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暑い

暑い。男はそう思った。


最初は自分がおかしいのかと思った。しかし周りを見ると、男女問わず服を脱ぎ出している人が少なからずいた。


男もつられるようにしてウェアを脱いだ。本当はこんな場所で服を脱ぎ出すなんて言語道断だが、何しろ暑いのだから仕方ない。


ウェアを脱ぐと今度は足元が暑くなってきた。男は靴を脱ごうとした。しかし足が上がらない。

男は苛々した。そしてそれが靴底の棘のせいだと思った男は、それを取るためベルトを解こうとした。


しかし手先の感覚が薄くなってなかなか取れない。男は面倒になってその場に仰向けに横たわった。


背中がひんやりと気持ちいい。しかしそれと同時に猛烈な暑さが身体中を支配していた。

男はそれに抗うこともできず、すっと目を閉じた。強烈な脱力感が全身を襲った。


何かが頰を伝い落ちた。男は指先でそれに触れた。じんわりと温かい。その何かはそのまま口元まで滑り落ちてきた。男はそれを舌先で舐めた。少ししょっぱかった。これは涙だろうか。


俺は泣いているのか。男は思った。いや、そんなはずがない。何故、泣く必要がある。


また何かが頰を伝った。それに触れると、今度は温かくも冷たくもなかった。


そうだ、泣く必要なんてない。泣く必要なんてないんだ。


睡魔に襲われ薄れゆく意識の中、男は自分にそう言い聞かせた。


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