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「ゴールデンウイークは前日から始まっているのだ!」
私は教壇に立って力説した。
「明日から連休だという解放感!自由に空を舞う鳥の如く、羽の生えたかのような感覚に身をゆだね連休の予定を立てる喜び! 愉悦!!まさにゴールデンウイークの前日こそ真なる愉悦!ふはははははっ」
ナニかが降りてきた私は邪悪な笑い声をあげた。
「宴というのは始まれば終わるもの。はかなき終焉に美ぞ求めようと、そこに残るは虚無よ。されど、宴の仕度は始まりへと向かうものだ。悲歎など無く、ただ始まりを望むものだ。新世、創造、生成、そららを赤子の如く望むだけでいい」
ふーみんが言葉も発せず、のっぺりした顔でこちらを見ている。よいぞ。そなたのその表情。この世の真理を求める顔だな?ならば我が魂の形、ここに示してやろうではないか。
「まずは積みゲーを眺める。軽く積もってしまったホコリをクイッ○ルワ○パーで丁寧に拭き取りながら、どの作品から相手をしてやろうと熟考するのだ。よいか?ここで選択を誤るでないぞ?連休明けの満足度が雲泥の差になってしまうからな」
ふーみんが眉間を摘まんで、もみほぐしながら言う。
「積みゲーってアレでしょ?まだ遊んでも無いのにほったらかしにしてあるって事でしょ?なんで1つ遊び終わってから次のを買わないのよ」
もっともなご意見、痛み入ります。けど、オタクにはそんな常識人のまともな見解いらんのです。母親ですかアンタは。
「そこに宝があれば、こんな所にあったのかと手に取るのは至極当然の成り行きであろう。世の全ての財宝は我のものだからな。元来は我のものではあるが、この時代まで護持した労をねぎらい店主に手間賃をくれてやるのだ。城に持ち帰り目に映す享楽の為、しばし手元に置いてやっているまでの事」
こそこそとふーみんとはなっちが話している。
「あれは何かのモノマネなの?」
「私も分かんない」
(くっ!)侮蔑に屈し、危うく地に膝をつくところだったではないか。王である我をひざまずかせようなど、万死に値するぞ!
分からないのならそのまま聞いててくれ。アタシは小芝居を続けた。
「せっかく時間はあるのだ。それぞれにパッケージを開き、説明の書に目を通すのも良かろう。そこに記される指南に沿って頭の中でこれから体験する遊戯に思いを馳せるのだ。今、己が望むのは何だ?世界を救うなどと大義を掲げるファンタジーものか?つかの間に偽りの英雄を気取るのもかまわん。または銃で容赦なく敵を蹂躙するか?理想も無く悲願も無いのなら、ただその蛮行に快楽を見出すのも良かろう。だが人ならばその知性におのが拠り所を求めてパズルゲームに解を示すのも、また道だ」
「今日のは何言ってるのかサッパリ分からないわね」
(ふーみんはいつもこっちがボケてても、ほとんど分かっていないじゃないか!)
もう降参といった表情のふーみんを置いて続ける。
「だが!手は洗っておくのだぞ?汚らわしい手で我が宝物に触れる事などゆるさん。ポテチを摘まんだ指で触れるなどもってのほか!」
アタシがにらみを利かせると、はなっちがお菓子を摘まんでいた指をペロンと舐めた。「えへへ」はなっち!アタシが貸したゲーム大切にしてよ ⁉
「やはりここは普段なら大作だからと敬遠しがちな王道RPGが本命となるであろうな。一気にエンディングまで迎えるのも一興よ。しかしRPGを1つクリアするというのは想像以上にこちらの体力を奪ってしまう。それが連休だからと徹夜プレイを強行しようというのなら尚更だ。数日間も休みがあるのだ、ペース配分を間違えて体調を崩しては元も子もない」
「月光ちゃん、ゲームは1日1時間だよ。」よい子か!はなっちは。アンタいい加減この前貸したゲームクリアしなさいよ!全然クリア後のオタク談議が出来ないじゃないのさ。こっちはネタバレしない様に気を遣ってウズウズしてるというのに。
「求める所をなすのが娯楽の本道だ!このたわけめ!」
「なんか、おこられた、」
はなっちが拗ねた様子でお菓子を頬張る。
「うむ。我なら軽く様子見に、小一時間アクションゲームなぞ嗜むがな。本気など出さぬぞ。喜べ」
「誰に言ってるのよ・・・・・・」
「四つ時ともなれば湯あみをせよと家臣が口うるさく言ってくる。そこは素直に従おう。湯で体を清め祓い、気分新たに夜を通して宴を催すのだ。黄金の時の開幕だ」
「月光さん。徹夜しては体を壊してしまいますよ?」かいちょまで母親の様な事を言いだした。
休み無くずっと勉強しているかいちょに言われたくないよっ!
「疲れたのなら休むわっ!過労死などせん!」
「で?アンタがゴールデンウイークにやったゲームって何なのよ?」
「知慮なく問を投げるか。フン。良かろう。我が寵愛に叶う傑作を披露してくれるわ」
アタシはスマホで検索してそのソフトの画像を見せた。
「日本○ソフト○ェア制作の夜○(よ○わり)」
「聞いた事ないわ」と、ふーみんが視線をはなっちに向ける。
「私も」
かいちょなんて今回の話はゲームなので自分の分野じゃないなと諦めているのか、勉強したままこちらを見てもいない。
「隠れた名作であるからな。我と信を同じくする同朋達には珠玉の一品よ。その証にこのソフト、シリーズ3作目を数える」
「オタク好みって事ね。よくは知らないけど、私だってゲームしない事も無いのよ?」
「ほう。そなたの無聊を慰めるその物の名。聞いてやっても良いぞ」
「ん?なんて?」アタシの言葉が理解できなかったのであろう、ふーみんの顔がはなっちへ向く。
「たぶん、何のゲームをした事があるのかって聞いてるんじゃない?」アタシにつき合わされているはなっちは何とか理解できている様だ。間に立つ通訳と化した。
「なんでそんな回りくどい言い方してるのよ・・・・・・アンタなら知っているでしょうけどスマ○ラよ」
「なっ⁉」
大○闘スマッ○ュブラ○ーズだと?家族や友達大勢でやるボッチのオタクとは無縁のパーリィソフトじゃないか。くっ!さすが人気者のふーみん。そっちのゲームプレイヤーですか。そうですか。
「アンタもやった事あるんじゃない?」
「知ってはいるぞ。民どもが戯れ合うのを眺めた事がある。良きソフトではあるな」
「?もしかしてやった事ないの?有名なゲームだと思うけど、」
「王とは、孤独なものなのだ。」
有名ゲームだからとオタクの義務に駆られて一人パーティゲームをプレイする虚しさよ・・・・・・自覚のある関心は、ただの執着でしか無いぞ。そこに愉楽は無い。
「風香ちゃんゲームやるんだねぇ」
「子供の頃に友達の家でやったことがあるだけよ」
「私も月光ちゃんの家でよくやるんだよ。対戦ゲームは全然やらないんだけどね。月光ちゃんが持ってるゲーム、一人プレイのばっかだから」
はなっち、忘れているかもしれないけど子供の頃は一緒に対戦ゲームもしていたよ?けど、ある時対戦に負けたはなっちが泣きだしたもんだから、それ以来やらないようになったんじゃないか。対戦ゲームは友情を壊すことを学んだよ幼いアタシは。
「一人プレイのゲームは交代でやるの?」
「ううん。後ろで見てるだけ」
「面白いのソレ?」
「まあ、」
「私も何故か一人でやらされる事があったわ。一緒にやろ?って誘っても恥ずかしがって僕は見てるだけでいいなんて言うのよ?」
「⁉ 僕?」
「ああ、小学校の頃の友達よ。言っとくけど、変な関係じゃないわよ?子供の頃だし。うちの学級、私含めて5人しかいなくてね。しかも女の子は私しか居なかったから、遊び相手はいつも男の子だったわ。だから驚いたのよ。アンタみたいに女子でもゲームがこんなに好きな子いるんだなって」
男児どもを後ろに侍らせゲームに興じていただと?逆ハーレムかよ!リアル乙女ゲーの世界か!アタシなんて、はなっちしかいないのに!
「おのれ、おのれ、おのれ、おのれぇ!」
油断した。まさか真のゲームプレイヤーたるこの王が偽りのプレイヤー、フェイカーごときに嫉妬するとは!




