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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【97】男子会・ウェスティン東京


「ユーリちゃん、今頃ダンジョンとか行ってんのかなあ〜」



俺、川口、福田の三人は、恵比寿ガーデンプレイスのウェスティンホテル東京で朝昼兼用メシを食べていた。


─ここのところ女性が周りにいる事が多かったから、男3人でゆっくり、ってのは久しぶりかもしれない。




ウェスティンホテル東京は、一階エントランスに入るとヨーロッパ風の格調高いロビーがお出迎え。

二階へ続く絨毯が敷き詰められた大階段や、各所に置かれた長椅子の形が優雅で美しくて、俺はとても気に入っている。



その左奥に、どーんと広いスペースで広がってるのがビュッフェレストランだ。


ロビー同様天井がとても高く、やはりヨーロッパ風の内装で、壁の多くが長くて大きい窓で構成されている。


ランチビュッフェはフリーソフトドリンクをつけて、一人6100円。

お金を増やす前の俺たちには、到底気楽には来れない価格帯のレストランだ。



一角に、窓に囲まれた多角形のテラスルーム席があり、俺たち三人は、そこの窓際でハワイアンフードを食べていた。



大量の料理が並ぶカウンターテーブルから好きなものを選んで持ってくるスタイルなので、大食いの川口は尻尾をブンブン振って喜んでいる。


今は通常メニューであるコンチネンタルな料理の他に、夏限定の「ハワイアンフェア」をやっているようだ。

ハワイの老舗高級ホテルである、モアナ・サーフライダーの料理が食べれるとのことで、ここぞとばかりに俺たちはハワイメニューを片っ端から持ってきて、ひとつひとつ食べてみているのである。



「俺はこの、アヒアヒだっけ?マヒだっけ?なんかそういう名前の魚のバター焼きが美味しい。」

「あ〜、渚がいま食べてんのならアヒのバター焼きじゃね?名前、マヒマヒと混じってるし。」


福田は、小さいパイナップルを半分に切ったものを器にして、中にキヌアとパイナップルの炒飯みたいな物が入ってるハワイ度満点な料理を、スプーンですくって食べている。


「ウム、マヒマヒはこっちのアクアパッツァの事だな。」


川口は、自分の食べている白身魚のアクアパッツァを指した。


マグロ、ハワイの言葉でアヒって言うんだな。


ちなみにスマホ検索してみたらマヒマヒはシイラの事らしい。うーん紛らわしい‥。



「そういえばさあ、ユーリちゃんの隣への引越し、渚の4次元ポケット使ったら一瞬だったねぇ〜。」

「シーッ!4次元じゃなくて、異次元だ異次元」


誰に対して「シーッ!」なのかわからないけど、念の為。


「ユーリが使ってた部屋が空いたから、二人共、引越しまで好きに使っていいよ。」

「おう、それは有り難い。使わせてもらうぞ」

「今日が金曜だから〜、土、日─月曜の引越しまでもうすぐだよね。まあ、それも本当は渚のポケットでやっちゃえばすぐなんだろうけど─」

「ウー厶…しかしそれをしたら、アパートの大家とこのマンションのコンシェルジュに、めっぽう怪しまれるだろうな。」



引越し作業届けをコンシェルジュに出さずに、人だけ引っ越してきて、なぜか家具はある…


うん、怪しすぎる。


うちのマンションには、すべての通路に監視カメラがついているので、コンシェルジュの見てない所でこっそり運び入れましたよ〜、という言い訳は通じないのだ。


(だから、ユーリが出入りしてるのも当然カメラに映っている訳だが、そこはイブがうまいことやってくれるだろう、と期待している。)



「俺たち、若いのにブランド品で身を包んであんな高い賃貸マンションに住むなんて時点で、ただでさえ目立ちやすいんだから─」

「そうだよねぇ、なるべく変な事で目立たないように気をつけないといけないよね〜。不動産屋にも、もしかして夜のお仕事とかされてますか?って聞かれたし…」

「おれは漫画かなにか描いてたりしますか?みたいな事聞かれたぞ。」


やっぱ二人とも、かわった副業を持ってるんじゃないかと思われたんだな。


「俺はYouTuberかどうか聞かれたよ。YouTuberの住民が、過去に騒音の問題を起こしたケースがあるから念の為─だって。」

「オレのはねぇ、夜遅くに誰か連れてきて騒いだりしないかーって…ホストの住人が酔ったお客さんを連れてきて騒がれたケースがあったんだってさあ。」

「おれは、アシスタントとか編集者とか大勢の人が出入りしたりしないかと聞かれたが…やはりそういうケースが過去にあったそうだ。」


このデジタルの時代にそんな大人数で一気に仕上げる作業量だとしたら、週刊連載をしてる中でも相当人気作家クラスだな。



しかし20代の若さで、自由業のまま大金を稼いでると聞くと、そういう「上手く人気が出たらガッポリ稼げる」イメージの副業を持ってるんじゃないかって、思われがちなものなんだなあ。



そしてこの感じだと、儲かってる自由業の人も賃貸マンションて暮らそうと思ったら色々苦労するんだな─という感想を持った。



「─で、二人共なんて言っておいたの?副業。」


まさか競馬で儲けたって言えるわけないもんね。


「株〜。」

「おれも同じく。」


投資家か。

それもまた、若くして突然金持ちになる事があるパターンだな。


ホストや作家、YouTuber同様、いつまで高収入が続くか不安定な収入源かもしれないが、住宅ローンを組む訳じゃない。

賃貸なら、払えるうちは住めて払えなくなったら退去、それだけだ。


まあ俺たちの場合、払えなくなる日はないと思うが、異世界から帰れなくなって行方不明─という可能性はないわけじゃない。


じゅうぶん注意した上で、転移活動をしなければならないよな。




ハワイアン料理を一通り食べ、デザートを取りに行く。

もちろんそれも、ハワイアンフェアのもの優先だ。


俺はハウピアのプディングケーキというココナッツミルクの味がするケーキを、ほか二人はそれにプラスしてヤシの木の飾りがついてるケーキやソフトクリームを食べる。

どれも素晴らしく美味しい。



川口が、ぶっとい腕でちんまりしたスプーンを持ち、フルーツを乗せたソフトクリームを口に運びながら、


「おれ…ムキムキを控えようと思う」


と言い出したので、俺と福田は危うく吹き出しそうになった。


「筋肉増強のアンクレット、外すの?」

「ああ…惜しいが、必要な時だけにしようと思ってな。ムキムキは、ほら、目立つだろう」

「ま、まあ、確かに…」


今の川口なら、不動産屋に副業を聞かれても「漫画家ですか?」ではなく「地下格闘家ですか?」とかそういうのだろう。


筋トレ系のYouTuberだと言う手段もなくはないが─


「それにな、外すと妙に痩せてしまっているのだ。」


どうやら増えた筋肉が脂肪を燃焼させてしまうのか、食っても食っても本体の脂肪が減っていってしまっているという。


「こわ〜!それはヤバいね〜。筋肉に身を食われてるじゃん。」

「そうなのだ。あれは、日常的につけるものではないのだろうな。」



戦闘用、ってわけなのかもしれない。



宝物庫に入ってる魔法のアイテムだからって、都合良くプラスになる事ばかりじゃないんだな。



─そういや、宝のチェックをまだ全然してなかったっけ。



この週末はユーリの店の準備だけじゃなく、親の遺産である宝物庫の確認もしてみよう。



俺は食後のアイスコーヒーを飲みながら、明日、明後日の事を考えていた。

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