表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/43

決断


 先陣を切って城壁にとりついたシャハラルが目にしたのは、統制する者もなく市民から徴収という名の略奪を繰り広げる占領軍の姿だった。

 サンッ!

 ひどく軽い音がしたと見るや、何に使うつもりが女物の服を奪おうとしている若い兵士が、首を落していた。

 服を掴まれたままの若い女が、あっけにとられた顔で落ちた首が転がっていくのを目で追い。次の瞬間には首のなくなった体を蹴り飛ばしていた。

 戦場になっていた時期の長いこの辺りでは、一市民と言えど戦闘経験が皆無という人間は少ないのだ。

 「あんたたちは何者? 私たちを助けに来た、とか言わないわよね?」

 助けられたはずの娘が、疑い深げにシャハラルを睨み付ける。

 「そうだと言ったら?」

 「はっ! わらっちゃうわ」

 軽蔑したような目が向けられる。

 シャハラルは露骨に溜息をついて見せた。

 「安心して、あなたたちやこの町になんて興味ないわ。私たちの目的は、あの虫どもを踏み潰すことだけよ。靴が汚れない程度にね」

 「あら、そう? 靴の方が大事なんだ?」

 「もちろんよ。そうじゃない?」

 世間話をしているような気軽さで言葉を交わしながら、シャハラルの剣がさらに二人を斬り伏せた。

 「まぁ・・・そうね」

 転がった死体の服で靴の泥を落しながら女が笑う。

 「せいぜい頑張ってちょうだいな」

 軽くウィンクをして、女は自宅らしい家の扉の中に姿を消した。

 町に占領軍が入ってくる。その程度のことで驚くのは子供だけだと言いたげな、そして多分そうなんだろうと思わせる態度だった。

 そんな状態であったから、混乱したのは駐留している傭兵だけだ。

 町中を個々に略奪していた傭兵たちが、指揮官の指示もない中で戦えるはずがない。

 傭兵たちは次々に討ち取られていく。

 シャハラル隊に続いて城壁内に乗り込んだリンセル隊はすぐさま城壁の上に登り、弓を構えると傭兵軍の兵士らを狙撃し始める。

 そうすると、町の住民の中にはこちら側に加勢する者たちが現れ始めた。

 もうすでに傭兵たちの所業に不満を募らせていた者たちがいるのだ。

 「城門を開け放つのにゃん! 味方の兵を中に入れてやってほしいにゃん」

 町のあちらこちらから集まってくる住人たちに向かって叫ぶ。

 声をかけてきたのが獣人の少女であることに驚きはしたものの、彼らは求めに応じて城門を押し広げてくれた。

 押し広げられた四方の門から、ライムジーア隊の兵士たちが町へと入ってくる。

 傭兵団の兵士たちをシャハラル隊が町の中を突き進んで蹴散らし、四方向から雪崩れ込むライムジーア隊が包囲を狭めながら駆逐していく。

 傭兵団はすでに瓦解しているようにすら見えた。だが、彼らも傭兵稼業で飯を食うものたち。そのまま全滅ということにはならない。

 仲間たちが打倒されていく中、無事な者たちが声を掛け合っていまさらながらも戦力の結集と立て直しを図り始めた。

 「中央広場だ! ともかく一か所に集まれ!」

 「各自で対応しようとするな。まずは軍を立て直せ!」

 一方的な殺戮の的にされていた者たちが、仲間を求めて必死に一か所を目指す。

 戦術的な理由のようなものはそこにない。

 ただひたすら、仲間たちとの合流を急いだ結果だ。彼らは投網に掛かった小魚のように、町の中心部へと追われているからそうするしかないのだ。

 このままだと城壁の上にいる兵が遊軍になる。

 余分な兵力などありはしないのだから、遊ばせておくような贅沢はできない。

 「全軍、城壁を下りて包囲に加われにゃん! 一気に押すにゃんよ!」

 率いていた兵と、戦いに加わっていた市民たちにリンセルが指示を出す。

 そこに、ライムジーアからの命令が来た。

 「西側の攻囲を薄くして敵に退路を作ってやれ、とのことです」

 「にゃあ?! あ! いや、わかったのにゃん!」


 ライムジーアはリンセルのところに行かせた伝令から、彼女がひどく戸惑っていたと知らされた。

 退路を作ってやれという指示に違和感を覚えたのだろう。

 無理もない。

 だが、敵が町に駐留するよう仕向けたのはライムジーアだ。町が戦場になることも予想している。したがって、この展開も読んでいた。

 町中に散っていた傭兵団の兵士たちが、こちらの軍勢に追われている。路地のいたるところで斬り捨てられ、射抜かれ、投降していく。

 それでも、数が集中してくるに従って抵抗が激しくなってくる。

 進撃が完全に止められていた。

 組織だった反撃ができる程度には統率力が行きとどき始めたのだ。

 「こっちの被害は?」

 前線から戻ってくる兵を捕まえて尋ねる。

 「けが人が出始めていますが、死人はまだ出ていないようです」

 「そうか」

 ここら辺が限界か。

 戦場に目を向ける。

 そろそろ西側が手薄なことに気が付いてほしいところだ。

 「敵が崩れました!」

 味方の兵士が叫ぶ。

 ライムジーアにも見えていた。

 強固な防衛陣を布いていた傭兵団が、解体していく。

 追い詰められている、逃げ場はない。

 そう思っている時ならば、必死になって戦線を維持もできるが逃げ切れる可能性があるとなったら・・・命がけで持ち場を守る気力を無くしもする。

 彼らは傭兵なのだ。

 この町への愛着などありはしない。

 だから、略奪だってした。

 大公にも命と引き換えにしてまで仕える義理はない。

 彼らに報酬を支払っているのは、傭兵団長で大公ではないからだ。

 大公は依頼人かもしれないが、個々の傭兵には直接の関係がない。

 傭兵団長は金蔓を見つけてくる役を担っているだけの人間だ。

 忠誠も尊敬もありはしない。

 金のために戦っているのだから。

 そして、金は命があってはじめて意味がある。

 命を捨ててまで戦おうとする傭兵は、皆無ではないにしても多くはない。

 そこに、西側からなら逃げられそうだ、との情報が伝われば・・・こうなる。

 傭兵団が西に向かって崩れていく。

 一人が五人になり、五人が二十人、二十人が百人になる。

 それは何とか均衡を保っていた戦線が、瓦解するのに十分すぎる事態だった。

 傭兵団は西に向かって長く延びる線と化した。左右からはシャハラルとリンセルが容赦なく斬りかかり、線をさらに細いものへとするべく命を削り取っていく。

 とはいっても、逃げだせる程度に薄くしてあるのだ。

 思うような追撃はできずにいる。

 二人からはひっきりなしに、猛追の許可を求めてきているが答えは『ノー』だ。

 追撃はほどほどにして軍の再編成をするよう命じた。

 彼女たちが味方を再編成して捕らえた捕虜を一カ所に集める間に、ライムジーアは町の代表たちとの会合を持った。

 主に、町中に散らばっている傭兵団所属の兵士、その遺体の処理についてだ。

 ライムジーアたちには片付けている時間的余裕がない。

 結局のところ、死体の処理に関してはその傭兵たちが身に着けているものを、町の財産としていいとすることでようやく認めさせることに成功した。

 次が捕虜の件だが。

 こちらは一日につき金貨十枚渡すことを条件に、監視と食事の世話を任せることになった。どちらも人手がかかるので、自軍の兵士にやらせるのはもったいない。

 この程度の出費で市民がやってくれるなら大助かりだ。

 もとより、それほど長く預けることにはならない。

 それらの話し合いをしている間に、シャハラルとリンセルが軍の再編成を終えて待っていた。今にも走り出したいという態度を見せている。

 「では、追撃に入る。陣はもう少し左右に広げろ。半包囲陣形のまま前進する」

 「半包囲? 承知しました!」

 訝しげに眉を寄せつつも、シャハラルは命令に従った。

 ザフィーリ隊長の薫陶が行き届いているようだ。

 「準備が整い次第前進!」


 タブロタルの騎士団に所属していたエヌンフト・ラソンは、金髪のこれと言って特徴のない三十代の騎士だ。

 能力も際立ってはおらず、せいぜいが「堅実」と言ってもらえる程度。

 その彼が今や、半ば反乱軍ともいえるライムジーアの軍に加わっている。

 自分のことながら、信じられない思いでいた。

 帝国に忠誠を誓い、タブロタル騎士団に所属していることを誇りにしていたはずなのに。

 『産まれてきちゃった皇子』のどこに、自分は惹かれたのだろう? 約束されていたも同然の騎士団での出世を捨ててまで付いてくるほどに。

 わからない。

 「だからこそ、ここにいるのかもしれないな」

 不可解な自分の行動に対する答えが、それだった。

 彼自身は気が付いていなかった。

 自分がライムジーア皇子についてきている不可解さ以上に不可解な事実に。

 自分で頭を傾げるような不可解な行動をとる彼に、彼の部下たちもまたついてきているのだ。命令したわけではない。頼んだわけでもない。一人で来るつもりでいたはずだというのに、気が付けば後ろに百八十からの人間が付いてきていた。

 そう。彼の部下たちは、ライムジーアについてきたわけではない。エヌンフト・ラソンについてきている。

 その彼が、なにをしているのかと言えば。

 「来ました!」

 部下の騎兵が馬を走らせてきて告げた。

 「そうか」

 応えて、目を向けた先は街道ではなく、林道だ。

 ライムジーアの指示で、彼はあるものを待っていた。

 軍隊を。

 その軍勢は、かなり奇妙だった。始め、エヌンフトはその違和感の正体がわからなかった。気付いたのは部下の一人だった。

 「旗がない」

 そう、その軍勢は所属を示す旗が一つもなかった。

 いや、ある。

 「帝国の旌旗です」

 部下が指さしたのは数百二及ぶ騎兵隊だった。二千近い数の歩兵とは距離を置いて進んでくる騎兵に帝国と皇族を示す旗が翻っている。

 「皇妃護衛隊の旗だな」

 話しには聞いていたが、なんとも違和感のある光景に思える。

 ついつい首を傾げているあいだに、彼我の距離が縮まり先頭の騎馬が先行してエヌンフトの元に寄って来た。

 「海賊『プロスティトゥタ・アマンテ(娼婦の恋人)』所属の騎兵隊を指揮するエヌンフト・ラソンだ」

 上体を反らしてエヌンフトが言うと、相手の騎士は驚いたように目を丸くしたが、すぐに表情を改めて応えた。

 「皇妃護衛隊モスティア・シャイデンだ。向こうの歩兵を率いるはベレグリナ・ヴァンデルグ将軍である」

 そう言って手を振った先に、遠目にもそれとわかる巨体があった。

 大きさというより威圧感がそう見せているようだ。

 「代表者については聞いていた通りですな。ですが聞いたときには騎兵百に歩兵は五百ほどとなっていたように思うのですが?」

 エヌンフトが、総勢三千はいそうな軍勢を見やると、その騎士は視線を泳がせて諦めたように息を吐いた。

 「勧誘はしていたのですが、態度をはっきりさせないままでしたので数に入れていませんでした。それが、出立間際。『もう、これ以上は待てない。気が変わったら連絡してくれ』との伝言を届けさせたところ、ここに来るまでの間に合流してきた者たちが多いのです。ここで参加しておかないと、あとで合流しても下風に置かれるとでも考えたのでしょう」

 「その気持ちもわからんではないですが・・・」

 あまりのあからさまさに苦笑が漏れそうになる。

 「こっちは糧食の手配などのことも考えないといけないというのに。世の中には弁当も持たずにピクニックに来る輩もいるようで」

 頭を振り振り、モスティアが愚痴る。

 威風堂々とした出で立ちの騎士の口から出た所帯じみた言葉に再び苦笑しそうになった。

 「あー・・・それは困りましたな」

 苦笑は我慢できたが、同情は顔に出てしまったかもしれない。

 「申し訳ありませんが、状況が予想以上に順調に進んでいまして時間がありません。すぐに戦闘になるかと思いますが、よろしいですか?」

 「もちろんです! 行動的な男の子は弁当は忘れても、遊び道具は忘れないものです」

 エヌンフトは、声を上げて笑ってしまった。

 彼等に任された仕事は、街道の窪地にあたるポイントに兵を置き、敵が来たら無力化することだった。

 早く移動したいなら街道を走りたくなる。

 そこに網を張って、獲物を取る。

 いわば、漁業における定置網漁にも似た罠だ。

 窪地になっている地形の底部分にいるから、走ってきた者がこちらに気がついたときには引き返せないほど近接していることになる。

 この罠に魚は・・・いや、敵兵は面白いほど引っかかった。

 最初は一人や二人ずつで、こちらの姿を見ると武器を投げ捨てて捕らわれるに任せたし、それは十人程度になっても同じだった。

 二十を超えるようになってくると抵抗して逃げようとする者も出るが、こちらには七百の騎兵がいる。

逃げる敵の歩兵を捕まえに行くのは難しいことではない。

 もっとも、その大部分は斬り捨てることになってしまったが。

 そうしているうちに、敵はついに一塊になってやってきた。

 投降する敵を捕縛したり、逃げる敵を味方の騎兵が追いかけるのを見物したりするのに飽き飽きしていた歩兵たちから歓迎の声が上がった。

 一塊になって窪地に降りてきて伏兵に気付き足を止めた敵兵に、ひときわ目を引く大男が自分の背と同じくらいにでかい大剣を肩に担いで駆け込んでいく。

 一閃。

 大剣の一振りで、前列にいた敵兵の首が数個飛んだ。

 「おらおらおらぁ!」

 大剣を振り回して、敵兵の塊の中央を突っ切っていく。

 その後ろに続いた歩兵が、敵集団を分断。騎兵隊が敵側面に突撃を敢行し、分断に参加していない歩兵が壁となって前面を支えながら押す。

 「おらおら! ベレグリナ様のお通りだ! 雑魚は下がれ! 群れの頭はどいつだ?! こんな小魚の群れじゃ、そんな上等なものはいねぇってのか?!」

 明らかな挑発。

 だが、形勢が不利な状態にあって、この手の挑発を無視することは兵の上に立つ者に許されることではない。

 「よく吠える野良犬だな! そんなに斬り捨てられたいなら、参るがよい。サーベルの錆にしてやる」

 馬に乗った男が声を上げた。

 傭兵団『クエルボ・イエロ (鉄の体)』団長バレシアだ。

 周囲を騎兵に護衛させていたので、見えなかったのだ。

 この状況、指揮官が敵の挑発に背を向けることはできなかった。

 そんなことをすれば兵の士気が落ちる。戦意を失った部隊は散り散りになって消えるだけ。兵士はまたどこかで傭兵をすることができるだろうが指揮官は社会的には死ぬことになる。

 誰が、敵から逃げる指揮官の下で戦うだろうか?

 兵士に信用されない指揮官を誰が雇うだろうか?

 だから、バレシアに残された道は相手の挑発を受けて立ち、一騎打ちに持ち込んで勝つことだけだった。

 バレシアが馬を進めるにつれ、傭兵たちが道をあけて下がる。

 何人かは逃げ道を探していたが、すでに包囲されているのを見て取ると、とりあえず戦いが決するまではその場にとどまることを選んだようだ。

 徒歩のベレグリナと騎馬のバレシアが向かい合う。

 「馬に乗っているのを不公平だと思うか?」

 刀身の長いサーベルを抜き放ち、バレシアが問い掛ける。

 騎馬の方が有利なのは当然のことなので、相手に否定させたいところだ。半ば挑発のような口調ではあるが、帝都で観劇を趣味にしているご婦人ならともかく戦場の兵士たちには、真意が丸わかりだ。

 恥じ入るべきであったかもしれないが、バレシアは恥じとは思わなかった。

 命がかかっている。

 味方の敗死がかかっている。

 負けるわけにはいかない。もしも生き延びる確率が少しでも上がるなら、全裸にだってなるだろう。

 腕を一本生贄にして戦況をひっくり返せるなら、自分で切り落としもしただろう。

 だから、恥ではない。

 「そんな無粋なことは言わねぇさ。馬に乗ってる方がつえぇとも思わねぇんでな」

 「そうか」

 サーベルを眼前に立てて、勢いよく振るう。

 騎士同士でする挨拶をして、バレシアが身構える。

 ベレグリナも真顔になって大剣を構えた。

 一瞬の静寂。

 先に仕掛けたのはバレシアだ。

 騎馬である優位を生かして、上からの刺突を繰り出す。

 ベレグリナは大剣を盾代わりに、刺突を受け流す。

 息つく間もない攻防。

 金属の擦れあう音と、火花が周囲に散る。

 上からサーベルを叩きつけるバレシア。

 下で防ぐベレグリナ。

 一見、バレシア有利に見える。

 だが、脂汗を流して苦しんでいるのはバレシアだった。

 ベレグリナは大剣を盾にしてただひたすら守りに徹しているように見えるが、その実、大剣の切っ先は常にバレシアの心臓を狙ったまま動いていない。

 サーベルの激しい叩きつけが緩めば、次の瞬間には大剣が伸びてきて自分を刺し貫く。

 押しているかに見えて、バレシアは追い込まれていた。

 汗が滴る。

 剣の動きが大きく、その分鈍くなっていく。

 速い攻撃はそれだけ早く体力を消耗する。

 そして・・・。

 「セイッ!」

 ベレグリナが伸びあがるように大剣を押し出す。

 ギィン!!

 火花を散らしながら弾かれたサーベルが折れて宙に舞う。

 大剣の切っ先が、バレシアの鎧をも切り裂いていた。

 ただし。

 「殺せ!」

 バレシアは死んでいない。

 大剣は鎧を割いたところで止められていて、バレシアの体には傷一つついていなかった。

 「いいや。お前は今、死んだんだ。お前の命は俺のものになった。今からは俺の片腕になって働け」

 「っ?! なにを、ばかな!?」

 「お前が従うなら、お前の下で戦っていた奴らも全部ひっくるめて受け入れるぜ?」

 「・・・」

 バレシアの目が、周囲の傭兵たちに向く。

 その目を、傭兵たちは黙って見返した。

 「・・・わかった」

 バレシアは深く息を吐き、顔を上げた。

 「戦いをやめろ! 我々は降伏する!」

 ハッキリとした降伏宣言がなされた。

 ベレグリナが剣を引く。

 傭兵たちからは安堵の溜息と、同数の怨嗟の声が上がった。

 しかし、怨嗟の声は次の瞬間掻き消えた。

 後方に、半包囲陣を布いた追っ手が迫っていた。

 逃げ場はすでになくなっていたのだ。

 降伏していなければ、挟撃されて全滅していた。その事実が、怨嗟の声を上げていた者たちにも不承不承ながら、バレシアの判断に救われたことを認めさせた。

 こうして、傭兵団『クエルボ・イエロ (鉄の体)』もまた、この日壊滅したのだった。


次回更新は9月2日となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ