第一話 始まりは牢獄の中で
未熟者ですが、よろしくお願いします
目が覚めると、そこは薄暗い牢の中だった。
「んん・・・?」
あれ、俺逮捕されちゃった?
いや、まてまて、そんな悪いことした覚えがないぞ。
そんなことを脳内で呟きながら体を起こし、なんとなく後ろを振り返ると、そこには、
「は・・・?」
綺麗な白髪の少女が眠っていた。
———————俺、柊木勇17歳は、いたって普通の男子高校生だった。部活は陸上部で、それなりに足は速かったし、友達もまあそれなりにいた。ゲームや漫画も好きだったが、、別にオタクと言われるほどやりこんだりはしていない。
いや、一つだけかなりやりこんだのがあったか。今大人気の『メモリアハーツ』っていうゲームだ。異世界の大陸ローレリアを舞台に、王国、帝国、教国、共和国などが大陸支配のため激戦を繰り広げる中、それぞれの国にすむ戦士達がその戦争を食い止めるために活躍する大作RPGである。
プレイヤーは章ごとに変わる主人公を操作しながら様々な困難に立ち向かうのだが、途中で主人公達が出会い、共に最後の戦いに挑むところなんかもう最高だった。その日寝れなかったもん。
敵は兵士とかだけじゃなくて魔獣とかもいるから、敵によって戦略を立てるのも楽しかった。
ん・・・? 楽しかった?
別に今もプレイしてるゲームなのに、今、なんで俺過去形で・・・・・・。
ああ、なるほど、思い出したわ。
俺、学校の帰り道で、信号無視してきた大型トラックにタックルかましてしまったんだ。そんで、そのまま天に召された。
・・・・・・・・・めちゃくちゃだな、おい。
それで、目が覚めると、牢に閉じ込められてるわけだが。
「全然状況がわからないんだが・・・・・・」
轢かれて召されて、目が覚めると暗いし汚い牢の中で、その中には俺と女の子。
まさかこの子も犯罪を犯したのと思いながらその顔を覗き込んでみると、
「すう・・・すう・・・」
めちゃくちゃ可愛かった。びびった、今まで見てきた女の子の中でも最高クラスに可愛いんですけど。目が覚めると後ろに美少女てどういう状況なんだよちくしょう。
白い髪をショートにした見たところ15,6歳くらいの少女は、可愛らしい寝息を立ててすやすやと眠っていた。
「白髪て、え、なんなの、この子まさかお婆ちゃん!?」
だって、俺の住んでる世界で白い髪の毛の女の子なんて見たことないもん。もしいたとしたら、そいつストレスめちゃくちゃたまってたんだろうな、はは。
「・・・・・・とりあえず落ち着いて状況を整理してみよう」
学校の帰り、トラックに轢かれた。
どんな痛みだったかは覚えてないが、確実に俺は死んだはずだ。
それで、さっき目が覚めると薄暗い牢の中。
おい、よく見たらなんだこの服、ボロいし汚ねえ!!
なんなんだよ、人の制服奪ってこんなの着せたってのか!!
あ、脱がされた時、俺裸見られたんじゃないの、イヤン。
・・・・・・脱線したな、戻そう。
後ろには白髪(ストレスによるものかは不明)の可愛らしい少女がすやすやと眠っている。
うん、さっぱり状況がわかんないや!
てか、まずここ日本か?そんなこと考えてなかったな。
壁はレンガのようなものでできており、蝋燭のような物が窪みに置かれてゆらゆらと小さな火を揺らしていた。
「死んだはずなのに、なんで、こんな場所にいるんだよ、俺」
考えても考えても、状況はわからないし、自分が生存している理由もわからない。あれだな。これ、詰みだ。
「・・・・・・頭痛してきた」
考えすぎて吐き気がする。もう寝たほうがいいかもしれない。
そんなことを思いながら、勇は壁にもたれかかった。
「母ちゃん、俺、どうなっちゃうんだろ。」
そんなことを呟いて、勇はゆっくりと目を閉じた。
が、
「う、うう・・・・・・ん」
「えっ!?」
可愛らしい声が聞こえたので再び目を開け、声がした方に顔を向けると、
「え・・・・、あなたは・・・・、誰・・・・?」
白髪の美少女が怯えた表情でこちらを見つめていた。
「え、あ、いや、俺は別に、君にあんなことやそんなこと、デュフフなことをしようとしていた訳じゃなくてだな」
まずい、この状況は、完全に俺がこの女の子捕まえて閉じ込めて、デュフフろうとしているようにしか見えない。
その証拠にほら、めちゃくちゃ怯えてるじゃんか。
「デュフフ・・・?」
白髪美少女は怯えながらも言葉を発してくれた。
デュフフを聞き返さても。
「信じてくれ、お願いだ。なんなら俺の最高の一発ギャグみせるから。いや、ヘッドスピンしながらリクエストしてくれた曲なんでも歌ってみせるから。信じたまえ!」
白髪美少女は、完全に固まってしまっている。まあ、そりゃこの男何言ってんだ死ね的な感じにはなるわな。俺もテンパりすぎた。
「あー、とりあえず、俺が君になんかするつもりはないってことは信じてくれ」
冷や汗を流しながら彼女に言うと、彼女は一瞬きょとんとしていたが、
「ふふ・・・・・・」
小さく笑ったのだった。
「っ・・・・・・!」
おいおい、可愛すぎだって。お兄さんやばいよ、白髪なのはすげぇ気になるけど、ちょっとやばいよ。
そんなことを考えて悶えていると、白髪の少女からこちらに話しかけてきてくれた。
「あの、あなたは一体誰なの?昨日までここに、一緒に入ってたイラルさんはどこにいったの?」
少し戸惑いながら、彼女は言った。
「俺は勇、柊木勇だ。その、イラル?って人はしらん」
「あなた・・・ユウ君が何かしたわけじゃないの?」
わざわざあなたから言い直してくれたぞおい。ええ子や、この子めっちゃええ子や。
「ああ、さっき目が覚めたらここにいてなー。俺も、自分がなんでこんなとこにいるのかさっぱりわからんのよ」
「そう・・・なんだ」
そう言う彼女は、なんだか寂しそうな、そんな表情をしていた、
「ユウ君も王国で捕まって、ここに連れてこられたんだね」
「いや、知らないけど・・・・・・ん?王国?」
「え、違うの?てっきりこの前のキサナでの戦闘で捕まっちゃったのかと思っちゃった」
「え、キサナ?」
そんな地域が日本にあっただろうか。違う国の場所か?
「帝国軍がこの前攻めてきて、占領されちゃった王国の街だよ。もしかして、ユウって教国出身?だったらキサナなんかわかんないかぁ」
「帝国?教国!?」
まてまてまてまて、さっきから、どこかで聞いたことのある名前が次々に飛び出してくる。え、まって、もし今俺が考えてることが正しければ、まさかここは・・・・・・、いやいや、そんなはずない、そんなはずないだろー、はははは、とりあえず美少女にここがどこか、そして、君が誰なのか聞いてみようじゃないか。
「えーと、君、名前は?それとここってどこ?」
うんうん、そんなはずない、そんなはずない、そんなはず・・・・・・・・・
ん?まて、この白髪美少女、どこかで見たことあるような・・・・・・。
「ここはハールヴァー帝国内の、多分どこかの鉱山だと思う。それと、私は、その、驚かない?」
「あ、ああ、驚かない」
帝国
その言葉を聞いただけで、俺は内心人生最大級に驚いてるわけですが
「私は、アルファリア王国の王女、アルフィン・エル・アルファリア。その、よろしくね、ユウ君」
彼女の次の言葉は、俺に更なる衝撃と言う名の核爆弾を投下した。
————この2人の出会いが、この世界の運命を変えることになることなど、まだだれも知らない。