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わかってはいても絶えられるはずも無い事

「アルキの血の匂い…… っこれだ!!」


わたしは全速力で森の中に突入し、五感をフルに使ってアルキを探した。


アルキの姿を追い求め、アルキの声が聞こえないかを探り、アルキの魔力の残滓を感じ、そしてついにアルキの匂いを探りあてた。


「アルキぃ! すぐに…… すぐに行くからな!!」


わたしはアルキの血の匂いを探り当てると、それの元を全力で追い求めた。



わたしは……


わたしはすぐにでもアルキの元へ駆けつけてあげたかった。



あのアルキの呪いに含まれていたアルキの本音。


そしてその本音と共に伝わってきたアルキの心象風景。


暗く狭い、自由も何もない部屋で、小さな子供が、アルキが…… うつろな目で声も無く泣いている。


それは…… アルキの心の中の風景は…… とても寂しくて、とても悲しくて……


その風景が一体何を意味しているのか…… わたしにはまだ… わからないけど。


だけど……


そんなアルキを見てわたしはただ……


ただただ、彼を抱きしめてあげたかった。


抱きしめてあげられないのが、辛くて… そして歯がゆかった。


だから……


「アルキぃ…… ここ…? ここか!!」


わたしはいますぐにでも、アルキを抱きしめてあげたいのだ……


――――


「おや……? どうやらようやく来られたようですよ? ふふ…… 良かったですねぇ、死ななくて」


「う………ぁ…」


「あなたの魔力は、攻撃できないとはいえ脅威ですからねぇ…… ここまで痛めつけておけば最早魔法など練れないでしょう」


「くぁ…………」



















「アルキぃぃっ!!!」


わたしは暗い洞窟の中になだれ込むように入りその中の光景を見据える。


「…………っぁ ………あるきぃ!!??」


わたしはそこで目にした光景に、絶句し絶叫する。


「アルキ!! な……!! あるきぃいいいい!!」


は…… 発狂しそうだ……ぁ…


「あるきぃ……い」


わたしの目に映ったアルキ……


「ぃ……ぐにす… に…げろ…ぉ」


それは、胴体のあらゆる箇所が焼けただれ、顔から涙と涎を垂れ流し、瞳からは光が抜け落ち混濁していて……


搾り出すような声と、苦しげな呼吸はまさに…… 虫の息であった。


「逃げ…て……」


わたしの声を聞いたアルキが、焦点のあってない視線を必死でわたしにあわそうとしている……


それが、とても、痛々しかった……


「きさま…… キサマァ! キサマァああ!!!」


わたしは両の拳を血が出るほどに握り締め、魔王を激しく睨みつける。


「アルキに何をしてくれたぁアアああああああああああああああああ!!!!!!!」


アルキをアルキをアルキをぉお!


わたしの……!! 


アルキを!!


お前は、なんで!!


許さない、許さない!!


なんで… アルキが…


泣いてる!


わたしが…


早く抱きしめてあげないと……!!


こいつ…


邪魔だ!!


こいつは許さないぃ!!!


「うるさい」


ザクッ…


「がぁ……!」


魔王がそう言ってアルキの太ももをナイフで突き刺し、アルキがそれに力ない悲鳴を上げる。


「アルキぃ!!」


何を!?


アルキが……


アルキをこれ以上いためつけるなぁ!!


「やめろぉぉオオオオ!!!」


「うるさいですよ」


ザク…


「あ……ぐ」


「ああぁ!! やめろぉ!!」


あ…ああ!


またアルキの足にぃ!!


やめろ…… やめろ!!


「黙りなさい」


ぐちゅ……


「うぐぁ…!」


やめろ…… やめて……


もうアルキを傷つけないでぇ!!


「ああああ!! やめて…… やめてぇ……!!」


わたしは涙を流しながら、アルキに向けて手を向け虚空を掴む。


あまりの自分の無力さとふがいなさに絶望し… 膝からは力が抜け、瞳からは涙がこぼれる。


「何でもするからぁ…… もう… やめてあげてぇ……」


わたしは… 


その場に崩れ落ちた……


――――


「あうっ!?」


「ふふ…… 良いかっこうですねぇ、アナタ… 可愛いですよ」


魔王がわたしの頭を踏みつけてそう言う。


魔王は先ほど手下の人間にアルキを任せて、こちらに歩み寄り、泣き崩れていたわたしの頭を踏みつけこうしている。


「あなたは何をしにきたのですか……?」


「くぅ……」


魔王がわたしの頭を踏みながら、嘲笑う。


わたしの口の中に血の味が広がり、同時に悔しさがこみ上げる。


「あなたは何も出来ない…… くくく」


「ぐ……」


だが……


こいつの言うとおり、わたしにはもう何も出来ない。


何かすればアルキがまた傷つけられてしまう……


「助けてあげても良いですよ……?」


「え!?」


魔王がいやらしい笑みを浮かべてそう言う。


「あなたが私の呪いを受け入れ、私の永遠の奴隷となるなら… この男は助けてあげましょう」


「な………!?」


こいつは……


こいつはわたしが欲しかったのか……


私のせいで… アルキはこんな目に?


「わ…」


わたしはアルキをちらりと見やる。


わたしの目に映ったアルキは…… 本当にぼろぼろで……


それを見ているだけで… わたしはとめどなく涙が溢れてくる。


「わ… ぐすっ… わか……」


こいつが…


わたしがこいつの条件を受け入れたとしても……


こいつがアルキを開放する確証はない。


だが……


「あるきぃ……」


わたしがこいつの提案を受け入れねば、こいつはわたしが受け入れるまでアルキを痛めつけるだろう……


「わか……」


わたしにはそれが……


アルキが痛めつけられるのを見るのが……






絶えられなぃ…………よぉ……






「わかっ………」






バキィッッ!!!!!






わたしが魔王に契約の言葉をつむごうとしたそのとき。






『イグニスに……』
















『俺のイグニスに触れるなぁ!!!!!!!!!!!』






自分を人質にしていた人間の腕を折ってはじき飛ばし。


自分の腕を砕いたアルキが…… 


激怒して立ち上がったのだった……






「アル……キ?」

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