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ゆるゾン  作者: ニコ・タケナカ
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髪はスッキリして涼しくなったはずなのに、ふーみんのせいでこちらまで恥ずかしくなって少し熱い。いや、元々暑い。

アタシは下敷きであおいでいるかいちょに聞いた。

「エアコンっていつから入るの?」

「確か7月からのはずです」

「まだ1ヶ月もあるじゃん!その間に熱中症で倒れるよ!死人が出るよ!会長権限で今すぐ入れよう!」

「学校で決まっている事なので私が勝手に入れる事は出来ませんよ」

「死人が出てからでは遅いんだよ?責任問題に発展するよ?会長に辞任請求出ちゃうよ?」

苦笑いするかいちょ。

「会長を困らせるんじゃない」ふーみんにいさめられてしまった。

「だいたい日本の学校がおかしいのだよ。7月にならないと入れられないなんて。暑かったらエアコン付ければいいじゃないか。この制服にしてもそうだよ。6月に入らないと衣替えしないなんておかしいよ。暑かったら脱ぐ、寒かったら着る。その判断は個々でするものでしょうに」

「そうですね。生徒会でも学校側に掛け合ってみましょうか。さすがにこれだけ暑いと生徒達の体調も心配ですからね」

あ!と、思い出したように声を上げたかいちょが言葉を続ける。

「そうそう、制服で思い出しました。来期から制服か私服か、選択できるようになりますよ」

「やっと選べるようになるんだ」

「やったぁ」

ふーみんとはなっちは喜んでいるけど・・・・・・

「ナニそれ?」

「ナニって、前から言われてたでしょ?もうすぐ私服で登校してもよくなるって」

「は?聞いてませんけど?」

「なんで聞いてないのよ、」

「月光ちゃんは興味の無い事、聞き流しちゃうから」

戸惑うアタシにかいちょが丁寧に説明してくれた。

「生徒達から私服を認めてほしいとの要望を受け、去年から生徒会で話し合ってきたんですよ。制服に関する検討委員会を作り、生徒、教員、保護者それぞれから意見を出してもらって、ようやく学校の許可が下りました」

「アタシの意見は⁉認めてませんけど?」

「なんでアンタに許可を得る必要があるのよ。そもそも聞いてなかったんでしょ」

「なぜ・・・・・・制服という素晴らしい文化を否定する様なマネを、」

「へー、制服好きなのね」

「好きっていうか、楽?」

「ハッ、そんな事だろうと思ったわ、」呆れるふーみん。

「だってそうでしょ?毎日服を選ぶ手間が省けるんだよ?朝、寝坊しても制服さえ着て家を飛び出せば何とかなるのに」

「あー、それはそうかも」と、嬉しがっていたはなっちも頷く。

「二人の家は近いからそんなでもいいのよ。うらやましい。私なんて前の晩に全部用意してからでないと心配で眠れないわ」


でも、と言ってかいちょが続ける。

「選択制ですから、制服を着続けても構いませんよ?」

「かいちょは分かっちゃいない。選択制の罠を。」

「罠?ですか、」

「こういうのは選択制と言っておきながら大抵は多数の意見によって既に決まってしまっているのさ。私服の生徒が多ければそっちに合わせなきゃいけないみたいな同調圧力がかかるのだよ。きっとみんな最初だから、もの珍しさで私服着てくるんだろ?初手を制した勢力がその後の体勢を支配してしまうんだ。そう歴史が物語ってる。あぁ・・・・・・」

「何を大げさな。私服着てくればいいだけじゃない」

「普通の民であるふーみん、もとい普民ふみんにはアタシの様な小人族、コビットの苦労は分からないだろうよ」

「変な呼び方やめて。」

ピシャリと制されてしまった。ふーみんはもしかして『ふーみん』っていうあだ名、気に入ってたの?十分ふーみんって呼ばれるのも変だと思うけど。


「いいかい?制服だとみんな同じデザインだから小柄なアタシが着ていても高校生と認識される。けど、アタシが私服を着ると何着ても全部小学生に見えちゃうからね?『高校に何で小学生いるの?』って言うヤツ、絶対いるからね?絶対だよ!」

「ッ!」かいちょが口を押えて目をそらした。(おい!)

はなっちまで口を押えて肩を震わせている。(オイッ!)

「べ、フッ、べつに、フフッ、誰もそんな事いわ、フフ!」

「もう笑ってるじゃないかッ!」

「フフッ、ゴメン。いいじゃない。聖地巡礼してる時はそういう格好してるんだから」

「アレはもうコスプレだよ。そういう意図でやってるからいいんだよ!」

「じゃあ、少し大人っぽく見える服装にしたら?」

「そんな事してもおませな娘が背伸びしている風にしか見えないんだよ!どう頑張っても小学生は小学生なんだ。あーぁぁぁ、」

「プッ!ククッ!」我慢しきれなくなって吹き出したかいちょ。アタシ笑わせようとしてませんけど?

「なんでこんな余計な事、決めちゃったのさ!時間も労力ももったいない!」

笑っていたかいちょの顔が今度はみるみる沈んでいく。

「余計でしたか、」

「む、・・・・・・んー、ゴメンかいちょ、言い過ぎた」

「アンタにしては素直じゃない」ふーみんの手が頭を撫でてくる。

「アタシはワガママを言う小学生じゃありませんからね。ましてや、自分では何もしないのに文句だけは言う大人になんてなりたくないので。」

決まってしまったものはしょうがない。この事態に何か対策を立てねば。

「そうだ!いい事、思いついた。」

「またどうせくだらない事なんでしょ?」

「いや、名案だよ!アタシは毎日ジャージを着る事にする!」

ふーみんがハァーと、ため息をついた。

「折角オシャレ出来るのに、なんでジャージなんて」

「学校のジャージを着ていれば全然おかしくないし、動きやすいし、楽だし、部屋着にもすれば寝て起きたらすぐ家を出られるし、楽だし」

「アンタもうちょっとオシャレに気を遣ったら?」

「きっとこれは流行るよ。特にオシャレなんてどうでもいいと思ってる男子達には!ジャージが一大勢力を形成して、生徒全員ジャージしか着て来なくなるかも」

「やめなさい。本当にそうなりそうで嫌だから」


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