みと結婚できなかった話か?」



「ええ、こんなこと聞くのは心苦しいのですが……」




「構わんよ。お前もリオイとのこともあるし……少しでも力になれればいいんだが……」



「ありがとうございます」



「その前に、父上のことをどう思ってる?」



「嘘つき親父! ……でも伯爵としては最高の方だと思います……」




「はははは、俺もあの時はそう思ったよ。でも真面目な話、父上は人を見る目が凄いんだ。使える人間使えない人間、信用できるできない。全てを完璧に見抜いている。その洞察力、観察力を使い、跳梁跋扈する貴族社会を生き抜き次期宰相とまで言われているんだ」



「腹黒ですしね」



「そうだな、でもそうじゃなきゃ生き残れない。家庭は、領地は守れないんだ」


「……」



「あの幼馴染みはダメだ。やはり家格が合わん……同じ伯爵家の娘と結婚しろ。と言われたときは頭が真っ白になったよ。そこまではっきり言われるとは思わなかったからね。……若さもあってかかなり反抗もしてしまったよ。あはは」



「そんな、ひどい……」



「もちろん貴族の務めもわかっているから、渋々了承して結婚したけど。……ぶっちゃけ今はメチャメチャ幸せだ」



「へ?」




「ビックリするくらい嫁とは性格が合ってな。政略結婚だったはずなのに長年愛し合った二人のような関係を築くことができている」




「確かに仲良しに見えます」



「見えるだけじゃなくて、本当に仲が良いんだよ。実は幼馴染みも別の貴族の男性と結婚していてな、何度か食事をしたこともあるんだ。その時気付いたんだよ……」



「なにをですか?」



「俺と彼女が結婚したら絶対に不幸になっていた、とね。彼女の性格が悪いとか、浪費癖があるとかじゃない。単純に価値観が違っていたんだよ。妻を知ったことで本当の自分の価値観に気付かされた。その上で彼女に会った時、(あぁお互いの為にも俺達は結婚しなくて良かった)って思ってしまったんだ」



「でも……」



「実は彼女もそう感じたようで、二人して笑ってしまったよ。確かに俺達は好き合ってはいたが、俺達の一番の幸せの形は幼馴染でいる事だったんだ。だから今も友人としてたまに会っているよ? もちろん妻も相手の旦那も一緒にだがね」



「父上はその全てを見抜いていたんだろうね、俺と彼女が合わない事。俺にはもっとも相性がいい相手がいることをね。……しかも、幼馴染の旦那さんも父上が見つけて世話したんだぞ?」



「そうなのですか?!」


「ああ、貸しを作れると喜んでいたよ」



「……腹黒」



「そうだ。でも、ラルーの姉さん達も幸せそうに暮らしているだろ? 家と家との結びつきの為もあるが、それでも俺達が幸せになれる相手を見つけて結婚できるようにしてくれているんだ」




「……では、私達も、私とリオイも、今だけの一時的な感情で、本当は相性が良くないということですか?」




「いや、それはわからない。わからないが、父上が結婚の話を受け入れたという事は意味があるはずだよ? きっとラルーが幸せになれるためのね」




「……」



「……ありがとうございます」



「力になれなくてすまないね。私はいつもラルーの味方だ、なにかあればいつでも話してくれ」



「お兄様……」






 そんなはずない! 私とリオイは……! なんて意味のない反発心を抱いてしまった。私はお兄様の話を聞いて、リオイを諦める気持ちになりたかったのに……諦める方法が知りたかったのに……なんでまた好きな気持ちを募らせてしまったのだろう……




 リオイ、私にあなたへの気持ちを断ち切る方法を教えて……





――




 お兄様がまた王都へ戻り、日常がやってきた。だが、もうここでの暮らしは長くない。リオイの授業もあとちょっとしかない……




「ラルー様もう少し笑顔を作ってください。ダンスの時にそんなぎこちない笑顔を向けられては思わず手を放してしまいます」



「いった! 噓つき! 既に手放してるじゃん! ……リオイって昔からちょっと噓つきな所あるよね?」




「ほう、ラルー様私に決闘でも挑むおつもりですか? ……いいでしょう。ある程度の護身術は必要です。少し鍛えて差し上げましょう」



「みんなからは、冷静沈着で頼りになるとか優しい人とか言われてるけどそういう子供っぽい所が全然治ってないね?」




「……ラルー様、決闘開始、と捉えて良いですか?」



「うそうそ! なしなし! ごめんなさい!」



「わかりました。では一旦休憩いたしましょう」




「はーい。……リオイはまたお化粧直しするの?」




「その通りです。どのように教えれば良いか試行錯誤が必要です……ラルー様に教えられる時間はもう残り少ないというのに……それなのにまだ化粧の方は……」



「……すみませんね!」



「では一時間後に……」





 もうあと少しで私が行ってしまうというのに、リオイはいつも通り何も変わらない。凄く寂しくもあるが、ここまで時間が迫ってくると逆にその方が未練なく嫁ぐことができるのかもしれない。


 ……リオイはそう思って、いつも通り接してくれているのかな? もし違ったら……




 先程より厚化粧をしたリオイの到着と同時に最後の追い込みをかける私達。こうしていられる時間も私の宝物としてあっちに持っていくね……





――




「遂に明日はウエンストウ侯爵家に挨拶へ行く日だな、そこで正式に婚約が成りそのままあちらの家に入ることとなる。リオイと学んだ事を十二分に発揮ししっかりとするのだぞ?」




「畏まりました」




「なにかあればすぐに申せ、良いな?」



「はい」



「リオイも苦労を掛けたな」



「とんでもございません。精一杯務めさせていただきました」




「うむ、私は仕事が残っているので食事の後は書斎に籠る。二人は積もる話もあろう、()()()()だ幼馴染として語らうと良い」




「お気遣い感謝いたします」





 この家で、家族で食べる最後の晩餐はとても賑やかなものになった。母も笑顔で結婚生活の素晴らしいさを話してくれ、珍しくお父様が照れていた。最後に母が私を何も言わず抱きしめてくれ解散となった。



 お父様は、ああ言ってくれたがリオイとは何の約束もしていない。このまま、リオイが来てくれなかったらどうしよう? これでお別れ? もう会えない? あなたは明日仕事で、朝からいないのでしょう? なんて……これからリオイがいないのが()()()()()になるというのに……私は……




「ラルー様、今夜は冷えます。こちらをお掛けになって私の部屋で少しお酒でも飲みましょう。伯爵様にもお伝えしてありますので、心配は無用でございます」



 ……私が泣きそうになるといつも当たり前のように現れる。そんなリオイを見ると最後の夜になにを話せばいいのか? 最後というフレーズが話す会話を選んでしまって、何も話せないでいるとリオイが優しく話しかけてくれた




「ラルー様、今夜だけは幼馴染のリオイとして接してもよいでしょうか?」



「そうしてくれると嬉しいわ……」



「ありがとう……ラルー、小さい頃からずっと一緒だったお前が結婚か、早いな……お前は見た目より体が弱いから病気には気をつけろよ? 色んな薬の処方は書いてあるから忘れないように」



「はぁ! なによ、見た目より体が弱いって! それじゃまるで見た目がいかついみたいじゃない!」



「お前去年よりどれくらい体重増えた?」



「……」



「目算だと、約……」



「やめーい! どうせ私は太りやすいですよ! あんたみたいにスラーっとしてませんよ!」



「そうだな、あんだけつまみ食いしたら太るだろ? 子供の頃何度身代わりになったことか……」




「その節はお世話になりました……」




「「ぷっ……ははっはは」」



「そう言えばあの時も……」「厨房に入って……」「あれは……」「いやいや……」

「リオイが……」「ラルーが……」






 私たちは、昔の事を思い出すように色々話し続けていた。どんな時にもリオイがいて、何かあるときにはリオイが横にいた……私の人生はリオイと共にあったんだ……そう再確認してしまった……





「あぁー笑った。一生分笑った。……本当に楽しかった。……でもそろそろ時間かな? 俺も明日朝が早いしな」



「もうこんな時間なのね……」



「名残惜しいが、仕方ない。……最後になるが聞いてほしい。レオネイル様は少し強気な所はあるが、そこはしっかりとラルーが支えるんだぞ? だが、とても優しく聡明で領民からも慕われてるいると聞く……」




 ……そんな話聞きたくない。あなたから、他の男性を勧める話なんて聞きたくない……最後の言葉なんでしょ?




「しかも伯爵様が許可したお相手だ、間違いなく幸せになれるだろう。あちらに嫁いでしまえばもうほとんど会えることはないと思うが、幼馴染として……お前の幸せを祈っている」



「……ばか」



「……そうだな、レオネイル様とはこんなバカ話はできないかもしれないな。お前のバカ話に付き合えるのは世界広しと言えども俺くらいだろう。……でもきっとレオネイル様は俺以上にお前を幸せにしてくれるはずだ。体に気をつけるんだぞ? ……じゃあな。……おやすみ」





 ……最後の夜。その言葉の力を借りて私はリオイを力強く抱きしめた。もう我慢なんてできない……リオイの優しくも男らしい匂いがする。少し触れるだけで心臓が飛び跳ねている。ああやはり私は心の底からリオイを愛している……リオイの全てを感じられる。愛おしい本当に愛おしい……



 抱きしめ返して欲しい。もうそれだけでいいから……最後にもう一度だけ……




「ラルー……」



 リオイは冷静に私を引き離した……



「俺はお前を抱きしめてやることはできない。すまない……達者でな……」



「……」


「……それだけ?」

「……そんな言葉だけで終わりなの? リオイは私の事本当は好きでもなんでもなかったの?」


「あなたに色々事情があるのは分かっているわ? ……でも、今はそんな事を抜きにして最後になにか……なにか……伝えたい気持ちはないの?」




「俺だって……」



「俺だってな! お前の事が大好きなんだよ! 好きで好きで仕方ないんだよ! お前の事が大好きな俺がなんで他の男に嫁ぐ手伝いをしなきゃいけないんだよ!」



「毎日毎日、きつくてきつくて、何度も泣いた。目が腫れあがって……化粧だってそのために……」



「リオイ……」




「そのキレイな手をずっと握っていたい、ダンスの相手はずっと俺であってほしい。いつまでもその目で見つめられていたい……ラルーの全てを俺に……」



「……でもそんなこと叶わない。わかってるんだ……わかっていても、他の男に触れられると考えるだけで頭がおかしくなりそうだった。平常心と言う仮面をつけていないと気が狂いそうだった。いつも以上に明るくしていないと精神が持たなかった……」




「俺は弱い人間だった……周りから頼りになる、近衛騎士隊長になれるなんて言われていても、一人の女性を失ったらまともに生活することもできない程弱い人間だったんだよ……」



「そんなこと……」




「ラルー、行かないでくれ……俺とずっと一緒にいてくれ……お前の事を愛している……」




「ラルー行かないで……」


「行かないでくれ……」




「お前がいなくなったら俺は、俺は……」

「リオイ! 私も! 私もあなたと同じ気持ちよ! あなたを愛しているわ!」




「ラルー……」「リオイ……」




 私達は、力強く抱き締めあった。一秒を惜しむように一言も話さず、一度も離れず。どんなに願っても時間は止められないのに……




――




 私達ではない他の誰かにとっては、待ちに待った日だったかもしれない。この日が来るのを待ち続けて眠れぬ夜を過ごした人もいるかもしれない……でも私たちにとっては来ては欲しくなかった一日が始まってしまった。


 その日は、天が燃えているかのような真っ赤な朝焼け……お昼ごろから雨かもしれない……空も泣いてくれているのか? はたまた歓喜の涙を誰かのために……なんて意味のない事を考えている。その間も私達は強く抱きしめ合っていた、いたが……




「ラルー……本当にお別れの時間になってしまったな……」




 私は貴族の家に生まれ、育った人間。……言えない……どこかに連れ去ってとは言えない……リオイには大事な母上がいる……ここを離れることなどできない……




「ラルー、……俺と……俺と!」

「リオイ! それ以上は……」



「……すまない」

「リオイありがとう……嬉しいわ……」



「ねえ、リオイ、最後にキスしてくれない? ……初めてのキスはあなたがいいわ」

「ああ、俺もお前が良い……」




 リオイ……これが最初で最後のあなたとのキスなのね……





――





「では、行ってまいる。セイバイスよ家の事は任せた」


「畏まりました。お気を付けていってらっしゃいませ。お嬢様もお元気で」



「ありがとう。リオイの事頼むわね」


「お任せください。本日は早朝より屋敷を離れており別れの挨拶ができず……」



「いいのよ、昨晩済ませてあるわ」



 そう、もうお別れの挨拶は済ませた。




 さようなら大好きなリオイ……



 私はあなたがしっかり教育してくれたから立派な淑女となって今日嫁ぐわ…… 








――




「リオイ様、聞いておられますか?」



「ん? あ、ああ聞いていた……えっと」


「来月の祭りの予算の事ですよ?」


「そうだったな……祭りはもう来週だったな?」



「……はぁー、リオイ様。ラルー様が家を出られてもう一週間になります。お辛い気持ちは分かりますが、しっかりとクライスル家を支えていかねばラルー様に合わせる顔がないのではないですか?」



「セイバイスさん……そうですね……すみません」


「わかって頂けたなら……」


「セイバイス様! リオイ様! 旦那様がお戻りになりました!」



「「!」」



「なぜだ?! 早すぎる! ……なにかあったのか?」


「リオイ様、とりあえずお迎えに参りましょう」




――





「伯爵様! どうされたのですか! なにかあったのですか!」



「なにか……なに……か……」


「え? ……」



「……ラルー?」




「リオイ! 一緒だったのよ! レオネイル様も一緒だったのよ!」




「! ラルー……様。皆がおります……このように抱き着かれては……」



「ご、ごめんなさい……でも一緒だったの!」



「……落ち着いて教えてください、何が一緒だったのですか?」




「実はね……」





 私が侯爵様の家に着き、レオネイル様と顔合わせした時レオネイル様はいきなり頭を下げ、この話はなかったことにしてほしいと懇願してきた。

 

 私は意味がわからず困惑し、侯爵様自身は茫然としていた。すると一人の女性が部屋に入ってきて



「彼女は私の幼馴染なんだ、私達は愛し合っている。本当に申し訳ないが彼女と結婚したい。すまないが……」



 その場は大混乱。侯爵様は激怒し猛反対、親子喧嘩が勃発。お父様はなぜか沈黙。私はアタフタ……



 最終的にお父様が



「このような仕打ちを受けるとは……ウエンストウ侯爵……日を改めてお話を致しましょう。もちろんこの話はなかったことにして」



「すまん……」



 と、私には嬉しい結果になり家に戻って来たわけである。




「私結婚しなくて良くなったのよ! だからリオイと……」



「ごほん! ……リオイよ二年以内に近衛騎士団に入団できるか? それ以上は時間を稼げん……自分でいうのもなんだが、私の力を欲して婚約の話が多いのだ……」




「! はい! もちろんでございます! ……伯爵様……ありがとうございます」



「……お父様ありがとう」



「ふん、今回はあっちが勝手に暴走しただけだ……」




「あらあら、強がり言っちゃって」



「お母様、……強がりって?」



「この人が、間者を使ってレオネイル君をたぶらかしていたのよ? (望まぬ結婚をしていいのか? 幼馴染が好きではないのか?)ってね」


「その結果、あの場で爆発したのよ。この人は最初から見抜いていたのレオネイル君が別に好きな人がいて諦められないことをね。その隙をついたってわけ」



「……そんな上等な思いではない、あやつらは自分達に酔っているだけだ……悲劇の主人公を演じている自分たちにな……一年もせぬ内に離縁となろう。そんな半端な奴にラルーをやれるわけがない……」




「じゃあなんで! なんでそれを教えてくれなかったのよ! 私たちがどれだけ……」



「ラルーちゃん、あまり責めないであげて」



「……結果としてあやつは、あちらを選んだが、もしその気持ちを飲み込んでラルーを選べるようならそれはそれで、大きな幸せを掴めておっただろう。お前とレオネイルは相性は良かった……それに、さすがの私でも公爵家とも縁の深いウエンストウ侯爵の縁談はなかなか断りにくくてな……間者を使って焚きつけておったのだ」


「成功する可能性は高いと踏んでいたが、万一の事を考えると無用な期待を持たせるわけにもいかなかった故話せなかった……ラルー、リオイよすまなかったな……」




「お父様……」

「伯爵様、頭をあげてください」




「……だが、これでウエンストウの阿呆に大きな……大きな……特大サイズの貸しを作れたぞ。これを足掛かりに公爵家にも……はっはっは!」



「「……」」



「ラルーちゃんリオイちゃん、一発殴っていいわよ?」




「今はそんな噓つき親父はどうでもいいわ!」


「ガーン……」



「リオイ! 一年で近衛騎士団に入って私を迎えに来て!」


「ああ、任せろ。……そしたら結婚しよう」



「ええ……」





 私は大好きな幼馴染の花嫁修行を受けて……大好きな幼馴染に嫁ぎます……














「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひ感想、ブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただけると自分でもビックリするくらいモチベーションが上がります! 



ぜひよろしくお願いします!



また、二週間以内位で短編をあげたいと思います。(未定)


追記


初めてここまでたくさんの評価、ポイントを頂きました。本当に本当に凄く嬉しいです。ありがとうございます。まだまだお待ちしております。もし書いても良いと思えたら感想も待っています! お願いします。次の短編の投稿は未定でしたが、二月七日までに投稿できるように調整します。時間については活動報告に乗せてみたいと思います(書いたことがないのでできるか不明)


よろしくお願いします。




以下宣伝です↓





ジャンル違いですが気軽に読める異世界最強物も書いてます。お時間ありましたら是非お待ちしております。

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