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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
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【82】異世界で優雅な朝食を


翌朝、俺たちは身支度をすませた後、1階の食堂で合流した。



朝食はどうするか、昨夜のうちに聞かれていたので、全員一緒に食堂で─とアペルに伝えておいてあったのだ。


誰も寝坊せず、全員きちんと集まると、一人ひとりの席にグァバのフレッシュジュースとエビと香草の生春巻きが運ばれてきた。


「なあ、ここのホテルのノック、すごくない…?」


ジュースのコップを片手に、福田が聞いてきた。


「すごいって、何が?」

「なんかさ〜、静かにコンコンってしてるだけなのに何故かアラームみたいに耳に響いてきて、目が覚めたんだよねえ…。ね、川口。」

「ウム、朝の気分にパリッと切り替わるというか、妙に寝覚めが良いぞ。」


女性陣もウンウンと頷いている。


俺は割と早めに目が覚めちゃうたちなので、ノックされる頃にはもう起きてたりするからあまりわからなかったけど─


「それは恐らく、目覚めのスキルを持ったルームメイドがいるのだと思うぞ。」


イブは、生春巻きを箸でつまみながら、なんでもない風にそう言った。


へえーっ、そうか。

接客で働く人には色んなスキル持ちがいるんだな。


「昨夜の、手からダバダバお湯を出すメイドさんもすごかったけど、他にも特技持った子がいるのかなあ〜。すごいね」


福田が言ってる手からダバダバメイドは、アペルの事だな。


「ウム…ところで渚、髭はどうしているんだ?」


川口が、俺の顎をジッと見ながら聞いてきた。

よく見ると、彼の口周りには無精ひげがびっしり生えている。

福田も同様だ(川口ほどではないが。)


「洗面所にさあ、ナイフっぽいのが置いてあったんだけど…まさかあれで剃れっていうんじゃ、ないよねえ?」

「そのまさかよ。」


ユーリが答えた。


「私達の部屋にもあったけど、このホテルのグレードはすごいのね。魔道具のシェービングナイフがあるなんて。」

「そうか、ユーリの家は魔道具屋なんだもんね。あれはもしかして、自動で剃れるの?」


俺もそのナイフは見かけたので、まだ使ったことは無いけど興味は持っていた。


「自動っていうか…剃りたい部分にそっと当てるだけで綺麗に剃れる魔道具なのよ。」

「へえ!便利だね。でも女性だけの部屋にも置いてあるんだね?」

「そりゃあそうよ。女だって使うのよ」

「えっ?どこに…?」

「…どこにだっていいじゃないの、もう!」


ユーリがちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめながら、運ばれてきたフォーみたいな麺をチュルチュルと食べ始めた。

イブは「全く…」といった目つきで俺をチラリと見て、川口と福田は呆れ顔だ。



あれ?

俺なんかやっちゃった?


「お、俺はその、これを使ったよ!」


場の空気を誤魔化すために、俺は腹のポケットから電気シェーバーを取り出した。

もちろん、恵比寿のマンションの洗面台に置いてあるやつだ。


「お〜っ、そっかあ。渚は自分ちの物が何でも取り出せるんだもんねえ。いいなあ〜、後で貸して!」

「ウーム、なるほどな。しかし、さっきの話を聞いたら、おれは魔道具の髭剃りナイフとやらを使ってみたくなってしまったぞ」




そんな事を話している内に、食後のデザートのクリームを乗せたマンゴーと花のお茶が運ばれてきた。


みんなウマイウマイと言って平らげたところで、昨日の支配人が挨拶に訪れた。


「皆さま、今日はもうお発ちになられるんですか?」

「世話になったな、支配人よ。食事もとても美味であったぞ。」


イブが褒めると、支配人のお爺さんは「有難うございます、光栄です。」と頭を下げた。


「お帰りは勇者様の世界の転移ポイントに、ですか?」

「そうか、支配人は宝を預かっているだけあって、勇者と聖女が異世界を行き来できる事を知っていたのだな。今回は転移ポイントには行かないが──」



─転移ポイントって?

ワープポイントみたいなもの?


あ、俺が一人で転移した、沖縄の辺戸岬…あそこがそれなのか??


「こちらの世界と君たちの世界には、稀に次元の緩みが大きく、繋がりやすい場所が存在する。」


イブが俺たちの方を見て、わかるように説明してくれた。


「知っているのは、勇者に関わった一部の人間だけだけどな。ちなみにもう気づいているだろうが、このタラートの町と繋がっているのは、君たちの国、日本の沖縄の岬だ。」

「俺は最初、そのポイントから転移してきたんですね。」

「ああ。しかしそれよりずっと昔、君は勇者と聖女に連れられて転移ポイントから渡って来たことがあるのだぞ」


─あ、それって、俺が小さい頃の─。

辺戸岬とホテル・タラートにいた、記憶の断片。


「うっすらですが…小さい頃、親と沖縄旅行した記憶があります。─しかしなぜ、東京の自宅から転移しなかったんでしょうか…」

「勇者と聖女といえど、好きな場所から子供を同行させて転移する程のスキルは、まだ無かったのだ。」


え、じゃあ…

今のユーリの『異世界転移(勇者かその血を引く者の協力時のみ発動)』っていうスキルは、母さんの時より幅が広がってるってことなのか。



「だからわざわざ沖縄まで来たんですね──でも、なんでまた…」

「神が、君たち家族を呼びつけたからだ。」

「えっ!」


神が呼びつけた、だって─?


「─その理由を聞きたいか?」


イブは、深刻な顔になった。


「─はい…!」


魔王の復活とか、そういう系なのだろうか。

しかし、20年も前のことだ。

一体、帰還して数年しか経っていない両親に、神は何を求めて──



「『二人の子供見てみた〜い!』…だ。」

「は?」


思わずユーリの顔を見てしまったが、なぜだかニコニコしている。

イブは相変わらず深刻な顔だ。


支配人が、うう…と言って目頭を押さえている。


「あの時、神がこのホテルに降臨されたのです。まことに…まことに光栄な事でございます…!」



は?軽くね?

呼びつけた理由、軽くね?ねえ。


神ってどんな奴なんだ、一体…。

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