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手を繋ぐのは初めてだったりもする

「ここからは警戒して行こう」


「わかった……」


アルキは真剣な顔でわたしを見ながらそう言い、わたしもそれに神妙な顔で頷いた。


そしてわたし達は警戒をしながら、克、自然な装いで村へと目指す。


人払いの魔法を抜けた時点で、恐らくわたし達の存在はばれていると見るべきであり、それならばいっそ自然に進んだほうがいい。


「アルキ……! あれ!」


「うん……」


わたし達がしばらく歩き、村が大分近くなってきた頃、わたし達の前方に何やら人影が見えた。


わたし達はそれを確かめようと、足早に向かう。


すると……


「あ……うぅ……」


黒髪に茶色い肌をした少女が、地面に尻餅をつき震えながら固まっていた。


そして、そんな少女の前方には……


「グガァァァ!!」


数匹のオークが彼女を取り囲んでいたのだった。


「グァッ!!」


そのオークは手に持っていた棍棒を振り上げ、少女へと振り降ろす。


「キャァァァァ!!」


少女は甲高い悲鳴を上げながら、身を屈め、目を瞑る。


「危ない!」


しかし、そこでアルキがすぐさま少女に手をかざし瞬きのうちに守護結界を少女に張った。


ガッキィィン!!


金属音に似た音を放ち、オークの棍棒が勢い良くはじき返される。


「ぐぅ……」


そして、それと同時にアルキが自らの腕を軽く押さえ、小さくうめき声を上げた。


……見れば、アルキが創った守護結界を叩いたオークが、持っていた棍棒を結界によりはじき飛ばされていた。


どうやらその際にオークが腕に激しい反動を受けたらしく、それがアルキの「嬲り殺しの呪い」によりダメージ判定をされたらしい。


瞬時に簡単な対象反発効果を持つ守護結界を展開したアルキも大概だが、まさか「嬲り殺しの呪い」がそこまでシビアに効果判定するとは……


これは考えを色々改めねばならないやも知れない。


「イグニス! 頼む!」


「ああ!!」


わたしはそんな事を考えながらも走り出し、アルキの指示通りにオークの元へと接近していく。


オークの数は…… 1、2、3匹か……


一瞬で決める!



「轟き振るえ! 稲光るかいな…… 雷銀ノ爪(ライトニングソード)!!」



ッ!?


アルキがわたしに魔装付与の呪文をかける。


わたしの腕から爪にかけて強力な雷属性の付与が……


これは… すごい力を感じる!!


「おおあッ!!」


ズガァァァァァンンッ!!!


わたしが雷をまとった爪をオークに向けて振るうと、オーク三対は白い閃光と雷鳴につつまれ、跡形もなく吹き飛んだのであった。


…………二節詠唱の呪文でこの威力か。


うむ、やりすぎではあるが、どうやら我が主はエンチャンターとしても優秀な様だな……



「大丈夫ですか……?」


わたしが若干ポカンとしながら、焼け焦げた地面を見ていると、その間にアルキが先ほどの少女に声をかけていた。


「あ…… はい! 助けてくれてありがとうございます」


少女はアルキの声欠けに応じてにこやかに応対をする…… ん? にこやか?


「……………っと、いえいえ、怪我は無いですか?」


アルキもその予想外の反応に若干戸惑いつつ、にこやかに対応する。



……おかしい。


わたしはここ数日、アルキと行動を共に接してきたからわかるが、アルキと接し、人がする対応は大きく分けて二つ。


気持ち悪がって嫌悪するか、気味悪がって拒絶するかのどっちかである。


それは、アルキにかかっている三つの強力な呪いの余波によるせいらしいのだが、それゆえ、今のこの少女のように好意的に接しているのは見たことがなかった。


わたしがそんな事を考えながらアルキを見やると、アルキは少女が胸元にしているブローチに注目していた。


「その、ブローチ、珍しいデザインですね……」


アルキはぶしつけにそんな事を少女に聞く。


「え? ……あ、ああ、これはわたしの死んだおばあちゃんの形見で、呪いよけの効果があるものなんですよ」


少女はそう言って、アルキへと笑いかける。


「そう…ですか…… ふふ、素敵なブローチですね」


アルキは少女の微笑みに返すように、嬉しそうにほわりと優しく微笑んだのであった。


「む……」


わたしは、そんなアルキの、わたし以外に向けられている笑顔を見て、何やら心がもやもやするのを感じる。



「……ほぁ」


そして、そんなアルキの微笑を間近でみながら、少女は少しだけ頬を染めてぽやりとしていた。


「ぬ……」


なんだ、この女……


おい、その顔は… なんなんだ!


――――


「なるほど…… じゃあイリヤさん、ちょっと村長さんのところに案内してもらって良いですか?」


「はい! あと、アルキさん! 私のことはイリヤって呼び捨てでいいですよ!」


「え………… えっと… わかったよ、イリヤ」


「はい! おねがいします!」



「む…」


わたし達はあの後、この女ことイリヤに話を聞き、そこから今後の方針を話すべくこの村の村長宅へと向かう事にした。



わたし達がこの女に聞いた話の全容はこうだ……


この村は思った通り、現在魔王に襲われているらしい。


ただ、魔王の使いがきたのはつい今さっき…… つまり今しがたのオークがそうであったのだ。


ちなみに魔王の使いが村人達によこした手紙に記入されていた内容は「全ての食料と、全ての若い女の提供」であった。


もちろん、村側はそんな要求は呑めるはずはないので、とりあえずは従ったふりをしつつ手紙を返信し、その間に近隣の村に救助を求めに行こうとの考えであったとか。


そんな訳で返信の手紙をとりあえずオークに渡そうと、この女が近寄ったところ、うっかりオークの足を踏んでしまい殺されそうになった……


と、言うのがことの顛末らしい。


「でも…… 使い魔を殺しちゃったから、これってやばいですよね……」


イリヤがそんな事を言いながら媚を売るようにアルキを見つめる。


「いや…… この村の外に探知用の結界も張ってあったから、どの道反逆の意思が知られることにはなっていたと思うよ?」


アルキはそんなイリヤを見ながら軽く微笑んで言う。


「そ、そうなんですか!? 魔術結界の事がわかるなんてアルキさんはすごいんですね!!」


ちょ…… こいつアルキに少し近づきすぎじゃないか?


ずっとニヤニヤしやがってこの女……


アルキは確かに呪いを抜きにしたらタダの笑顔が素敵なイケメンだから…… くそ。


「いや、僕はそんな大した奴じゃないよ」


「そんな事はないです! やっぱり、若くしてプロの勇者やってる人はちがうんですね!!」


っく……!


やめろ! アルキにニコニコして近づくんじゃない!!


「アルキ! ほらさっさと村長の家に行くぞ!!」


わたしはアルキの手を引いて早足で歩き出す。


「ちょ!? どうしたの、イグニス!?」


アルキはちょっと優しくされただけでなびいちゃうような奴なんだぞ!!


わたしのアルキに気安く優しくするなぁ!!











あれ……?


これ今、手………… つないで歩いてる?






「む…」








もっとすごいことやってんのに手を繋いで歩くのは初めてで変に意識してしまうイグニス回でした!

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