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ゆるゾン  作者: ニコ・タケナカ
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ファイル5「帰還」


5月2日

やっと任務が解かれた。今回は特に厳しい戦いだった。西は凄いスピードでゾンビ化が進んでいて街はめちゃくちゃだ。ちくしょう!


帰ってくると皆、英雄だなんて言って迎えてくれたが、どうだこのあり様は。まともに戦える奴なんて残っていない。仲間たちはもう・・・・・・何のための救出作戦だったんだ!上層部は何を考えている⁉こんな事なら本部に立てこもり、守りを固めた方が良かったんじゃないのか?


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一年生と三年生の遠足も済み、通常の学校生活に戻った。今日は運動部の掛け声も外から聞こえてくるから、モブ達はやっては来ないだろう。

そう思っていたところに別の人物が部室に顔を出した。

「なんだ、こんな所に居たのか羽島。生徒会室にいないから探したぞ」

そう言いながら、やけにガタイの良い女子生徒が入って来る。肩幅が広く、ガッチリとしていて見ただけでスポーツか何かやっていると分かる体つきだ。身長も男子と並んでも見劣りしない。いや、普通の男子なら隣に並ぶだけで萎縮してしまうくらいの威圧感があり、実際より更に大きく感じる。

その彼女が歩幅も広く、こちらに向かって来た。


「おっ!パイセンだ」

アタシはすぐに席を立って、その場で姿勢を正し言った。

「おはようございまっす!」

「まっす!」はなっちもアタシに続く。

「ああ、」パイセンが手を挙げて応えてくれた。さりげない動作が、かっくイ~ィ

猪野いの 瑞穂みずほ生徒会副会長を務めている3年生。かいちょといっしょに生徒会室へお邪魔した時にはいつもアタシ達のことを可愛がってくれる良き先輩だ。


パイセンがどかりと、かいちょの正面の椅子に腰かける。右足首を左足のひざ上にかけただけの男子がよくやる足の組み方をして、テーブルの上に肘を乗せた。ワイルド~ォ。小柄なアタシがそんなのマネしてもサマにならないだろうなぁ。

アタシは座っているパイセンの元へ素早く小走りで駆け寄り、後ろへと控えて姿勢を正した。はなっちも続く。

パイセンが勉強をしているかいちょに言った。

「なんで生徒会室にいないんだよ」

「今日は生徒会ありましたっけ?」と、ノートから目を離さないかいちょ。

「放課後は生徒会室に集まってくれって連絡回しただろ?」

やっとペンを置き、スマホをとりだす。

「あらぁ、ホントですねぇ」

かいちょは肝が座っているというか、よく猪野先輩の前でいつも通りフワフワ小鳥の舞っている様な態度がとれるよね。誰に対しても物おじしない、そういうところ尊敬するよ。


「何か急用があったんですか?」

「いや、違うって。ほら」

パイセンが持っていた袋をガサツにテーブルの上に置く。

「京都のお土産。生徒会のみんなで分けようと思って持ってきてたんだよ」

「それはわざわざ、ありがとうございます」

「もう分けてきたから残りは食べちまおう。お前らの分もあるぞ」凛々しい顔がこちらに向く。

「パイセン、まじっすか⁉まじ貰っていいんすか?あざーすっ」

「ざーすっ!」

「ホントお前ら面白い奴だよな。ハハハッ」

パイセンはこの舎弟ごっこがお気に入りだ。アタシとはなっちはいつもご機嫌取りにしてあげている。長い物には積極的に巻かれにいくスタンス。これも世の中を上手く渡る為なんだ!


パイセンが袋からお土産を取り出す。

「京都ブ○ックサ○ダー雷神どすぅ」置かれた抹茶色の箱にはそう書いてあったので、そのまま言葉に出た。

「プッ!」かいちょが吹き出した。

「どすぅ」と、はなっちが言葉尻だけ繰り返す。

「フッ、フフッ‼」さては、どすぅに反応しているな?かいちょ。

「ほら。関、食え」食いしん坊なのを知っていて先にはなっちへ渡してくれるパイセン。

「ありがとうございます。先輩」お菓子を貰った事で顔を緩ませるはなっち。舎弟ごっこ忘れてるぞ?

早速、小袋の封を切る。出て来たのは箱と同じく抹茶色のチョコレートバーだ。ブ○ックサ○ダーはコンビニでも買えるお菓子だけど、これは京都限定のお土産という事で抹茶味にされているらしい。

「ブラックなのに抹茶色とは!」はなっちから率直な感想が出た。

「クッ、ククッ!!」かいちょがお腹を押さえて笑いを堪えている。こんなボケで笑ってもらえたんだから、メーカーさんも本望だろうよ。

「ほら。笑ってないで羽島も食え」

「ひゃい、いっ、いただゃきまふ」上手く言えてないよ?見ているこっちまで笑えてくるよ。幸せな人だなぁ。


お土産を頬張りながら話題も先輩の土産話へと移る。

「京都、どうでした?」

「ザ・日本!って感じだったな。楽しかったぞ」

アタシにとって京都といえば、アニメの聖地巡礼!日本の多くの学校は修学旅行を京都にしているので、学園モノのアニメであればメイン舞台は地方でも、修学旅行は京都という設定になってくる。だから数多くのキャラクターが京都を訪れ、主な名所は何かしらのキャラがその地を踏んでいると言ってもいいくらいに京都全体がアニメの聖地化している。

キャラ達が巡った通りに聖地巡礼し、アニメに出て来た同じ場所で同じアングルから写真を撮る達成感。もちろんそこはそのまま観光地なのだから楽しめるのは間違いなく、京都の聖地巡礼はおススメだ。


アタシは期待してパイセンに聞いた。

「どこに行ってきたんですか?」

「京都だ。」

「・・・・・・、」

思わぬ返答に言葉が喉に詰まってしまったじゃないか。こっちは名所の名前が出てくると思っていたのに。

「・・・・・・で、どこに」

「だから京都だ。楽しかったぞ」

パイセンはワイルド通り越して、ざっくばらん過ぎるんだよぉ!質問の意味を考えることなくそのままでとらえているんだろうなぁ。

かいちょが気を利かせ、丁寧に聞き返してくれた。

「京都のどこを巡って来たんですか?神社やお寺だとか、」

「ああ、そうか。何とかっていう寺だったな。大きな赤い門があった」

大体、京都にある神社仏閣のイメージといえば朱塗りの木造建築だと思うけど・・・・・・

「ほら、特徴とかは?建物が金色だったとか」

「金色ではなかったぞ。とにかく広くて森をずっと歩かされたな」

大体、京都にある神社仏閣のイメージといえば広い鎮守の森に囲まれたものだと思うけど・・・・・・

「他の特徴は?」

「うーん・・・・・・確かカモ肉が有名なはずだ、」

鴨肉が有名?鴨蕎麦かなぁ?京都は何となく蕎麦のイメージはあるけど・・・・・・これは名前を当てる連想ゲームなの?

「アタシはカモ肉が食いたかったのに、何故かみたらし団子を食わされたんだ」

ピキーン!ニュー○イプの様に閃いた!(そこっ!)スマホを取り出し、検索した画面をパイセンに見せる。

「これじゃないですか?」

「ああ、そうだよ。ココ、ココ」

「下鴨神社じゃないですか。有名な所ですよぉ。パイセンが寺っていうから、もー。ココ神社じゃないですかぁ」

「ん?神社も寺も同じだろ?」

「違いますって、神社は・・・・・・」いつもの様に講義モードへ入りかけたのをパイセンの視線が止めた。

「同じだよな?」

この人は細かい事にこだわりたくはないのだ。そういう人だった。神様が祀られていようが、仏様が祀られていようが関係ない。皆同じ。敬う気持ちは皆同じという事で、

「・・・・・・はい。同じです」

「そうだろ」

アタシはこの人に逆らわないと決めている。オタクとして細かい所は気になるけど、グッとこらえた。


「あははは!」

おや?今日も浮かれた声が近づいて来るぞ?

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