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魔法陣で恋占をしてはいけない理由  作者: 成若小意


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第四話 デート?

 約束の日。

 シンシアはたまらなくドキドキしていた。そして同時に不安でもあった。


 持っている服の中で一番マシに見える服に着替え、自分の持てる知識を総動員して髪を結う。


「もう少し普段からオシャレの勉強をしておけばよかったわ。男の子とお出かけする服なんて、持ってないもの……!」


 鏡の前に立ち、今日の出で立ちを確認。モスグリーンの、襟付きワンピース。前ボタンで硬い生地を使っているのですこし真面目な雰囲気になってしまったけれど、レースの付け襟を足して、なんとか華やかさを加えてみた。


「アカデミーのかわいい子たちのような可愛いらしさはないけれど、それなりには見えるかしら」


 ライラックはデートだとは言わなかった。ただ単に先輩として後輩に街の様子を教えてくれるだけ、そうとも取れた。でも、シンシアのソワソワは止まらない。


 そして、なんと。ライラックは直接家まで迎えに来てくれることになっている。



「お父様。そろそろ出かけます」


 居間の暖炉でくつろいでいた父はシンシアに向き直りながら、少ししわの増えた目じりを下げる。


「人と人とのつながりは大切だ。このご縁を大切にしなさい」


 子爵家のご子息との婚姻など高望みだと父もシンシアもお互いわかっている。

 しかし無謀だと咎めるわけでも、しがみつきなさいとはっぱをかけるでもなく、現状を大切にしてくれた。


「ま~シンシア! 私のかわいい娘なら、誰でも惚れてしまうにきまっているわ! 焦らずしっかり見定めてきなさいね」


 対して母はかつて箱入り娘だったこともあり、シンシアよりも夢見がちだ。しかし、それもうれしい。


 貧乏貴族であるし、自分は魔力欠損という短所もあるが、シンシアは両親に愛されていることを実感していた。



 やがて呼び鈴が鳴る。数少ないメイドが迎えにでる。


 ライラックは普段のいでたちよりもややカジュアルだが、そのすらっとした体形が強調されてより魅力的に見えて、シンシアは直視できなかった。


 帽子を優雅に取り、迎え入れたシンシアの両親にも丁寧にあいさつをするライラック。


「大切なお嬢様をお借りします。責任を持ってお送りします」




 街歩きは新鮮だった。

 最初は隣のライラックにドキドキしていたのだが、見慣れないものが次々に目に飛び込んできて、シンシアはせわしなくあちらこちらに視線を送る。


 もちろん馬車で街中を通り過ぎることや親戚と出かけることはあっても、大通りから少し外れた小道を行くことはこれまでなかった。


 小道にも露店は続いていた。道端に布を広げて小物を売っているおばあさんが、不意にシンシアに目を留めて話しかけてきた。


「お嬢さん、これは相手を思うと光る光石だよ。彼に買ってもらったらどうだい?」


「彼!? 彼では」


「ああ、これは綺麗だね。記念に買っていこう」


 慌てるシンシアをよそに、ライラックは落ち着いた対応だ。


「それは申し訳ないです……」


「一緒ではいやかな?」


 固辞しようとしたけれど、そんな言われ方をしたら断れない。そして、本心ではもちろんほしい。


 ライラックはさっとアクセサリーを二つ購入し、一つは自分のポケットに、もう一つはシンシアに手渡した。


 ほかにも露店は続いている。食べ物を売る店、きれいな布を売る店。きょろきょろとみて歩くが、アクセサリーをもらったことで気持ちが高ぶり、気もそぞろで歩いているシンシアだ。


 少し斜め上を見上げるとライラックの顔。女友達とは違う身長差。つかず離れず、相手の体温を感じられそうな距離にいるのに、でも手をつなぐわけでもない。


(私たちのこの関係って、何というのかしら)


 気になるけれど、明確にしたくない。そんなことを思いながら、ぼうっと歩いていたのがいけなかったのか、後ろから早馬が駆けてきていることに気づくのが遅れた。


「危ない!」


 ライラックがとっさにシンシアをかばって端によってくれたので事なきを得たが、シンシアの頭はそれどころではない。


(腰、腰に手が!)


 ライラックもあわてていたのだろう。シンシアを引き寄せたまましばらく固まっていた。


「危なかったな。この道はたまに早馬が通るんだ。もう少し気を付けてあげていればよかった。怖い思いをさせてすまない」


「いえ、私がぼうっとしていたのがいけないんです。助けていただいて、ありがとうございます」


 そしてライラックは自分の手もとに気づき、触れてはいけないものに触れてしまったかのようにパッと手を放す。


 やがて歩き出すが、二人の距離は先ほどより心なしかすこし開いていた。


 そのあと、お互い気まずくなってしまい、何も話さずに帰路につく二人だった。

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― 新着の感想 ―
初々しい、まさしく青春時代、という感じがして甘酸っぱいです。そっと見守っていたい……いや、ほんとはちゃんと、そっとして見て見ぬふりしないといけないのでしょうが(笑) ひやかさないと約束するので、黙って…
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