〖初めての告白〗
もう冬間近になった10月下旬。
冷たい風が吹く中庭のベンチに私は座っていた。
「……来て、くれるかな? 」
私は木下静香。
高校二年のどこにでもいる普通の女子です。
そんな私は人生で初めての呼び出しをして、呼び出した相手を待っています。
話した事もない人からの手紙なんて読んでないかな?
彼が優しい人だって知ってる。
読まずに捨ててしまうなんてしないってわかってる。
でも、……不安だった。
呼び出し場所に来てからどれだけ経ったかな?
五分?十分?
「……来ない、のかな。」
心臓はこれ以上早く動かないだろうと思うぐらい激しく動き。
泣きたくないのに、目に涙が溢れ出そうとする。
ふと、遠くから足音が響く。
「…っごめん!」
「ッ!」
急いで走ってきてくれたのかな。
後ろから聞こえた彼の声は激しく弾んでいて、汗がこめかみに流れていた。
「はぁ……っ、ごめん、先生にっ捕まってて、来るの遅くなった……っ。」
「大丈夫です! ……来てくれてありがとうございます、大宮君。」
彼、……大宮彰君。
去年の今と同じ季節に私は彼に恋をした。
あの日、公園で転んでいた子供に向けていた優しい笑顔に一目で私の心は落ちてしまったの。
「…下さん、木下さん? 」
「ッあ! ごめんなさい、私が大宮君を呼んだのに……。」
「いや、こんな寒い中かなり待たせたから具合悪くなったのかと思ってさ。……それで、俺に話って何? 」
言うんだ……っ!
ずっと見てるだけでいいなんて思ってた私からは卒業するんだから!
「あの……私、二年三組の木下静香って言います!……それで、あの……。」
「うん。」
「大宮君は私の事なんて知らないと思うんですけど……、どうしても……言いたい事あるんです。」
「……。」
「わ、私……大宮君の事、が……。」
「俺が…なに?」
頭が真っ白になって気絶しちゃいそうだ。
あの大宮君が私を見て話しかけてる。
言わなきゃ、待ってる、言うんだ!
「私!…大宮君の事が好きです!良かったら……あの、……付きあって下さい!」
「うん、俺も木下さんの事好きだよ。是非付き合って下さい。」
え……えっ!? ……ほんと? 大宮君が、私の事を……すき? これって、夢? 私の都合のいい夢なのかな?
「本当だし、夢でもなく、俺は木下さんが好きだよ。」
「あ、れ? 私声に、出してました、か?」
「全部声に出してたよ。」
そう言って大宮君は、私の好きな優しい笑顔で笑ったんだ。