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第五話
妹の身体は「兄だった物」を排除しようと吐き続けた。流れるように止めど無く流れる兄だった物は先程の快感と打って変わって酸味と喉の奥にこびり付く苦味へと変化し妹の食道を焼きつけた。
兄を、人を食べてしまった。涙を流せども、吐瀉物が透明になる程吐き続ける身体は、食べた事実までは排除出来ない。
妹の絶叫、嗚咽に混じって母の息急き切った足音、家の中を赤色のライトが交互に差す。家中を普段流れない空気感と人の流れで充満した。
食べかけのメンチカツは袋に詰められ、鑑識の元へと送られていった。
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作:セキム
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