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驚天動地の異世界魔法伝  作者: ろーたす
第一章 王女と俺と修道女
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第八話 一日遅れの始発列車

次の日、ネームを出発した俺達は、街からおよそ20分程の距離にある森にたどり着いた。



ここを越えれば王都行きの列車が通っている街、ブリューセンまでそう遠くはない。


ちなみに、昨日風呂で会った男のことは二人には伝えていない。


「うー、虫が出てきませんように」

「いや、もうそこの木にでかい()がひっついてるけど」

「わああっ、言わないで!」


ああ、アルフィンが騒ぐから蛾が飛んでいっちゃったじゃないか。

「さて、行くか」


この森はそれほど大きくないはずだ。さっと通り抜けるとしよう。










「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

「きゃっ、アルフィンさん、押さないでください!」


女子二人が悲鳴を上げながら前方を走っている。何故かというと、後ろから巨大な蜘蛛(くも)型の魔獣、『ジャイアントスパイダー』が()のような魔獣、モスロンの大群を引き連れて俺達を追ってきているからである。


「うん、確かにこれはきもい」


二人の元に飛んでいかないようにモスロンを手で叩き落としながら、俺は走っている。



遡ること10分前、順調に森を進んでいた俺達の通り道にジャイアントスパイダーが眠っていたのだが、アルフィンがそれに気付かず、目の前の巨大蜘蛛にぶつかってしまったのだ。

それで驚いたアルフィンが横の木に身体をぶつけると、上で休憩していたモスロンの大群が襲いかかってきた。


そして、怒った魔獣達に追いかけ回されているというわけだ。しかもこいつら、途中で違うところにいた魔獣も呼び寄せてさらに数を増やしていく。


「ちっ、多いんだよ!」


手に魔力を集め、一気に放つ。それをくらったモスロン達は跡形もなく消滅した。しかし、その隙にジャイアントスパイダーが糸をネットのようにアルフィン達に向かって飛ばした。


「きゃっ!!」

「い、糸!?」


二人は糸に絡まり、その場に転倒した。


「ちっ、てめえ、行かせるかこら!」


捕らえた獲物に飛び掛ろうとしていた巨大蜘蛛を本気で殴り飛ばす。さらに群がってきたモスロン達は全身から魔力を放出して吹き飛ばした。今のでほぼ全部のモスロンを倒せたはずだ。残ったモスロン達も怯えて逃げて行った。


「二人とも、大丈夫か!?」

「うん、なんとか・・・」

「すみません、助かりました」


二人の所に駆け寄り、ネット状の糸を引きちぎってやる。


「まったく、アルフィン。ちゃんとまわりを見て歩かないと」

「ご、ごめんなさい・・・」

「まあ、反省してるんならいいんだけどな」


今の追いかけあいでかなり森の出口に近づいたはずだ。しばらくすれば森を抜けれるだろう。


「さあ、もうひとふんばりだ、頑張って歩くぞー」

「はーい」

「わかりました」


そして、歩き続けること20分、森を抜けた俺達は少し休憩を挟んでブリューセンに向かった。







「でっけー街だな」

「久しぶりに来たなぁ」


鉄道の街ブリューセン

王都や他の街へ向かう列車の始発駅がある街である。

王国の中でもかなり発展した大きな街であり、人口もかなり多い。


ゲームでも各街へ移動するときによく利用した街だ。


「ここから列車に乗って王都に向かうんですよね?」

「ああ、街をひと通りまわったら駅に向かおう」


王都行きの列車が来るまでまだ時間がある。それまで時間をつぶしておくとしよう。









それから1時間後、本来ならば王都行きの列車が来るはずの時間なのだが、なぜか列車がやって来なかった。


「おいおい、どうなってんだ!!説明もなしに何分待たせるつもりだ!?」

「も、申し訳ございません!連絡はまだ来てなくて・・・!」


駅に一人の男の声が響いた。

確かに、何か事故などがあったら連絡がくるはずだが。


「てめえ、嘘ついてんじゃねえぞ!」

「ぐっ!?」


一人の男が駅員の胸ぐらを掴み、掴まれた駅員は苦しそうに顔を歪めた。


「こっちは金払ってんだぞ!」

「おい、やめとけって」


このままでは駅員がかわいそうだし、うるさいので、男の手首を掴み止めに入った。


「あぁ?なんだてめぇは」

「別に誰でもいいだろうが。その手を離してやれって」

「誰に指図してんだガキ」


そう言って男は駅員を離し、今度は俺の胸ぐらを掴んできた。


「ちょっ・・・!」


それを見たアルフィンがこちらに来ようとしたが、手で制した。


「調子にのってんなぁ。なんだ、殺されたいのか?」

「何言ってんだおっさん」


とりあえず離せよこいつ。俺は男の手首を掴み、力をいれた。


「なっ・・・!?」

「イラついてんのはわかるけどさ、そこの駅員さん関係ないし、他の人に迷惑なの気づけよ」

「て、てめっ!」

「大人だろ?あんた」


そう言って更に強く手首を握った。


「ぎゃああぁぁぁ!わかった、わかったから離してくれ!!」

「ふん」


とりあえず手を離してやった。男は手首を押さえ、涙目で俺を睨んできた。


「お、覚えてやがれ!」


そう言うと男は駅の端のほうに走って行った。


「ユウ君、大丈夫!?」


アルフィンとエリナがこちらに駆けつけてきた。


「ああ、この通り」

「よ、よかった」


アルフィンは自分の胸を撫で下ろした。どうやら心配させてしまったようだな。


「まあ、あの人の気持ちもわかるけどな」

「そうですね、流石に何の連絡もこないのはおかしいと思います」

「だよなぁ」


何があったのだろうか。少し心配だな。

結局その日、王都方面から列車が来ることは無かった。








次の日、駅に列車が来ない原因がわかったという連絡が入ったそうだ。


それを駅員さんに聞いてみると、どうやらこういう事情でこちらに列車が来れないらしい。


「大型の魔獣が線路の一部を破壊し、更に近くに居座ってしまったってさ」


それを二人に伝えると、心底驚いていた。今までこんなことは無かったという。


「どうして線路を破壊したのでしょうか」

「お腹空いてたのかなぁ」

「腹減ってるからって線路破壊する魔獣なんて、俺、大嫌いだ」


まあ、破壊の理由はわからないが、とにかくその大型魔獣のせいで列車が来れないんだとさ。


「うーん、いつか討伐されると思うけど、それを待つっていうのもなぁ」

「そろそろザインさんに貰ったお金も尽きてきましたし」

「そうなんだよなぁ」


ここで討伐されるまで待っていると、食費などで多分ゴルが無くなる。切符は昨日の分があるから買わなくていいが、王都に着いてからが大変になってしまう。


「俺達でその大型魔獣倒すか?」


俺がそれを言うと、二人は顔を合わせてニコリと笑った。


「私もそれを言おうと思ったんだぁ。まあ、ユウ君しか闘わないけどね」

「私は、少しだけならお手伝いできます!」


そう言ってエリナは両手を合わせ、魔力を集めて魔法を唱えた。


「《アルティア》!」


すると、俺の身体をエリナの魔法が包み込んだ。


「これって・・・」

「昨日覚えたんです。大怪我とかは無理ですけど、少しの怪我とかなら治すことができる魔法です」


確かに今のはゲームで彼女が最初に覚える回復魔法だった。


「やるじゃないか」

「ふふ、足を引っ張りたくありませんから」


エリナは俺を見て微笑んでいる。


「むむむ・・・」


アルフィンを見ると、悔しそうなかおでエリナを見つめていた。


「あ、その、別に自慢しようと思ったわけでは・・・」

「そ、そんなの私だってすぐ使えるようになるもん!」

「まあまあ、そんなことで言い争うんじゃないよ」

「むううう〜!」


アルフィンは頬を膨らましてそっぽを向いてしまった。


「まあ、とりあえず大型魔獣のところに向かってみよう」

「徒歩・・・ですか?」

「当たり前だ」


なぜか二人は嫌そうな顔をした。まあ、サッと行ってサッと帰って来るとしよう。











「なるほど、あの男が・・・」

ユウ達が駅で大型魔獣を討伐することを決めていた時、その光景を眺めている一人の女の姿があった。


「ちょうどいい、実力を見させてもらおうか」


そう言うと、フードで顔を隠したその女は誰にも見られることなくその場から姿を消した。

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