ろっかいめ
最近、ふと学生の頃を思い出す。
高校一年生の頃。私は定時制に通っており、私が学校に到着する時間には、全日制の生徒たちは部活の時間だった。入学して一週間程は緊張していた、という事だけ覚えており、少し記憶は曖昧なのだが、四月も下旬になる頃にはすっかり夕方の登校に慣れきっており、今までにない高揚感を感じていた事を覚えている。
その中でも特に印象に残っているのが、自転車がすれ違えるくらいの橋の、真ん中辺りから見える水面にオレンジ色の夕日がキラキラと輝いて見えたこと。山の向こう側に消えていく夕日を見て、なんだか無性に寂しくなって、自転車をひたすら漕いだこと。
言葉に出来ないものが溢れて、どうにもその日の授業は身が入らなかった。
それから、私は風景をよく見るようになった。少し俯き気味だった目線は上を向き、空を見上げて日々の移ろいに心を動かされる。間違いなく、私はあの日の夕日に救われた。
当時スマホを持っていなかった私は、それを残すという発想もなく、少しだけ登校する足を止め、夕日を見て、学校に行くというルーティンが出来ていた。
私は、学校に近づくにつれて聞こえてくる吹奏楽部の音色が好きだった。学校の敷地内に入ると、それだけじゃなくサッカー部の掛け声、ハンドボール部のシュートの音。テニス部のラケットの音。それらを聞きながら駐輪場に自転車を停め、校舎に入ることが好きだった。
定時制の靴箱は、二階にある体育館の下にあったのだが、途中に窓から見える夕焼け。夜の帳が落ちようかと言う時。窓からうっすらと射し込む夕日の残光。それらに心を踊らせて、ウキウキとした気持ちで教室に行けたことを覚えている。
スマホを持たせて貰えたのは、高校の二年に入ってからなのだが、その景色、場所、音色。
全てが好きで、どうにか形に残したくて、動画を撮った。
自分の声は入っておらず、自転車の車輪がゆっくりと回る音と、グラウンドにいる運動部の声、吹奏楽部の練習の音。山の向こう側にある夕日から射す残光と、朱色に染まった雲。
それら全てを動画に収めた。
その時は酷く満足感があったが、家に帰ってゆっくりと動画を見返してみるとどうにも手ブレが酷いのと、肉眼で収めたほどの色鮮やかな景色には見えず、ただただ味気ない音と、景色が広がっていた。
なんだか無性に寂しくなって、動画を消して、それ以降それを動画として撮ることはなかった。




