ご当地ヒーロー、原住民と友情を結ぶ
ブックマークや評価、ありがとうございます。
誰かが見てくれていると思うと、より一層書くのが楽しくなりますね。
未熟な書き手ですが、上手くなれるよう頑張ります。
唐突に光に包まれた俺の体だったが、すぐに光は収まった。
驚いた顔のゴブリン(仮)と目が合う。
いや、俺だって驚きだよ。
なんなのいきなり。
パッて光ったと思ったら、すぐに消えるし。
特になんの異常も見当たらない、し………って、あれ?
異常はない。
むしろ見慣れた光景なのだが、光る前と後で違っているものがひとつあった。
俺の手だ。
ゴブリン(仮)のナイフを叩き落とそうと、チョップの形で固まった俺の手。
……素手になっとるがな。
深窓の令嬢よろしく白手袋に包まれていたはずだったんだが、いつの間にか剥けている。
視界の端にあったウィンドウが消えていて俯瞰映像を見ることができないので、そのまま腕の方に視線を辿っていくと、白いTシャツの袖が見えた。
胸や腹の辺りを触り、生地を引っ張ったりしてみるが、なんの変哲もない普通のシャツだ。
足元に視線を移せば、履いているのは黒いスポーツシューズ。
下半身を包むのは黒いストレートパンツ。
これって…………
俺の私服やないけ!
……なんて関西弁で突っ込めるあたり、俺にも大分余裕が出てきたな、うん。
さすがにもう驚くのに慣れてきたってのもあるけど、足元に地面があるのが大きいのかもしれない。
やっぱり、人間地に足ついてないと落ち着かないよね。
しかし、また意味不明な現象だな。
なんだって、いきなり私服にチェンジしたんだか。
うーん……
ま、困ったときはラヴだよな。
ラヴさ~ん。
《ラヴ:さん付けは不要です。
今回の現象ですが、スカイジャスティス形態が強制解除されたのは、機能制限が働いたためです》
リストリクション?
《ラヴ:はい。スカイジャスティスは、強大な力を有しています。
アメリカ空軍を歯牙にもかけなかったスカイデビルの怪人を、何体も倒せるほどの戦闘力です。
そして、スカイコアを移植されているマスターには、エネルギーの枯渇がありません。
つまり、マスターがその気になれば、アメリカ空軍を超える戦闘力で、無限に戦い続けられるということです》
…………マジで?
そういや、スカイジャスティスの能力については、空を飛べるんだなってことしか考えてなかったけど……
そうか、ヒーローだもんな。戦う力があって当然だよな。
それにしても、アメリカ空軍より強いのか……俺。
ヤバくないか?
《ラヴ:ヤバイです。ですので、機能制限が存在しています。
『命の危険がある』『正義に基づいた行動である』『攻撃対象がスカイデビルに属している』
この三つの条件のうち、どれか一つが満たされない限り、スカイジャスティスはその能力を発揮することが出来ません》
……なんてこった。
……いま……ラヴが、『ヤバイです』って……
《ラヴ:…………》
いやいや、そこじゃない。そこじゃないよな。
わかってますって。
……ごほん、今俺は、ゴブリン(仮)に対して攻撃できなかった。
それはつまり『ゴブリン(仮)は俺の命を脅かすほどの驚異ではない』し、『ゴブリン(仮)を攻撃することは正義ではない』し、『ゴブリン(仮)はスカイデビルの怪人ではない』ってことだ。
三つ目は当たり前だとして、一つ目と二つ目はどうよ?
ナイフ持ってるし、俺のこと殺す気マンマンで斬りつけてきたんだけど?
正当防衛とか、そういう感じにならないのか?
《ラヴ:遭遇した直後に成分を分析しましたが、ゴブリン(仮)が所持しているのは、劣悪な鉄製のナイフです。
マスターにかすり傷をつけることすらできないと判断します》
……なんですと?
いや、そりゃあスーツ着てりゃそうかもしれないけど、俺、今生身よ?
っていうか、そうだ。
なんで俺、私服に着替えてんだよ。
スーツの下は肌着しかつけてなかったはずなんだけど。
そもそも、スーツはどこに消えたんだ?
《ラヴ:マスターの体内に移植されたスカイコアは、次元に干渉する力を持っています。
無限のエネルギー供給も、スカイコアが異次元のエネルギーを吸い上げているからこそ可能なのです。
その次元に干渉する力を利用し、ジャスティススーツは現在、隔離された異次元空間に収納されています。
現在マスターが着用している衣服は、マスターの記憶を元にスカイメタルで構築したものです》
………また新しい設定がぽこぽこ出てきたな。
スカイコアについては、もういいや。
なんだかよくわからないけど、なんでも出来る凄いヤツ、ってことで納得しておこう。
で、スカイメタルってなに?
《ラヴ:スカイデビルの【ゲンマ】というカメレオン型怪人を倒した際に入手した、地球上には存在しない未知の金属です。
形状、質感、重量、硬度、色彩、温度を自在に変化させることができ、周囲の風景に溶け込んで姿を消すことや、温度変化によって赤外線探知を逃れることも可能です。
また、高度な自己修復機能、自己増殖機能も備わっているため、ジャスティススーツの強化にも利用されています》
……スカイデビルってのも何でもありだな。
スカイコアもそいつらの技術だって言うし。
それになんだよ、その発見不可能そうな怪人。
ラヴの記録にある世界の俺は、どうやってそんな奴倒したんだか……
「ゲギャ!」
……ゴブリン(仮)のこと、完全に忘れてた。
◇
それからどうなったかというと。
「オマエ、テキジャナイ、ワカッタ」
「分かってくれて、嬉しい。俺、お前、友達」
「トモ、ダチ……」
ラヴの翻訳機能により言葉の壁を取り払われた俺たちは、話し合いによって戦いを回避することに成功し、ほんのりとした友情すら結んでいた。
そうそう、彼の種族はゴブリンで間違いないらしい。
『オレ、ゴブリンノ、センシ、ゴルゴ』って名乗ってたから。
で、このゴルゴがめっちゃいいやつだったのだ。
世界を旅して回っている流浪のゴブリンらしいのだが、この森にいた理由ってのが、なんともカッコいい。
なんでも、旅の途中で訪れた集落(住人は当然ゴブリン)で質の悪い病気が流行り、女も子供も働き盛りの男たちも、全員倒れてしまっていたのだそうだ。
狩りに出ることもできず、次第に衰弱していく集落の住民たち。
それを見捨てることのできなかったゴルゴは、単身この森に入り、狩りや採取をして食料を集めていたのだという。
自分には、何一つ得になることなどないのに。
あとは俺も知っての通りだ。
突然空から舞い降りた俺と食料採取中のゴルゴが鉢合わせし、言葉が通じないために一触即発の状態になったが、ラヴの超性能によって事なきを得た。
しかし、ゴルゴの腕にチョップしようとして、俺の変身が解けたのも納得だよ。
こんないいやつ攻撃して、何が正義だって話だもんな。
まあこの話を聞いたのはついさっきだから、相手の事情もわからないのに攻撃しちゃいけません、ってことなんだろうけど。
「トモダチ。オレ、タベモノ、アツメル、ツヅキ、スル」
俺がゴルゴの男気に感動していると、ゴルゴはそう言って歩き出した。
「俺、手伝う」
もちろん、俺は一も二もなくそう宣言した。
あの話を聞いておきながら、手伝わないという選択肢は俺にはない。
「イイノカ……?」
「当たり前。俺、お前、友達」
「トモダチ……!」
こうしてゴルゴと俺は、種族を超えた友情を結ぶことになったのだ。
ちなみに俺がカタコトなのは、長い文章をゴブリン語に翻訳するのは難しいとラブに言われたからだ。
Go〇gle翻訳とかで、長文を打ち込むと変な訳になるみたいな感じらしい。
書いたものを見直していると、『ラヴ』が『ラブ』になっているのをよく発見する。
だってさ、Vなんてほとんど使うこと無いじゃん。(言い訳)
ついつい左手の人差し指がBのキーを叩いてるんだよ。(全ては自分のせい)
という訳で、発見次第修正してはいますが、たまにラヴさんがラブさんになってることがあるかもしれません。
見た目ほとんど変わらないので、勘弁したってください。
ウォ〇リーを探せ、的な感覚で、隠れたラブさんを探してみるのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。
まあ、全部修正してるとは思うけどね!(根拠のない自信)