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ゆるゾン  作者: ニコ・タケナカ
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「花ちゃん、あーん」

「あーんっ」

待てをしていた犬がエサに食いつくように、はなっちがパクっとお菓子を頬張った。

「やーん、かわいいいぃ」

「あははははっ」

「私、こんな妹欲しかったなー」

「わかるぅ」

何がそんなに楽しいのか、やんや、やんやとさっきからクラスメイト達が騒がしい。本来、この時間は部活の真っ最中のはずですが?(ゾン研だって部活中だよ?)2年生だけでは締まらず、彼女らは抜け出してきたようだ。それをふーみんがお菓子を食べに来ないかと誘ったため理科室はちょっとした宴会、いやパーリィの様相だ。アタシにとって人が3人も集まればそれは騒がしいパーリィだ。

「あははははっ」全く遠慮のない笑い声が響く。

(アタシが見つけたサンクチュアリが!)

もう部活、無理だな。とは言ってもアタシ達もお菓子を食べてちょっと話をする程度の集まりだけど。ちゃんとした部活動といえば少しゾン研の活動報告をまとめるくらいだし。


モブ1がお菓子を摘まんでアタシの顔の前にちらつかせる。

「つっきーも♪ほら、あーん」

つっきー⁉ 気安いな。これだからパリピは。

アタシはお菓子を摘まんでいる指まで食べる勢いでかぶりついた。

「がうっ!」

「やん♪ 今の見た⁉ 指、噛まれそうだったんですけど!」

「あははははっ」

「見てみて!」

またお菓子を鼻先で振ってくる。今度は本当に噛んでやろうか?

「がうっ‼」

「あっぶなー」

「あははははっ」

「なんか、やんちゃな猫みたい」

「私、こういうペットほしーぃ」

モブ2が私の後ろから抱きついてきた。まったく。

むにゅ、むにゅ、

お姉さん。胸が当たっていますわよ?彼女は学校指定のジャージを着ている。気温はそれ程高くはないのに上着の方ではなく半袖姿だ。その下にはスポーツブラでも付けているのか、ぴったり張り付いている布は包み隠さずその形が背中に伝わる。ペッタンコなアタシからすれば羨ましい限りの弾力だ。

まあ、こういうポジションも悪くないか。

アタシは体の力を抜き、抱きつかれたまま椅子の上でぺたりと体を二つ折りにしてみせた。

「にゃーーーん」

「今、にゃーって言った!」

「つっきー体、柔らかーい」

「あはは!ネコみたい」

今度はモブ3がアタシの脇を抱え軽々と持ち上げる。確かにあたしゃ、小柄だよ?でもアンタ達と同じ高校2年生なんですけど?その筋力、さすが運動部といったところか。発育も全然違うし、もう根本的に人種が違う気がする。

(はぁ、)

猫というのは人間にもてあそばれる時、こういう気分なのかもしれない。アタシは全て諦め、なすがままに力を抜いた。

「にょーーーん」

「うわっ⁉ なに?めっちゃ伸びるんですけどっ」

「にょーん、だって!本当にネコみたい♪」

「ちょっとー、飼いたいんですけど、私!本気で飼いたいんですけど!持って帰っていい?」

「あははははっ」


お菓子を摘まみつつ、見ていたふーみんが言う。

「アンタ達、いい加減にしなさい。嫌がってるじゃないの」

「そお?」と、モブ4.

「それに会長、勉強してるんだから、うるさくしちゃ迷惑よ」

かいちょは少し離れた所で黙々と勉強している。よくこんな騒がしい所で勉強なんて出来るね。

「あ、ごめんね。羽島さん」

「いえ、」

「ねぇ、お菓子食べる?たいしたもの残って無いけど」

「ええ、お構いなく」

「それ、私が買ってきたんですけど?」ふーみんがツッコむ。

「ここに置いておくね。自由に食べて」

「だから、私が買ってきたんだって!」

「あははは!」

ふーみんはクラスのみんなといる時も、私達といる時も変わらないね。すごいよ。ほんと、


「あ、そろそろ部活に戻らないと」

「お菓子ありがとねー」

「あははははっ、あー楽しかった」

「風香も、ゾン研?だっけ、頑張ってね」

「私は違うからっ」

「あははは!」

笑い声が遠ざかっていく。ふー、ようやく静かになったよ。

「やっとモブ共が帰っていったか」

「モブって、月光ちゃん言い方」はなっちが苦笑いする。

「アンタ、借りて来た猫みたいになってたわね。もしかして、嫌だった?」

「べつに、」

「そう、」

ふーみんは新たにお菓子を封切り、かいちょの前に置いた。

「会長、ゴメンね。うるさくして」

「いえ、私静かな方がかえって勉強がはかどらないタイプなんですよ。お菓子、頂きますね」

それは普段アタシ達がうるさいって事ですかい?だからいつも側で勉強してるの?ま、いいけど。かいちょもお菓子を摘まみ始めた。


「前から思ってたんだけど、アンタ教室にいる時と部室に居る時と全然違うわね。部活の時は凄く喋るのに、教室だと話しかけてもほとんど喋らないし」

「オタクという生き物はね、人口密度が一定数を越えると喋らなくなるものなのだよ」

「なによそれ。」

「アタシの場合、教室に10人くらいがキャパの上限」

「さっき私達含めても7人しかいなかったわよ」

「元々、クラスでは目立たないようにしているからね」

「それ、本気で言ってる?」ふーみんが顔を覗いてくる。

「ん?」

「いや、アンタ結構目立ってるわよ。悪い意味で」

「え?」バカな⁉暗黒に紛れ、影と共に生きる闇属性のアタシが⁉

「例えば、いつも会長と花の3人でいるでしょ?普通に喋ってたと思ったら誰かか近くに行くと急に喋らなくなるじゃない。アレ、凄く気になるから。やめた方がいいわよ」

「い、いや、それは普通じゃない?だって友達同士で話してるんだよ?誰か他の人が来たら嫌じゃん」

「程度にもよる。アンタの場合、必ずと言っていいほど黙るでしょ?それにいつもこの2人としか話さないし」

かいちょとはなっちが微笑んでいる。

「だって、オタクの会話だよ?聞かれるのも嫌だし」

「なら、なんで私にはゾンビの話、あんなにしてくれたのよ」

あれ?なんでだろう?

それは、ふーみんがいつもちょっかいかけてくるから・・・・・・

「ま、普段は猫被ってるだけみたいだから、いいけどね。私もこんなに喋る子だとは思わなかったわ」

(もしかしてアタシの事、気遣ってくれてたの?)

彼女は横を向いて髪をいじりだした。

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