〖繋いだ手と手〗
短いです。
文房具屋に着いて目当てのノートの他にもうなくなりそうな鉛筆とスケッチブックを購入した。
私は美術部で絵を描くのが好きなので直ぐに無くなってしまうのだ。
文房具屋を出る頃には空が夕焼け色から夜になろうとしていた。
駅から出て来る人達を避けながら大宮君を見失わないように早歩きをする。
私の背が小さいからなかなか思うように前に進まない。
ふと前を見たときには大宮君は見えなくなっていた……。
慌てて進もうにも丁度帰宅時間なのか人の波が全然少なくならない。
そんな私の手を掴む大きな手。
ビックリしてその手の先に目線を移せば汗をかいた大宮君がいた。
「はぁ……っ、ごめん。こんなに人が多くちゃ木下は進むの大変だって気付かなかった。」
「あ……、ぅうん、大丈夫……大宮君が来てくれたから、もう平気。」
「……手、繋いでたらはぐれないだろ。」
「う、うん。…ありがと……。」
大宮君と繋いだ手から私のドキドキが伝わりそうでキチンと目を合わせられない。
私、手汗かいてないかな?大丈夫かな?
何だかドキドキし過ぎてどうすればいいのかわからなくなる。
私さっきはどうやって話してたかな?
「木下、……結構暗くなっちまったから今日は家まで送る。」
「………え?」
「いや、だから家まで送るから。」
「え!…あ、あの……別にだ…」
「因みに決定事項だから。木下は気にせず送られてればいい。」
「はぃ……。ありがとう、ございます。」
「うん。」
私の家までの帰り道に大宮君は私に一つの約束をさせた。
何だかドキドキと幸せがいっぱいな1日だったな。
「木下って美術部だったよな? 何描いてんの?」
「えっとね、今は屋上から見える町並みを描いてるんだ。そんなに上手じゃないから恥ずかしいんだけどね……。」
「へー、屋上かぁ。普段は鍵閉まってるから屋上から見える町並みなんて見たことねーな。」
「凄い綺麗なんだよ。 特に夕方になる頃の時間が好きなんだ。」
「じゃあさ、その絵が完成したら俺にも見せて? 約束。」
この日感じた感情は何時までも忘れたくない私の宝物。
初めてのデートも初めて手を繋いだことも初めての約束も。
これからもずっとずっと、大宮君と積み重ねていきたいな。