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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【87】みんなで新宿に繰り出すらしい


元世界に帰る前にチェマの街を観光しようということになり、俺たちは商業地区の大通りへと向かった。



ユーリにオススメの店なんかを聞きながら、歩く。


お気に入りの店は安いお菓子や衣類を売ってる店だが、憧れの店は高くて入れないレストランや服飾品の店なようだ。



「でもね、私、もうそんなに憧れてないの。」

「なんで?」

「だって、渚の世界のレストランも、ホテル・タラートの食堂も素敵すぎて、それと比べるとこの街での憧れなんて色褪せてしまうもの。」



そういうものなのか。


俺から見たら、異国情緒に溢れていい感じなんだけど……。


東京に比べると、圧倒的に人口が少ないし、車がないからか空気もキレイ。

転移一発で、飛行機に乗らなくても海外旅行気分が味わえるし、異世界サイコー。



「でもさぁ、どこの店も値段も説明文もなにもないから、入るのちょっと勇気いるよねえ。」


たしかに、それは福田の言うとおりだ。


現代日本に比べると、この世界は「情報」が足りない。


─だからこそ、ユーリの店の在庫売り切りセールは情報満載でお届けしたいんだよね。この街に住む人に…



「よしっ!そろそろ日本に帰ろうか。」


俺はみんなに提案した。


「ユーリの店から転移しておけば、いつでもそこに戻ってこれると思うから…」

「そうだな、あそこなら他人に見られることもないだろう。」


イブが同意した。

福田と川口もおおむねOKのようだ。


「オレはいつでもい〜よ〜!」

「おう、おれはもう少し見てまわってからにしたい気もあるが、またどうせすぐ来ることになるんだろう?渚。」

「うん。今ちょっと日本に帰って、ユーリの店のセールに向けて準備したい事があるんだ。夜にならないうちに行きたい所もあるし…」


「恵比寿に戻って、どこかに行くの?渚…」

「ああ。ユーリにも同行してもらうよ。」



俺たちは魔道具屋マルベリーズに戻り、恵比寿のマンションへと転移した。




イブの魔法陣ルームに現れた俺達が、まず初めにしたことは、俺の異次元ポケットの確認だった。


「テレレレッテレー!ペンギンくん!」


俺は、下腹のポケットに手を突っ込むと、ユーリの魔道具屋に置いてきたペンギンの形をした魔力探知機を取り出してみた。


「「「おお〜っ!!」」」


一同、歓声。

ちゃんと異世界の物も出せるようだ。よかった。


て事は宝物庫の各種アイテムや武器、宝石も取りよせられるわけだよね。


神じゃね?このポケット。



「おい渚、そいつペンギンくんって名前だったのか?」

「ってかさ〜、それほんとにペンギン…?インコとかじゃないの?」


川口と福田から突っ込みが入ったが、俺の中ではもうこの寸詰まりの青い鳥は「ペンギンくん」って名前に決めてしまっているのだ。



ちゃんと動くかどうか、スイッチを入れてみる。


と、即座に目が光り、首をグルンと動かしてイブの方を照らした。


「魔法は封じられていても反応するのだな」


現世界だと魔力は封じられるから、イブのような大魔導師でもただの人と変わらず魔法が使えなくなるわけだけど─。


「では、もしこちらの世界に紛れ込んでる異世界の者がいたら、それで見つけ出せるな。」

「そうですね。それが単に転移してきた人間ならいいんですが、自由に転移できる魔の者だったりしたらヤバいですよね。」

「安心しろ。もしそんなのが来ていたらこの国はとうに滅びている。自由に転移できる魔物など、魔王か邪神くらいだからな。」



だから、魔王が君臨する前に勇者と聖女は討伐しなきゃならないのか。


転生してまで神に必要とされてる理由が、わかった気がする。


魔王や、邪神がこっちの世界に来るとか…この世の終わりじゃね?

感染症どころの騒ぎじゃないだろ、きっと。

規模が大きすぎてイメージは全然湧いてないけど。


これはなんとしても、転生した父さん─勇者を見つけ出さなきゃ。

できれば、イブ以外にも高い魔力を誇る魔法使いとかパーティーメンバーになってくれそうな人がいたら、そのスカウトもしたい。


俺や川口、福田じゃにわかに集めた臨時メンバーって感じが拭えないもんな。マジで。




イブを残して、俺達は隣の1501号室─俺の部屋へと帰った。


俺はターバン腹出しの商人スタイルだから、着替えないと一階の自動販売機に行くこともできない。

いや、行ってもいいんだろうけど、一階ロビーのお姉さんたちに見られたら、きっと影で「最上階のアラジンくん」とか、変なあだ名をつけられる気がする。


川口と福田は、腰につけてる武器を置いた。


「で、どこ行くのー?渚ぁ。ユーリちゃんも連れてくなら、付き合うよ〜。」

「ウム、こちらの世界でも護衛はするぞ。おれたちはパーティーメンバーだからな。」


〈聖女の護衛〉として異世界へのお供を認められたのが、ファンタジー感満載で嬉しかったらしく、川口が意気揚々とした口ぶりで話してきた。


ちなみに彼は筋肉増強のアンクレットをつけているので、現世界でもムキムキのままだ。

もうこれから、ムキムキキャラとして生きていくつもりなのかもしれない。



俺は今からむかう目的地を告げた。


「ドンキと100均と家電店、あとビレバンもいいな。」


「?」


ユーリは『記憶』からその店名を思い出してみようと頑張ってるようだ。


「ん〜、ってことは新宿かなあ?渋谷?ユーリちゃんに見せるんだよね〜?」


福田は、ピンときたらしい。

そう、その通りだ。


ユーリは日本に来てから、まだ表参道と恵比寿周辺しか連れて行ってない。

それも、行っても洋服屋やレストランばかりだ。



この世界の「魔道具」みたいなものを、ガッツリ安売りしてる店舗に行って見てみる必要があると思ったのだ。



「新宿でも渋谷でもいいが、どこかで飯くおうぜ!」


川口が、腹筋でボコボコに割れた腹の辺をさすりながら言った。


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