表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

醜い物コンテスト

 「醜い物コンテストやろうよ」

 

 そうA子が提案した。

 私は嫌な予感を覚える。

 学校の教室。休み時間でのことだ。

 誰かが、AIに動画を読み込ませて色々とできるアプリを発見した。AIは指示に合わせて、その動画にコメントをしてくれたり加工をしてくれたりするのだ。それが面白くて仲間内で盛り上がっている最中だったから、きっとそれで思い付いたのだろう。各々が“醜いと思う物”をスマートフォンで撮影して、誰の動画が一番醜いとAIが判定するのか競おうというのだ。

 ――問題は、どうして“醜いもの”なのかという点だった。

 私は思わず仏木ほとぎりさんの方に目を向けてしまった。彼女はA子の提案を聞いていたらしく、怯えた表情を浮かべている。

 仏木さんは酷く痩せていてまるで幽霊のような不気味な外見をしている。その所為で主に女生徒達の間で彼女はからかわれて……、否、虐められているのだ。

 A子はきっと彼女を虐める目的で“醜い物コンテスト”を提案したのだろう。

 ――案の定、A子は仏木さんを撮影し始めた。彼女は嫌がって抵抗したが、A子は却って面白がり、他の女子達に抑えつけさせて無理矢理に撮影を続けている。A子の他にも何人かの女生徒達が嫌がる彼女を撮影していた。

 止めるべきかとも思ったが、それで私まで嫌がらせを受けたら堪らない。私は罪悪感に苛まれながらも、それを放置し教室の隅の埃などを撮影した。

 ……本当にくだらないと思いながら。

 

 やがて皆の“醜い物動画”が出揃い、全てAIに読み込ませ終えた。いよいよランキング発表だ。A子はきっと仏木さんを撮影した自分か誰かの動画が一位となっている事を期待しているのだろう。

 が、驚いた事に一位に選ばれたのは、仏木さんが撮影した動画だった。

 悔しそうな顔を浮かべながら、A子は「あんた、まさか、自撮りしたの? それは反則だって」などと言いつつ、その動画を観るべくスマートフォンをタップした。すると、それから彼女は、

 「なによ、これ?」

 と、信じられない物を見るような顔で呟いたのだった。

 固まっている。

 どうしたのだろう?

 奇妙に思って私も自分のスマートフォンでSNSで共有されているコンテストの結果を見てみる事にした。

 すると、なんとそこにはA子の姿が映っていたのだった。

 ……どうやって仏木さんが撮影したのかは分からないが、先ほどの、嫌がる仏木さんを無理矢理に撮影している時のA子。

 

 ――そして、そのA子の姿は、何かの違法薬物でおかしくなって理性が失われているかのような不気味で残忍なヘラヘラとした笑顔を浮かべていて、物凄く、物凄く醜かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ