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ゆるゾン  作者: ニコ・タケナカ
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「しょうがないから少し説明してあげよう」

ふーみんが「やっぱりやるんだ」みたいな顔をする。

「お願いします。先輩♪」ヒメの方はやけに楽しそうだ。


「例えばレアなゲームがオークションへ売りに出されたとして、ふーみんはいくらぐらいで取引されていると思う?ちなみに新作ソフトが発売されると5千円前後で販売されることが多いよ」

「そー、ねー・・・・・・レアって言うくらいだから新品の2倍で1万とか、んー3倍くらい?いや、アンタがわざわざ言うって事はきっともっと高いんでしょうね。10倍の5万くらい?」

アタシは首を振った。

「2019年2月にアメリカのオークションで新品未開封の初代スーパーマ○オブラザーズが10万で落札されたんだ」

「10万!?」

驚くふーみんにアタシはまた首を振った。

「アメリカだからドルだよ」

「Wow、、、」チカ丸がネイティブな発音で驚いている。

「え?ドルだと、いくらになるの?」

「為替は変動するから大雑把に言うけど、1万ドルが100万円だと覚えると分かりやすいよ」

「1万ドルが、100万円ってことは・・・・・・は?1000万!?」

「Wow、、、」チカ丸をマネして、みんな発音よく驚いた。


「驚くのはまだ早い。2020年11月には新品未開封のスーパーマ○オブラザーズ3が15万ドルで落札されたんだ」

「1500万円!?」

「更に、2021年7月、今度は新品未開封の初代ゼ○ダの伝説が87万ドルで落札された」

「は?」

「更に更に、2021年の同じ7月に新品未開封のスーパーマリオ64が156万ドルで落札されたよ」

「ちょっと待って、1万ドルが100万円・・・・・・え?は⁉」ふーみんが指を折って数え始めた。普段慣れていない金額の上に為替換算だからしょうがない。

混乱するふーみんに追い打ちをかける様にアタシは言った。

「それからわずか1ヶ月後の2021年8月には、最初に言った初代スーパーマ○オブラザーズが今度は200万ドルで落札されることになった」

「は、」ふーみんはもう感情が追いつかず「は」しか言っていない。


かいちょが質問してきた。

「私はゲームをしないのでよく分からないのですが、そんなに価値のある物なのですか?」

「もちろんだよ。オタクにとってはね。本来なら、」

アタシはワザと含みを持たせてから語り始めた。

「億越えのスーパーマ○オブラザーズっていうのは、1985年から86年の間に任○堂がアメリカでファ○コンのテスト販売をしていた時に発売されたものなんだよ。わずか1年足らずの期間にテストで販売されていたから本数がごく限られているのは当たり前だし、そのうえ新品未開封だからね。世界にコレ1本しかないだろうと言われているよ。希少であればオタクは高いお金を払ってでも欲しくなるというものさ」

「まるで美術品みたいですね」

「うん、」アタシは軽くうなづいた。


「ねえ!アンタ、ゲーム好きなんだからそういう希少なの持ってないの?」

やっとゲームの価値が分かったふーみんが目をギラつかせて聞いてくる。

「それだよっ!」

アタシはビシッと彼女の顔を指さした。

「なにがよ、」

「ほんのつい最近まで希少なゲームでも何万円か出せば買えていたんだ。新品未開封で状態がいいマニア垂涎の一品でもウン十万円だった。無理をすれば手の届かないものじゃなかったんだ。多くのオタクはおこずかいを貯めていつかその希少ゲームを手に入れてやろうと夢見ていたものさ。それなのに1本のゲームに10万ドルの値が付いてからのここ数年でゲーム市場は様変わりしてしまったよ。ふーみんの様にお金に目をギラつかせている人達によって!」

「なっ⁉なによ、私はべつに・・・・・・ちょっと聞いてみただけじゃない」

「オタク同士で売り買いしているうちはまだよかった。いくら高くても現実的な値段で取引されるから。けど、そこに投機マネーが入ってくるとおかしくなってしまう。億もするなんて、いくらなんでもおかしいよ!これはそのゲーム自体が欲しくて買うんじゃない、高い値段が付くことに価値が移ってしまってるんだ。もう普通のオタクには手の出せない世界になりつつある。2019年2月が転換点だったんだ。」


アタシは耐えられなくなり、テーブルに崩れ落ちた。

「あぁぁぁ、まだアタシはアレもコレもプレイしていないのに!」

「先輩。大丈夫ですか?」向かいに座っているヒメが頭を撫でてくる。

「you can do it・・・・・・しらんけど」おかしな日本語ばかり覚えているチカ丸も慰めなのか背中をさすってくれる。1年ズはやさしいなぁ。

「月光ちゃんは大げさに言ってるだけだから、あまり優しくし過ぎちゃダメだ、よっ!」

はなっちの声が後ろから聞こえたと思ったら、アタシの脇をくすぐってきた。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」


ふーみんが呆れて言う。

「アンタは全てのゲームをやり尽すつもり?」

アタシは緩んだ顔を引き締めて応えた。

「できる事なら」

はぁ、とため息をついて彼女が言う。

「高いのは新品未開封だからでしょ?ゲームするだけなら中古の安いやつでいいじゃない。マ○オくらい売ってるでしょ?」

「スーパーマ○オブラザーズは全世界で4024万本売り上げたゲームだからね。簡単に手に入るよ。コレなら」

「コレなら、と言うと?」

普段はゲームに興味を示してこないかいちょも、気になるらしい。


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