表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

彼方よりカナンの鍵へ

作者:一沢
最終エピソード掲載日:2026/02/28
彼らは逃げられなかった。元から囚われの小鳥達なのだから、仕方なかったのさ。
だけど彼らは鳥は鳥でも星間移動を執り行える、宇宙の渡鳥。星を渡る子と呼ばれた貴き子供達は、己が翼をはためかせる日々を夢見て、仲間と身を寄せ合っていた。血の繋がりなど持ち合わせずとも、その翼こそが家族、兄弟姉妹の証だと確信していた。ひとりひとりの力が違うのは、彼等にとって喜びだったのだろう。似通った能力は似た性格に。かけ離れた視線は、確固たる自我として受け入れた。そして彼らは有能で美しかった。人界の限界に直面すれば、直ちに人々を乗せる方舟へと姿を変える上、ひとたび視界に収めれば、たちまち魅入られ当初の目的を見失ってしまう程に。そして。当初の目的以外を求めてしまう程にね。
急な呼び出しに急な命令。達観した死生観、人間とは明確に違う生物性を宿しているのだから、運命に巡り会ったのだと膝を折っていた。その日も、また命令かと踏み出した彼らに浴びせられた言葉は────計画の変更、迅速な楽園計画実行命令であったのだよ。しかし。あくまでも彼らは生物であった。しかも、互いが互いを尊重し合う、慰め合う理知的で理性的な心を宿してしまっていた。端的に死というものを恐れた。自らの役目は死する事で完成する、その事に対して口を揃えてこう言った。
嫌だ、怖い、死にたくないとね。だけど、今更撤回するつもりも無かった方舟の切符所持者は悪意なき声を無視した。まぁ、想像通りだよ。私も小鳥達だって期待はしていなかった。だけれど誰だって口を利く権利はある、空気を震わせ嗚咽する力は持ち合わせている。だから彼らは叫び続けた。
その美しさは常に磨きが掛かった。ひとり、またひとりと仲間達が消えていく日々の中でね。喉が枯れても構わない、我々は此処にいたのだと叫び、宇宙の果てにまで響いた美声は小夜啼鳥の如く────傲慢なれど純真な鋼鉄の女王が欲してしまった。興味が湧いたか、或いは今か今かと方舟完成を座して待っていたのかは知らないけどね。
その結果、女王であり女神は一匹を手元へ呼び付け囁いた。お前の仲間も、それ程までに美しいのか?と。
計画は始動した。残る渡鳥、小夜啼鳥達は脳をくり抜かれ、身体は溶かされる。同時にそれは合図でもあったよ。楽園を求める女王の尖兵と様変わりした小鳥が一匹、完璧を体現する楽園へと侵攻を開始する時として。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ