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「今日も賑やかですねぇ」
あおたんがにこやかに部室へ入って来た。それに気づいた1年ズが揃って姿勢を正す。
「大丈夫だよ。あおたんはこの部活の顧問だから。気を遣う必要は無い」
「海津 月光さん。先生と呼んでください。それと、先生なんですから少しは気を遣ってください」
「あーい、」
呆れつつ腰を下ろしたあおたん。どうやらゆっくりしていくらしい。
「今日は一年生までいるんですね」
「新入部員、カッコ仮です。」
「カッコ仮?仮入部ということですか?」
お茶の準備を進めながら、かいちょが代わりに応えた。
「お二人は後期から生徒会に所属するので、生徒会の規定で部活には入れないんですよ。だから仮の所属という意味です」
ヒメがかいちょの言葉に続く。
「八百津先生、どうにかならないですか?生徒会の活動は責任もってするので、ゾン研にも入りたいんです」
「規定があるのなら、先生にはどうする事もできませんねぇ」
「帰蝶ちゃん、べつに部活に入らなくたっていいんだよ?毎日遊びに来れば。おかしも食べられるし」
「そうそう。この部活、部員は花だけなんだから」
「おい!せっかく入りたがっているんだから、余計な事を言うんじゃない!部員1号!そしてお前は部員でもない部外者だぞ!部外者1号め!」
アタシはふーみんを指さした。
彼女はこちらを気にする様子もなくツンと澄まして言う。
「だいたいこの部活、部として認められてないんでしょ?未だに同好会なのよね?」
ふーみんの視線がかいちょへ向く。
「ええ。月光さん、活動実績を生徒会へ示してくれない事には部として認められませんよ?」
「先生も今日はその事で寄ったんです。今度の文化祭、この部も何か作品を作ったり、発表したり、活動していると示してください。このままいつまでも同好会でいるという訳にはいきませんからね?」
「そこは抜かりない。少しずつだけどゾン研の活動記録をまとめてあるから」
「あの、いつも花と二人でやってるやつ?」
「私はタイプライター係だよ」
カシャンカシャンと音マネしてみせるはなっち。
「いつイベントが起きてもいい様に、セーブはまめにしているのさ」
「くだらない」
「くだらない事を本気でやるからこそ、文化ははぐくまれていくんだぞ?アタシはこの部室をセーブポイントにしたいと考えている。その為にまずはタイプライターが欲しいんだけど、」
チカ丸の方を見る。
「ゾン研が部に昇格したら、ぜひとも次期会計様には部費に色をつけて欲しいのですよ。新設の準備資金として」
彼女は顔を横に向けた。
「ニホンゴ、ワカラナイ」
「都合のいい日本語だな!おい」
「そんなの出来るわけないでしょ!一年生を困らせるんじゃない」ふーみんが代わりに怒ってくる。
「アタシもアンティークの本物が欲しいなんて言わないよ?何万円もするから。それに昔の物はインクリボンが必要だからセーブ回数に制限が出来てしまうからね。今はタイプライター風のキーボードが売ってるんだよ。それなら数千円で買えるし、部室に置いておけばみんなで使えるじゃないか」
「へー、」
「なに?ふーみんが代わりに買ってくれるの?おっ金持ちぃ」
「はぁ!?そ、それくらい自分のお小遣いで買いなさいよ」
「お小遣いはすべてゲームを買うのに使ってしまったよ」
「アンタはゲーム以外に欲しいものとかないの?」
「ない!」
アタシは胸を張って応えた。
あおたんがにこやかに聞く。
「海津さんはゲームが好きなんですね」
「我が生涯のライフワークです。」
「ゲームはほどほどにしないといけませんよ」
「なぜですか?」
「なぜって、」
「かーさんもよくそう言うけど、アタシは文句を言わせないために勉強の手を抜いたりしていない。学生の本分は勉強です。成績以上に何かを望まれても困ります」あおたんの眉がわずかに上がった。
ふーみんが気を効かせたのか間に入って来た。
「アンタはまったく。ゲームばかりしてて文化祭はどうするのかって話よ」
「文化祭までには、まとめあげて同人誌にするよ。作品を並べてある隅にでも置いておけばいいよね?」
「そんな簡単でいいの?」
かいちょが返答に困っている。
「先輩、同人誌書いてたんですか?」
「記念すべき人生初のうすい本だよ。イラストも入らない文字オンリーだけどね」
「楽しみです♪」
「エロくはないよ?分かってる?」
「え?も、もちろんです!」
「イラストならママに言えば描いてくれる。エロもOK!」
「いや、だからエロくはないから。スーパー絵師にイラスト描いてもらえるのは惹かれるけど、適当に書いた同人誌に載せるには恐れ多いな」
アタシ達のやりとりを見ていたあおたんが言う。
「1年生にずいぶん慕われているんですね。海津さんは、」
「慕われてるんじゃないですよ、コレ。遊ばれてるんです」
「そうそう」
ふーみんとはなっちが茶化してくる。
「にゃにおー!偉大なる先輩としてアタシが一年生の面倒を見てあげてるんじゃにゃいか!」
「まるで猫ね」
「もてあそばれる子猫だよ」
「先輩かわいい♪」
「ネコ、スキ」
あおたんが笑った。
「ふふっ、海津さんはもう少しクラスの中でも本性を出してもいいと思いますよ」
「そうよ。本性隠して、とんでもない化け猫よ。アンタは、」




