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じゅうにかいめ
私は、朝が好きだ。それも、とびきりの早朝。
透き通った空気に、朝焼け、時折遠くから聞こえて来る車の音に、どこかで鳴いている鶏や、雀。
静かで、閑散とした住宅地を自分の足音だけが響く空間が好きだ。
これから始まる一日に、とてつもない希望が詰まってるような気がして。
中でも好きなのは、冬の五時くらいだ。
頬を切り裂かれるような空気の中、たくさんの防寒具と、手袋でもこもこにした上で真っ暗な中、懐中電灯のあかりを頼りにあてどなく景色を見るのが好きだ。
他の季節に比べて虫の音もしなければ、僅かに遠くから聞こえてくる車の音と、自分の足音と、ふざけて出したため息の音だけが響く。少しづつ汗ばんで来て、暑くなるほどだが、指先や耳が凍えるような感覚と、それを暖めようと手袋をはめた手で耳を塞ぐように温める。
当然、手袋も冷たいから、そこまで暖かくはならないけれど、どこか楽しくなってきて、そんな風に一日が始まる。
そんな日は、いつもより少しだけ世界が輝いて見えるのだ。




