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ご当地ヒーロー、森の中で出合った

 ゴルゴと共に森の中を探索すること三十分。

 きのこや木の実、野生の芋など、かなりの数の食材を確保することが出来た。


 活躍したのはもちろん……ラヴだ。


 俯瞰ふかん映像から森全体を探知して(ヘルメットを被っていない俺には見えないが、ラヴさんには普通に見えてるらしい)、見つかった茸やら野草やらを軒並み成分分析アナライズ

 毒のある物を除外し、栄養価の高いものを優先的に選出ピックアップ


 俺とゴルゴが言われるままに移動し、指示された場所を探すとあら不思議、たった三十分で山のような食材が目の前に!

 まあ、言われるままにって言っても、ラヴと話せるの俺だけだから、ラヴ → 俺 →(ラヴによる翻訳)→ ゴルゴという、謎の伝言ゲーム形式だったけど。


 そして、持ちきれないほど大量になった食材はスカイコアの異次元収納ストレージに全部吸い込まれたので、荷物は一切なし。

 

 何もない空間に食材が吸い込まれていく光景に、ゴルゴは目を見開いて驚いていたが、もちろん俺だってそうだ。

 

 スカイコアにそういう力があると聞いてはいたが、いざ目の当たりにすると、さすがに驚かざるを得ない。


 ちなみに、どれだけ入るのかラヴに尋ねてみたら、無限に入ります、と返されてちょっと恐怖を感じた。

 

 だって、無限だよ?

 

 プール何杯分とか、東京ドーム何個分とか、そういう『たくさん!』の代表的な表現をすっとばして、ただ一言、無限。


 …………


 ……まあ、いいや。

 おかげで移動もスムーズなんだし、便利なのはいいことだ。

 異次元倉庫ストレージにしまっている間は時間も経過しないとか言ってたけど、深く考えるのはよそう。


 その後も、ラヴのおかげで簡単に食料が見つかるので、順調に採取を続けていたのだが……



「ニクモ、アッタラ、イイ」


 

 とゴルゴが言ってきた。


 肉か……

 ゴブリン集落の住民は衰弱してるって言ってたし、ガツンと力になるものと言えば確かに肉だろう。


 でも、手に入れるためには当然、森の中で動物を狩る必要がある。

 

 狩猟経験とか、ないんだけどな……

 

 田舎で生まれ育った俺だが、田舎の街っ子シティーボーイなので釣りすらしたことがない。

 だけど、ここまで手伝ってきて、狩りはちょっと……と断るのもどうかと思う。

 一度やり始めたのだから、最後まで手伝うべきだろう。 


 ラヴに手頃な動物が近くにいないか聞いてみた。


 

《ラヴ:三時方向40メートル先に、動物の存在を感知しました。

 分析した結果、食肉用として手頃な対象だと判断します》



 三時方向ってーと、右ね。

 ……危険な動物じゃ、ないよね?



《ラヴ:危険はありません》


 

 よっしゃ、なら一つ、初めての狩りってやつを体験してみるか。

 危険はないって言うし、たぶん兎とかその辺だろう。


 ゴルゴは狩りに慣れてるみたいだし、大丈夫なはずだ。

 

 俺はゴルゴに動物が居ることを伝え、一緒にその場所へと向かった。


 



 ……そして、何の動物なのかラヴに詳しく確認しなかったことを、激しく後悔することになった。



 ◇



・・・・(ゴルゴ、)・・・・(あれ、倒)・・・・(せるか?)


・・・・・(ムリ、シヌ)・・・・・(。アレ、エ)・・・・・(モノ、チガ)・・・・・(ウ。オレタ)・・・・・(チ、エモノ)

 


 ひそひそと小声で話す俺とゴルゴの視線の先には、ゴロンと寝っ転がる動物の姿。


 あれ、熊だよね! 熊だよね!?

 

 こっちに頭を向けて寝ているから、その姿形をはっきりと確認することができる。

 

 焦げ茶色の体毛、全体的に丸みのある体、突き出た太い鼻と口、丸い耳。

 おり越しなら「かわいい♡」って思えたかもしれないが、今はリアルクマ牧場だ。

 いつでも触れ合える状態にある。

 そんなことを思う余裕など、微塵もなかった。

 

 どういうことだよ、ラヴ!? 

 危険はないって言ってたじゃん!

 ゴルゴも、「シヌ、オレタチ、エモノ」ってはっきり言ってるんですけど!?



《ラヴ:マスターなら、問題なく倒すことができます》


  

 はぁっ!? 熊を!?


 ……いや、まてよ。

 そうだ、ウソかホントか、俺はアメリカ空軍より強いんだっけか。

 なら、スカイジャスティスに変身すれば!


 

《ラヴ:スカイジャスティスの機能を、狩猟目的に使用することはできません》


 

 俺、命、危機!

 力、今、必要!


 焦ってカタコトでラヴに伝えた。 


 

《ラヴ:力ならばあります。マスターはただの人間ではありません。ジャスティススーツを運用するために肉体改造を施された改造人間・・・・です。スカイジャスティスに変身していなくても、野生動物に負けるようなことはありません》


 

 ……負けないって、あの熊に?

 いやいや無理だろ、いくらなんでも。


 北海道開拓民の子孫である俺には、熊の恐ろしさがDNAレベルで刻み込まれている。


 奴らは、二百キロを超える体重があるくせに、時速五十キロくらいで走れるのだ。

 例えるなら、牙と爪の生えたマツコデ〇ックスがボ〇トを超える速さで走ってくるようなもの。


 ……怖すぎる。

 

 ラヴに『勝てる』と保証されようが、怖いものは怖いのだ。

 

 隣で同じようにかがみ込むゴルゴに目配せした。

 俺の意を察して、ゴルゴが頷く。


 俺たちは中腰のまま、音を立てないようにそろそろと後ろに下がって行った。


 のだが……




 パキリッ




 と、俺の足元辺りから聞こえた音に、動きが止まった。


 背中に流れ落ちる冷や汗を感じながら視線を下げると、俺の足が真っ二つに折れた枯れ枝を踏んづけているのが見えた。

 

 視線を戻す。

 

 目が合った。

 きょとんとした顔で、こちらを見ている熊と。


 その熊の顔が、次第に歪んでいく。


「何かな? なんだろうな?」から「おっ、なんじゃいワレ? わしの縄張りで何しとるんじゃい!」というふうに。


 熊が、のっそりと起き上がった。

 

 でかい。

 下手すると、ヒグマよりもでかそうだ。 


 牙を剥き出し、鼻にしわを寄せ、明らかに俺たちを敵認識している。


 その威圧感に圧倒されながら、俺はちらり、とゴルゴを見た。

 

 俺と同じように固まっているかと思ったのだが………… 

 

 

 

 ゴルゴは、なぜか俺よりも少し前の位置にいた。

 

 


 ……なんでだ?


 一緒に下がっていた。

 そして、一緒に立ち止まったのだから、前にいるはずがない。


 俺が、無意識のうちに後ずさりしたのか?

 

 一瞬疑問に思ったが、その理由はすぐにわかった。

 俺が足がすくんで動けないのに対し、ゴルゴは少しずつ前に出ているのだ。


 なんで、前に……


 俺の視線を感じたのか、ゴルゴが振り向いた。


 そして俺と目が合うと、頬を引きつらせながらも、にっこりと笑った。



 こいつ……


 

 俺を、守ろうとしているのか!?



 手にしたナイフをなんども握り直しながら、じりじりと前に出るゴルゴ。

 その表情に余裕はない。

 

 自分の命が危険に晒されているだけではなく、ゴルゴの背中には、ゴブリン集落に住むゴブリンたちの命も背負われているのだから当然だ。

 今すぐここから逃げ出したいだろうし、そうするべきだ。 


 だが、ゴルゴは逃げない。

 

 そうすれば、俺が犠牲になるからだ。


 俺は森で出合っただけの他人だ。種族も違う。

 ゴルゴが、俺のために命を懸ける義理なんてないはずだ。


 それでも、ゴルゴはその小さい背中に、俺の命すら背負おうとしている。


 


 それを理解した瞬間…………


 


 俺の胸の奥に、熱いものが燃え上がった。


 

図解!

ラヴさんによる翻訳システム!



( ´・д・)<こんにちは!~~~(音の波)


 ~~~(ラヴパワーが干渉)~~~


 ~~~ギャルグ!>∩( ゜_ゝ゜)oh!I understand!

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