嗚呼、俺のウィザード様。(アールモンド&アーサー)3
外の景色が夕焼けから夜景に替わる 時計は18時30分を示している ミレイが時計を見てからミラーにてアールモンドの様子を伺う アールモンドが窓の外を見ていて思う
(日が暮れっと 窓の外の風景も 随分と変わるもンなんだな?普段の俺が見る事のねぇ 俺の知らねぇ景色だ 場所も知らねぇ所だって言うのもあっけど…)
窓の外には沢山の家々の明かりが見えている アールモンドが思う
(人が住む家の 小せぇ明かりが 沢山付いてて それがゆっくり流れて行く… 綺麗だ…)
アールモンドが視線を変えて思う
(魔法で飛ぶのとは違って この車の速度で流れっから こっちもゆっくり見てられるし… 俺の視界に収まらねぇくらい 光は沢山あって… あの光の中には あの光の数と 同じか それ以上の 人が生きてンだろ…?)
アールモンドが表情を落として思う
(…って事は この光のどっかに お前も居るンだよな?… … アーサー?)
ミレイがミラーで様子を伺っている アールモンドの表情は今は帽子のつばで見えない アールモンドが思う
(…お前は暗ぇのが苦手だもんな?夜は灯りを付けたまま寝るンだろ?だったら…)
アールモンドが無表情に少し顔を上げて窓の外を見ている ミレイがアールモンドの顔を見てホッとして前へ向き直る アールモンドが思う
(このまま ずっと見ていれば… その内 灯っている灯りが少しずつ減って行って そしたら… お前の居る明かりだけが残ったりするんだろうな…?まぁ全部が消える訳でもねぇだろうから そんなんでお前を見付ける事なんて 出来る筈もねぇんだけど … … …それに)
アールモンドが少し表情を落として思う
(例え 見付けたとしても… 俺は… … …いや お前は もう…)
アールモンドが手を握り締める ミレイがアールモンドの様子を伺う アールモンドの表情は帽子のつばで見えない
翌朝 レイモンド邸 寝室
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる ベッドで動きがあり アールモンドが寝苦しそうに言う
「ン…」
アールモンドが起き上がって言う
「…ここは…?」
アールモンドが周囲を見渡し カーテンの隙間から差し込む朝日を見て思う
(…あぁ 部屋に戻ってたのか… そういや昨日は…)
アールモンドがベッドから出ると法衣を着たままでいる アールモンドがカーテンの下へ向かいながら思う
(灯魔台神館から 車で帰る事になって… 確か 3時間とか… 4時間とかって?ンで 日が暮れて いつもなら寝てる時間になっても 着かなくて…)
アールモンドが欠伸をする アールモンドが思う
(…あぁ そうだ すげぇ眠くなって 寝ちまおうかって思ったんだけど …俺は 本当に寝ちまうと えらく起きねぇ時があるって アーサーに言われた事があったから そのアイツが居るならともかく まさか女の奉者に運ばせる訳にも行かねぇだろって?何とか起きてはいたンだが…)
アールモンドがカーテンを開き眼下に見えるエントランスを見て言う
「あのドアを入ってからの記憶がねぇな…?」
アールモンドが振り返り 寝室のドアを見て思う
(まぁ ここで寝てたって事は 無意識にでもここまでは来たって事かもな?ンで そのまま ベッドで寝ちまったのか?)
アールモンドが頭をかいて言う
「あー 思い出せねぇっ」
アールモンドが思う
(とりあえず 顔でも洗うか…?…ん?)
アールモンドが向かおうとした足を止めて リビングへの扉を見る 扉の先からミレイの声が魔法に乗って聞こえる
「…はい ブレット村灯魔台神館から 昨夜21時前に到着致しました …はい ウィザード様のご体調は 特に問題は… そちらも… お変わりは御座いませんでしたが… …はい ご自宅のベッドにて お休みになられました …いえ 長時間のドライブでは御座いましたが 特に問題は」
アールモンドが言う
「アイツ 居たのかよ…?今日は 随分と早ぇな?」
アールモンドが時計を見る 時刻は6時5分 アールモンドが首を傾げてもう一度ドアの先を気にしてから 気を取り直して言う
「ま、どぉでも良いけどよ…?」
アールモンドが思う
(アイツは俺の奉者だろ?だったら 朝から居ようが 泊まろうが 勝手にしたら良いぜ?俺は別に…)
アールモンドがバスルームの鏡を見てから 顔を洗おうと水道の栓を開き ハッと気付き 慌てて鏡を見直すと驚いて言う
「…っ!?」
リビング
ミレイが携帯の通話を切り 軽く息を吐いてから 寝室への扉を見ると 足音が聞こえて来る ミレイが疑問すると 扉が勢いよく開かれアールモンドが言う
「おいっ!ミレイ!」
ミレイがハッと驚き呆気に取られると アールモンドが近くへ来て言う
「色が戻ったぜ!?髪の色も目の色も!それに もちろん 色だけじゃねぇ!」
アールモンドが言うと共に右手に魔力を終結させて言う
「魔力も戻った… 何もかも変わりねぇ!奉者協会に伝えてやれ!俺の力が 戻ったってなぁ!!」
ミレイが呆気に取られていた状態から微笑して言う
「はいっ アールモンド様!」
ミレイが携帯を掛ける アールモンドが自分の周囲の魔力を感じ手を差し向けると杖が現れる アールモンドが杖を見て笑む ミレイが携帯の通話に言う
「こちら アールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者 ミレイ・クレシアです!先ほどまでお話をしていたのですが 会長室のソニア副会長へお願い致します!追加のご報告が御座いまして!」
ミレイが微笑してアールモンドを見る アールモンドがミレイを見て微笑する
道中
アールモンドが法衣と帽子を纏い杖を持って歩いている 少し離れてミレイが続いている アールモンドが横目にミレイを意識して 一度笑みを隠してから 正面へ向き直り ツンとして歩き続ける ミレイが微笑して歩き続く
土手
アールモンドがいつもの場所に立つ ミレイが少し離れた場所に居る アールモンドが思う
(今日で3日 今までは屋敷ン中はもちろん この場所に居ても感じる様な気がしていた アイツの残留魔力は無くなった … …ンで 今は代わりに)
アールモンドが意識を向けると ミレイがアールモンドを見守っている アールモンドが視線を戻すと思う
(これからは アイツが俺の奉者として 俺のパートナーとして 俺と一緒に動く事になる)
アールモンドの記憶の中に蘇る
ミレイが携帯の通話に言う
『こちら アールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者 ミレイ・クレシアです!先ほどまでお話をしていたのですが 会長室のソニア副会長へお願い致します!追加のご報告が御座いまして!』
ミレイが微笑してアールモンドを見る
アールモンドが苦笑して言う
「…なら、これで」
アールモンドが思う
(本当に お前とも お別れだな…?)
≪アーサー…≫
アールモンドが目を閉じていた状態から 目を開き 顔を上げ意を決して 杖を前に向け手を放そうとしてハッとする 杖が力なく倒れそうになる アールモンドが離し掛けていた手で一度押さえると 思う
(…ん?何だ?)
アールモンドが気を取り直し 杖に意識を向けてから手を放そうとすると やはり杖が立たない アールモンドが呆気に取られてから 表情を強め思う
(何だよ…っ?… … コノっ!)
アールモンドが言う
「…クッ」
アールモンドが思う
(一度 全ての魔力を切らしたせいか?ただの一度 切らした位ぇで 気合のねぇ杖だなっ!その俺が傍に居るんだ 一人で立てっツんだよ!)
アールモンドが杖を土に突き刺すと 目を閉じ両手を握り締める アールモンドの周囲に魔力が集まる アールモンドが思う
(どうだ!?これなら!)
アールモンドが目を開き見ると驚く 杖は土に突き刺されたまま浮き上がってはいない アールモンドが困惑して思う
(どお言う事だ?…まさかっ!?)
アールモンドが正面を向き意識を強める 周囲の魔力が反応して雷が迸るが何も起きない アールモンドが呆気に取られて言う
「…っ!」
アールモンドが思う
(魔法が…っ!?)
アールモンドが表情を強め意識を強める 周囲の魔力が反応して全ての属性が周囲に現れるが 何も起きない アールモンドが思う
(魔法が放てないっ!?…ンな馬鹿な事があるかよっ!?魔力は十分に集まってるンだっ!)
アールモンドが怒り 杖を掴むと思う
(後はこいつらを 俺の思うがままに 操るだけだぜっ!行けっ!!)
アールモンドが杖を振るう 周囲の魔力が反応するが魔法は現れない アールモンドが呆気に取られて思う
(ど… どうなってる!?何で 周囲の魔力が 俺の言う事を聞かねぇっ!?)
アールモンドが杖を振るって言う
「行けっ!動けっ!」
アールモンドが呆気に取られて思う
(駄目だ!?動かねぇ…っ …動かせねぇ!?俺が!?コイツ(魔力)らをっ!?)
アールモンドが悔しんで言う
「…ンでだよっ?」
アールモンドが杖を振って言う
「動けっ!俺に 従えってンだよっ!コノ…ッ!」
アールモンドが思う
(畜生…っ!)
アールモンドが怒って言う
「クソッ!」
アールモンドが杖を叩き付けると思う
(俺の指示を コイツ(魔力)らヘ伝える事が出来ねぇ ンな役立たずの杖なんざ!)
アールモンドが手を向けると 魔法使いの杖が現れる アールモンドが思う
(ぶっ壊してやるぜっ!!)
アールモンドが魔法使いの杖を振るうと 周囲の魔力が反応して ウィザードの杖に雷が落ちる アールモンドが呆気に取れて言う
「…は?」
アールモンドが魔法使いの杖を見て言う
「放てた…?」
アールモンドがウィザードの杖を見て言う
「…どーなってンだ?」
ミレイが心配げに見守っている
レイモンド邸 リビング
アイザックが言う
「ウィザードの杖が壊れたとは?その様な話は 聞いた事も無いが」
アールモンドが一度呆れて見せて言う
「俺だって聞いた事はねぇが 事実だ …それよか 先輩 存外暇なのか?」
アイザックが言う
「言ってくれる その貴殿が動かれぬ今 私が暇である筈が無かろう」
アイザックがアールモンドの近くへ来る アールモンドが視線をそらして言う
「ま そうだろうけど?…てっ!?おいっ!?」
アイザックがアールモンドの杖を手に取る アールモンドが呆気に取られて言う
「まさか 先輩が試すつもりかよっ?」
アイザックが言う
「ウィザードの杖は 高価である事はもちろんだが その杖に取り付ける魔鉱石は 数に限りがある 単に壊れたと言われただけで おいそれと新しい杖を用意してやる訳にはいかない」
アールモンドが言う
「それはそうかもしれねぇけど だからって…っ 俺ならぜってぇ やりたくねぇな?他人の杖を使うなんてよ?そいつはもうぶっ壊れちまってるが この数年間 俺がずっと使ってた杖だぜ?後で俺の残留魔力が移ったとか 言われたって しらねぇからな?」
アイザックがアールモンドの様子を見てから 杖を手にして構え意識を向ける 杖の魔鉱石が光り 水火雷土風の魔力が小さく放たれる アールモンドが呆気に取られて言う
「…なっ!?」
アイザックが魔力を収めて言う
「良く使い込まれ 出力も安定している 良い杖だ 雷の魔力に対する反応が強いのは 流石は貴殿の杖だな?」
アールモンドが慌てて立ち上がり言う
「な、何で!?どう言う事だよっ!?さっきまでは まったくっ!?」
アールモンドがアイザックから杖を奪い取り 杖を構えて意識を向ける 周囲の魔力は反応するが 杖の魔鉱石は光を放たない アールモンドが言う
「…ンでっ!?」
アールモンドが思う
(先輩の時には 確かに杖の魔鉱石が反応したっ 魔法が使えていたっ!なのに 俺の時にはっ …なんで俺の言う事を聞かねぇっ?俺の杖のくせにっ!!)
アールモンドが悔しがり 杖を握る手を握り締める アイザックがその様子を見て居て言う
「…そうか なるほど そう言う事か」
アールモンドがハッとしてアイザックへ向いて言う
「先輩には理由が分かるって言うのかよっ?」
アイザックが言う
「ああ お陰で全てが理解出来た アールモンド卿」
アールモンドがアイザックへ向き直る アイザックが言う
「私は貴殿を初めて見た その時から 貴殿の魔力の中に存在する 他者の力が気になっていた」
アールモンドが言う
「俺の魔力の中にある 他者の… って事は」
アールモンドが思う
(そいつは もちろん…)
アイザックが言う
「ああ、当時の貴殿は 他の奉者を…」
アイザックがミレイを一瞥してから言う
「代役として 仕えさせていた その事もあって 私は 異なる可能性を模索していたのだが 過去の奉者協会が裏で糸を引いていた そちらの大灯魔台の灯魔儀式では無く 本当に我々が… いや、この世界が必要とした大灯魔台の灯魔作業の折 貴殿はアーサー殿を己の奉者として従えていた」
アールモンドが言う
「ああ あン時はもう 巡礼者どもの点数稼ぎなンか 気にする必要も無かったし それに…」
アールモンドが思う
(それに あの時の 俺は…)
アールモンドが気を取り直して言う
「先輩たちも 普通に自分の奉者を連れてたしよ?そもそも奉者協会を敵に回していた状態でミレイに 俺の奉者の代役を頼める訳も無かったし…」
アイザックが苦笑して言う
「我々が連れているのは 奉者であって 従者ではない 貴殿の場合は 己の従者を他のウィザードの前へ表す事は 控えるべきだが」
アールモンドが衝撃を受けて思う
(…っ ソイツは分かってた だから 俺だって 最初の大灯魔台の灯魔儀式で アーサーから要らねぇ提案をされた時 それに乗った振りをしたんだ …そうじゃねぇと 俺はアイツが狙われるかもしれねぇって心配で 灯魔作業に集中出来ねぇと思って… …けど)
アールモンドがアイザックを伺い見る アイザックが意味深に微笑する アールモンドが視線を逸らして思う
(…チッ お見通しかよ?…ああっ そうだぜっ 俺は そン時はソレで良かったが いざ世界を守る為の灯魔作業だなんて言われた時には ビビっちまって…っ だから アーサーを連れて行ったンだっ 畜生っ 俺は何時だって アイツに甘えてばかりいる 甘ちゃんのままなんだよっ)
アールモンドが不貞腐れて言う
「…だから?…それが 何だってンだよっ 先輩っ?」
アイザックが言う
「おかげで私は貴殿の魔力の中に存在した 他者の力は アーサー殿の魔力なのだと その時に 知る事が出来た」
アールモンドが顔を逸らして言う
「ああ そうだろ?俺の魔力に他者の力が在るってンなら ソイツはアーサーの魔力だ アイツは俺の従者なんだから 当然だろ?」
アイザックが言う
「そうだな?そして その時貴殿らを見て 私は初めて 従者と言う者が 現代にも存在していたのだと知った訳だが しかし アーサー殿の状態は 貴殿の魔力を増幅していると言う事実だけにしては 疲弊が酷かった そこが私にとって 合点が行かない所だったのだが 今の貴殿こそ その答えだ」
アールモンドが疑問して言う
「…はぁ?どう言う事だよ?俺は先輩と違って 深く考える事は苦手なんだ 馬鹿にも分かるように 簡単に言ってくれ」
アイザックが言う
「では 言うが アールモンド卿 貴殿とアーサー殿とは 貴殿がウィザードへ転身する以前からの付き合いであると聞いたが」
アールモンドが言う
「ああ アイツは 俺が魔法使いになる …その直前からの付き合いだ だから 奉者って言うよか 俺にとってはやっぱ… …世話役で」
アールモンドが思う
(…いや 世話役なんかよか むしろ…)
アールモンドが言う
「…だから?それが 何だよ?」
アイザックが言う
「彼は貴殿が魔法使いになるその直前からの世話役… つまり その頃からの従者と言う事になるのだろう?アールモンド卿」
アールモンドが言う
「だったら何だよ?ンなのは 何時からだって 同じだろ?俺の魔力を アイツが補佐して 高めていたって事だろうが?」
アイザックが言う
「いや 彼が補佐をしていたのは 貴殿の魔力ではなく 貴殿の …精神力であったのだろう?」
アールモンドが呆気に取られて言う
「…は?」
アイザックが言う
「そうと言う事であるのなら 全てが理解出来る 貴殿の魔力の中に在った アーサー殿の魔力は 彼がその命のほぼ全てを 賭したにしては少な過ぎた 彼は貴殿の魔力ではなく 精神力を高める為に その力の多くを使っていたのだ」
アールモンドが言う
「精神力を高める為にって?そんなの… どうやって?大体 精神力ってのは 魔力とは違って他者から得られる物じゃねぇだろ?魔力を扱う精神力は 各属性の魔証印を受託した際の その苦しみを耐え抜く事で得られる だから魔力者は あの死にそうなほど苦しい魔証印を 5大属性分も…」
アールモンドが気付くとハッとする アイザックが言う
「その通りだ 人が耐えられない程の 苦しみを5大属性分受諾する事で 魔力者の精神力は人を超える …アールモンド卿 貴殿はその試練を 己のみの力で超えては 居ないのではないのか?」
アールモンドの脳裏に不鮮明な記憶が蘇る
幼いアールモンドが高熱に喘ぎながら言う
『熱い…っ 痛い…っ 苦しい…っ アーサー… アーサー…』
幼いアーサーが言う
『アーリィーっ 俺はここに居るよっ アーリィーっ もう少しだけ頑張ってっ あと少ししたら もう一度薬を飲めるからっ』
アールモンドが言う
『アーサー…っ もう…っ こんなの… 嫌だ… …助けて 僕を 助けて… アーサー…』
アーサーがハッとしてから表情を苦しめて言う
『アーリィー…っ ごめん…っ ごめんね アーリィー…っ 俺…っ アーリィーに 何もしてあげられない…っ こんなに傍に居るのに…っ ごめんね アーリィーっ』
アールモンドが言う
『アーサー… アーサー… 助けて… 苦しい… 痛い… 助けて… アーサー…』
アーサーが泣きながら言う
『アーリィー…っ』
アーサーがアールモンドの顔を抱きしめる アールモンドがアーサーの腕を掴んで言う
『アーサー… 助け… て…』
アールモンドが呆気に取られて言う
「…そうか …そうかよっ ?だからそれでっ!?」
アールモンドが一度アイザックを見てから言う
「確かに俺は 通常だと3日の高熱と5日の痛みに苦しむとか言われてる ソイツらを!全部半分で逃れたンだっ それはアイツの!? 従者の力だったって言うのかよ!?オマケにそのせいで!」
アールモンドが自分の手を見て言う
「アイツが居なけりゃ 俺は魔法を使えねぇってぇのか?ウィザードにまでなった 俺がっ!?」
アイザックが言う
「如何にウィザードへの転身を行おうとも 基礎となる力は変わりない …最も 転身を行う際に魔鉱石の投射により受ける 最後の試練を受託し乗り越える事で 基礎となる精神力は高まり それを持って 全ての属性を使いこなす事が可能となる …従って 恐らく今の貴殿とあっても 魔法使い程度の魔法は使えても 不思議ではないが?」
アイザックが視線を向けた先 アールモンドが魔法使いの杖を表して 魔法を放とうとするが 魔法は現れない アイザックが疑問すると アールモンドが笑い出して言う
「…ははっ あっははは… コイツはもう… どうしようもねぇな?」
アールモンドが思う
(…そうだぜ 俺は そン時だって)
アールモンドが言う
「ウィザード所か 魔法使いの魔法さえ 使えねぇ… こンなの俺に どぉしろってぇンだ?一度受けた魔証印は消えはしねぇっ ウィザードの魔力がある以上 魔鉱石の投射を受け直す事も出来ねぇ これじゃあ 何処からもやり直せねぇ! 俺はもう…っ 何をしても 魔法を使えねぇって事じゃねぇかよ!?」
アイザックが沈黙する アールモンドが思う
(クソッ!こんな事なら…っ!)
アールモンドが悔しがって言う
「こんな事ならっ あんな奴 …っ 初めから居なければ 良かったんだっ!」
アイザックが怒る アールモンドが殴り飛ばされる アールモンドが床に叩きつけられ悲鳴を上げて言う
「があっ!?…いってぇ~ 何しやがるっ!?」
アールモンドが見上げた先 アイザックがアールモンドを殴り飛ばした姿から アールモンドを見下ろし 近付いて来る アールモンドが怯えて一瞬身を引くと アイザックがアールモンドの襟首を掴み上げる アールモンドが恐れると 後方でソニアが言う
「貴方…っ!」
アイザックが引き上げていた手を振り解く アールモンドが払われた先 床に倒れて言う
「うあっ!ク…ッ」
アイザックが言う
「この甘ったれた 貴族のガキがっ!それでも お前は 従者を従えた程の ウィザードかっ!?」
アールモンドが怯えていた状態から 意地を張って言い返す
「…うっ うるせぇ!従者を従えた事もねぇ 貴族のウィザードが!先輩みてぇな強ぇ奴に 俺のコトなんか分かるかよ!?」
アイザックが言う
「貴族の意地もプライドも無い 貴様の様な弱者の事など 分かりたくも無いっ!」
アイザックが杖を握り締めると 水の魔力がたぎる アールモンドがハッと息を呑む ソニアとミレイが互いに困り手をこまねいている アールモンドが怯え強く目を瞑り悲鳴を上げる
「…ぐぅっ!ア、アーサーぁあ!!」
アールモンドの杖が強く光る アイザックがハッとすると アイザックへ雷の魔法が放たれる アイザックが瞬時に向き直り アールモンドの杖へ自分の杖にあった水の魔法をぶつけるが 雷は水を伝播してアイザックへ向かう アイザックが思う
(しまったっ 雷に水では抑えられないっ …食らうっ!)
アイザックが痛みに備えると 雷の魔力がアイザックの前で結界に防がれる アイザックが一瞬呆気に取られると ハッと気付き視線を向ける ソニアがアイザックを後ろから抱きしめて居て ソニアの指輪にある魔石が結界を作っている アイザックが言う
「ソニア…」
雷の魔法が消え 結界も消える アイザックがソニアへ振り返って言う
「無事か?ソニア」
ソニアが顔を上げ苦笑して言う
「…はい とても大きな音で 恐ろしいと感じましたが それ以外は… …あっ」
ソニアがアイザックから手を放すと腰が抜ける アイザックが抱き留めて言う
「雷の魔法は身体に響く …無理はするな」
ソニアが言う
「はい… アイザック様」
アイザックが頷くと アールモンドの杖を見る アールモンドが杖を見上げていて言う
「い、今のは…?」
アールモンドが一度アイザックを見てから言う
「俺が… 使ったんだよな?」
アールモンドが思う
(魔法を…?)
アールモンドの視線の先 ソニアが見上げている先でアイザックが頷く アールモンドが言う
「…なら?」
アールモンドが杖へ手を向けると杖がアールモンドの手へ向かう アールモンドの手に握られた杖の魔鉱石が光を帯びている アールモンドが呆気に取られて思う
(…魔力を感じる …コレなら?)
アールモンドが杖を構えて意識を向けると雷から5大属性が灯る アールモンドが呆気に取られた状態から喜んで思う
(…使える?魔法が…?)
アールモンドが喜んでアイザックへ言う
「魔法が…っ 使える様になっぜ!?見たか!?見たかよ 先輩!今度こそ 俺の力が戻って!!痛ぇっ!?」
アールモンドが頭を押さえる ソニアが呆気に取られている前で アイザックが杖でアールモンドの頭を叩いた姿で言う
「この馬鹿がっ!まだ分からないかっ!?」
アールモンドが怒って言う
「ンだよ!?ンな事言われたって 分かンねぇよっ!?」
アイザックが言う
「貴殿が魔法を扱えると言う事はっ その力は何処からもたらされているっ!?」
アールモンドが疑問して言う
「ど、何処からって?…っ!」
アールモンドが気付いて言う
「俺の力は… アーサーから?けどっ!アイツはっ!」
アールモンドが思う
(アイツは黒曜石の指輪を持っていたっ 俺から離れれば アイツが俺に使った魔力は アイツに転生される だったら?)
アールモンドが言う
「なんで俺は また魔法を使える様になったんだ?さっきまでは… アーサーの残留魔力が無くなって 俺からアイツへ力が転生されて それで俺は魔法が使え無くなったんじゃなかったのか?」
アールモンドが思う
(なのに 俺は魔法を使える…?それに…)
アールモンドが杖を見上げて言う
「無くなった所か… この力は 以前の俺を 超える位ぇだぜ…?」
アールモンドが思う
(一体 どうなってンだ?)
アイザックがハッとすると言う
「アールモンド卿っ 彼は今 何処に居る!?」
アールモンドが言う
「え?ど、何処にって…?知るかよっ!?アイツが行きそうな場所なんて 俺は知りもしねぇし!?」
アイザックが言う
「そうではないっ 今すぐに アーサー殿の魔力を探せ!彼の残留魔力が消えた今 貴殿が魔法を扱えると言う事は 貴殿の力は 転生されてはいないっ」
アールモンドが呆気に取られて言う
「…ンで?だって アイツは!?黒曜石の指輪を持っているのにっ!?」
アールモンドが思う
(何で ソイツを使わねぇんだよっ!?)
≪アーサー!?≫
アイザックが言う
「その上で 以前の貴殿の力を超えていると言う事はっ アーサー殿は その貴殿へ更なる力を与えたのではないのかっ?」
アールモンドが呆気に取られて言う
「更なる力を…?…っ い、言われてみれば?」
アールモンドが思う
(そうだ あの時だって?風属性の上級灯魔作業を成功させた… あの時も 今みてぇに 急に力が…っ!?… …それじゃっ!?)
アールモンドがアイザックへ縋って言う
「ア、アイツはもうっ!ギリギリなんだよっ!?なのに 何でっ!?俺は何もっ!?頼んでも居ねぇのにっ!?」
アイザックが言う
「アーサー殿の状態は 以前の時点で既に限界に達していた その上でとなれば… もはや一刻の猶予もない!貴殿は 今すぐに 彼の下へ飛べっ!アールモンド卿!」
アールモンドが言う
「ンな事言われたってっ 俺はアイツの居場所なんて知らねぇって 言ってンだろっ!?」
アイザックが言う
「魔力を探せと言っているっ!彼は貴殿の奉者だっ 彼の魔力を知っているのは 貴殿だけだ!」
アールモンドが言う
「ンな事言われたって 俺は 知らねぇよっ!」
アイザックが衝撃を受けて言う
「何っ!?馬鹿を言うな!その様な事で 貴殿はいざと言う時にはどの様に 己の奉者を守るつもりだったのだっ!?」
アールモンドが言う
「知らねぇモンは知らねぇんだっ!アイツは俺の傍にずっといたからっ 魔力を見ようにも近過ぎて…っ!?大体 アイツは俺の傍に居るんだから 見る必要も覚える必要も無かったんだよっ!」
アイザックが言う
「馬鹿かっ 貴様はっ!?大切な者の魔力(姿)を覚える事に 必要が在るかどうかなどは関係ないっ!」
アールモンドが言う
「ああ!馬鹿だよっ!馬鹿過ぎて アイツが傍に居るのが当たり前だと思ってたんだっ!いざと言う時なんて考えなかった!アイツが俺から離れるなんて事は考えた事も無かったんだよ!!だから どうしたら良い?先輩っ?俺はアイツを見付けられねぇ!」
アイザックが言葉に詰まり考えて言う
「…この部屋の中に在ったであろう 彼の残留魔力は既に無い 彼が貴殿から離れて3日ともなれば 空間に存在する残留魔力は消えてしまう… そうとなれば…っ 彼が常に身に着けていた物や 意識を強く向けた物… 風の通らず出来るだけ狭い所に 置かれていた物などは?」
アールモンドが言う
「アイツが常に身に着けていた物…?意識を向けて…?」
アールモンドが周囲を見渡しながら言う
「…風の通らない狭い場所に 置かれて…?」
アールモンドがハッとして言う
「…っ アイツの… 部屋になら!?」
アールモンドが走り出す アイザックが追う
アーサーの部屋
アールモンドがドアを開け思う
(アイツが20年間住んでいた この部屋の中にならっ!?何か在るかもしれねぇ!?)
アールモンドが言う
「アーサー!」
アールモンドが部屋の中へ駆け込む アイザックが周囲を見てからアールモンドを追って中へ入る
アールモンドが足早に辿り着いた先 ベッドへ手を付いて周囲を見渡して言う
「…っ 駄目だ やっぱ 広い物からは 早くに離れっちまうっ」
アールモンドが周囲を見渡して言う
「何か?もっと…っ!?」
アールモンドが思う
(いつも身に着けているような物で… アイツが 意識を向けていた物は…?)
アールモンドがデスクの近くへ来て デスクの椅子を見ると アーサーの上着が掛けられている アールモンドが思う
(服なら…?…いや 駄目か?服は身に着けていたとしても 毎日同じものって事もねぇ…っ 毎日身に付けていて 尚且つ 意識を向けるような物…)
アールモンドがアーサーが腕時計を見る様子を思い出して言う
「服とかじゃなくて あの… 腕時計とかは…?」
アールモンドがデスクの上を見るとハッとして言う
「手帳っ!?そうだ これも!?これならっ!?」
アールモンドが手帳を手に取ると アーサーが手帳を見てからアールモンドへ話し掛けている様子が思い出され 手帳からわずかに残留魔力が感じられる アールモンドが魔力に反応すると 窓の外へ視線を向け言う
「…あった!見付けた!見付けたぜ!アーサー!!」
アールモンドの杖が強く光り 窓ガラスを大破させてアールモンドが飛んで行く ガラスの音にソニアとミレイが駆け込んで来る ソニアが急に抱き寄せられ驚くと アイザックがソニアを抱き移動魔法で消える 残されたミレイが周囲を見渡してから心配げに祈る
路地裏
アーサーが空を見上げて言う
「様… 俺の… 願い…」
アーサーが脱力して思う
(聞いて… くれたの… …かな?)
アーサーが虚ろな目を細めて言う
「アー リィー…」
アーサーが目を閉じようとした瞬間 アールモンドの声が聞こえる
「アーサーー!!」
アーサーが疑問して思う
(…え?)
アーサーが言い掛ける
「アーリィ…?うわああっ!?」
アーサーに強い衝撃が突っ込み アーサーが後方にあった積み重なった木箱へ突っ込まれ 破損した木箱の中で衝撃に強く目を瞑っている アーサーの腕の中でアールモンドが顔を上げると ハッとして慌てて上体を起こして叫ぶ
「アーサーっ!?」
アールモンドの左手がアーサーの右肩を押し潰している アーサーが痛みに叫ぶ
「ぎゃぁああっ!」
アールモンドがハッと気付き 慌てて言う
「あぁっ!悪ぃ!つーか!?お前!その肩っ!?すげぇ腫れてるじゃねぇかっ!病院とか 行ってねぇのかよ!?おいっ!アーサー!?」
アーサーが顔を上げて言う
「その… 声は… …アーリィー?」
アールモンドが呆気に取られる アールモンドの後方にアイザックとソニアが現れる アールモンドが言う
「アーサー?」
アーサーが言う
「アーリィー… そこに 居るの…?」
アーサーが視線を向けないまま アールモンドへ左手を向ける アールモンドがその様子に言う
「…目が?お前 目が見えねぇのかよ?アーサー?」
ソニアがハッとして表情を苦しめ口を押える アーサーが言う
「うん… …折角 最期に 会えたのに… ね… アーリィーの顔… 見えなくて… 残念… …だけど 俺 …ちゃんと お願い… した から… アーリィー…?」
アールモンドが言う
「馬鹿っ 何言ってンだ!?アーサー!?」
アールモンドが思う
(最期だなんてっ!?…っ!?)
アールモンドが顔を向けると アーサーがアールモンドの腕を掴んでいて言う
「俺の… 王様が… アーリィーが… ずっと… 強いウィザード様で …居られます様に …って」
アールモンドが目に涙を浮かべながら言う
「アーサー…」
アーサーが苦笑して言う
「俺は… もう… 一緒には 居られ ない… けど… … これ なら…」
アールモンドが泣きながら言う
「馬鹿っ!アーサー!俺は お前が居なけりゃっ!」
アールモンドが思う
(俺だけが強く居たってっ そんなモンには 何の意味もねぇっ!だから…っ)
アールモンドが言う
「アーサー!起きろよ!俺が呼んでんだぞっ!アーサー!!」
アーサーが言う
「アーリィー… ごめん… ね… 俺… もう… … …」
アーサーがゆっくり目を閉じるとアールモンドの腕にあった手が落ちる アールモンドが目を見開く アーサーが脱力する アールモンドが息を飲んでから叫ぶ
「アーサー?…アーサー…っ アーサぁああ!!」
ソニアが涙を流す アールモンドが悲鳴を上げる様に呼び続ける
「アーサー!アーサー!…っ アーサーッ!!」
ソニアが両手で口を押え涙を流す アールモンドがアーサーの身を揺すって言う
「アーサー!おいっ 起きろよ!アーサー!アーサー!アーサぁああ!痛ぇえっ!?」
ソニアが呆気に取られている先 アイザックがアールモンドの頭を杖で殴った状態から怒って言う
「この馬鹿はっ!この非常時に いつまでも 何をやっているっ!?」
アールモンドが頭を押さえながら振り返って言う
「何をって!?」
アイザックが言う
「早くアーサー殿へ お前の魔力を与えろ!間に合わなくなるぞっ!」
アールモンドが驚き呆気に取られて言う
「お、俺の… 魔力を!?」
アイザックが言う
「アーサー殿の魔力は 以前から限界だった それでも それを感じさせぬ状態を保てていたのは 貴殿の魔力がその様にさせていたのだっ …そうとなればっ」
アールモンドがハッとして言う
「そ、そうかっ!それなら…っ!」
アールモンドがアーサーへ向き直ってから アイザックへ向いて言う
「魔力って どうやって 与えるんだよっ!?先輩!?」
アイザックが衝撃を受けて言う
「この馬鹿っ!貴殿はそれでも ウィザードかっ!?」
アールモンドが叫ぶ
「ああ!馬鹿だよっ!アーサーを助けられるかもしれねぇって時に!俺は 分かんねぇモンは 分かんねぇんだよっ!」
アイザックが言う
「魔石を精製するのと同じだっ!魔法使いでも分かるだろう!?」
アールモンドがハッとして言う
「魔石の精製と同じ!?それなら!」
アールモンドがアーサーへ向き直ると アーサーを抱きしめて意識を向ける 周囲に魔力が集まる ソニアが心配げに見詰め アイザックを見る アイザックが見詰める アールモンドが魔力を与え続けている アールモンドが思う
(アーサーっ!…本当に これで 戻って来るのか?魔法で… 死者を蘇らせるなんて?…ンな事 出来っこねぇんじゃ ねぇのか?…けど だとしたら?アーサーは… もう…?)
アールモンドが目に涙を浮かべて言う
「アーサー… … アーサぁ~…っ」
アイザックが表情を落として言う
「…間に合わなかったか」
ソニアがアイザックを見上げる アイザックが視線を落として言う
「本当に命が落ちてしまってからでは…」
ソニアが反応し アールモンドの背を見る アイザックが思う
(私が もっと早くに気付けていれば… … … あるいは…)
アイザックが一度目を閉じてから顔を上げると気付く アールモンドが思う
(間に合わなかったって?俺がもっと早くに… いやっ!?そもそも 俺がっ あんな馬鹿な事で 俺は アーサーを…っ)
回想の中
アーサーが苦笑して言う
『子供の頃に言った言葉だけど 俺は ずっと それをして来たつもりだよ?だから 俺 その王様である アーリィーの傍を離されたら 俺… 死んじゃうよ?アーリィー?』
アールモンドが反応する アーサーが苦笑して言う
『”アーサー”の命は… 尽きちゃうよ?』
アールモンドが思う
(…俺がアーサーを 突き放したせいだっ アーサーはこうなるって事を 言っていたのにっ …なのに俺はっ!)
アールモンドが言う
『…尽きねぇよ』
アールモンドが思う
(馬鹿だ…っ 俺は馬鹿だっ 何でこうなるって事を考えなかったっ!アーサーはっ 俺のっ!!)
アールモンドが悔やんで叫ぶ
「アーサーーっ!」
アールモンドが魔力を解除して アーサーの身体を抱きしめて泣いて思う
(俺の 大切な…っ!)
アイザックが微笑する アイザックの視線の先 路地裏の建物の上にアークが佇んでいて 杖を持たない手の上に 光が在る アークが光を見る 光はふわふわと淡く光り 今すぐに向かいたい想いを押さえている様子 アークが光を見て微笑する 光が一度アークを振り返りフワリと浮くと アークがそっと光をすくっていた手を動かす 光がその手の導きのままにゆっくりと落ちて行くと アーサーを抱きしめるアールモンドの横で 柔らかな光の羽根となって アーサーの顔に落ちて消える アールモンドが泣き続けていると アーサーの声が聞こえる
『泣かないで アーリィー』
アールモンドがハッとする アーサーの身体がぴくっと動く アールモンドが呆気に取られると アーサーが言う
「俺が… 助け る… から…」
アールモンドが呆気に取られたまま言う
「アーサー…?」
アーサーが苦笑して言う
「けど… 今 は… ちょっと… 無理… かな?ごめん… ね… アーリィー…?」
アーサーの左手が動こうとして脱力する アールモンドが表情をほころばせて言う
「アーサー…?アーサーっ!?」
アーサーが息を切らせながら言う
「はぁ… はぁ… アーリィー…」
アールモンドが喜んで叫ぶ
「アーサー!?アーサー!!」
アーサーが苦笑して言う
「アーリィー… はぁ… はぁ… …っ … …」
アーサーが気絶する アールモンドが衝撃を受け 慌てて言う
「ア、アーサー!?アーサー!アーサー!?アーサーぁあ!!痛ぇっ!」
アールモンドが片手で頭を押さえている アイザックがアールモンドの頭を杖で殴った姿で言う
「何度も言わせるな!この馬鹿がっ!喧しく叫んでいないで 魔力を与えろっ!彼の状態は紙一重だと言う事を忘れるな!」
アールモンドがハッとして言う
「そ、そうだったっ!魔力をっ!?」
アールモンドが杖を握り アーサーへ魔力を向ける 杖が光り周囲に魔力が集まる アイザックが肩の力を抜く ソニアが苦笑して目尻の涙をぬぐう アイザックが見上げた先アークの姿は無くなっている アイザックが苦笑してから アールモンドを見る
アールモンドが魔力を送っている アーサーは落ち着いた息をしている アイザックが言う
「そろそろ落ち着いたか?」
アールモンドが作業を続けたまま言う
「…ああ」
アイザックが近くへ来る アールモンドが言う
「人に対して魔力を送るだなんて 初めてっから 良く分かんねぇけど 何となく」
アールモンドが思う
(落ち着いてきた… 気がする)
アールモンドの視線の先 アーサーが規則正しい寝息を立てている アールモンドが思う
(…それに …俺 自身も)
アールモンドが肩の力を抜く アイザックが言う
「では 場所を変えるべきだ」
アイザックが横目に路地の入口を見る ソニアの後方に見える入り口の手前に結界の歪みが見える アイザックがアールモンドへ向く アールモンドが言う
「分かった …恩に着るぜ 先輩」
アイザックが鼻で笑って言う
「ふっ… 貴族の尊厳を守る為だからな?」
アールモンドが苦笑して言う
「そうかよ… やっぱ 俺には 向いてねぇよ」
アイザックが言う
「…そうでもないさ」
アールモンドが疑問して顔を向ける アイザックが気を取り直して言う
「では行くぞ 私が送ってやる 貴殿は己とアーサー殿へ 結界を張って置け」
アールモンドが杖を握って言う
「おう 分かった」
アイザックが杖を構えると言う
「行くぞ ソニア」
ソニアがハッとして言う
「はいっ」
ソニアがアイザックの下へ向かう アイザックが杖を持つ手でソニアを包み 左手をアールモンドの背へ向ける アールモンドがアーサーを片手で抱き抑え杖を構える 4人の周囲に風が舞い 4人が消える 路地裏の入口から人が覗き込んで疑問する
レイモンド邸 アーサーの部屋
ミレイがハッとすると風が舞い 4人が現れる ミレイがアーサーの姿を見て驚いて一歩踏み出す アイザックが言う
「後は アーサー殿の身体から抜けてしまった お前の残留魔力と等しくなるまで魔力を与えれば 命の心配はなくなるだろう 今の様子から見て 恐らく… 3日は掛かると思われるが」
アールモンドが言う
「3日だろうが 4日だろうが やってやるよ もう そっちの心配は要らねぇ」
アイザックが微笑して言う
「だろうな?」
アールモンドが言う
「それよか 先輩」
アイザックが疑問して言う
「うん?」
アールモンドが言う
「先輩 俺よか力 強ぇだろ?だから… ちょっと 手ぇ貸してもらいてぇんだけど?」
アイザックが疑問したまま言う
「力?手を貸してくれと言う事は…」
アールモンドが苦笑して振り向いて言う
「俺の力じゃ… アーサーをベッドまで 持ち上げられねぇから…」
アイザックが衝撃を受ける ソニアが呆気に取られていると ソニアの前にアイザックが杖を向ける ソニアがハッとして杖を預かると アイザックがアールモンドを退かして言う
「この軟弱者がっ!それでも貴殿は男かっ!?退けっ!」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「う、うっせぇなっ!?男だって 重い物は重いっ!アーサーは俺よりデカイんだから 重てぇんだって!…えっ!?上がんのかよっ!?」
アイザックがアーサーを抱き上げて言う
「まったく情けない!近頃の貴族のガキはっ!」
アールモンドが衝撃を受け言う
「う、うるせぇよっ!先輩が強過ぎるだけだろっ!?」
ソニアが呆気に取られている状態から軽く笑い微笑する ミレイが周囲の様子に疑問した後ホッとして微笑する 奉者たちの前で アールモンドとアイザックが言っている
「アーサーを上げてくれた事は有難てぇけど 早く離れてくれっ 先輩 色々強ぇから アーサーに 先輩の魔力が入っちまいそうだっ!」
アイザックが衝撃を受けて言う
「この礼儀知らずが!出来る事なら このままこの優秀な従者を 貴殿から奪ってしまいたい位だ!」
アールモンドが衝撃を受けて慌てて言う
「や、やめろよっ!アーサーは俺の…っ!」
アイザックが離れて言う
「では 何かあれば 奉者を通じて 連絡を寄こせ …とは言え くれぐれも下らない要件で 呼び出す事だけはしてくれるなよ?」
アールモンドがアーサーへ魔力を送りながら言う
「ンなのは分かってる 先輩は忙しいんだろ?その合間を縫って来てくれた事 感謝してるぜ」
アイザックが言う
「まぁ そうではあるが…」
アールモンドが疑問して顔を向ける アイザックが背を向けて言う
「隙あらば 現代に残る唯一の従者である アーサー殿を奪い取る為に また3日後に来てやる 精々しっかりと 魔力を与えて置く事だ」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「えっ!?マジかよっ!?やっぱ その為に来てたのかよっ!?おいっ 先輩っ!?」
アイザックが立ち去る ソニアが呆気に取られていた状態から軽く笑い ミレイへ向いて言う
「では ミレイ奉者 アールモンドさんを お願いね?何かあったら 連絡を頂戴?」
ミレイが言う
「はい 畏まりました ソニア副会長 お疲れ様で御座います」
ソニアが微笑して言う
「お疲れ様」
アールモンドが言う
「おいっ ソニア副会長っ!先輩に言っとけよっ!?俺の従者に手ぇ出したら マジで許さねぇからってなっ!」
ソニアが笑ってから アールモンドへ言う
「うっふふ… では 頑張ってね アールモンドさん?怖~い先輩が 目を光らせていますからね?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「なっ!?そら どう言う意味だよっ!?ソニア副会長っ!?あ…っ!?おいっ!?」
ソニアが去って行く アールモンドが困惑しながら言う
「そ、そりゃ つまり 先輩がアーサーを狙ってるってのは マジなのかっ!?先輩の奉者まで 認めているってぇンじゃっ!?」
ミレイが呆気に取られた状態から笑い出す アールモンドが衝撃を受けて言う
「な、何で笑うんだよっ ミレイ!?あ!まさかっ!奉者協会は全員グルなのかっ!?やっぱ 奉者協会なんっつーのはっ 今も以前もっ!?」
ミレイがアールモンドに背を向けて笑っている アールモンドが困惑に怒り周囲に雷が迸っている
夜
月明かりの差し込む窓 アールモンドの杖が淡く光っている アールモンドがうつらうつらしていると アーサーが言う
「アーリィー…?」
アールモンドがハッとするとアーサーを見て言う
「アーサー!?大丈夫かっ!?」
アーサーが言う
「うん 俺は大丈夫だよ アーリィー それより アーリィー…」
アールモンドが気付いて言う
「あ、そうだった!電気付けっか?暗ぇのは 苦手なんだろっ?今付けてヤっから… …っ?」
アールモンドが立ち上がろうとした瞬間 アールモンドの左手が握られている アールモンドが気付いてアーサーへ向き直ると アーサーが言う
「行かないで アーリィ―…」
アールモンドが呆気に取られると苦笑して言う
「…おう 分かった 傍に居っから 安心しろ」
アールモンドが自分の腕を掴んでいるアーサーの手に触れ 左手を伸ばしているせいで起き上がりかけているアーサーを寝かせる アーサーが微笑して言う
「有難う アーリィー もう… 少しだけ… 傍に… 傍に …居てくれるだけで良いから 魔法… 使わないで… 疲れちゃう… でしょ?アーリィー…」
アールモンドが苦笑して言う
「心配すンな アーサー 俺はウィザード様だぜ?1日や2日位ぇ どおって事ねぇよ?」
アーサーが微笑して言う
「そう… なんだ…?やっぱり凄いね?アーリィーは… …けど 無理… しないで 俺… もう 大丈夫だから… …だから アーリィー… も…」
アールモンドが言う
「良いから お前は まだ寝てろ その方が… こっちもやり易い」
アーサーが言う
「そぉ?じゃ 俺 もう 少しだけ… …ごめんね アーリィー…」
アーサーが意識を失う アールモンドが苦笑して言う
「馬鹿 無理しやがって …見え見えなんだよ アーサー」
アールモンドが思う
(まだ コイツの意識を保てるだけの魔力は 送られてねぇか…)
アールモンドが言う
「…ごめんな」
アールモンドが思う
(お前の命を支える俺が こんな弱ぇ精神力のウィザード様でよ…)
アールモンドが言う
「俺の意識が弱まったせいで お前を起こしちまった… まったく…」
アールモンドが思う
(情けねぇな… 俺はよ…)
アールモンドが苦笑して 気を引き締める 杖の光が増す
3日目
昼の柔らかな日差しが差し込んでいる アールモンドが睡魔の限界で眠り掛けていると ゴッと言う音と共に悲鳴を上げる
「痛ぇ…っ」
アールモンドが顔を上げると アイザックが言う
「ウィザードともあろう者が 3日も持たないのか?」
アールモンドが顔を向けて言う
「…ルせぇな… 強ぇ先輩とは違って コッチは限界なんだよっ」
アイザックが言う
「居直ってどうする?」
アイザックの杖がアールモンドの頭に軽く当てられる アールモンドが不満げに殴られている アーサーの声が聞こえる
「アーリィー… 大丈夫?」
アールモンドがハッとして顔を上げて言う
「アーサーっ!?」
アーサーが苦笑して言う
「ごめんね アーリィー 俺… 助けてあげられなくて 痛かったでしょう?」
アールモンドが言う
「もう慣れたっ …ンな事よか お前はっ!?もう 本当にっ!?」
アーサーが言う
「俺は大丈夫だよ アーリィー もう本当に… 意識がふわふわする あの感じは 無くなったし… だから…」
アールモンドがホッとして言う
「そうか… なら…」
アールモンドが思う
(それなら 本当に… もう大丈夫かもしれねぇ… むしろ 俺の方が…)
アールモンドがアーサーを見て思う
(相手の魔力が見えねぇ… 俺の方が もう限界だって事だ…)
アールモンドが苦笑すると アイザックが言う
「ギリギリと言った所だ 命の心配は無いかもしれないが 無理をすれば そうとも言い切られない… それに」
アイザックがアーサーの右肩を見て言う
「貴殿は怪我を負っているのか?道理で 魔力の損失があると言うものだ」
アールモンドが反応して言う
「ん?ああ…」
アールモンドが思う
(そうか それで…?)
アイザックが言う
「最も 魔力の供給を行う 魔力者の質も 問われるものだが…」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「わ、悪かったなっ!?どおせ俺は 出来損ないのウィザードだっ けど それでだってなっ!?」
アールモンドがアーサーを見て思う
(元々アーサーの力を得ている俺の魔力は アーサーの力を高めるには向いている筈だ だから…)
アールモンドが言う
「命の心配がなくなったンなら そっちも今治してやるよ アーサー」
アールモンドが杖をアーサーの肩へ向ける アーサーが顔を向けると言う
「え…?けど 俺 大丈夫だよ アーリィー?何もしなければ痛みもないし 今はアーリィー 疲れているんだから 余り無理はしない方が」
アールモンドが言う
「痛みは無くても 体への負担にはなる それに動かねぇと不便だろ?大体… 元はと言えば 俺が負わせた怪我だ」
アイザックが言う
「回復魔法は 相手の治癒力となる相手の魔力を呼び起こすもの 魔力者の負う負担は無いとも言える 貴殿は気にせず 治癒を受ければ良い」
アーサーが言う
「そ… そうなんですか?そうと言う事なら… やっぱりお願いしちゃっても良いかな アーリィ―?」
アールモンドが言う
「おう 気にすンな」
アイザックが言う
「気になると言えば…」
アールモンドが言う
「じゃあ ちょっと痛ぇけど 耐えろよ?アーサー?」
アーサーが言う
「え?ちょっと痛いって?」
アールモンドが意識を向けると アーサーが感電して叫ぶ
「ぎゃぁあああーっ!?」
アールモンドが構えを解除して言う
「これで 折れちまってた骨どおしは近づけたから動くだろ?けど まだ完全に境は消えた訳じゃねぇから あんま無理はするなよ?アーサー?」
アーサーが右肩を押さえて居て言う
「う、うん… ありがとう… アーリィ―… ちょ、ちょっと堪えたけど… あ、凄い本当に 動く様になったよ アーリィー!」
アーサーが右手を動かしてアールモンドへ微笑む アールモンドが苦笑して言う
「無理すんじゃねぇぞ?」
アーサーが言う
「うん 分かったよ アーリィー」
アイザックが言う
「元はと言えば 貴殿が負わせた …とは?」
アールモンドがギクッとして言う
「お、おう…」
アールモンドが思う
(チッ… そこんトコは水に流しちゃくれなかったか…)
アイザックが言う
「聞き捨てならない言葉だ まさかとは思うが」
アールモンドが言う
「ああ… アーサーの怪我は 俺が魔法でやっちまった」
アーサーがハッとして言う
「アーリィーっ!」
アイザックが言う
「それは許されない事だ」
アーサーが慌てて言う
「あ、あのっ あれは その…っ じ、事故で…っ!」
アイザックが言う
「例えどのような理由があろうとも 魔力者がそれを扱えぬ者へ 魔法を用いて攻撃を行う事は許されない アールモンド卿」
アイザックがアールモンドへ一歩近づく アールモンドが沈黙する アーサーがベッドを出てアールモンドとアイザックの間に入って言う
「俺はアーリィーの従者ですっ 魔力者であっても その俺を攻撃する事は 法律には抵触しない筈です!」
アイザックが反応する アールモンドが言う
「アーサー?お前 従者の事…っ!?」
アイザックが言う
「それは過去に置いての話だ 貴族社会が崩壊した今 従者も通常の一庶民として 法律に守られる存在となった」
アーサーが言う
「それでも ウィザード様方の間では 今も黙認される事になっていると… グレーニッヒ様がっ」
アイザックが肩の力を抜いて言う
「彼が貴殿へ教えたか… 従者の事を?」
アールモンドが反応する アーサーが苦笑して言う
「はい… なので 他のウィザード様方には 気を付ける様にと… …っ!?」
アーサーの身体から力が抜け崩れる アールモンドが慌てて言う
「アーサーっ!?」
アールモンドがアーサーを支える アーサーが言う
「ご、ごめん… アーリィー 何だか急に… はぁ… はぁ… 体の… 力が…」
アイザックが言う
「…私の魔力にあてられたのだろう 今は貴殿はもちろん 貴殿の力の元となる アールモンド卿の魔力も落ちている 他のウィザードに気を付けろとは この事だ」
アールモンドがアーサーの身体を押さえながら言う
「アーサー!アーサー!?」
アーサーが苦しそうに言う
「ごめん… アーリィー… はぁ… はぁ… 体が… 動か ない… はぁ… はぁ…」
アールモンドがアーサーの身体を上げようとするがびくともしない アイザックが溜息を吐いて言う
「…まったく」
アイザックがソニアへ杖を向ける ソニアが苦笑して受け取ると アーサーの身体が抱き上げられる アーサーが驚くと アイザックがアーサーをベッドへ運んで言う
「力も精神力も弱いウィザードとは 情けない」
アールモンドが慌てて言う
「あぁあっ 先輩っ!有難てぇけど あんまアーサーに近づくなあっ!?」
アイザックがアールモンドへ怒って言う
「私が本気ならば とっくにアーサー殿を 失神させている所だっ!」
アーサーがベッドへ横たえられながら言う
「すみません アイザック様… ウィザード様へ 重い物を運ばせてしまうだなんて…」
アーサーが言う
「これで2度目だ 以前とは異なり 貴殿の意識がある分 今回はそれほど重くは無かった」
アーサーが衝撃を受け慌てて言う
「に、2度目!?2回もっ!?あのっ ホントに御免なさいっ!神様に選ばれたほどのウィザード様にっ お、俺…っ!」
アイザックが言う
「これに懲りて ウィザードの前には二度と立つな アールモンド卿が傍に居なければ 貴殿は確実に命を失っていた」
アーサーが呆気に取られる アイザックが言う
「それが分かっていて 何故そちらへ対する対策を行わないのか?それも… あろう事か 怪我を負わせた上に 己から突き放したとは?」
アイザックがアールモンドへ向く アールモンドが表情を渋らせて言う
「そ… それは…」
アールモンドがアーサーの首元を見る アーサーの首に銀色のチェーンが僅かに見えている アールモンドが視線を逸らして言う
「対策は…っ 俺じゃなくて…っ …そのグレーニッヒ様がしてくれたんだろ!?アーサー!」
アーサーが疑問して言う
「え?グレーニッヒ様が 対策…?」
アイザックがアーサーを見る アールモンドが言う
「黒曜石の指輪だっ」
アーサーが呆気に取られて言う
「指輪?俺… グレーニッヒ様のお店では アーリィ―へのプレゼントしか… そのブローチしか買ってないけど?」
アールモンドがアーサーの近くへ行って言う
「嘘言うなよっ アーサー!お前 その首に掛けてるだろっ!?黒曜石の指輪をよっ!」
アーサーが言う
「え?コレ…?これは… 黒曜石って言うの?アーリィー?」
アーサーがネックレスを引っ張り 指輪が現れる アールモンドが不貞腐れて顔を逸らす アイザックが言う
「黒曜石の指輪… 確かに そちらが在りさえすれば 他のウィザードを前にしても また 己の魔力を賭したウィザードから離れたとしても 魔力の喪失に伴う命の危機は防がれる …だが」
アールモンドが言う
「ああ!だから そいつがあるなら アーサーは俺から離れても 問題はねぇだろ?だから 突き放したんだっ …ま、怪我に関しては 悪かったって 思ってっけど…」
アーサーが呆気に取られている アイザックが言う
「黒曜石の指輪は ただ持っていたとしても 威力は発揮されない 己が生きたいと願わなければ… その為の魔力を取り戻したいと 強く念じる必要が在る …と 私も話の上でだが聞いている」
アールモンドがアーサーへ向いて言う
「そうだ …だから 何で お前… それを願わなかったんだよ?」
アールモンドが思う
(それも あろう事か… 最後の力を使って 俺の魔力を上げただなんて…)
アーサーが苦笑して言う
「それは… …俺はそれよりも あの時は 俺の何がアーリィーを 怒らせちゃったのかなって?何か俺 アーリィーを苦しめる様な事しちゃったのかな?って それを考えていたから 他の事は考えられなかったかなぁ?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「そ、それを考えてたのかよっ!?自分が死ぬかもしれねぇって時にっ!?」
アーサーが言う
「うん それで… いくら考えても分からなくて オマケに雨が降ってて寒いし 肩も痛いし…」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「わ、悪かった…」
アーサーが苦笑して言う
「ううん 大丈夫だよ アーリィー そんな事より 俺やっぱり… だんだん怖くなって来ちゃってね?だって 俺… グレーニッヒ様から聞いてたから?俺は従者だから アーリィーの傍を離れたら 3日で… 死んじゃうって…」
アールモンドがハッとして慌てて言う
「だ、だからっ お前はっ!その黒曜石の指輪を 貰ったんじゃねぇのかよっ!?」
アールモンドがアーサーの指輪を指さして思う
(俺じゃなくて 他のウィザードから…っ グレーニッヒ様から!)
アーサーが言う
「え?これは俺… アーリィーから貰った物だけど?」
アールモンドが衝撃を受け呆気に取られて言う
「は…?」
アーサーが指輪を見せて言う
「覚えてなぁい?アーリィー?昔 俺… アーリィーに 貰ったの?…あ、もしかして アーリィーはくれたつもりは無かったのかもね?”このゴミ捨てて置け” …って言ってたから?」
アールモンドが呆気に取られたまま言う
「は?はぁ?…お、俺が?黒曜石の指輪を…?」
アールモンドが思う
(捨てて置け… って?)
アイザックが笑い出す
「あっははははっ」
アーサーとアールモンドが衝撃を受ける アイザックが言う
「…まったく 何処までも情けない アールモンド卿?」
アールモンドが言う
「な、なんだよっ!?先輩っ!?」
アイザックが言う
「私は黒曜石の指輪と言う物は 実際に見た事は無いのだが」
アールモンドが言う
「だったら 俺は見た事があるっ!おまけに精製までしたんだから分かるっ!アーサーが今持ってる 真っ黒い魔石でっ 精製しても 光りもしねぇんだ!」
アイザックが言う
「では 彼が今 手にしている物が その黒曜石の指輪であると?」
アールモンドが言う
「そうだぜ!?見た事がねぇって言うなら 先輩も見ろよ!?これがその…!」
アイザックが言う
「アールモンド卿 私は確かに黒曜石の指輪は見た事が無いが アーサー殿が今手にしている そちらの指輪であるならば 私が今までに得たどの魔石よりも長く見ていた物だ」
アールモンドが疑問して言う
「は?どう言う事だ?見た事がねぇって言っときながら?」
アイザックが言う
「貴殿こそ 良く見て見ろ アールモンド卿 そちらの指輪は… 初級魔法使いの指輪だ」
アールモンドが衝撃をけて言う
「はあっ!?」
アイザックが言う
「それも 魔石が完全に力を失っている物… それを魔力者ではないアーサー殿が持っていると言う事は 貴殿が過去に使用し そちらの指輪の力を超えた際に アーサー殿へ ゴミであるから捨てろと 渡したものなのだろう?確かに力を失った魔石の価値は まったくと言って無い」
アールモンドが言う
「そ、そりゃ… 確かに 渡した様な気もするが…?」
アールモンドが思う
(だったら 何で…?)
アーサーが言う
「そうだよ アーリィー?それで俺 捨てるなら貰っても良い?って聞いたら アーリィー ”そんな石ッコロなら やるよ”って?そう言ってくれたんだけど… 覚えてないかなぁ?それで 俺 貰っちゃったんだけど?それが駄目だったのかな…?だとしたら ごめーん アーリィー?」
アールモンドがアーサーの指輪を見て言う
「…確かに 言われて見て見りゃ… コイツは…」
アールモンドが思う
(黒曜石の指輪じゃ… ねぇ…)
アールモンドが額を押さえる アイザックが言う
「なるほど?察する所 貴殿は己以外の魔力者から 黒曜石の指輪を受け取ったアーサー殿に 裏切られたと?その様に勘違いをして 彼を突き放したのか?その程度の事で 己の従者へ対する 信用を失うとは やはり 貴殿の精神力の弱さが伺える話だ」
アールモンドが怒って言う
「う、うるせぇっ!それだけじゃねぇえっ!」
アーサーが慌てて言う
「ご、ごめんね アーリィー 俺が 余計な物持っていたせいで…っ アーリィーに誤解させちゃったんだよねっ?だから 俺が…っ」
アールモンドが思う
(あぁ…っ もう…っ こうなったらっ)
アールモンドが言う
「アーサーっ!お前っ!」
アーサーが衝撃を受けて言う
「は、はいっ ごめんなさい アーリィーっ!?俺やっぱり何かしちゃったんだよね?俺 謝るから だから 許して…っ」
アールモンドが表情を苦しめて言う
「…だったら 答えろ アーサー 何で…?」
アーサーが言う
「な、なあに?アーリィー?俺 何か…?」
アールモンドが言う
「何で… 大会の事… フェンシング大会の事 俺に言わなかった?」
アーサーが衝撃を受け慌てて言う
「えっ!?あ、あれ?な、何で アーリィーが その事…っ!?」
アールモンドが言う
「何ででも良いっ!何で 俺に言わなかったっ!?」
アイザックが言う
「フェンシング大会?先日行われていた アーサー殿が優勝した あの大会の事か?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「あ、あれ?アイザック様にまで…っ?」
ソニアが微笑して言う
「今更の様だけど おめでとう アーサーさん 素敵だったわ?」
アーサーが慌てて言う
「えっ!?えっ!?あ、あの…っ 有難う御座います ソニア副会長っ いえ!?それより 何でそんなに知られて?元々フェンシングは マイナーな競技なんで まさか 皆さんに気付かれるだなんて 俺…っ!?」
ソニアが微笑して言う
「それはもちろん アーサーさんが出場していたから?」
アーサーが驚いて言う
「俺がっ!?」
ソニアが言う
「奉者協会にも 沢山問い合わせがあったのよ?以前まで出場しなかったのは 奉者協会の方針だったのか?とかね?奉者協会の方では 奉者のプライベートに関する事は お答え出来ませんと言う事にしておいたから?」
アーサーが言う
「す、すみません まさかそんな事になってただなんて… あ、でも そうですよね?アーリィーのファンの子たちも 応援に来てくれていたし… 俺、もう少し配慮が必要でした すみません…」
ソニアが言う
「良いのよ?奉者協会も 活気が必要だから アールモンドさんはもちろん アーサーさんの人気にも 助かっているわ?」
アーサーが苦笑して言う
「は、はぁ… そう言う事でしたら…?」
アールモンドがムスッとして言う
「…だからっ …何でっ」
アーサーがアールモンドを見る アールモンドが思う
(先輩やソニア副会長…っ ンで 今更だが いつも俺の灯魔作業にキャーキャー言ってやがる アイツらまで 知ってた… その大会の事を…っ!?)
アールモンドが言う
「何で 俺に言わなかったンだよっ!アーサー!お前は俺の奉者で世話役で… 従者だろっ!?だったら…っ!」
アールモンドが思う
(俺に…っ!言うだろっ!?)
アーサーが言う
「だって… それはその… …恥ずかしいじゃない?」
アールモンドが呆気に取られて言う
「は…?」
アールモンドが思う
(恥ずかしい…?)
アーサーが苦笑して言う
「そうだよ?俺はアーリィーの言う通り アーリィーの奉者で世話役で従者なんだから… 魔力者ではないけれど その非魔力者の人の中では 一番 ウィザード様の事を… …魔法の凄さを 知っている人間だよ?それなのに …フェンシング大会だなんて」
アールモンドが言う
「…?どう言う事だ?」
アールモンドが思う
(その魔法と お前のフェンシング大会と どう関係が?)
アーサーが言う
「だ、だから… フェンシングは元々 身を守る為の剣術で… その大会に… 出るだけなら兎も角 優勝しちゃったんだから…」
アールモンドが言う
「ますます分かんねぇ…」
アーサーが苦笑して言う
「え?分からない… かな?」
アールモンドが言う
「分かんねぇよ?まったくの下手クソで ボロ負けしたって言うんなら お前の言う 恥ずかしいってのも分からなくもねぇけど… 優勝したんじゃねぇかよ?お前はよ?」
アールモンドが思う
(だったら 喜べば良いだろ?それこそ 俺に 言って来れば良い そしたら 俺だって… お前と一緒に喜んで …それで …指輪だって お前に… 銀の指輪を…)
アーサーが言う
「恥ずかしいよ… だって 優勝したって事は それだけ… 俺が本気だって事… どの選手よりも 頑張って来たって事… 分かっちゃうでしょ?」
アールモンドが言う
「そりゃ?そうだろ…?いや、俺は分かんねぇけど 優勝するって事は 簡単な事じゃねぇだろ?他の奴らより 修行して 苦労して… だから勝てたんだろうがよ?それがどうして恥ずかしいんだ?お前が世界一強いフェンサーなんだろ?」
アールモンドが思う
(お前が昔喜んでいた お前の親父と同じで…)
アーサーが言う
「そうだとしても… …いくら強くても… 剣で魔法には 敵わないじゃない?」
アールモンドが呆気に取られる アーサーが苦笑して言う
「それなのに… それが一番分かっている筈の ウィザード様の奉者で世話役で… 従者でもある 俺が 本気で剣をやってるなんて…っ ね?他の皆より頑張っちゃってるなんて 恥ずかしいじゃない?どんなに強いフェンサーになったって 魔法には勝てない… それが一番分かっている筈の人間なのに…」
アールモンドが思う
(どんなに強いフェンサーになったって… 剣で魔法には勝てない… それは… 確かに そうかもしれねぇけど… …けどっ)
アーサーが苦笑して言う
「けど 俺が知らないだけで アーリィーにも 奉者協会にも… アイザック様やソニア副会長にも知られちゃってただなんてね?…俺 今 凄く 恥ずかしくて… どうしたら良いのか…っ」
アールモンドが手を握り締め言う
「…恥ずかしくなんか ねぇだろ…っ?」
アーサーがアールモンドを見て言う
「え?」
アールモンドが言う
「確かに 魔法が相手じゃ お前は勝てねぇっ けどっ …同じ人間が相手なら お前の方が強ぇって事だろ!?」
アーサーが言う
「それは… そうだ けど…?だけど…」
アールモンドが言う
「だけども何もねぇっ!だったら それで良いじゃねぇかっ!?大体 魔力者は魔力を使わねぇ人間に魔法を使っちゃいけねぇんだっ!だったら そン時はっ お前が俺を守るンだろっ!?」
アーサーが呆気に取られて言う
「あ… そ、そう だね?言われてみれば?」
アールモンドが言う
「そのお前が世界一強ぇんなら 俺は世界一安全じゃねぇか?だったら 上等だ!メディアを通じて 俺には世界一強ぇ フェンサーが付いてるんだって 言い知らせたんじゃねぇかよっ!?」
アーサーが微笑して言う
「うん そうだね?それなら 俺 嬉しいよ アーリィー」
アールモンドが言う
「馬鹿!今更かよ!?ならやっぱ アーサーの馬鹿のせいで 今回の騒動が起きたんじゃねぇか?」
アーサーが言う
「そうだね?ごめーん アーリィー 俺も 今 分かったよ?」
アールモンドがアイザックへ向いて言う
「って訳だから 先輩にも 色々迷惑かけたな?俺の奉者の馬鹿のせいでよ?」
アーサーが苦笑して言う
「すみませんでした アイザック様 ソニア副会長も 俺の馬鹿せいで お忙しいお二人に ご迷惑を」
アイザックが言う
「確かに精神力の弱い アールモンド卿のお陰で 多大な迷惑を被ったが」
アールモンドが衝撃をけて言う
「俺かよっ!?」
アイザックが言う
「そもそも 冷静な目を持って見れば 初級魔法使いの指輪も 黒曜石の指輪も その どちらも知らぬとあっても そちらの指輪が 相応の物では無い と言う事は分かると言うものだ」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「えっ!?わ、分かる… か?」
アールモンドがアーサーの指輪を見る ソニアが言う
「私も気になっていたのですが その指輪は… 随分と小さなサイズですよね?まるで子供のオモチャみたいで?」
アールモンドが衝撃を受ける アーサーが微笑して言う
「そうですね?何しろ アーリィーが5歳の頃に着けていた物ですから?俺も貰った当時でギリギリ小指に入るくらいで 今ではまったく?」
アーサーが言いながら 指輪を小指に通そうとするが入らない アールモンドが怒りを抑える アイザックが言う
「従者は通常は大人がなるものだ そうとあれば 黒曜石の指輪は少なくとも 大人の指に入るサイズでなければ 意味が無い」
アールモンドが怒って言う
「だぁあっ クソッ!悪かったなっ!俺が悪ぃんだろ!?」
アーサーが言う
「そんな事無いよ アーリィー 俺が…」
アールモンドが言う
「そうだぜっ!アーサー!お前が!」
アーサーが言う
「ごめーん アーリィー」
アールモンドが言う
「何でこんなゴミを 何時までも持ってたんだよっ アーサーっ!?いくら俺がお前に ”やる”って言ったからってなっ!?」
アーサーが苦笑して言う
「そうだね?ごめんね アーリィー?」
アールモンドが言う
「ごめんじゃねぇ!俺は 理由を聞いてンだよっ!アーサー!」
アーサーが衝撃を受けて言う
「え?それ 聞く?聞いちゃうの?それだけは… 俺… 勘弁して欲しいんだけど…っ」
アールモンドが言う
「いやっ!駄目だっ 許さねぇ!」
アールモンドが思う
(また こんな事になるくれぇなら 無理やりにでも聞いて置くっ!じゃねぇと 俺は…っ)
アールモンドが言う
「理由を言えっ!アーサー!」
アーサーが観念して言う
「うぅう… それじゃ 言う… けど…」
アールモンドが言う
「おうっ」
アールモンドが思う
(どんな理由でも良い 俺は今度こそ 何があっても お前を守らなけりゃならねぇんだ …だったら)
アールモンドが言う
「そういや そいつはお前にとって お守りだとか 言ってたよな?」
アールモンドが思う
(だったら ソイツに魔力を与えて 本当にお守りになる様にしてやるってぇのも…?いや流石に 石コロじゃキツイか…?だったら…)
アーサーが言う
「そう俺にとっては お守り… なんだけどね?…あははっ やっぱり 恥ずかしい あぁ…っ 本当に 今度ばかりは… けど…?」
アールモンドがじっと見詰める アーサーが苦笑して言う
「その… これはね?俺… アーリィーから貰った物でしょ?だから… その…」
アールモンドが言う
「やったと言うより… まぁ 良い いくら初級魔法使いの指輪でも 普通の人間が持ったんじゃ何の意味もねぇぜ?おまけに その魔石はもう ただの石コロだ」
アーサーが言う
「うん けど アーリィー最初のこの指輪は 大切にしていて 毎日ちゃんと拭いていたでしょ?」
アールモンドが横目にデスクの上にある新聞を見てから言う
「まさか また?あの新聞みてぇに 俺が初級魔法使いの力を超えた 記念だとか言うんじゃねぇだろうな?」
アーサーが苦笑して言う
「ああ そうだね?確かに その思い出もあるけどね?けど… それも もちろんだけど 俺 実は その…」
皆が注目する アーサーが首からネックレスを外し 指輪を手に言う
「この指輪 普通はこうだと思うけど こうして… 逆さまにしてね 魔石の部分を隠すと…」
アーサーが指輪の魔石の部分を持って言う
「この指輪 毎日磨かないと黒くなっちゃうんだ …銀で 出来てるから」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「お、お前っ!?まさかっ それでっ!?」
アーサーが言う
「そうっ だから 俺にとっては アーリィーに貰った 銀の指輪だって…っ あ… あははっ は、恥ずかしい… 俺 もう30にもなるのに 10歳の頃にそう思った物を 今も お守りにしているだなんて…ね?だ、だから 言えなかったんだよ…っ アーリィー…っ」
アーサーが赤面した顔を隠す アールモンドが額を押さえて言う
「~~っ!アーサーぁああっ」
アーサーが言う
「ご、ごめーん アーリィー… 俺…っ こんな恥ずかしい奴で…っ」
アールモンドがアイザックへ頭を下げて言う
「アーサーの馬鹿のせいで 本当にすまなかった!先輩っ!」
アーサーが頭を下げて言う
「俺の馬鹿のせいで すみませんでしたっ」
アイザックが苦笑して言う
「戻るぞ ソニア 仕事が山積みだろう?」
ソニアが言う
「そうですね?貴方…」
アールモンドが言う
「この借りは いつか 返すっから」
アイザックが言う
「アールモンド卿」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「お、おうっ!?今かよ!?」
アイザックが言う
「貴殿への忠義に厚い騎士殿は 未だ魔力が足りていない 動かれる程度にまでは魔力を与え続けろ その後は 自然と残留魔力が補うだろう」
アールモンドが気を取り直して言う
「え?お、おう 分かった…」
アイザックが軽く笑って立ち去る アールモンドが微笑する
奉者協会 エントランス
アイザックとソニアが風に現れると アイザックが歩き始め ソニアが続く
通路
アイザックが歩きながら言う
「仕事は山積みか?ソニア?」
ソニアが軽く笑って言う
「さぁ どうでしょう?最近の問題は アールモンドさんの公開上級魔法は いつからまた始まるのかと?そちらの問い合わせが多数でしたので」
アイザックが言う
「そうか では アーサー殿が動かれる様になれば 今回の貸しを 早速返させれば良いだろう 全てのオファーを受けて置け ソニア」
ソニアが笑う アイザックが軽く笑う ソニアが言う
「そう言えば…」
アイザックが疑問する ソニアが言う
「アーサーさんの言ってらした 銀の指輪とは?一体どう言った意味だったのでしょう?石コロとなってしまった魔石は無くても 綺麗な指輪だと言う意味だったのでしょうかね?」
アイザックが言う
「銀の指輪は… 騎士の名誉であると」
ソニアが反応する アイザックが微笑しいて言う
「その様な話を 昔 屋敷にあった本で 読んだ事があった気がする アーサー殿の言葉であったから 思い出せたのかもしれないが」
ソニアが言う
「騎士の名誉… うふっ それでしたら アーサーさんに お似合いですね?」
アイザックが言う
「ああ… 最も 指に入らない程の小さな指輪では 彼には似つかわしくは無いだろうが」
ソニアが言う
「そちらが入る頃からの アールモンドさんの騎士様なのでしょう?」
アイザックが言う
「そうだな… 彼らの心配は もう無いだろう」
ソニアが言う
「はい そうですね 貴方…?」
アイザックが苦笑する ソニアが微笑する 2人が通路を歩いて行く
レイモンド邸 アーサーの部屋
ミレイが携帯メールを確認してから顔を向ける ミレイの視線の先 アールモンドがアーサーへ魔力を送っている ミレイが微笑して携帯をしまいアーサーを見る アーサーは眠っている
夜
アールモンドが限界に達しっている 杖が光を失い倒れる ミレイがうつらうつらしていた状態で杖の倒れる音にハッとして顔を向けると アールモンドがアーサーのベッドへ倒れ込んで眠っている ミレイが近くへ向かおうと踏み出すとハッとする アールモンドの肩にアーサーの手が置かれる アールモンドは眠っている ミレイが見詰める先 アールモンドがアーサーに抱きかかえられ アーサーが部屋の出入り口へ向かう ミレイがアーサーへ言葉を掛けようとするが 言葉を飲み 部屋の出入り口のドアを開ける アーサーがアールモンドを抱えたまま部屋を出る
アールモンドの部屋
寝室のドアが開けられ アーサーがアールモンドを抱えて来て ベッドへ寝かせる ミレイが入り口付近で見つめている アーサーがアールモンドの服を脱がせ始める ミレイが疑問するとハッとして背を向ける アーサーがアールモンドの法魔帯を解いて行き 再び服を着せる ミレイが横目に確認してからホッとして向き直る アーサーがアールモンドへ毛布を掛けアールモンドを見詰めると アールモンドが寝言を言う
「… アー サー…」
ミレイが気付き苦笑する アーサーが言う
「なあに?アーリィー?俺はアーリィーの傍に居るよ?」
アールモンドの身体から力が抜ける アーサーが微笑する ミレイが微笑するとハッとする アーサーがアールモンドに触れて言う
「有難う… アーリィー…」
ミレイが思わず赤面して手で顔を隠すと背を向ける 間もなくして背後に気配を感じ顔を向けると アーサーが法魔帯を手に居てミレイを見て微笑する ミレイがハッとして自分の前のドアを開ける
リビング
アーサーとミレイがやって来る アーサーが言う
「お久しぶりです ミレイさん」
ミレイが言う
「はい ご無沙汰で御座いました アーサー奉者… いえ?従者様とおっしゃるのでしたね?」
アーサーが苦笑して言う
「奉者で良いです それと 有難う御座いました」
ミレイが疑問して言う
「はい?わたくしが何か?」
アーサーが微笑して言う
「ドアを開けてもらいまして?助かりました!」
ミレイが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「…あぁ いえ?大した事では御座いませんので お気になさらずに?」
アーサーが言う
「それに 俺が居ない間 また アーリィーの奉者役をして頂いたのでは?」
ミレイが言う
「はい そちらは… 何かと力不足では御座いましたが わたくしが務めさせて頂きました」
アーサーが言う
「有難う御座いました」
ミレイが言う
「お礼を頂くには至りません こちらこそ 多くを学ばせて頂きましたので」
アーサーが言う
「そうでしたか しかし お礼は受け取って下さい 本来であれば 俺が行うべき事ですから」
ミレイが言う
「…では わたくしからも」
アーサーが疑問して言う
「はい?」
ミレイが言う
「アーサー奉者がお休みの間に 奉者協会から… いえ?ソニア副会長から 連絡が届きまして アールモンド様のご体調が整い次第 奉者協会へ連絡を頂きたいと… その様にアーサーさんへ伝えて欲しいとの事でした」
アーサーが言う
「そうでしたか 分かりました それじゃ 後の事は俺に任せて下さい ミレイさん」
ミレイが苦笑して言う
「そうですね… やはり わたくしよりも… 長年付き添って来られた アーサーさんの方が アールモンド様も お気を許されるのでしょうね…?」
アーサーが笑顔で言う
「そうですね!何しろ 俺は20年間も アーリィーの世話役をしていますから?誰にも負けるつもりはありません!」
ミレイが言う
「そうですか… 20年も お世話係を…?」
アーサーが言う
「はい!」
ミレイが言う
「では これからも アーサーさんは アールモンド様のお世話係を 続けられるのですね?」
アーサーが言う
「もちろんです 俺には それしかありません それに 俺はアーリィーの従者でもあるので 余り離れる訳にも行きませんから?」
ミレイが言う
「分かりました では…」
アーサーが言う
「はい お世話になりました ミレイさん」
ミレイが顔を逸らして言う
「これからも アーサーさんは お世話係を続けて下さい そして わたくしが アールモンド様の奉者を続けますので?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「そうなのっ!?」
ミレイが軽く笑って言う
「うふ…っ 冗談ですよ?アーサー奉者?」
アーサーが苦笑して言う
「そ、そうでしたか びっくりしました」
ミレイが言う
「わたくしでは アールモンド様の奉者は務まりません… そちらを痛感させられました」
アーサーが呆気に取られて言う
「え…?えっと…?アーリィーが そんなに?ミレイさんへ 何か…?」
ミレイが言う
「いいえ アールモンド様は… とてもお優しいウィザード様です」
アーサーが言う
「はい!そうでしょう!…ん?あれ?それじゃ…?」
ミレイが言う
「嬉しい時に 名を呼んで頂ける事は 確かに喜ばしくは御座いましたが…」
ミレイの回想
アールモンドの部屋 リビング
ミレイが時計を見ると22時過ぎを示している ミレイが立ち上がると寝室のドアへ向かう
寝室
ミレイがドアを開け覗き込む アールモンドが法衣を着たままベッドで寝ている ミレイが微笑して立ち去ろうとすると アールモンドの声が聞こえる
『…サー… アーサー… …っ』
ミレイがハッとすると部屋へ入り アールモンドの傍へ向かうと アールモンドが苦しそうにしている ミレイが驚き言う
『アールモンド様?いかがなさいましたか?何処かお加減が?』
アールモンドが言う
『…アーサー… 熱い… 苦しい… アーサー… アーサー…っ』
ミレイが言う
『アールモンド様っ!?』
ミレイが思う
《熱い?まさか ご体調が!?お風邪でも 引かれてしまったしまったのではっ!?》
ミレイがアールモンドの額に手を当てて自分の額と比べる アールモンドが間を置いてホッとして言う
『…アーサー…』
ミレイが呆気に取られて思う
《熱は… ない…?》
ミレイがアールモンドを見ると アールモンドは静かに寝ている ミレイが苦笑して言う
『寝言…?』
ミレイが思う
《何か悪い夢でも ご覧になっているのかしら?それとも…?》
ミレイが苦笑して言う
『過去の… お辛かった時の夢を ご覧ですか?アールモンド様?』
アールモンドは静かに眠っている
ミレイが言う
「苦しい時に 名を呼んで 助けを求めて頂ける… アーサー奉者を アールモンド様は 選ばれるでしょう?わたくしに出番は御座いません」
アーサーが言う
「俺はずっと アーリィーと一緒に居ましたから!けど 名を呼んで 助けを求められても 結局 俺は 何も出来ませんでしたけどね?あははっ」
ミレイが微笑して言う
「そう思っていらっしゃるのですね?アーサー様も?」
アーサーが疑問して言う
「え?そう思ってって…?」
ミレイが間を置いて言う
「…いえ?何でも御座いません 従者様?」
アーサーが疑問して言う
「へ?はぁ?」
ミレイが微笑して思う
(そちらは 私がお伝えするべき事では ないのでしょう…)
ミレイがアールモンドの眠っている寝室のドアを一度見る アーサーが疑問してミレイの視線を追う ミレイがアーサーへ向いて言う
「では わたくしはこれで 失礼させて頂きます どうか アーサー様も ご自愛を」
アーサーが気を取り直して言う
「はい 有難う御座います」
ミレイがアーサーへ礼をする アーサーが礼を返すと ミレイがもう一度寝室のドアを見て思う
(さようなら… わたくしのウィザード様… アールモンド様…)
ミレイが立ち去る アーサーが見詰めている ドアが閉まる アーサーが肩の力を抜くと アールモンドの寝室への扉を見て微笑してから 手に持っている法魔帯に気付き部屋を出て行く
朝
アールモンドが眠っている カーテンが開かれ アールモンドの顔に朝日が掛かる アールモンドが眩しそうに言う
「…ン?」
アーサーの声が聞こえる
「おはよう!アーリィー!今日も良い天気だよ!」
アールモンドが目を開きながら思う
(アーサー?)
アールモンドがハッとする アーサーがアールモンドの前で微笑する アールモンドが言いながら飛び起きる
「アーサーっ!?」
ゴンッ と鈍い音 アールモンドとアーサーが額を押さえて蹲る アールモンドがうめき声を上げる
「ぐぅ…っ」
アーサーが苦笑して言う
「ご、ごめんね アーリィー 俺 ちょっと 近過ぎちゃったね?」
アールモンドが痛みに耐えながら言う
「い、いや…っ 俺が…っ …うぅ…」
アールモンドが思う
(ゆ、夢じゃねぇ… 今度こそ…!?)
アールモンドがアーサーを見る アーサーが額を押さえつつ苦笑する アールモンドが苦笑して思う
(この痛みは… 夢なんかじゃねぇな?…ならぁ)
アールモンドが額を押さえて言う
「身体… 大丈夫 かよ?…アーサー?」
アーサーが言う
「うん!アーリィーが魔力を沢山くれたから 俺はもう大丈夫だよ アーリィー?」
アールモンドが苦笑して言う
「そうかよ…」
アールモンドが思う
(俺はお前に…)
アーサーが言う
「それよりも アーリィー?お風呂に入りたくはなあい?」
アールモンドが気付くと言う
「ん?…あぁ そういやぁ… …いつもの時間じゃねぇが 確かに… そうだな?」
アーサーが笑顔で言う
「うん!俺 用意しておいたから!」
アールモンドが苦笑する
浴室
アールモンドが入浴している アールモンドが思う
(やっぱ風呂はこれが良い… 浴槽も綺麗で気分が良いし…)
アーサーが石鹸を泡立てている アールモンドが思う
(自分じゃ背中を洗えねぇ って心配もねぇ…)
アールモンドが湯に身を沈めて思う
(それに この湯も…)
アーサーが言う
「湯加減はどお?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ああ…」
アールモンドが思う
(全部ひっくるめて…)
アーサーが微笑する アールモンドが続けて言う
「最高だ」
アーサーが呆気に取られて言う
「へ?ふえぇえ?」
アールモンドが言う
「湯加減はもちろんだが 浴槽が綺麗だと やっぱ気分が良い… お前 朝から風呂の掃除なンかしてたのかよ?アーサー?」
アールモンドが思う
(コイツは俺の世話役だから 俺の風呂の世話をするのも 仕事の内なンだろうが…)
アーサーが言う
「あ、うん そうだよ!俺も今朝お風呂に入って気持ち良かったから アーリィーも入りたいだろうなぁと思って?」
アールモンドが言う
「そうかよ…」
アールモンドが思う
(自分が良かったから… だから 俺が言わなくても… いつも入る 時間でもねぇのに)
アールモンドがアーサーを見る アーサーが微笑して作業を再開する アールモンドが思う
(そうだよな?こいつは昔から そういう奴だ)
アールモンドが息を吐き 湯を感じて思う
(コイツが居なかった この数日間… 風呂は入ったが あンまり気分の良いモンでも無かった… それに…)
アールモンドが湯から上がる
脱衣所
アールモンドがドライヤーの風を受けている アーサーがアールモンドの髪を乾かしている アールモンドが思う
(髪は拭くだけで ドライヤーなんか考えもしなかった… けど コイツもやっぱ…)
アーサーが言う
「はい 乾いたよ アーリィー?後はちょっと 熱を逃がそっか?今日はそんなに暑くないから 少しだけ… ぴゅ~!はい!お終い!どお?アーリィー?」
アールモンドが風を受けて思う
(今日は暑くねぇから とか… そんな事も考えてよ…?)
アーサーが言う
「アーリィー?どうかした?やっぱり ちょっと寒かったかなぁ?湯上りなら 丁度良いかと思ったんだけど?」
アールモンドが言う
「いや 丁度良かったぜ」
アーサーが微笑して言う
「なら 良かった!それじゃ 後は!」
寝室
アールモンドがベッドに腰かけている アーサーが法魔帯を伸ばし アールモンドの前に跪く アールモンドが思う
(…でもって コッチは 奉者の仕事かよ…)
アーサーがアールモンドの左足から法魔帯を巻きながら言う
「アーリィーに 法魔帯を巻くのも 何だか久しぶりだね?」
アーサーが伸ばした法魔帯を2本にして包み込むように巻いて行く アールモンドが思う
(そうだな これだって やっぱ俺は…)
アーサーが思い出して言う
「あ!でも アーリィーは ミレイさんに巻いてもらってたから 久しぶりじゃないんだよね?ごめーん アーリィー?」
アールモンドが言う
「確かに アイツに巻いてもらってたけどよ」
アーサーが法魔帯をアールモンドの膝まで巻くと 巻き終えた場所を手で擦り上げる アールモンドが思う
(ああ そうだ この感じだ 法魔帯の巻き加減を見てんだか 何だか知らねぇけど アーサーはこうやって巻いて行く… 巻き方の違いはもちろんだが 区切り区切りで そうやって触られんのが… 何だかマッサージみてぇで 気分が良い… それにコイツの手は暖けぇから 身体がビビる事もねぇし)
アールモンドがアーサーを見下ろす アーサーは嬉しそうに法魔帯を巻いている アールモンドが思う
(慣れた手つきに 力加減… それに)
アーサーがアールモンドの腰に法魔帯を仮止めして言う
「はい 下は終わったから 先にズボンはいちゃうね?」
アーサーがアールモンドにズボンをはかせる アールモンドが思う
(こればっかりは やっぱ 同じ男の方が良い…)
アールモンドがアーサーを見る アーサーが顔を上げアールモンドと目が合うと疑問して言う
「ん?どうかした?アーリィー?」
アールモンドが視線を逸らして言う
「…ンでもねぇ」
アーサーが微笑して言う
「そお?じゃ 次は左手から続きしちゃうね?」
アールモンドが言う
「ああ…」
アーサーがアールモンドの左手から法魔帯を巻いて行く アールモンドが思う
(戻ってみりゃ 今までの毎日の事が 俺にとっては一番良い… けど俺は ンな事には気付きもしなかったし… オマケに…)
アールモンドがアーサーを見てからアーサーの肩を見て言う
「肩… どうだよ?」
アーサーが一瞬疑問すると気付き微笑して言う
「え?ああ、うん!もう全然痛くないんだ!ありがと アーリィー!」
アールモンドがアーサーのまっすぐな瞳に視線を逸らして思う
(その怪我は俺が負わせたってぇのに… コイツは…)
アーサーが微笑して法魔帯を巻いて行く アールモンドが肩の力を抜いて思う
(けどそうだ コイツは やっぱりこういう奴だ 俺が何をやっても怒らねぇし… 何を言っても…)
アールモンドが作業を続けるアーサーを見て表情を落として思う
(…けどよ アーサー?いくら仕事でも そこまでするかよ?怪我をさせられても 濡れ衣を着せられて 追い出されても 文句も言わねぇで… 最後にゃ お前の命までまで 俺に賭しちまう… それが… それが お前の… 従者の仕事なのか?…もしそうだってぇンなら)
アーサーが仕上げをして言う
「はい お終い!お待たせ アーリィー!それじゃ 上着も着て~」
アールモンドが上着を着せられながら言う
「…アーサー」
アーサーが言う
「うん?なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「悪かった…」
アーサーが呆気に取られて言う
「へ?ふえぇえっ!?え、えっとっ?何かあったっけ?アーリィー?」
アールモンドが視線を落として言う
「今回の事も… 今までも… 俺はお前に… 酷く当たり過ぎてただろ?」
アーサーが呆気に取られた状態から慌てて言う
「え?え?えぇっと?ど、どうしちゃったのっ!?アーリィー!?俺 何かしちゃったっ!?もしそうなら謝るからっ だからそんな事言わないでっ アーリィー!?」
アールモンドが言う
「ンだよ?俺は真面目に言ってンだ」
アーサーが呆気に取られる アールモンドが言う
「いくらお前が俺の 世話役だからって… 俺の従者だからって お前は十分やってンだし… ここまでの事をさせてンだから 俺も… その… 相応の対応をしてやるべきだった」
アーサーが困惑して苦笑して言う
「えーっと アーリィー?その ひょっとして 俺 …褒められてるのかなぁ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ああ、そうだ 褒めて… つーか むしろ やり過ぎだって 怒りてぇ所だが」
アーサーがホッとして苦笑して言う
「そ、そうだよねっ!?アーリィーが俺の事褒めてくれるなんてっ ね?俺 やり過ぎだって?怒られてるんだよねっ!?だ、だから ごめーん アーリィー?」
アールモンドが言う
「いや… つまり そいつが やり過ぎだって…っ」
アーサーが衝撃を受けて言う
「これがダメなのっ!?」
アールモンドが思わず立ち上がって言う
「だからっ!アーサーっ!」
アーサーが衝撃を受けて言う
「はいっ!?御免なさいっ!?」
アールモンドが溜息を吐いて額を押さえて腰をおろすと言う
「… そうじゃねぇ… 俺は… もう… お前を追い出したりなんかしねぇから…」
アールモンドが思う
(ンな事は もう出来ねぇし… 俺だって したかねぇ …それに)
アーサーが呆気に取られる アールモンドが視線を落として言う
「今までの事も感謝してるし これからも… 宜しく頼みてぇと思ってる」
アーサーが言う
「アーリィー…」
アールモンドが言う
「だから その…」
アールモンドが思う
(だから…?どうしたら良いんだろうな?俺はお前に… 仕事以上の事をしてもらってるって… その感謝を伝えてぇんだけど… それが仕事だからって返されちまったら終わっちまうし… 何か 礼を…?)
アールモンドがアーサーを見ると思う
(褒美を?褒美… なら やっぱ 銀の指輪か?いや ンな餓鬼みてぇな事は …なら?そうだっ)
アールモンドが言う
「…いくら欲しい?」
アーサーが言う
「え?」
アールモンドが言う
「今回の… 賠償金って奴だ」
アールモンドが思う
(仕事と言や やっぱ金だろ?それが大人の世界って奴だ)
アールモンドが言う
「それから」
アールモンドの脳裏に記憶が蘇る
『今度の休暇は何時かしら?今月はお手当てが良かったから!』
『お坊ちゃまのご機嫌さえ取っておけばボーナスが付くんだから お屋敷付きは辞められないわよね!』
メイドたちが笑っている 扉の内側で幼いアールモンドが悔しがっている
アールモンドが言う
「手当ても上げてやるよ ボーナスって奴だ いくら…」
アールモンドが思う
(…いや?確か?)
アールモンドが言う
「何倍欲しい?今回は何倍でも良いぜ?お前の欲しいだけくれてやるよ」
アールモンドがアーサーを見て思う
(さぁ?これで良いだろ …例え アイツらと同じでも お前は特別だ だから… これで良い… これが大人の世界で コイツだって その金で生きてる…)
アーサーが苦笑して言う
「そんなの 俺 要らないよ アーリィー」
アールモンドが思う
(だから 金をやるのが…)
アールモンドが言う
「あぁ?」
アーサーが右肩を押さえて言う
「肩の怪我は 治してもらったし それに 俺 アーリィーから お金を貰いたいだなんて 思わないよ」
アールモンドが視線を逸らして言う
「…そうかよ」
アールモンドが思う
(金は要らねぇ?…ンな訳ねぇだろ?…受け取り辛ぇってんなら)
アーサーが苦笑して言う
「うん!だから俺…」
アールモンドが言う
「なら ボーナスぐれぇ 受け取れよ?うちは元とは言え 貴族のレイモンド家だ お前が喜ぶ位ぇの額は 余裕で出してやれるぜ?」
アーサーが一瞬反応してから視線を逸らして言う
「…あ それは… そうだよね?えっと… なら… 今回だけ ちょっと… 甘えちゃおうかなぁ…?けど、ボーナスなんて… 本当に 俺 貰っちゃって良いのかな?」
アールモンドが苦笑して言う
「おう 言えよ?アーサー?いくら… いや、何倍欲しいンだよ?」
アールモンドがアーサーを見ながら思う
(これなら良い… アイツらと違って アーサーは誠実だ 金が必要なのは誰だって同じで コイツにだって必要で それでコイツは十分務めを果たした上に それ以上に俺に尽くす… だっだら俺が コイツに相応の金を与えてやる …それが 主と雇われの関係 俺とお前の…)
アーサーが言う
「それじゃぁ アーリィー!俺 ボーナスは 3万倍 欲しいんだけど?」
アールモンドが呆気に取られて言う
「は?」
アーサーが閃いて言う
「あ!ごめーん 間違えた アーリィー!俺…」
アールモンドが言う
「お、おう…っ ば、馬鹿 間違え過ぎだろ?」
アールモンドが思う
(まったく コイツは… こんな時まで…)
アーサーが言う
「3万1千倍の間違えだったよ!ごめーん アーリィー?」
アールモンドが慌てて言う
「はあぁあ!?い、いやっ ちょっと待てっ!?」
アールモンドが思う
(3万1千倍って いくらだっ!?俺はアーサーが どんだけの手当てを受け取ってんのかは 知らねぇがっ 単純に考えたって 10万の3万1千倍でも?…い、いくらだ?さ…さ… 31億だあ!?20万なら 62億じゃねぇか!?いくら何でも そいつは…っ!!)
アーサーが気付いて言う
「あ、でもよく考えたら ゼロは何倍にしてもゼロだから やっぱり ゼロだよね?アーリィー?」
アールモンドが疑問して言う
「…って?はぁ?ゼロ?」
アーサーが言う
「そう ゼロは何倍のボーナスを掛けてもらってもゼロ アーリィー?俺 お手当ては貰ってないよ?」
アールモンドが衝撃を受けて疑問して言う
「は?貰ってない?」
アーサーが言う
「そう!俺 アーリィーからはもちろんだけど レイモンド家からも お手当ては貰ってないんだよ?アーリィー 何倍欲しいか?って聞くから 知らないのかな~?と思って?」
アールモンドが言う
「ちょ、ちょっと待ってよ!手当てを貰ってねぇだなんて 大体そんなんでお前っ どおやって生活してンだよっ!?」
アーサーが言う
「うん!生活は アーリィーの世話役として このお屋敷にタダで住ませて貰っちゃってるし 夕食もアーリィーと一緒に居るから いつの間にか俺の分も 用意してもらえる様になっちゃって?」
アールモンドが言う
「あ、あぁ… まぁ、それは確かにそうかもしれねぇけど… って?それだけじゃいられねぇだろ?夕食はそうだっつっても お前は 朝とか昼も 必要だろ?」
アーサーが恥ずかしそうに言う
「う、うん 俺 すぐにお腹空いちゃうから だからその… コレもまた 俺の恥ずかしい話なんだけどね?朝食や昼食は 親子2代に渡って 近くのパン屋さんで パンの耳を譲ってもらって それで 凌いでるんだけど… あ…はは…」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ア~サ~~っ」
アーサーが苦笑する アールモンドが言う
「この馬鹿っ お前は このアールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者だろっ!?そのお前が パンの耳なんか貰ってんじゃねぇっ!」
アーサーが苦笑して言う
「ごめーん アーリィー?けど、一応 お礼として月に1千は払ってるから まったくの無料って訳でもないし?ちゃんと内緒にしてもらえるようにも お願いしてあるから?」
アールモンドが言う
「そー言う問題じゃねぇっ!」
アーサーが言う
「そうなのっ!?それじゃ… えーっと俺どうしたら良いかな?俺 あれが無いとちょっとキツイんだけど… 俺 アーリィーと違って 一日一食じゃ生きて行ける自信が無くって…」
アールモンドが言う
「そおじゃねぇだろっ!パンの耳なんかじゃなくて!もっと普通の飯を食えって言ってンだよっ!?」
アーサーが言う
「そ、それは 俺も出来れば そうしたいんだけど ちゃんとした食事を食べられる程 俺 お金は持ってないものだから」
アールモンドが言う
「だったらっ?尚更分かんねぇじゃねぇか!?手当てを受けてねぇってぇんなら お前がそのパン屋へ払ってる金や!その… 例えば服だってっ!?お前は それに掛ける金は どこから得てるって言うんだよっ!アーサーっ!?」
アーサーが言う
「そう言ったお金は 俺 父さんが残してくれた遺産を使ってるよ アーリィー?」
アールモンドが気付いて言う
「はぁ?い、遺産?」
アーサーが言う
「そう!だから出来るだけ使わないようにはしてるんだけど 流石に18年も使ってると無くなって来ちゃって」
アールモンドが思う
(そうか… 親父殿の遺産で… そういや アーサーの親父殿も 俺の親父の従者だった… なら それこそ コイツが今まで 手当てを受けずに 生活して 来られたってぇのも理解が出来…)
アーサーが言う
「と言っても 父さんの遺産は ぴったり100万しか無かったから!」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「ひゃ、100万!?」
アールモンドが思う
(少ねぇっ!ど、どぉ言う事だ!?遺産が100万!?ンな訳ねぇだろっ!?お前の親父殿は!お前と同じで!俺の親父の…っ!?)
アールモンドが気付いて視線を逸らして思う
(…っ け、けど 良く考えてみりゃ 俺も… コイツに… 払ってねぇもんな?…手当て)
アーサーが言う
「だから 今の残りは後10万ぐらいしかなくて でも そろそろ服も買った方が良いかと思ってたのに この前 携帯と腕時計が壊れちゃってね?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「携帯と腕時計が… って」
アールモンドが思う
(そいつは… ひょっとしてだが…?)
アーサーが言う
「携帯が無いと 奉者協会との連絡も難しいし 腕時計も無いとちょっと不便だから やっぱりその2つを優先しようかと思うんだけど 俺 アーリィーの奉者でもあるから 服もそれなりに気を付けないといけないと思うし でもそうすると 一気にお金が無くなっちゃうものだから」
アールモンドが言う
「いや、その前に その… あのよぉ?アーサー…」
アールモンドが思う
(あぁ… 色々言いてぇ… …けどここまで来ると 逆にどっから言ったら良いンだか…)
アールモンドが呆れて言う
「もう… 訳分かんねぇ…」
アーサーが言う
「だから アーリィーがボーナスをくれるって言うなら この際 ちょっと甘えちゃってっ 新しい携帯の代金3万と腕時計の1千を貰おうかと思ったんだけど?」
アールモンドが言う
「それで3万1千倍かよ?」
アーサーが言う
「そう!けどよく考えたら ボーナスって お手当を貰ってる人が貰う物だから 俺は貰えないって事だよね?ってなると やっぱり 父さんの遺産で買うしか無いから 携帯は修理に出した方が安いかな?けど 魔法で壊れた機械って直らないって言うし…」
アールモンドが衝撃を受けて思う
(やっぱ あン時に…)
アーサーが悩みながら言う
「…それならこの際 電話はお屋敷のを借りちゃおうかな?でもそうすると 外出先からは掛けられなくなっちゃうし 急な連絡とかあったりするかもしれないし 腕時計も1千以下は 見れば分かるって言うし 俺は良いけど アーリィーに恥をかかせちゃう訳には行かないから」
アールモンドが呆れて思う
(分かんねぇ… コイツは 何で…?)
アーサーが真剣に悩んで言う
「けど10万から3万1千はやっぱりちょっと厳しいかも?携帯と腕時計買ったら残りは6万9千で…っ 服もちゃんと買わないとだし…っ 来月のパン屋さんへのお金と… そう言えば今月は無料通話超えちゃってるだろうから 基本料に通話料も掛かるだろうしっ!?」
アールモンドが言う
「…おい?アーサー?」
アーサーがハッとして言う
「あっ!ごめんねっ アーリィー!俺 今 ちょっと 真剣に考えててっ!?」
アールモンドが言う
「それって 考える所かよ?」
アールモンドが思う
(この俺が お前の目の前に居るってぇのに?)
アーサーがより深く考えて言う
「服を買うにしても これからは冬服になるから 一着揃えたら3万は超えちゃうよねっ!?それじゃ 俺 やっぱりっ!」
アールモンドが言う
「答えは出たかよ?アーサー?」
アーサーが言う
「アーリィー!俺 どう節約しても 残り5年5ヶ月位しか 生きて行けないみたいだよっ!?アーリィー!?」
アールモンドが言う
「親父殿の遺産が尽きたら死ぬみたいに言うんじゃねぇっ!」
アーサーが困って言う
「けど本当に 俺にはそれしかないからっ お屋敷で頂ける夕食だけだと 俺 絶対 持たないと思うし 服はもちろんだけど 携帯の基本料が払えないと アーリィーの奉者も務まらないし」
アールモンドが言う
「…ん?そういや そっちの手当ては どぉなってんだよ?」
アーサーが言う
「え?そっちって?」
アールモンドが言う
「奉者協会の方だ お前はウィザードに仕えている奉者なんだから 奉者協会から手当てが入るだろ?」
アーサーが苦笑して言う
「あれ?アーリィー そっちも知らなかった?同じ奉者でも 貴族のウィザード様に仕える奉者の手当ては 奉者協会は支払わないんだよ?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「はあっ!?そうなのかよっ!?」
アーサーが言う
「うん!けど貴族のウィザード様の奉者を狙う人は 沢山いるんだ!なにしろ その奉者のお手当ては その貴族の家が 奉者協会より何倍も払ってくれるから!けど俺の場合は元々アーリィーの世話役としてお世話になってるし 奉者になったからと言って増えた仕事も そんなに無いから?」
アールモンドが言う
「ならそれで… お前は奉者としての手当ても 貰ってねぇと?」
アーサーが言う
「うん!そうなんだ!」
アールモンドが言う
「そうなんだ! じゃねぇだろっ!?アーサーっ!?」
アーサーが言う
「はいっ!?御免なさいっ アーリィー!?俺 何かしちゃったっ!?」
アールモンドが額を押さえる
≪…結局 コイツと言う奴は…≫
アーサーが言う
「え、えーっと その ご、ごめんね アーリィー?俺 情けないよね?アーリィーの世話役で アーリィーの奉者だったりもするのに それなのに その」
アールモンドが言う
「そぉじゃねぇ…」
アールモンドが思う
(何で… 言わねぇんだよ?アーサー)
アーサーが困って言う
「あ、あのね?俺も一応 考えた事もあったんだけどね?でも」
アールモンドが思う
(考えた事もあった?なら…)
アーサーが苦笑して言う
「いくらアルバイトでも 急に休んだりとかは出来ないと思うから 空いてる時間に何か仕事をしよう って言うのもね?なかなか難しくて?」
アールモンドがガクッとして怒りを押し殺して思う
(そぉ~じゃねぇっ!)
アールモンドが怒って言う
「アーサーっ!」
アーサーが言う
「はいっ!御免なさいっ!あるよねっ!空いてる時間っ アーリィーがいつも午前中に修行をしている時間が!けどっ そっ そこの時間だけはね?俺もちょっと 大切にしたいものだから それで他の時間に って思っても 他の時間は 俺 アーリィーの世話役か奉者をしているから そうなるとやっぱり仕事をする時間は取れなくて」
アールモンドが溜息を吐いて言う
「…はぁ~ もう良い ちょっと待ってろ」
アーサーが疑問して言う
「え?あ、うん?俺 待ってるね?アーリィー?」
アールモンドが部屋にある電話の下へ向かう アーサーが疑問して居る アールモンドが受話器を取ると間を置いて言う
「…あぁ、親父?俺だけど ?ちょっと急ぎで 用意してほしいモンがあンだ 頼む」
アーサーが疑問している アールモンドが横目にアーサーを 意識する
真新しい携帯を前にアーサーが言う
「トコモの最新携帯!?俺使い方分からない!」
シックな腕時計を前にアーサーが言う
「絶対どこかのブランド腕時計!?俺価値が分からない!」
アールモンドが言う
「腕時計なンか 時間が分かりゃ 後は分かる奴が分かりゃ良いだろ 携帯は… 分かんねぇンなら とりあえず電話のかけ方だけでも教わっとけよ?奉者協会にかけられりゃ良いンだろ?」
アーサーが言う
「そ、それはそうだけど アーリィー?本当に こんなに高価なもの 俺 貰っちゃって良いのかな?価値も使い方も分からない俺には 勿体無いと思うんだけど?」
アールモンドが言う
「ンな事はどうだって良い 2つとも俺がぶっ壊したモンだろ?ソイツを返すってだけだ」
アーサーが言う
「それは そうだとしても 俺が使っていた物は どちらも もっと安いものだし そもそも 俺がアーリィーに誤解をさせちゃったのが原因だし」
アールモンドが言う
「その話はもう良い お前は俺の世話役で奉者だろ?だったら そんくれぇの物を持てって事だ 分かったら素直に受け取っとけよ どっちも無けりゃ 俺の世話が務まらねぇンだろ?」
アーサーが言う
「そ、そうだね?それじゃ俺受け取っちゃうね?有難う アーリィー 助かったよ これで 俺 31ヶ月位 長生き出来ると思うから!」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「まだ ンな事言ってンのかよ…」
アールモンドが思う
(ここまでしてやってるのに… まだ分かんねぇのか?)
時計屋が言う
「腕時計のベルトの長さを合わせますので 少々お腕を拝借させて頂けますでしょうか?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えっ!?ベルトの長さを!?は、はいっ よろしくお願いしますっ!」
アーサーが左腕を出す 携帯屋が言う
「番号は以前まで使っていらした番号を登録して御座いますのでご安心下さい ただ メモリーの方は全てのデータが壊れてしまっていた為に 復旧は出来ませんでした 申し訳御座いません」
アーサーが言う
「あ、メモリーの方は大丈夫です!奉者はウィザード様へ随行するので 魔法に近付き過ぎて 機械類を破損させる恐れがあるので メモリーのバックアップは取って置く様にって習うんです!けど 俺の場合はそれ以前に 実体験で壊した上に データも飛ばした事があるので 灯魔魔力にも気をつける様にしてるんですけどね!?あははっ」
アールモンドが衝撃を受けて思う
(…そいつは ひょっとしてだが…?)
携帯屋が言う
「なんとっ 無害と言われる 灯魔魔力であっても危険なのですね?貴重なお話を伺えました 開発部の者へも伝えて 今後の商品開発への参考にさせて頂きます」
アーサーが言う
「あ、けど 他のウィザード様の灯魔魔力なら大丈夫かもしれません 俺のお仕えするウィザード様は 雷属性の上に 俺 その時は 灯魔台からじゃなくって 直接本人に抱き付いて貰っちゃったので そのせいだったのかも 知れませんから?」
アールモンドが思う
(やっぱりあの時か…って 今はそれよりもっ)
アールモンドが怒って言う
「アーサー!!」
アーサーが反応して言う
「あ!はーいっ ごめーん アーリィー?俺ちょっと言い過ぎちゃったカモー?奉者がウィザード様に 抱き付いちゃうなんて駄目だよね?なので 今の話は 内緒でお願いします!」
携帯屋が苦笑して言う
「畏まりました ではそちらのお伏せになられる箇所 以外の部分にて 開発の糧とさせて頂いても宜しいでしょうか?」
アーサーが言う
「はい それでしたら!」
アールモンドが呆れて溜息を吐いて言う
「…たくっ」
時計屋と携帯屋が去って行く アーサーが軽く会釈をして見送ると 手に入れた物を見る もう1人居た業者がアールモンドへ言う
「こちらがお品物となりますが 如何で御座いましょう?」
アールモンドが物を見ると言う
「ふーん?ま、良いんじゃねぇか?俺には そいつの価値は分からねぇが」
アールモンドが業者の差し出している台から取ると言う
「おい アーサー」
アーサーが顔を上げて言う
「ん?なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ほらよ?」
アールモンドが手に持っていた物を放る アーサーが言う
「え?あっ おっとっ?」
アーサーがキャッチした手を開きながら言う
「アーリィー?何を?っ!これっ!?」
アーサーの手には銀の指輪が在る アーサーが驚いて言う
「もしかしてっ アーリィーが 俺にっ!?」
アールモンドが言う
「他の誰にやれってンだよ?」
アーサーが感激して言う
「~っ!有難う!アーリィー!!」
アーサーがアールモンドに抱き付いて喜ぶ アールモンドが衝撃を受けて言う
「あっ!?おいっ!」
アーサーが喜んで言う
「俺 凄く嬉しいよ アーリィー!もう 俺 今すぐ 死んでも悔いはないよ アーリィー!」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「馬鹿!折角褒美をやったってぇのに 今すぐ死ぬんじゃねぇよ アーサー!」
アーサーが言う
「それ位嬉しいって事だよ!だから大丈夫!それに アーリィーには携帯と腕時計も用意して貰って 俺の寿命を31ヶ月も増やしてもらったんだから!」
アールモンドが衝撃を受けて思う
(まだンな事言うのかよっ?銀の指輪だって 用意してやったって言うのに… この馬鹿は まだ分からねのかっ!?)
アールモンドがアーサーから解放されると 横目に言う
「…で 待たせたな?俺には価値が分からねぇが 渡した相手が気に入ったみてぇだから 良いぜ 急な依頼を悪かった」
業者が言う
「滅相も御座いません この度の大切なご用命を 有難う御座います」
業者がもう一度礼をすると立ち去る アールモンドの視線の先 アーサーが嬉しそうに指輪を見ていて 内側に掛かれている文字(世界一のフェンサーへ贈る)を見て 指輪を握り胸へ当てる アールモンドが苦笑して思う
(さて 後は…)
アーサーが携帯と腕時計を見てから アールモンドへ向いて言う
「今日は俺 アーリィーから たくさんプレゼントを貰っちゃって 何だか申し訳ないけど」
アールモンドが言う
「申し訳なくなンかねぇよ どれも お前が 俺の世話役や奉者として 必要な物だから与えたンだ いわば必要経費ってモンだぜ」
アーサーが言う
「確かに携帯と腕時計に関しては そうとも言うのかもしれないけど?でも こっちは違うから!」
アーサーが言うと共に銀の指輪を見てから 微笑んで言う
「俺 これからもアーリィーに満足して貰える様に 精一杯頑張るからね アーリィー!」
アールモンドが言う
「ああ…」
アールモンドが思う
(精一杯頑張るか… まぁ もう良いぜ?いくら頑張った所で お前には もう これ以上はねぇんだ だったら俺も もう… お前のその言葉に ビビる必要もねぇ…)
アールモンドが肩の力を抜くと思う
(…なんてな?お前をそんな状態にしちまったってぇのに 俺はそれで安心しちまう…)
アールモンドが顔を向けた先 アーサーが指輪を見ている アールモンドが思う
(だから その指輪も… 本当は 俺は… お前に…)
アーサーがネックレスのチェーンを引っ張り出して外し 銀の指輪をチェーンへ通しながら言う
「えへへ… 早速この指輪も追加しないと」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「…って!?指にはめるんじゃねぇのかよっ!?」
アーサーが言う
「だって 指に着けていたら 傷が付いちゃうじゃない!」
アールモンドが言う
「そ、それはそうかもしれねぇけど…っ」
アーサーがネックレスを首に着けて言う
「それにこうして置けば 落とす心配も無いし指輪を 指に2つも付けたら大変だし?そもそも1つ目は 俺 指に通らないし?」
アールモンドが思う
(そうだな… その指輪をやった時の俺だったら… それこそお前に 褒美として… いや… その時でも もう遅かったンだ …だからアーサー 俺がお前に渡す指輪は どいつも…)
アールモンドが一瞬表情を困らせてから気を取り直して言う
「つーかっ その1つ目はもお良いだろっ!?いくら銀でも ゴミだぞ!?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えっ!?酷いっ 俺にとっては この指輪もアーリィーに貰った 大切な銀の指輪なのにっ」
アールモンドが思う
(どいつもお前へ対する 償いの指輪だ …最も ソッチの時には 俺も知りもしなかったけどよ)
アールモンドが言う
「ゴミだから捨てとけって言ったモンだろうがっ!?」
アーサーが言う
「けどアーリィーは やるよって言ってくれたんだしっ 俺の大切なお守りなんだから 俺 絶対に 捨てたりなんかしないよっ」
アールモンドが思う
《俺は ソイツ(銀の指輪)を見る度に 思い知らされるだろう… お前の命を預かっていると言う事(事実)を… 逃げる事は許されねぇと言う事(報い)を…っ》
アールモンドが言う
「そうかよ… ならもう勝手にしろっ」
アーサーが微笑して言う
「うん!有難う アーリィー!」
アールモンドが思う
(まったく… コイツは変な所で強情だ お陰で 俺はこれから毎日 ソイツを見ねぇ訳には行かねぇ)
アールモンドが軽く息を吐いて言う
「…まぁ 良いけどよ?」
アールモンドが思う
(それ位ぇの罪は 俺にはあるンだ… だったら…)
アールモンドの視線の先 アーサーがネックレスを服の中にしまう アールモンドが衝撃を受けて思う
(…て?思ったが 服の中に入れちまうのかよ?…確かにその方が 傷は付かねぇだろうが)
アールモンドが言う
「分かんねぇ…」
アールモンドが思う
(そもそも指輪ってぇのは 装飾品であって 外から見える様に付けるモンだろ?だってぇのに コイツは指輪を指に通す事もしねぇし… その指輪も銀の指輪 宝石の一つも付いちゃ居ねぇ…)
アールモンドが気付いて言う
「宝石…?そういや… おい アーサー?」
アーサーが言う
「なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「お前に貰った この宝石だが…」
アールモンドがブローチを付けている法衣を掴む アーサーが言う
「あ、うん!グレーニッヒ様に 魔力を込めて貰った お守りの!」
アールモンドが言う
「その魔力は もう コイツからは消えちまったンだ」
アーサーが呆気に取られて言う
「あれ?そうなの?お守りの魔力って消えちゃうんだね?俺 知らなかったから…」
アールモンドが言う
「お守りとして込めた魔力が消えるってぇのは その魔力が使われたって事だ そうとなれば今ならもう 秘密にする必要はねぇ だから教えろ アーサー お前はこの宝石へ何を願ったンだ?」
アールモンドが思う
(思い当たる事はいくつかあるが… もし…)
アールモンドが横目に杖を見る 杖の魔鉱石は淡く光っている アーサーが呆気に取られていた様子から微笑して言う
「うん それなら言っちゃうけど でも そんなに大した事じゃないんだけどね?俺がその宝石へお願いしたのは…」
アールモンドがアーサーを見る アーサーが微笑して言う
「アーリィーを 守って下さい って?」
アールモンドが言う
「…そうか」
アールモンドが思う
(そう言う事か… それなら理解が出来たぜ)
アーサーが苦笑して言う
「あははっ 単純でしょ?俺 その宝石を お守りに出来るって聞いたから その言葉のままにね?でも グレーニッヒ様は 俺の願いは大き過ぎるって?だから宝石が困って グレーニッヒ様へ助けを求めてるとかって言ってね?それで…」
アールモンドが思う
(俺があン時 この杖で魔法を放てなくなったのは)
アールモンドが杖を見てからブローチを見て思う
(この宝石にあった魔力が 杖の魔鉱石へ放たれた… その影響だったんだ)
アーサーが話を続けて言う
「アーリィーにも以前言ったと思うけど アーリィーはウィザード様で ウィザードの杖を持ってるから だから 宝石には大き過ぎるけど その願いで大丈夫だって?結局 俺には意味は分からなかったけど?」
アールモンドが言う
「ああ、このお守りの宝石に 助けられたな?俺も… お前もな?アーサー?」
アーサーが疑問して言う
「え?アーリィーも 俺も?」
アールモンドが言う
「この宝石にあった魔力は 今は この杖に付いている 魔鉱石へ取り込まれてるンだ」
アーサーが言う
「それじゃ お守りの魔力も アーリィーの魔法を強くする力になったって事?アーリィー?」
アールモンドが言う
「いや、この魔力は 俺の魔法を止める力になってる」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えっ!?アーリィーの魔法を止めちゃうってっ!?それじゃ 悪い力になっちゃってるって事だよねっ!?御免なさいっ アーリィー!俺 どうしようっ!?それじゃ!グレーニッヒ様に聞いてみようか!?もしかしたら 何か方法をっ!?」
アールモンドが言う
「落ち着け アーサー」
アーサーが向かおうとして言う
「俺 今すぐ グレーニッヒ様のお店に行って来るよ!」
アールモンドが言う
「アーサー!お前 先輩に言われた事を 忘れたのか!?俺以外のウィザードの前に 行くんじゃねぇよ!」
アーサーが一瞬反応してから言う
「け、けど…」
アールモンドが言う
「それに 俺は言っただろ?この宝石にあった魔力に 助けられたって」
アーサーが言う
「え?あ、うん?そう言えば?」
アールモンドが言う
「ウィザードの持つ魔鉱石の杖は 多くの魔力を放つ事が出来るが 逆を言えば その魔力を従えるだけの 強ぇ精神力が必要になる それで その精神力が足りねぇ状態で 集めちまった魔力を放とうとすると その魔力は反発する …魔力反動って言うんだが 魔力者にとっては一番面倒で厄介な奴だ なんせ その状態に自分がなっちまってるのが 分からねぇ時もあっからな」
アーサーが言う
「そうなんだ?自分で分からないって それじゃ 急に魔法が使えなくなっちゃうって事かな?」
アールモンドが言う
「それだけなら大した事じゃねぇが 反発した魔力は行き場を失って 自分らを集めた魔力者へ 力を発散する 魔法のなりかけとは言え 魔力は自然界の強力な力だ 下手すりゃ3日は目が覚めねぇ」
アーサーが衝撃を受けて言う
「そ、それは大変だね アーリィー!?アーリィーも気を付けてっ!?…って?自分じゃ分からないんだっけ!?それじゃ どうしようっ!?」
アールモンドが言う
「そいつを この宝石の魔力が抑えてくれたンだ」
アーサーが言う
「へ?」
アールモンドが言う
「お前が願ったンだろ アーサー?俺を守ってくれってよ?だからあン時 俺は魔法を使えなかった 俺の精神力が 魔力反動を受けちまうまでに下がっていた その時に この宝石の魔力が 魔力への呼びかけを止めさせたンだ… ンで この宝石にあった魔力は 今はこの杖の魔鉱石の中にある」
アーサーが言う
「それじゃ お守りの魔力は 宝石から移動して 今は アーリィーの持つ杖にある魔鉱石の中で アーリィーを守ってくれてるって事?」
アールモンドが言う
「ああ… そういう事だ」
アールモンドが思う
(お前と同じでな… アーサー)
アールモンドが苦笑して言う
「全く」
アールモンドが思う
(何処までも お前って奴は…)
アーサーが喜んで言う
「良かった!それじゃ俺 その宝石をお守りにしてくれた グレーニッヒ様にお礼を言いに行って来ないと!」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「だから!お前はっ!他のウィザードの前に行くんじゃねぇって言ってンだろっ!?アーサー!」
アーサーが思い出して言う
「あ!そうだった ごめーん アーリィー?」
アールモンドが額を押さえて言う
「…ったく お前って奴は 何でそんなに危機感ってモンがねぇンだよ アーサー?」
アーサーが言う
「危機感なんて そんなの必要無いじゃない?だって相手は グレーニッヒ様だよ?アーリィーの仲間のウィザード様じゃない?」
アールモンドが言う
「俺の仲間?」
アーサーが言う
「そうだよ!だから」
アールモンドが息を吐いて言う
「アーサぁー…」
アーサーが疑問して言う
「え?なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「以前にも言ったと思うが ウィザードってのは 全員が敵やライバルなんだ 仲間なんてぇのは…」
アーサーが言う
「そんな事無いよ アーリィー 少なくとも アーリィーの大先輩である アイザック様や アーリィーへ渡した そのお守りを作ってくれたグレーニッヒ様は…」
アールモンドが言う
「その大先輩だってな?アーサー お前を狙ってるンだぜ?」
アーサーが呆気に取られて言う
「へ?アイザック様が 俺を?」
アールモンドが顔を逸らして不満そうに言う
「そうだぜ?正々堂々と 正面切って宣戦布告をされたンだ 隙あらば現代に唯一残った従者であるお前を 俺から奪ってやるってな?…だから!」
アーサーがぷっと噴き出し笑う アールモンドが衝撃を受けて言う
「なっ!?何笑ってンだっ アーサー!?お前には本当に危機感ってモンが…っ!?」
アーサーが微笑んで言う
「あっははっ アーリィー?それは 大先輩の冗談だよ?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「はぁっ!?」
アーサーが言う
「だって 俺やアーリィーは アイザック様へ対して 隙だらけだもの?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「す、隙だらけ?」
アーサーが言う
「そう!だから アイザック様はもちろん グレーニッヒ様も もし本当にアーリィーの従者である俺を どうにかしようと思っていたなら 俺は今 アーリィーの前には居ないよ?」
アールモンドが困って言う
「それは… そう… …だな?」
アールモンドが思う
(言われてみりゃ 先輩が本当にアーサーを持って行きてぇってぇンなら 今までにいくらでもそのチャンスはあった それに 俺からコイツの力を無くすってぇのも …そもそも 俺は今だって あの二人には敵わねぇンだから わざわざンな手間を掛ける必要だって…)
アールモンドが肩の力を抜いて言う
「…ンだよ 先輩… 冗談かよ?趣味悪過ぎだろ?」
アーサーが苦笑する アールモンドが言う
「流石は闇属性の親族を持つウィザードだぜ!」
アーサーが言う
「ご本人は光属性と水属性のウィザード様だけどね?」
アールモンドが顔を逸らして言う
「アイザック様の事は 先輩として認めてはいるが 神に選ばれたウィザードだとは 俺は 認めちゃ居ねぇからな?」
アーサーが言う
「あれ?そうだったんだ?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ったりめぇだろ?俺は先輩こそ お前が言っていた 俺のライバルだと思ってる だから…」
アールモンドが気を引き締めて言う
「いつかは必ず…っ」
アーサーが言う
「その前に アーリィーは そのライバルと言う アイザック様に 沢山借りを返さないといけないんだけどね?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「っ …アーサぁあ」
アーサーが苦笑して言う
「ごめーん アーリィー 俺のせいで」
アールモンドが怒って言う
「そーだ!アーサー!お前のせいだ!」
アーサーが苦笑して言う
「ごめーん アーリィー」
部屋の電話が鳴る 2人が反応すると アーサーが言う
「アーリィー?どうしよ?俺が出る?」
アールモンドが言う
「いや 要件は分かってっから良い 俺が出る」
アーサーが言う
「そお?それじゃ 俺 席外してようか?」
アールモンドが電話へ向かいながら言う
「別に構わねぇよ 物が届いたかの確認だろ?」
アールモンドが受話器を取って言う
「悪いな 親父 こっちっから電話しようと思ってたンだが 遅くなった …ああ 問題ねぇよ 連中はさっき帰した ああ…」
アーサーが思い出して言う
「あっ そうだった 俺も奉者協会へ電話しないと?」
アーサーが携帯を取り出すと微笑して言う
「えへへっ 早速 アーリィーに用意して貰った この携帯を使っちゃおっ まずは電話帳に奉者協会の番号を登録して~ …あれぇ?どうやって電話帳に登録するんだろ?えーっと?ん~?」
アールモンドが電話に言ってる
「は?最近?…べ、別に?」
アールモンドが横目にアーサーを見る アーサーが言う
「それじゃ 一度掛けちゃおう!それを後で登録するって事で!」
アールモンドが電話へ言う
「な… 何も… ねぇけど?…ねぇよっ!ホントに!えっ?な、何で 親父が 先輩が来たって事知って!?」
アーサーが携帯へ言う
「お疲れ様です!アールモンド・レイモンド ウィザード様の奉者 アーサーです!」
アールモンドが横目にアーサーを見ながら言う
「は?日報に書かれてたって?メイドどもの?」
アーサーが携帯へ言う
「はい!そうですね お久しぶりです!それでは ソニア副会長へ繋いで貰えますか?」
アールモンドが言う
「…チッ 知らなかった …いやっ 別に隠していた訳じゃねぇけど…」
アーサーが驚いて言う
「えっ!?俺 停職処分になってるのっ!?知らなかったぁ~」
アールモンドとアーサーが言う思わず顔を見合わせる アールモンドが電話へ言う
「そんなんじゃねぇよ …まぁ 確かに借りは作っちまったが」
アーサーが言う
「そんな事無いですよ 確かに 俺の馬鹿のせいで誤解をさせちゃって お叱りを受けて 追い出されて 俺 ちょっと 死に掛けちゃいましたけど!」
アールモンドがアーサーを見てから言う
「先輩への借りは 俺が間違いなく返すっから」
アーサーが言う
「いえ!今は大丈夫です!はい!あ~ それは ごめんなさい 連絡はしようと思ったんですけど 携帯が壊れていて それにその日に限って 俺 手帳を部屋に置き忘れちゃってて…」
アールモンドが思う
(ああ… そいや そいつのお陰で あの時は お前の魔力を探せたンだったな…)
アールモンドがハッとして電話へ言う
「…あ?いやっ 悪い ちょっと考え事してた 今 何て?」
アーサーがアールモンドへ疑問して視線を向ける 携帯が耳から離れてオペレータ嬢の声が聞こえる
『それでは 今度からは気を付けて下さいね?皆で心配してたんですよ あのアーサーさんに限ってって?それに奉者協会の番号は…』
アールモンドが衝撃を受けて言う
「はあぁあ?俺がっ!?結婚っ!?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?アーリィーが結婚っ!?」
携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『…え?アーサーさん?今 何てっ?』
アールモンドが慌てて言う
「い、いやっ ちょっと待てよっ 親父っ 何の間違えだ!?俺は結婚なんて… はあっ!?もうしてるってっ!?ちょ、ちょっと待てッ!?大体 俺はウィザードでっ!」
携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『アーサーさんっ?』
アーサーが呆気に取られて居た状態からハッとして携帯へ言う
「あ、あああのっ!?ちょっと 教えて欲しいんですけどっ!結婚って…っ ヴィ、ウィザード様でも出来るんでしたっけっ!?あのっ普通の!?ウィザード様でもっ!?アイザック様の様な永在ウィザード様じゃなくて そのっ!…つまりっ!?俺のウィザード様でもっ!?」
アールモンドがアーサーを見ている 携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『と、とりあえず 落ち着いて下さい?アーサーさん!』
アーサーが必死に言う
「無理っ!」
オペレータ嬢の声が聞こえる
『状況は 何となくですが分かります それで ウィザード様のご結婚に関しましては 奉者協会でも以前 アイザック様の時に沢山の問い合わせがありましたので こちらは既に確認済みでして 結論から言いますが アーサーさんのウィザード様… アールモンド・レイモンド ウィザード様の ご結婚は可能です』
アーサーが驚いて言う
「可能なのっ!?」
アーサーが呆気に取られたままアールモンドを見る アールモンドが困惑している オペレータ嬢の声が聞こえる
『はい、アイザック様は永在ウィザード様であるから ご結婚をされたと良く言われるのですが そもそも ウィザードであるから結婚をしてはいけない と言う そちらの認識の方が間違っていまして 永在ウィザード様であろうとも無かろうとも 本来ウィザード様は ご結婚をされても構わないのです』
アーサーが言う
「そ、それじゃ… アーリィー…」
アールモンドが呆気に取られている アールモンドの手にある受話器からアールモンド父の声が聞こえる
『では そう言う事だ また近い内に連絡をする』
電話の切れる音がする アールモンドがハッとして受話器に言う
「え?あ?ちょ、ちょっと待てよっ!?親父っ!?」
アーサーが言う
「結婚おめでとう!アーリィー!俺 全然知らなかったよー?」
アールモンドが怒って言う
「俺だって 知るかーっ!」
アーサーが言う
「え?えっと… それじゃ?」
アールモンドが受話器を叩き置いて言う
「相変わらず 人の事を勝手に決めやがってっ あのクソ親父っ」
アーサーが表情を悲しめて言う
「アーリィー…」
携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『それで あの… アーサーさん?』
アーサーがハッとして携帯へ言う
「あっ!ごめんなさい…っ こっちもちょっと 混乱していてっ また後で 落ち着いたら 連絡をしますので 今は失礼します!」
携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『あ、では先に…っ』
アーサーが携帯を見て言う
「えーっとっ それでコレ どうやって切るんだっけ?これ?…違った?こっち?こ、これかなっ!?」
携帯からオペレータ嬢の声が聞こえる
『アーサーさんっ!?』
アーサーが携帯のモニターをタップすると通話が切れる アーサーがホッとして言う
「あ、出来たっ 良かった~ …って!?それよりっ!?」
アーサーが顔を上げるとアールモンドが前を過ぎる アーサーが言う
「アーリィーっ?」
アールモンドが立ち止まる アーサーが表情を悲しめて言う
「その… どうするの?アーリィー?」
アールモンドがアーサーへ言う
「どうするもこうもあるかよ?いきなり 名前も顔も知らねぇ相手と 結婚してるだなんて言われた所で 俺にどうしろって言うんだ?」
アーサーが言う
「それは… そうだよね?」
アールモンドが顔を逸らし言う
「ふんっ」
アールモンドがソファへ向かう アーサーが追って言う
「けどその… 名前や顔は その内 知る事になると思うけど それより アーリィーは それで良いの?」
アールモンドがソファに座ると言う
「はっ?良いのかって?」
アーサーが言う
「だから その 例えば?アーリィーは …他に好きな子がいるとか!?って言うのは?」
アールモンドが言う
「ねぇよ?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「だよね!俺 知ってる!…って そうじゃなくてっ!?」
アールモンドが言う
「俺の知らねぇ所で 俺の知らねぇ内にされてた事だろ?ンなの… 俺が知るかってんだ…っ」
アーサーが困って言う
「だけど それが もうアーリィーに 知らされちゃったって事はさ?これからは きっと 知らないじゃ済まされない事になっちゃうと思うし それに 多分だけど その」
アールモンドが言う
「多分?…何だよ?」
アーサーが苦笑して言う
「多分 その… 結婚って事はさ?きっと アーリィーは アーリィーに続く レイモンド家の 世継ぎを作らないといけない って事なんじゃないかな?」
アールモンドが衝撃を受ける アーサーが苦笑して言う
「だとしたらアーリィーは そう言う事を知らないって事も 俺 知ってるから!ちょっと心配だなぁ~って?」
アールモンドが怒って言う
「うるせえっ!アーサーぁあ!」
アーサーが言う
「ごめーん アーリィ~」
続く。