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エピローグ ~その3~

ダーク版ならびに、作者の非公開作品、「イルミネーター」のプロトタイプを読んで頂いた方向け。著者の脳内エンドロールは、Journey Faithfullyです(曲を訂正)。

 一台の営業車が病院の駐車場を出ると、赤いテールランプを光らせながら、田んぼの間の一本道を、国道の方へ向かって走って行った。


 道路横にある木立の前で、二人の男女がそれを見送っている。そのうちの一人、女性がおもむろに空を見上げた。


「エミリア、聞いている?」


「もちろんよ聡子」


 不意に空の星々の間から、少し中性的な声が響いてきた。


「ロストしたソウルを特定。イルミネーターを起動、システムへの繋ぎ直しをお願い」


「了解、聡子。イルミネーター起動開始。虚構世界に対する再接続プロセススタート。3、2、1……、再接続完了」


 再びどこからともなく響いてきた声に、女性、瀬須医師が隣に建つ男性、羽田に頷いて見せた。


「まさか、二つ以上のソウルが混在するなんてことがあるとは思わなかったわ。これってアーキテクチャ上、あり得ない事なんじゃないの?」


「虚構世界はAIをベースとしたシステムだからな、その因果はプロセスとして明確に追う事が出来ないのは、君も良く分かっているだろう?」


「そうね。ランダムな変化に対する統計的な優位性による適者生存。まさにダーウィニズム、生命の進化と同じ」


「AIを生命の進化と同列に扱うのは聡子、君だけだと思うけどな」


「そうかしら。虚構世界は私たちがアーク(強制介入システム)で演じた、全てを司る神様そのものにしか見えないけど?」


「全く違うものだよ。虚構世界にはシナリオというものが存在する。だがロストしたソウルにとっては、まさにそうかもしれないな」


私達(イルミネーター)にとってもよ。それにアークに神様役なんてものを振られるとは、思いもしなかったわ」


「デウス・エクス・マキナだな。アークはアークで、AIによる最適な介入方法を選んでいるだけだ」


 羽田はそう告げると、宙に顔を向けた。


「エミリア、アークをクローズ。シナリオを元に戻してリセット。ターゲットと私達の回収を頼む」


「ちょっと待って。私との賭けを忘れたの?」


「エミリア、アークの接続を継続。ただし干渉度は最小限に絞って。それと、もうしばらくこちらに居ても大丈夫かしら?」


「残業をするつもり? あなた達のバイタルとメンタルは正常値を維持。お客さんのバイタルとメンタルも、完全に正常値に戻ったから大丈夫よ」


「では柊さんに経過観察申請と、私達二人の残業申請を出しておいてくれる?」


「了解、聡子。でも気をつけてね」


「おいおい、おれまで残業に付き合わせるつもりか?」


 瀬須に対して、羽田が大きく肩をすくめて見せた。


「もちろんよ。それにあなたはすぐにリセットを掛け過ぎなの」


「顧客の安全優先と言ってもらえないかな? でもたまにはテンプレでない世界の結末を見るのも悪くはないな」


「そうよ」


 瀬須こと聡子に向かって、羽田ことケインは小さく苦笑いをして見せた。


「そうだな。世界の終わりを決めるのは彼でいい」


《完》

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