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「あっ!」
突然はなっちが声を上げた。
「月光ちゃんに部室のカギ返すの、すっかり忘れてたよぉ」
そう言ってポケットをあさる彼女。今日は特製チョコを家へ取りに帰っていたから、はなっちにカギを渡して代わりに開けておいてもらったんだった!
(はなっち!なんで今、思い出すんだよーっ!チョコレートの効果なの⁉)
テーブルの上に置かれたソレを隠すため手を伸ばしたけどアタシは小柄だ。身を乗り出しても少し腕の長さが足りなかった。その様子を見かねたのか、隠そうとしていた相手のふーみんが取ってくれた。
「ちょっと!これ何よ」
ふーみんがソレを摘まんでみせてくる。
(あーぁ、バレちゃった)
言い淀むアタシへ更にソレを突きつける。
「ペラペラじゃない⁉」
ソレは通常の金属製のカギとは違って材質はプラスチックで出来ている。だからペラペラだ。
見つかってしまっては、もう言い逃れは出来ない。観念して言った。
「アタシが作った。」
「作った⁉アンタがコレを?」
「バレてしまってはしょうがない!」
開き直って言う。
「特別に作り方を見せてあげよう」
アタシはスマホを取り出した。
「ふーみん、カモメンのカギ出して。」
「えー・・・・・・なんか怪しいんですけど、」そう言いつつ、渋々カギを渡してくれた。それをテーブルの上に置く。
「かいちょ、ちょっと消しゴム貸してくれる?」
紅茶をすすりながら不思議そうに見ているかいちょから消しゴムも借りた。
「比較できる物を置いた方が作りやすいんだ」
カギの隣へ消しゴムを並べる。更にテーブルの上に広げてあったかいちょのぶ厚い参考書や二人の課題のノートやらを積みあげ、その上にスマホをカメラのレンズだけ飛び出る様に置く。
「なるべくカギとスマホの水平を保つのがコツだよ。じゃないと精度が上がらないから」
カシャ!
消しゴムと一緒にカギの写真を撮った。
「スマホの明るさは最大にしてっと・・・・・・はなっちノートの端、少し破っていい?」
「うん。いいよ」ビリビリとスマホと同じサイズに切り取る。
「大体揃ったね。後は消しゴムを画面に置いて、写真の消しゴムが同じ大きさになる様に拡大。本当は目の前に現物があるから直接紙の上に鍵を置いてなぞれば簡単なんだけど、今回は画像データさえあれば出来るっていう見本だよ?こうやってスマホの画面に紙を敷いて写真のカギをなぞりながら写し取れば・・・・・・」
出来上がったモノをふーみんへ見せてあげた。
「紙に書いただけじゃない。コレをどうやってカギにするのよ」
「もうほとんど出来ている様なものだよ。これはカギを原寸大に写し取ったものだからね。これを元にプラ板から切りだせばいいだけさ。プラ板はあまり厚みがあると切り出すのに苦労するから薄い物を何枚も切りだしてプラスチック用接着剤で張り合わせるんだ。固まったら溝の部分をヤスリで削って調整。仕上げにテープを張るのを忘れちゃいけないよ。プラスチックは折れやすいから鍵穴を回した時に折れるかもしれない。その時、穴に折れた部分が残るといけないからね」
ふーみんは渋い顔して眉間を抑えていた。
「自分で作ってみる?この紙あげるよ。材料や道具は全部100均で揃うから。」
「アンタねぇ・・・・・・犯罪よコレ」
「チッ、チッ、チッ」
アタシはワザとらしく指を振ってみせた。
「合鍵を作ってはいけないという法律は存在しないのだよ。たとえ自分の物でなくても」
「ホントに?だってこんなの勝手に作っちゃいけないでしょ」
「それは道徳上の概念でしかない」
「月光さん。例え合鍵を作る事が罰則の対象にならないとしても、犯罪行為をする目的で合鍵を作ったというのならそれは予備罪にあたりますよ?」
「ぐっ!」流石かいちょは気象予報士の勉強をしているだけの事はある。法律関係まで出題範囲に入っているのか。ちくしょー!
だが!手の内を明かしてしまった以上、ここで引き下がるわけにはいかない。
「異議あり!」アタシは声高らかに、あのゲームのセリフを発していた。かいちょに向け人差し指もピンと伸ばして突きつける。
「被告、海津月光は犯罪行為をする目的や意思など有してはいません。その証に合鍵が使われた理科室、カッコゾンビ研究部部室カッコ閉じる。では機材の破損及び迷惑行為等、実害は発生しておりません」
「異議あり!です。」かいちょもアタシの仕草に合わせて人差し指を向けてきた。最近のかいちょはアタシ達の側に染まってきたな?
「合鍵を使って理科室に侵入した時点で刑法130条の住居侵入罪に該当すると思われます」
「異議ありに異議あり!」ビシッ‼
ふーみんが隣でうなだれながら、目頭をもみほぐしている。
「羽島小鳥さん。貴方は被告、海津月光が住居侵入罪に当たるかも知れないと知りつつ、それを止めなかったのですか?」
「そ、それは・・・・・・」
「どうなんですか?答えてください」
「私はカギを使用している場面を直接目撃していません」
「関わりは無かったとおっしゃるのですね?」
「・・・・・・直接的には、」
「自分だけは何も知らなかったと?」
「そうは言っていません。裁判長、これは誘導尋問です!」
思わずかいちょの視線が飛んできたはなっちは苦笑いするしかなかった。
「では質問を変えましょう。貴方はゾンビ研究部が正式な部活動でない事はご存知でしたよね」
「・・・・・・」
「黙秘は肯定と受け取りますが、よろしいですか?貴方は生徒会長だ。生徒達の部活動については詳しいはずです。ゾンビ研究部が部活動でない事は当然知っていた。その自称ゾンビ研究部の部長である被告、海津月光がどうして理科室を利用できていたのか疑問に思った事はなかったのですか?」
「・・・・・・」
アタシは押し黙ってしまったかいちょの側へ行き、耳元でささやくように言った。
「貴方は知っていた。住居侵入罪に当たるかもと知っておきながら黙っていたのです。そして理科室を被告と同じように使用していた。つまり貴方は故意犯ということです」
かいちょがガックリと肩を落とす。アタシは肩をがっしり掴んで組んだ。
「判決っ!かいちょも同罪!」
「なにやってんの、よっ!」
ふーみんに軽く頭をチョップされた。




