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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
90/162

【90】パンケーキは全てを溶かすらしい


翌日、昼──



予定通り、俺とユーリ、そしていつもの護衛コンビ・川口と福田は、車に乗って近所の百円均一へとむかった。


車の運転は福田に任せて、後部座席でスマホを使って情報収集。


渋谷区はあまり大きな百均はなく、中でも恵比寿はスーパーの中に入ってるスタイルのだけ。


「数階建てのダイソー路面店かなんかがあったら、ユーリに見せたかったんだけどなあ。」


ユーリはというと、スイッチを入れた状態の魔力探知機・ペンギン君人形を手に持ち、窓の外を向かせている。

いないとは思うけど、万が一この世界に『魔力持ち』な奴がいないかどうかのチェックだそうだ。


「でも、私のお店のセールで使うアイテムは、お店では買わないんでしょう?在庫切れになると悪いからって…」


そう、異世界での在庫一掃セールで売るための商品や備品を、買うとなったらそこそこの個数買うと思うから─


「買い占めはやっぱいけないことだからね。通販で、在庫が豊富にありそうな物を買うことにするよ。」



だから百均はユーリへの「こんなのもあるよ」的な紹介程度で、メインの目的は美味い昼飯だ。


川口と福田も、おそらくそれが目当てだろう。


俺は目当ての店があったので、代官山に向かうように福田に頼んだ。

歩いても近いが、車なら我が家からあっという間だ。



「渚、代官山に百均なんてあるのか?美味い飯屋はありそうだが。」


助手席から、川口が振り返って聞いてきた。


「うん、代官山アドレスディセの中に、少し大きめのSeriaが入ってるんだ。」

「Seria、女の子の好きなデザインの小物が多いから、ユーリちゃん気に入りそうだよねえ〜」

「同じ階に有名なパンケーキの店が入ってるから、そこでランチかなって。」




実は今日、梨亜にお土産を渡しに、朝から恵比寿駅ビルのアトレへと一人で行ってきていた。

梨亜は遅番だとのことなので、ランジェリーショップのお店の人に渡しておいてもらうよう頼んできたのだ。


─ランジェリーショップの女性店員にプレゼントを渡す、謎の男─俺。


ちょっぴりストーカーの臭いがしなくもない…。


そしてそのことを梨亜にLINEで知らせても、相変わらず既読はつかない─。



なんで?俺が何したっての?

ユーリを連れて、下着買いに行っただけじゃん。

そしたらたまたま店員が、バイト中の梨亜だっただけじゃん。


俺と梨亜は、別に付き合ってる訳じゃないんだし、既読スルーされるほどのことなの?


ユーリが女の子だから?

じゃあ、もし連れてったのが川口とかなら、不機嫌にならないですんだってこと?


─って、男の川口を連れてそもそもランジェリーショップに行くことはないから、比較できないか…うん。




そんなことがあったので、少しだけ精神が疲れてしまっていたから、なんだか昼は甘いものが食いたくなっていたのだ。

パンケーキ食うぞパンケーキ!ワフゥ!



「なにっ、パンケーキで昼飯だと…ウゥ…」


川口には物足りなく感じるのか、不満そうな唸り声を出した。


「大丈夫だよ、ランチメニューは肉や卵のついてくるパンケーキのプレートがあるから、甘味だけじゃないよ。」


そう言うと彼は少し安心したのか、フムフム的な声を出して大人しくなった。


まったく、動物みたいな奴だ。




Seriaは予想通り、ユーリのお気に入りになったようだ。


「小さくて可愛らしい、部屋に飾りたいような物が沢山…その上、化粧品や台所用品に、シンプルな魔道具まである…!」


シンプルな魔道具というのは、おそらく懐中電灯とかそういうものを指してるのだろう。


「色々買ってもいい?渚。」

「いいよ。あれっ、こっちの世界のお金ってまだ持ってたっけ?」

「まだ沢山あるわよ。それに、このお店はとっても安いから、欲しいものは端から全部買えそうだわ。」


ユーリは目をキラキラさせながら、買い物カゴを持ってフロアを見て回り始めた。




今から新生活を始めます!と言わんばかりに身の回りの物を一通り買った彼女は、ホクホク顔で4袋も大袋を抱えて店から出た。


重そうだったので、力持ちの川口が持ってあげる事にしたようだ。

なにせ筋肉増強してあるから、百均袋4つどころか、それを持ってるユーリごと肩に抱えられそうなムキムキっぷりである。




パンケーキ屋では、ランチのチリビーンズとパンケーキのセットと、スクランブルエッグとパンケーキのセット、ハンバーグとパンケーキのセットなどを頼む。

とにかくなんにでもパンケーキはつきまとうようだ。


それプラスで、じゅわっと口の中で甘くとろける名物パンケーキを注文。これはデザートだ。


夏フェスの期間限定メニュー・柚子とクリームのパンケーキと、リコッタチーズのパンケーキも頼むぞ。


かなりのボリュームだが、余るということは無いだろう。

川口大明神がいてくれる。



みんなワクワク顔だ。

俺もそれに乗るぞ!



朝のちょっぴりショボくれた気分なんて、パンケーキのバターとともに溶かして飲み込んでやる!

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