表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いや、私は

作者: 八百坂藍

悪質な悪戯というものがあるだろう。

今日仕掛けてたのはそれのはずだった。

私は落とし穴を作っていたのだ。

家の庭にである。

1人すっと入るぐらいの。2mの深さの落とし穴。

こう言う時に妙に働いてしまう気まぐれというものがあり、半日で完成させてしまった。

しかし不意に落ちた時の怪我のしやすさが頭に浮かんだ。

無駄に半日使って作ったこの穴を昼飯を食べたら埋めるつもりで家の中に入って食事をしていたのだ。

全く愚かな男である。



昼食の終わり頃。

急に表が騒がしくなった。

嫌な予感がする。

もしかして誰か引っかかったのではないか。

恐る恐る玄関の覗き窓を使うと警察の姿がそこにはあった。

おわったー。

絶対誰か引っかかって大変なことになってるじゃん。

えー。

半日使ったのに引っかかった瞬間も見れず捕まるのか…。

とむしろ今相応しくない感情を抱いていると警察官が1人玄関に近づいてくる。

ごめんなさいごめんなさい。

許してください許してください。

と、覗き窓から離れ、玄関から少し距離を置いたところで警察官は止まるわけが無い。

チャイムが鳴る。

うん、こう言う時は潔くだ。

悪意があった訳じゃないし?

許して?ね?

玄関を開けて大人しく警察官の話を聞いていくと何がどうなっているのかわからないが凶悪犯を追っかけている最中に私の家を横切ろうとした犯人が落ちたらしい。

えぇ?なんでぇ?

混乱する私を置いて感謝だけ残して警察は引き上げていった。

まぁ協力した訳ではないからこっちとしてもあっちとしても複雑である。

穴を掘ってた経緯を一瞬聞かれたが水の調子が悪くってぇ…配管のことも詳しくなくてぇ…と苦し紛れに適当に言い訳をしたら通りました。

なんでしょうね、この行き場のない感情。

悪事働こうとしたらなんかお手柄だったんですけど。

こんなことしたかった訳じゃないんだけどな…とはいえ、やりたかった展開になると私は捕まってしまうのでそう言う意味では良かった。一般人ならもっと面倒だったし。

あぁ、もう面倒だ。すぐ穴を埋めよう。

中断していた昼食にラップをして先に埋めてしまうことにしたら、子供の声が庭からした。

いや子供はまずいって。

即座に玄関から飛び出す。

落とし穴を見ると落とし穴の横で歓声を上げて興味津々に見てるだけだった。

えーいもうどうなでもなれ。

「すげーなおじさん!」

とか色々言われながら穴は埋めた。もったいないとか子供達は言っていたが子供達がもし落ちると大変なことになるからね。

こうして私の悪事は失敗し、近所の子供達には穴掘りおじさんと呼ばれるようになった。

いや、変なことするもんじゃないな。

そう思ってその日は意識を手放した。



後日、警察から感謝状の件が届いてビリビリに破いて見なかったことにしたのはまぁ、言うまでもない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ