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驚天動地の異世界魔法伝  作者: ろーたす
第四章 運命の時、俺達は
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第五話 暗闇の中を行く

「痛ってぇ・・・」


暗闇の中、俺はむくりと起き上がった。隣を見ればアルフィンが倒れている。


「アルフィン、大丈夫か?」

「ん、うう・・・」


体を揺さぶると、アルフィンはゆっくりと目を開けた。


「ここは・・・?」

「知らん」


そう言って俺は上を見た。どうやらかなり深いところまで落ちたらしい。出ようと思えば出れるけど・・・。


「あ、ユウ君、あっちに道があるよ」


アルフィンにそう言われ、顔を向けると確かに道があった。しかし、暗いのでその先が見えない。


「ふむ・・・」


進むべきか・・・?

地上にはドラゴンがいるしなぁ。


「アルフィンは進むべきだと思うか?」

「うーん、どうだろ」


彼女は指を唇に当ててどうするべきか考え始めた。そういう仕草がいちいち可愛いんだが。


「まあ、とりあえず歩いてみようよ」

「・・・そうだな」


森の下に何があるのかちょっと気になるしな。よし、進んでみよう。俺は向こうに見える道に向かって歩き出した。


「・・・暗い」


隣でアルフィンが呟く。確かに暗い。全然道が見えない。

さっきいた場所は上に空いた穴から、僅かだが光が差し込んできていたからちょっとだけ明るかったけど。


「なーんかお化け屋敷を思い出すなぁ」

「へっ、お化け!?」


1回行ったこのぐらいの暗さのお化け屋敷はなかなか怖かった。


「もしかしたら、お化け出てきたりして」

「ちょっ、や、やめてよぉ!」


彼女の表情はよく見えないが、アルフィンは俺の腕にしがみついてきた。


「や、やっぱり引き返さない?」

「アルフィンが歩こうって行ったんだろ?」

「い、いやぁ、やっぱり気が変わったというか・・・」


と、そんな会話をしていたとき、上から水が降ってきて、アルフィンの頭に当たった。


「ひぃやぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うおおっ、びっくりした!!」


大声で叫び、アルフィンがさらにしがみついてくる。それにより、彼女の胸が俺の腕に当たった。


「───────!!」


これは─────。


「神様、ありがとおおおおおお!!」

「きゃああ、なに!?」


俺の叫びに今度はアルフィンが驚いた。その拍子に彼女は足をもつれさせ、勢いよく転倒した。腕を掴まれていた俺もそのまま転倒する。


そして、少し顔を上げると視線の先に何かが見えた。


「え、ちょ、ユウ君・・・」


アルフィンの声が聞こえる。だが、俺は動けなかった。なぜなら、目の前にあるものから目が離せなかったから。


「ゆ、ユウ君っ・・・」


今日のアルフィンは、上はパーカーを着ているが、下は珍しくスカートを履いていた。

俺は今、そんなスカートの中に顔を突っ込んでいる状態だ。もちろん事故であり、わざとではない。


「なるほど、ここが天国か」

「いつまでそこに顔入れてるのぉぉ!!!」


アルフィンの膝が俺の顎に直撃した。


「ちょ、まっ、ごめん、いでぇぇぇぇ!!!」

「え、ご、ごめんなさい!!」


本気で痛がる俺にアルフィンが慌て始めた。


「いや、今のは、俺が悪い・・・」

「わ、わざとじゃないのは分かってるけど・・・」


俺は起き上がり、ズキズキと痛む顎をさすった。同じく起き上がったアルフィンはよく見ると涙目になっている。


「ごめん、大丈夫?」

「お、おう、大丈夫・・・」


スカートの中に顔突っ込まれたのに、相手のこと気遣うとか、優しすぎな。



「とりあえず、先に進もう・・・」

「う、うん・・・」


再びアルフィンが俺の腕にしがみつく。そのまま俺達は暗闇の中をさらに進んだ。





「長ぇ・・・」


歩き続けること20分。だいぶ暗闇に目は慣れてきたが、道が長い。


「く、暗いぃぃ・・・」


隣でアルフィンが半泣きになっている。


「う、うしろ、うしろから何も来てないよね!?」

「知らん」

「来てないって言ってよぉ・・・」


本気で怯えているアルフィンを見ているとついつい頬が緩んだ。


「・・・け」

「ん・・・?」

「え、どうしたの?」

「いや、今なんか聞こえなかったか?」


突然何か聞こえたので俺がそう言うと、アルフィンはさらに俺に身を寄せた。再び俺の腕に素晴らしい感触が伝わってくる。


「き、気のせい、気のせいだよ!」

「・・・ていけ」

「ほら、こんな声・・・」


・・・ん?


俺は後ろを振り返った。アルフィンも少しだけ後ろを見る。しかし、何も見えない。


「・・・き、気のせいだよ」


アルフィンがガタガタと震える。

そして、再び前を向いた時、それはいた。


「出ていけぇぇぇぇ」

「うぇぇぇぇぇい!!」


俺は腕を振り、目の前の何かを殴り飛ばした。


「ぐべぇっ!!」


飛んで行った何かが壁に衝突し、変な声を出す。


「きゅ、急に何するんじゃいこら!!」

「あ?」


俺が殴り飛ばした何かは、プンスカ怒りながらこちらに歩いてきた。おいおい、ちょっとまて。


「・・・ドラゴン?」

「あん?そうだ、オイラは強いんだぞ!!」


俺達の前に現れたのは、カラスほどの大きさの喋るドラゴンだった。








「オイラはドーン。ドラゴンだ!」

「見れば分かる」

「ちょっと驚かせようと思っただけで殴るなんて、人間は野蛮だな!」

「うるせえよトカゲ」


現在俺は腕にしがみつく王女と、頭に乗っている小さなドラゴンを連れて暗い道を歩いていた。


「で、お前はなんなんだ」

「だーかーらー、ドラゴンだって」

「それは知っとるわい!!なんでてめーは喋ることができるんだ!!」

「まあ、オイラは強いからな!」

「丸焼きにしてやろうか」


話が進まない。

なんでこいつは俺の頭の上に乗ってるんだ。それに、なんでこんな小さいんだ、なんで普通に喋ってるんだ。


「もう、わけわかんねぇ・・・」

「そういう時は寝るといいぞ!」

「やかましい!」


何を言ってるんだこいつは。なんでこんなところで急に寝なくちゃいけないんだよ!

俺とドーンが言い合っていると、アルフィンがドーンに話しかけた。


「はじめまして。私、アルフィンっていうの、よろしくね」

「おう、よろしくな!」


アルフィンは優しく微笑むと、背伸びをしてドーンの頭を撫でた。


「どうしてドーンちゃんは喋ることができるの?」

「オイラの父ちゃん達が昔人間と友達だったらしくて、人間の話す言葉を覚えてたらしいんだ。それで、オイラも言葉を教えてもらったんだ!」

「ふふ、そうなんだ」


・・・なんだこのモヤッとした気持ちは。


「おいトカゲ。てめー俺の時は適当に答えてたろ」

「アルフィンはいい奴だからな!えーと、お前の名前分からないや。毛根でいい?毛根は意地悪だから適当に答えたんだ!」

「よしわかった。殺す」


俺はドーンの尻尾を掴み、目の前にぶら下げた。


「やめろこの!やっぱりお前は意地悪だな!」

「ゆ、ユウ君、乱暴にしちゃダメだよ」

「やめろアルフィン!そんな訳のわからないあだ名をつけられて俺は激おこなんだ!」


アルフィンに止められている隙に、ドーンは俺の手から逃れた。


「ふんだ、悔しかったら捕まえてみろーだ!」

「てんめ、上等だこらぁ!!」

「え、待って!怖いから置いてかないでーー!!」


飛び去ったドーンを追いかけて俺は走り出した。

その数秒後、若干泣き声が聞こえたので、半泣きのアルフィンの元に戻って再び二人で歩き出した。



─人物紹介その3─


エリナ・ハーシェル 17歳

身長163cm 体重48kg


・禁忌魔法、能力

《不明》


・魔法、技

《オルティア》

聖光術ルーンの一つで、初歩的な回復魔法。


・好きなもの、こと

読書、聖光術の勉強


嫌いなもの、こと

お化け、悪魔


教国出身の見習いシスター。姉はローレリア教会序列一位のアーサ。カサールでユウ達と出会い、旅に同行することになった。ユウに惚れていたが、彼はアルフィンと付き合ってしまい、少々嫉妬はしているが、二人の恋を応援している。

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