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親が勇者転生したので俺は現実世界で金を100倍にして悠々自適に暮らします  作者: 古着屋バカンス
第二章 異世界と東京をいったりきたり
78/162

【78】異世界の宝を持ち帰れるかもしれん


「拝啓、母さん──



俺は下腹にポケットができてしまいました。


これからは、もし女の子とウフフな事が起きても、着衣でするしかありません。


裸になろうものなら、間違いなく

「え?ドラちゃん…?」

と言われてしまうことでしょう。


せめて、この異次元ポケットを使って幸せ作ることができたら、口笛吹いて歩いて行こうってなれるのかもしれませんが──」



「母さんは私の頭の中にいるわよ、渚…。」


ポケットのショックで、天国の母さんに心の手紙を書いていた俺の横に立ち、ユーリがクールに呟いた。


「それに、あなたの年齢でそのエンディング曲知ってるの、おかしいわ。それは、ドラちゃんがのぶ代の頃よ…それも初期。」


俺は、ずり下がったパンツとズボンをもとに戻し、彼女の方を向いた。


「異世界人なのによく知ってるな、ユーリ。」

「今のは私の中の『記憶』がツッコんだの。」

「のぶ代時代は一応知ってるぞ…」


「君たち、なんの話をしているんだ?」


イブが俺たちのドラトークに割って入ってきた。


「な、なんでもありません。」

「そうか。それより、渚よ。そのドアはどうやって出したのだ?」


彼女は、俺がポケットから出したどこにでもいけるドアを指して、聞いてきた。


「どうやってと言われても…こんな事いいな、できたらいいな、と念じながら手を入れたら、くっついてきました。」

「渚─。」


ユーリがまたなにかツッコんでこようとしたけど、ややこしくなるので手で制した。


「これは、ダンジョン内ならどこにでも─地上へも移動できるドア。私がソルベリーの宝物庫に保管したものだ。」

「えっ!」


俺はたまげた。

どっかに保管されてるものなの?これ!


「ソルベリー王国は私の出身地。わが研究所がある…かなり北方にある国だ。」

「なぜそんな遠くのものを─」

「それはこちらが聞きたい。確かに勇者の宝だから君の財産ではあるが、厳重に呪文をかけて封印した筈なのに…それをこうもアッサリと─」



異次元ポケット、とにかく「俺か親の私物」だったら、どこからでも引き寄せられるのだろうか?

だとしたら──


「ちょっと…試してみます!」


俺は、パンツの中に手を突っ込んだ。


誤解を招く方法なので知らない人の前では絶対できないが、ポケットが下腹にあるので仕方ない。


「今週号のジャンプー!」


叫んでイメージを浮かべると、ヒュッと手についてくる確かな手応え。これは…


ガシッと掴んで、引っ張り出した。


「「おおーっ!今週号のジャンプだ…!」」


川口と福田がどよめいた。

そう、恵比寿の我が家のリビングに放っておいた、今週号のジャンプだ。


「念じたら、本当に出ちまった…。」


「日本のマンガ雑誌…?まさか─」


イブが驚愕して、目を見開いた。


「封印された場所どころか、異世界(日本)からも取り寄せられるのか?!自分の物なら──」

「そのようです。」



皆、静まり返った。


俺の底しれぬ力に驚いているのか、この場でジャンプを出してきた事に呆れてるのか解らないが…。



イブが口を開いた。


「このポケットは、商人のラナンが自分のアイテムボックスから瞬時に物を取り出すための、いわばショートカットとして使っていたものだ。彼は剣の腕はなかったが、アイテムで戦うことに秀でていたからな」

「ラナン…さん。」


─イブが迷いもなく俺の下腹に貼り付けてきたという事は、ラナンさんもそこにつけていたのだろうか─


俺の脳裏に、魔物との戦いの最中にパンツの中から爆弾やポーションを取り出している商人のオジサンの姿が浮かんだ。



「あの…イブさん。」

「なんだ?」

「他の場所…じゃ駄目なんでしょうか、このポケット。」

「駄目だ。」


イブは、キッパリと答えた。

マジか。即答かよ。


「アイテム召喚ポケットは、敵の手が届きやすい上半身や、ましてや手持ちの荷物などに付けるのは危険極まりないので、我々パーティー全員で話し合った結界最も安全な場所に付けることにしていたのだ。」


みんなで真剣に会議したのか。

腹にしよう。それもへその下がいいだろう、とか…。


そうかー。

じゃあ仕方ないか…。



「よしっ、折角だからなにか当てずっぽうで便利道具、引き寄せてみるか!」


俺は腹のポケットに再び手を突っ込むなり、わさびチックに叫んだ。


「スモールサイズにするライト〜!」


「「おおっ!」」


なんか真鍮で出来た懐中電灯っぽいのが出てきたのを見て、盛り上がる川口と福田。


マジで想像しながら呼んだら出てきちゃったよ。

明かりで照らすと、対象物を小さくも大きくもできるライト。



しかし、イブは浮かない顔をしている。

むしろ、青ざめてるといっていい。


「渚よ、それも『なんとなく思いついて』引き寄せたのか?」

「え?あ、はい。そうですが…」


まあ、実際に思いついたのはドラちゃんの作者の先生なんだろうけど…俺はそれを思い出してみただけに過ぎない。


「それは─それはこのバザルモア王国の、王家直属の大宝物庫に保管した宝物なのだぞ…!」



─え?俺、知らずにいま、大泥棒しちゃったの?

もしかして…!

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