表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
89/162

【89】楽しめるうちに楽しみたいらしい


俺たちは、新宿駅の駅ビル、ルミネエストにある中華ビュッフェに入ってお腹がはち切れそうになるまで、中華料理を楽しんだ。



デザートの、マンゴープリンやフルーツカクテルなど南国フルーツを使ったものは、バザルモアにもある果物なのに食べたことがない調理法だそうなので、新鮮で楽しいとユーリが喜んでいる。


「その上食べ放題だなんて…なんてすてき」


夢心地になりながら、スプーンを口に運ぶユーリ。

そういえば、ホテル・タラートのデザートでも、マンゴーにクリームをかけたものが毎度出てきていたから、バザルモアの人の味覚にあってるのかもしれない。



川口が肉料理を端から順になめすように食べまくったのは言うまでもない。


─こいつ、ただでさえ大食いなのに、アンクレットの影響でタンパク質を大量摂取するようになってる気がする…!




食後の中国茶を飲みつつ周りを見渡すと、結構満席だ。

両隣の席にも、家族連れとカップルが座っている。


「…ここで異世界がどうのこうのと話すのもなんだから、ユーリの店についての話はマンションに帰ってから話そうか、みんな。」



感染症がなくなってからというもの、飲食店が本当に混むようになった。


ソーシャルディスタンスを意識した「ひと席空け」をしなくてよくなったから、よりみっちりに感じるのかもしれない。

店によっては去年減らした席数を戻したりもしているだろう。


変な話をすると近くの人の耳に届きやすいから、気をつけなきゃな、とひそかに思ったのだった。




食べているうちに夜になったので、ショッピングは中止でマンションに帰ることにした。


職務質問にあったら、身元を保証することができないユーリがピンチになる。




帰り道は福田が運転してくれるというので、助手席には川口に座ってもらい、俺とユーリは後部座席でゆっくりすることにした。


思えば、昼もデコボコの異世界の道を運転していたんだっけ。



砂埃や土で汚れていたので、新宿に行く途中、洗車機のあるガソリンスタンドで洗ったけど…よく見ると、車体に小石が跳ねた跡がたくさんついていた。


─異世界召喚用に、オフロード専用の車を買ってガレージに停めておこうかな。


でも、マンションのガレージだと監視カメラも付いてるし、消えたり出たりさせていたらいずれ怪しまれるだろう…


─自分専用のガレージ、あったらいいな…


ガレージハウスみたいな、シャッターがついてて好きに取り出したり戻したりできるスペースがほしい。

賃貸で探してみるかな…?




「百均は恵比寿にもあるので、明日お昼ごはんついでに行ってみようか、ユーリ。」


俺は後部座席に座って、窓の外の流れる夜景を見ていたユーリに話しかける。


彼女は、パッと笑顔になってこちらを振り向いた。


「うん!明日が楽しみ!」


百均なんて、楽しみにするってほどのこともないような気もするけど…。


「実はね、毎日、明日が来るのが楽しみなの。どこに連れて行ってくれるんだろう、どんなものを見れるんだろうって、渚と知り合ってから楽しい事ばかりで幸せなのよ。」


満面の笑みを浮かべ、本当に嬉しそうにしている。


「私、さ。本当は死んでるわけじゃない?なのに、聖女の魂が入ったおかげでこうして生きていられる。まだまだたくさん、色んなものを見ていられる。」

「ユーリ…。」

「この先大きな戦いがおきて、本当に死んじゃうんだとしても、今はまだ素敵なことをいっぱい体験できる時期だから─楽しめるだけ楽しんでおきたいの。」



そうだね、ユーリ。


でも、死んじゃうなんてならないように、精一杯力を貸すからね。


俺たちじゃ非力かもしれないけど、頑張るよ。



「ウゥゥ…」


謎の唸り声みたいなのが聞こえて、魔物かと思ってビクッとなった。

いや、明治通りに魔物が出るわけ無いじゃん。


ふと前を見ると、運転席の福田の頭がフルフル震えている。


─ズッ、ズズッ…


鼻をすする音。な、泣いてる?!


「俺たちじゃ非力かもだけどぉ、頑張るからねぇ〜、ユーリちゃあん…!」


─あ、俺がさっき心のなかで思って1人でエモくなってたこと、声に出して言いやがった、こいつ。


「ちくしょう、涙で前が見えないぜえ〜…」


おい、泣いてもいいけど運転気をつけろよ!マジで。


「ありがとう。みんなで一緒に勇者を見つけましょうね…!」


ユーリがウフフ、と幸せそうに微笑んだ。



川口も感動してるのかな…と思って助手席をそっと見たら、ヨダレをたらして寝てやがった。

くそ、マイペースな奴め。




俺たちを乗せた車は、恵比寿の緩やかな坂を登り、見慣れたマンションの駐車場へと入っていく。



─結局、そんなに沢山は物を買わなかったな。


サンプル程度に各種アイテムを2つずつってところだ。


Amazonで複数注文して、ユーリの店で売るぶんの個数を揃えよう。

客寄背せになる程度だから、そんなに大量にはなくていい。

むしろ、少量ずつでいいから、ドンキで売ってなかったメーカーの商品も各種揃えて、色んな種類の商品がゴチャゴチャ展示されている雰囲気を作るんだ。



─入れ物だけは、日本のメーカーのプラスチック容器ってわけにはいかないから、ちょっと対策を考えなきゃ、だな。


百均になにか、ちょうどいい物があるかなあ…?

いや、このさい業務用グッズ販売サイトを探したほうがいいのかもしれない。


お土産用の梱包資材とか。




─お土産といえば…


沖縄から帰ってきて、ちょうど一週間がたった。


芦田梨亜にあげようと思って買ってきた、お土産の珊瑚のピアス…


LINEの返信もないから、どうやって渡したらいいか困ってたところだ。


住所がわからないから郵送するわけにもいかないので、バイト先に持っていこうかな?

駅ビルの上のショッピングフロアで働いてるんだし、会いに行こうと思えば、いつでもできる。


ただ、ランジェリーショップなのがなあ…。



明日の朝、お店が開く時間を狙って持っていこうかな。

オープンした直後なら客もいないだろうし、サッと入れるかもしれない。



よし、その予定で行こう。


突っ返されたら、そのときはそのときだ…!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ