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ゆるゾン  作者: ニコ・タケナカ
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夏休みはあっという間に過ぎてしまった。結局、積みっぱなしのゲームは全てクリアする事はできず、録り貯めてあったアニメも消化ようと思っていたのに、予定を立てていた半分の量もこなせなかった。それもこれもふーみんのせいだ。

彼女が泣いていたあの日は何とか丸く収まり、アタシもホッとして家に帰った。しかし、後から思い起こしてみても、アタシは本当に何もしていないはずなんだけど?あれはふーみんが勝手に落ち込んで泣いていただけじゃないか。振り回されたアタシの方が被害者だ。

(ハァー、まったく。あのツンデレめ、)

休みの間、情緒を乱され楽しいはずのゲームも手に付きやしない。アタシの夏休み返せ!


『8月25日 始業式』

今日はちゃんとアラームを止めた。3日前から昼型の生活に戻す努力をしていた甲斐があった。

いつもの時間にはなっちと登校し、いつもの短いホームルームを済ませ、いつもは無い始業式をこなすと、学校は終わり。

午前中で終わりだった為、アタシは一旦家に帰って保冷バックを手に下げ学校へ引き返した。

またふーみんが泣いてしまうといけないので、今日も午後から部活を開く。


部室の戸を開けると、いつもと変わらないメンバーがそこに居た。

ふーみんもいつもと変わらない様子で、はなっちとおしゃべりしていたようだ。

「月光ちゃん、お腹すいたよぉ」彼女はテーブルに突っ伏してしまった。

はなっちは家に帰ってお昼を食べるつもりだったんだけど、無理を言って残ってもらった。何かあった時の為の保険として。

「午後は何もないんだから、べつに部活しなくてもよくない?」お前が言うなッ!誰の為に部活開いたと思ってるんだ。彼女はツンと澄ましてこちらを見ている。

ふーみんはもしかしたら虚勢を張っているだけかもしれないので、今のところは言葉を飲む。


代わりに突っ伏しているはなっちに声をかけた。

「はなっち、誕生日おめでとう。ハイ、プレゼント」

「わぁ!ありがとう月光ちゃん。今年は忘れてるのかと思ってたよぉ」

「ごめんごめん。今年はちょーっと、アレで」

ふーみんの方を見たが、目線が合わなかった。

「なになに。花、今日誕生日だったの?おめでとー」

「おめでとうございます。花代さん」

「二人ともありがとう。でも本当の誕生日は8月7日なんだけどね」

「8月7日で、は・な・よ。覚えやすくて助かるよぉ、祝う方としてはなんてありがたい名前か」

「アンタはそれを忘れてたって事でしょ?今頃プレゼント渡したりなんかして」

「あははは」

いつもと変わらないツンツンとしたツッコミだった。


「言ってくれれば私もプレゼント用意したのに」

「いいよ。そんな気を遣ってくれなくても。今年はみんなに祝ってもらえただけでうれしい。8月7日だと夏休みの真っ最中だから友達で祝ってくれるのって月光ちゃんぐらいだったんだよねぇ」

「わかるー!私も8月5日が誕生日だからクラスの誰からも祝ってもらった事ない」

「わぁ!風香ちゃん、誕生日近かったんだぁ。おめでとー」

「ありがとー」

ふーみはいつもの様に笑っている。これなら心配はいらなさそうだ。アタシは警戒を解いた。

「生まれた季節によって性格って表れるもんだよねぇ。はなっちはいつも元気で夏が似合うていうか、たまーに暑さで脳がとろけちゃってる所も夏っぽい」

「えへへ」

「花、笑ってるけどソレ褒められてないからね」

「プッ!」かいちょは静観を決め込んでいるらしい。今日は気象予報士の試験も終わっているので勉強もしていない。ただこちらに笑顔を向けている。しかしアタシにはその笑顔の方が怖いよ。

「そこいくと、ふーみんはどんなに暑くてもへっちゃらなザ・夏って感じだよね」

「それは私が暑苦しいと?」

「いやいやいや。あはは」

話をそらす為、かいちょに振る。


「かいちょの誕生日は?」

「私ですか?わたしは、」

「待って!当てるから・・・・・・ズバリ4月」

「うふふ。アタリです」

「4月の前半でしょう?」

「ええ。」

「1日?」

「いいえ、」

「2日?」

「いいえ、」

「3日?」

「そりゃ”いつか”は当たるわよ」

「風香さん当たりです。私、4月5日生まれなんです」

ふーみんは呆れて天を仰いだ。

「かいちょはおっとりしてて春って感じだもんねぇ」

「そう言うアンタはいつなの?もしかして9月15日とか?名前が月光なだけに」

「うっ・・・・・・そうだよ!9月15日だよ!お月見の十五夜にかけてこの名前なんだよ。悪いですかってんだ!」

「な、なんで怒ってるのよ」

「月光ちゃん名前でいじられるの嫌ってるから」

物知りなかいちょが補足する。

「でも、確か十五夜とは旧暦の8月15日の事を言うのではなかったでしょうか?だから今の暦に当てはめると毎年日にちはバラバラで必ずしも9月15日が十五夜にはならないはずです」

「そうなんだよぉ。誕生日を聞かれるたびにその説明をしなきゃならないから面倒くさくて。それにこの名前!月に光と書いて”つきか”なんて中二病かってんでぇい!にゃろめい!」

「荒れてるわね。でも私は、す・・・・・・」

言いかけた言葉を飲み込んで、言い直したふーみん。

「き、嫌いじゃないわよっ。月の光なんて名前、ロマンティックでいいんじゃない?」

完全にいつものツンデレふーみんに戻った様だ。


「この名前を初めて見た人は100パー”げっこう”って呼んでくるから!それをいちいち訂正する身にもなってよ。意地悪なヤツだとワザと面白がって間違えてくるからね?こんな名前で嬉しかったのなんてバイオ○ザードでベートーヴェンの「月光」が出て来た時ぐらいだよ!」

「まあまあ、月光ちゃん落ち着いて。ねえ、プレゼント開けてもいい?たぶん月光ちゃんの事だからお菓子かなんかでしょ?みんなで食べよ?」

袋の中を覗き込んで、はなっちは息をのんだ。


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