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ハァ、とふーみんがため息をついて言う。
「そもそも廃業したり統合されたり、そんなリスクが高いのに、わざわざゲーム会社に就職しようって言うの?アンタなら安定した国家公務員もカンタンでしょうに。試験で入れるんだから。その国会図書館にだって勤めたりも出来るんじゃない?さっき、あおちゃんが言いたいこと分かってたでしょ?」
「分かってるよ。けど、自分の人生なんだから、自分の好きな事に挑戦したいじゃないか。それにもし、会社が倒産したとしてもその時考えればいいだけだよ」
はなっちがお菓子をつまみながら言う。
「風香ちゃん、ゲームに関しては何言っても無駄だよ。昔からそうだから」
少し突き放された言い方をされたので寂しい。今日はなんだか冷たくないですか?花代さん。
「ハァ、確かにアンタなら簡単に乗り越えられそうよね」
「まあ、国会図書館員になって内部から改革を起こすのも悪くはない。そのルートも考えてはいたんだ。国会図書館というのはね、文化財の保護だけが目的ではないんだよ。集めた資料は利用しないとね。棚に並べられているだけのゲームなんて意味がないでしょ?ゲームはプレイしてこそなんだから」
「アンタもしかして図書館に勤めて、収められているゲームをしようなんて考えてたの?」
「ありえるよ、風香ちゃん」
「ありえるかっ!いくらなんでもアタシだって職員の立場利用してそんなことしないよ!」
「どうだかね。ゲームするためならどんな手でも使うんでしょ?この部活みたいに上手いこと自分のサンクチュアリだかなんだか作っちゃわないとも限らないわ」
「それもアリだけど、」
「おい!」
冗談はさておき、
「アタシが考えていたのは配信だよ」
「ゲームの配信ですか?先輩、それこそマズくはないですか?国家公務員ですし」
「捕まるよ?マジで。」
「ナニを言ってるんだ一年生達は。アタシが言ってるのは合法なものだよ。例えば本だと著作権の切れたものや作者から了解を得たものなんかはネットで公開されているんだ。集めた本は国民共有の財産として広く利用するという目的があるからね。これをゲームにも適用したい。オンラインで配信すれば昔のゲームを国民誰もがプレイできるようになるんだ!」
「くだっ・・・・・・たいした理想だこと」
ふーみんは言いかけた言葉を飲み込んで言い直してくれた。
「もっと詳しく言うと、国会図書館に収められているゲームを自由にプレイできるサブスクリプションを立ち上げたいんだ。そこで上げた収益はゲーム会社へと還元すればいい。昔のソフトは中古品として出回るけど、その売買ではゲーム会社に1円も入ってこないからね。例え何億で取引されようとも。利用者から徴収する形にして還元すれば配信許可だって会社は出しやすい」
「月光さん、公共機関ですよね?料金を取るんですか?」かいちょが少し驚いている。
「もちろんだよ。なぜ『公共の物は無料で』なんて考えがまかり通るんだ。何をするにもお金はかかるんだぞ?」
「それは、そうでしょうけど」
「行政府がお金儲けしちゃいけないの?ゲームは世界へ誇る日本の文化だよ。各国の言語対応にすれば世界中のゲーマーも遊べる。それだけ収入も増える。稼げるならちゃんと稼がないともったいないじゃないか。クールジャパン戦略どこいった?」
「月光さんのゲームに対する思いにはかないませんね」苦笑いが返ってきた。
「日本が誇るお宝を誰でも触れられるようにしたのなら『やっぱり日本のゲームは凄い』と見直されるよ?それは立派な文化の発信じゃないか」
「アンタ、いい様に言ってるけどそれって結局、自分がゲームしたいだけじゃない」
「その通り!」みんな呆れている。
アタシは開き直って言った。
「国会図書館を活用すれば膨大な量のゲームをコレクションする必要は無くなるんだよ。2000年以前のゲームを全て納めてしまえば海外流出に怯える不安も無くなる。オークションで何億の値段が付こうが関係ない。確実に1つは現物を国が保管し続けてくれるんだから。そして配信が叶えば純粋にゲームをしたい人にとっては理想のコレクションルームとなってくれるのだよ!国会図書館は!」
「アンタ、やっぱりサンクチュアリ作ろうとしてるんじゃない」
「嫌だなぁ、ゲーマーみんなのサンクチュアリだよ。利益は享受できるんだから。」
かいちょがフフッと笑った。
「壮大な計画ですね。私の責任重大です」
「そうだよ?アタシはあくまでサブであって、かいちょが本命なんだからね?責任重大さ。けど、法律の改正によって全てのゲームを収め、配信も実現できたのなら、全ゲームオタクの票はかいちょのものだよ」
「それは魅力的ですね」




